天災で崩壊した世界で生きる人々を描いた漫画5選95 Pt.

9月1日は防災の日。災害への意識を深め、いざというときの備えを見直すための絶好の機会。天災が起きた後の「崩壊した世界」を描いた、漫画5作品を紹介しよう。

サバイバルものという、大まかな設定は提示されるが、物語の冒頭は謎だらけ。四人が何処から嵐の海に放り出されたのかは不明。それどころか、日常生活からサバイバルに至る記憶すらも曖昧な状況だ。四人がそれぞれ手にしていたのはリュック。中には各々の私物と、水筒、ロープ、ライター、懐中電灯、ナイフなどのサバイバルグッズが納められていた。果たして、このリュックを用意したのは何者なのか。島の生態系も不可解だ。虫どころか獣をも補食する巨大な食虫植物。群れで動物を襲うゴキブリのような昆虫。兎のような外見ながら、凶暴で人を襲う肉食獣。どう見ても、日本の島とは思えない。これらの謎が明らかになったとき、物語は本格的に動き出すことになる。

現代人が文明から切り離されると、生き残るだけで精一杯。食糧の確保や、肉食獣などの危険から身を守るサバイバル生活に汲々となるのが定番の展開だ。ところが本作は、そんな常識とは一線を画する。主人公の石神千空は、高校生ながらずば抜けた知識を誇る天才科学者。彼はその知識を駆使して、失われた科学文明を次々に復活させていく。黒色火薬、抗生物質、携帯電話など、一件無謀とも思える目標に対して、的確なロードマップを構築。一歩ずつ困難を克服しながら、目標を達成していく。完全なる文明の崩壊という絶望的な状況に負けず、夢と希望に邁進する千空の奮戦ぶりは、読む者の心を熱くたぎらせるはずだ。

本作の舞台は、牧歌的な雰囲気が漂う平和な世界。天災・災害で崩壊した世界という括りからすると、やや外れているように感じられるかも知れない。しかし、物語を読み進めていくうちに、その世界のいびつさが徐々に浮き彫りとなっていく。「呪力」に目覚めることの出来ない子供たちを待ち受ける悲惨な運命と、不気味なハンター「不浄猫」の存在。人間に奉仕することでのみ存在を許される「ハゲネズミ」の真実。そして、「呪力」にまつわる大きな秘密。緻密な設定と、圧倒的なスケールで展開される物語は、必見だ。ちなみに漫画版は、原作小説とは異なる部分も多いので、興味を惹かれた方は、是非とも原作も併せて読んで頂きたい。

暗く閉ざされたトンネル、いつ救助がくるかも解らない中で、取り残された中学生三人。物語は、いきなり絶望的な状況から幕を開ける。だが、やがてテルたちは、トンネルの崩落事故などほんの序の口に過ぎなかったと思い知ることとなる。トンネルから脱出したテルが目にしたのは、太陽が出ている昼間ですら薄暗く淀んだ異常な空。一面廃墟と化した街並み。日本は、政府すらまともに機能しないほどの大災害のまっただ中にあったのだ。恐怖心から異常行動に走る者、理性のたがが外れ、己の欲望を剥き出しにする者。本作におけるパニック心理の描写は、まさに身の毛がよだつほどだ。

本作の舞台は、もはや取り返しが付かないレベルまで文明が崩壊した世界の終末。そんな世界を旅する主人公のチトとユーリだが、二人には悲壮感など欠片もない。眼前に広がるのは、戦争の傷跡が如実に感じられる荒廃しきった世界。明日を生きる食糧すら心許ない状況にありながら、二人はのほほんとしたやり取りを重ねつつ、ケッテンクラートを進めていく。広大な夜景に目を奪われ、偶然ありついたレーション（戦闘糧食）に舌鼓を打ち、久々に浸かった湯船に癒される。この荒涼とした景色と、あくまでもマイペースな主人公二人の対比が、物語に独特の味わいを与えている。