あらすじ
第1巻
チトとユーリは、暗闇に包まれた廃墟の通路を進んでいた。ユーリの思いつきから入り込んだ二人だったが、何日走り続けてもなかなか出口にたどり着かない。昼か夜かもわからず、ケッテンクラートでひたすら走り続けた二人は、遂に暗い通路を抜け出す事に成功する。そこには満天の星空が広がっており、二人は星空を見ながら眠りに就くのだった。(01「星空」)
戦場跡にたどり着いたチトとユーリ。散乱する兵器の様からまるで「武器の墓場」と感想を漏らすチトは、何か使える物が残っていないかと周囲を探索する。探索しながら戦争がなぜ起きたのか話し合う二人だったが、探索の結果、爆薬とレーションを手に入れる。二人はなかよくレーションを分けあって食べていたが、残った1本をめぐり、小さな戦争が巻き起こる。(02「戦争」)
チトとユーリは、見渡す限り雪の降る真っ白な道を進んでいた。寒さに身を震わせ、雪を凌げる場所を探していたチトは、古い発電所を見つける。発電所内に温かな水が通る管を見つけた二人は、即席の風呂を作って暖を取る。(03「風呂」)
吹雪を凌ぐため、チトとユーリは建物に避難した。外を歩き回る事ができない状況なため、チトは日記を書きながら、ユーリに本の説明をする。しかし物事を深く考える事が苦手なユーリはチトの話を聞き逃し、うっかりチトが大事にしている本を、暖を取るための焚き火に投げ入れてしまう。大事な本を燃やされた事に怒ったチトは、ユーリとケンカをする。(04「日記」)
ある晴れた日に、大量の雪解け水が排水口から流されるのを目撃したチトは、飲み水の確保と洗濯を行う事を決意する。一方、チトが洗濯をしているあいだ、ユーリは洗濯に飽きて周囲を観察していた。そして流される雪解け水の中から「魚」の死体を見つけるユーリ。魚を初めて見た二人は、魚を焼いて食べてみようと挑戦する。(05「洗濯」)
廃墟都市を進むチトとユーリであったが、大きな溝に遭遇して立ち往生してしまう。そこに人がいた痕跡があった。そして突如訪れる大爆発。巨大なビルが爆発で倒れる事で、大きな溝に橋が架かったのだった。二人の前に現れたカナザワは、二人を巻き込みそうになった事を謝罪すると共に、途中まで同行を申し出る。(06「遭遇」)
チトとユーリは、カナザワの案内で上層を目指していた。途中、補給を行いながら進む三人は、それぞれの大切な物について話し合う。自らが書き連ねた地図を何より大事と語るカナザワは、上層とつながる「連絡塔」にたどり着いた時、次の階層の地図も書くと意気込みを新たにする。(07「都市」)
「連絡塔」にたどり着いた一行は、かろうじて動く昇降機に乗って上層部を目指す。しかし老朽化した昇降機は傾き、カナザワは地図を落としてしまう。生きる希望とまで言っていた地図を失い、絶望に暮れるカナザワ。しかし二人の助けもあり、三人は何とか無事に上層部にたどり着く。そこで街灯によって照らされた街並みを見た三人は、まだ都市機能が生きている場所があるのを確信する。カナザワは新たな地図を書き起こすと言い残して立ち去り、チトとユーリも新たな階層を探索し始める。(08「街灯」)
第2巻
チトとユーリは、カナザワが別れ際にお礼として渡した写真機を使っていた。四苦八苦しながらも、チトは使っている内に少しずつ写真機の機能を把握していく。そして写真機のタイマー機能に気づいたチトは、ユーリと二人の記念写真を撮る。(09「写真」)
夜に一番明るく光っていた建物を目指していたチトとユーリは、遂にその建物に到着する。中には石像が乱立しており、残った壁画から三人の神様を祀る寺院だと気づくチト。そして寺院の奥にたどり着いた二人はそこで、極楽浄土を再現して作った空間を見つける。ガラスの水面、金属でできた植物、すべてが模造品で作られた空間で、チトとユーリは過去の人がなぜ模造品の死後の世界を作ったのか、その思いに触れる。(10「寺院」)
チトとユーリは寺院を抜け、住宅街にたどり着いていた。水と電気は通っているけど、人っ子一人いない閑散とした空間を二人は探索する。家がなく、旅をする毎日の二人は、探索をしながら自分達の住みたい「家」について思いを馳せる。(11「住居」)
遊んでいたら、つい遅くまで夜更かしをしてしまったチトとユーリ。眠気をガマンできなくなったチトは、ユーリに昼寝をするために休憩をする事を提案する。そして二人でなかよく昼寝をするが、チトは夢の中でもユーリに振り回される事となった。(12「昼寝」)
チトとユーリは旅の途中、急な土砂降りに遭遇してしまう。雨宿りのため近くの瓦礫に避難する二人は、時間つぶしに空き缶などを使って雨音の合奏会を行った。自然の音楽によって賑やかな世界を堪能するチトとユーリであったが、晴れた時、いつも自分達が過ごす世界がどれだけ静かなのか実感する。(13「雨音」)
チトとユーリはケッテンクラートが故障し、道端で立ち往生する事になった。何とか修理しようと奮闘するチトであったが、うんともすんとも言わないケッテンクラートを前に頭を抱える。そんな中、チトとユーリは空を飛ぶ飛行機と、それを追いかける女性に出会う。イシイと名乗った女性は飛行機を飛ばす実験をしており、自分の手伝いをしてくれるならケッテンクラートを修理すると申し出る。二人はその申し出を受け、イシイが暮らす空軍基地跡へと向かう。(14「故障」)
修理したケッテンクラートで、チトとユーリはイシイの飛行機作りを手伝っていた。お風呂と食事を分けてくれるイシイに心を許し始めた二人は、イシイがなぜ飛行機を作ろうとしたのか疑問に思って尋ねる。そしてイシイは基地に残された資料から飛行機を再現し、この都市から脱出するつもりであると語る。(15「技術」)
「別の都市」の存在について語るイシイ。過去の航路図にその存在を確認できる都市を目指すため、イシイは飛行機でそこに向かうつもりだったのだ。そして飛行機が完成し、いよいよ出発となったその日、チトとユーリは飛行機が飛び立つ瞬間を目撃する。離陸は成功だったと思われた瞬間、翼が折れ、飛行機は大破してしまう。かろうじて脱出に成功したイシイを見つけた二人は一先ず安心し、イシイに教えてもらった次の目的地に進み始める。(16「離陸」)
第3巻
食料を手に入れるため、イシイの残した地図を頼りに生産施設を目指すチトとユーリ。しかしそこは配管が入り乱れる迷路だった。足を踏み外すと地の底にまっさかさまに落ちてしまう配管の迷路を、ユーリはいつもどおり自由気ままに、チトは恐る恐る前に進む。(17「迷路」)
チトとユーリは迷路を抜け、食料の生産施設にたどり着く。しかしそこにはほとんど食料が残っておらず、見つけられたのは粉状に加工された芋だけだった。このままでは食べづらいと思った二人は、施設の生き残った機能を使い、調理する事を思いつく。二人はかつて自分達といっしょに暮らしていたおじいさんの事を思い出しながら、パンを焼く。(18「調理」)
チトとユーリが訪れた場所は、いくつもの黒い壁が整然と並んでいる通路だった。壁には引き出しがあり、荷物が入っているものの使える物は何一つない。何のためにこの施設があるのかと悩んだ二人だったが、チトはこの黒い壁は死んでいった者達が、誰かに忘れられないために残した「墓」だと理解する。(19「記憶」)
夜の住宅街を訪れたチトとユーリは、煌々と照らされる月の光を楽しみながら探索していた。探索中、チトは「びう」と書かれた瓶を見つける。瓶から注いだ「びう」は金色の液体で、二人は初めて見る不思議な味と匂いにテンションが上がる。しかし、飲み続ける内にチトは酔っ払って様子がおかしくなってしまう。(20「月光」)
新たな上層部を目指すため、「連絡塔」内部の螺旋通路を登るチトとユーリ。ぐるぐる回り続ける道を延々と進む内に、進んでいるのか戻っているのか、わからなくなる二人だったが、二人はその道の果てで、崩落して途切れた道にぶち当たってしまう。崩落した道を前に立ち往生してしまうチトとユーリは、危険な迂回路を何とかくぐりり抜け、何とか上層部の入り口にたどり着く。(21「螺旋」)
暗い道を突き進む、チトとユーリは「生命」について語り合う。ふとした事をきっかけに「生きる事」を疑問に思う二人であったが、二人は暗い道を通り抜けた先で巨大な水槽と魚、そして思いがけない存在と出会いを果たす事になる。(22「技術」)
チトとユーリに友好的に接して来たのは施設を守る自律機械だった。この施設の事、そして自分達が何者かを語る自律機械に興味を示したチトは、自律機械の案内で施設の奥へと進む。そして自律機械に案内された巨大な水槽で、チトは泳ぎながらユーリと話した「生命」について思いふける。(23「水槽」)
この階層に残っていたもう1機の建設用自律機械が暴走し、周囲を破壊し始めた。チトとユーリは施設に残った最後の「魚」を助けるため、巨大な建設用自律機械の破壊を決意する。そして自律機械の助けを借りる事で、二人は巨大な建設用自律機械の破壊に成功した。「死んで」いく建設用自律機械を目撃したチトとユーリは、「生命」とは「いつか終わりが来る事」だと理解し、施設に残る魚と自律機械に別れを告げて旅立つ。(24「生命」)
第4巻
チトとユーリは、巨大な電車に乗って進んでいた。何もやる事のない電車の中で暇を持て余したチトとユーリは、電車の中の探索を始める。さまざまな機械の残骸を見つけたチトとユーリであったが、二人はその中で「時計」を見つける。時間を気にしない、終わってしまった世界に生きる二人は、かつて時間に縛られていた過去の人間に思いを馳せる。(25「電車」)
ユーリが「墓」から勝手に持ってきていた機械から音楽が聞こえ始める。「音楽」に触れた二人は、物悲しい気持ちになりつつも前に進む。そして暗い道を抜け出した二人は、赤い夕暮れに染まった世界で物悲しい旋律を聞き、光と音のリズムに包まれる。(26「波長」)
戦いの跡と思われる巨大なクレーターを発見したチトとユーリは、クレーターを探索し、そこで謎の生物を発見する。捕獲された謎の生物は、ユーリの持っていた機械を通じて二人に話しかけてくるが、内容はたどたどしい言葉を繰り返すだけであった。しかし自らをヌコという謎の生物に情が湧いたチトは、ヌコを逃がそうとするが、ヌコは二人に付いて来てしまう。失ってしまうばかりの旅において、たまには増えていくのもいいと思ったチトは、新たな旅の友としてヌコを歓迎し、二人と1匹は改めて旅に出発する。(27「捕獲」)
ヌコをかわいがるユーリ。ヌコも言葉を覚え、少しずつ二人と意思を疎通し始める。そしてチトは新たな階層の文化に触れる事で、自分の価値観とは違う「よくわからないもの」を感じる。価値観が違うからこそ感じる「怖さ」「おもしろさ」があると感じた二人は、「よくわからないもの」を探すために新たな地を目指す。(28「文化」)
通路を進むチトとユーリは、巨大な人型兵器が倒れるのを目撃する。倒れた人型兵器を調べた二人は、入り口を見つけ、コクピットに忍び込む。ところが、ユーリが適当にいじってしまった事で兵器の武装が解放され、周囲一面を火の海にしてしまう。チトは破壊の様を見て人の業の深さを感じつつ、人型兵器のコクピットで一夜を明かす。(29「破壊」)
旅をしながら過去に思いを馳せるチトとユーリであったが、自分達は何も知らない事を実感する。そしてヌコの案内によって電波の発信地に着いたチトとユーリが目にしたのは、巨大な「フネ」だった。閉ざされた扉もヌコの手によって開けられ、二人は「フネ」の内部に足を踏み入れる。(30「過去」)
まだ機能が生きている「フネ」の中を二人で探索するチトとユーリは、端末でカナザワからもらった写真機に保存されていたデータにアクセスし、多くの画像を見る。カナザワを含め過去の見知らぬ人々の暮らしを見たチトとユーリは、少しだけ心の中のさびしさを紛らわせた。(31「接続」)
「フネ」で一夜を明かしたユーリは、ヌコそっくりの巨大生物に出くわす。チトは目の前でユーリがその巨大生物に食べられてしまうのを目撃し、ユーリを助けるため一人、巨大生物を追う。一方で巨大生物は、「フネ」の艦上でユーリを解放し、自らの正体と目的を語る。そして巨大生物はヌコが自分達からはぐれた子供であり、ここまでヌコを届けてくれた事に礼を言うのだった。ヌコは二人との別れを惜しみつつも、別れの言葉を二人に送り、仲間達と共に去って行くのだった。(32「仲間」)
第5巻
ヌコと別れた「フネ」で大量の食料を見つけたユーリはご機嫌だった。食事のために水を探していたチトとユーリであったが、ふとしたきっかけで水路を発見する。水路で飲み水を確保した二人は、初めての缶詰に舌鼓を打ちつつ、巨大生物に教えてもらった西の昇降機を目指した旅を始める。(33「水路」)
崩れてきた瓦礫に足を挟まれ、チトがケガを負ってしまった。いつ崩れ去るかもわからない通路を一刻も早く抜けるべく、ユーリがチトに代わりケッテンクラートの運転を担当する。複雑な道でトラブルが多発するだけでなく、アクロバティックなユーリの運転にチトは振り回されてしまう。(34「怪我」)
二人が訪れたのは、多くの芸術品が飾られている建物だった。石像や絵画など過去の人々が作った芸術に触れる事で、過去の人と思いを共有する。そしてチトとユーリは、人類最後の絵になるかもしれない1枚の絵を描き、建物に残して旅立った。(35「美術」)
旅をずっと続けてきた事で、少しずつ衣服にほつれが出てきた。チトとユーリは立ち寄った水源で洗濯をしながら、手近な材料を使って即席の服を作る。間に合わせの服で焚き火を囲むチトとユーリは、昔の人間の暮らしについて考える。(36「衣服」)
死後の世界について話し合いながら廃墟を探索するチトとユーリ。死んだ人間はどこに行くのかと考えながら前に進む二人は、ある建物の中で「煙草」を見つける。試しに吸ってみた二人は、紫煙の中、過去の人々の幻影を見る。(37「煙草」)
遂に二人は巨大生物に言われた「連絡塔」に到着する。しかしそこには入り口がなく、巨大な灯台が存在するだけだった。チトとユーリは灯台を爆破して塔に穴を開けようとするが、塔にはまったくダメージを与えられず立ち往生してしまう。しかしそこに、ある存在が二人に話しかけて来た。(38「爆発」)
二人に話しかけて来たのは塔を管理する人工知能だった。二人は人工知能の案内で最上層へつながる昇降機にたどり着くが、そこで一つの頼み事をされる。何気ない頼みと思われたが、それは人工知能自身の消滅につながる事であり、二人は永遠に蓄積される記憶に押しつぶされた「失敗作の神様」の最期を見届けながら、最上層を目指す。(39「忘却」)
チトとユーリは、故郷でおじいさんを交えた三人で暮らしていた過去を思い出していた。自分達がなぜ上層を目指すのかを確認したユーリは、胸の中に生まれた「なつかしさ」を受け入れ、チトと共に前に進む。(40「故郷」)
第6巻
人工知能にもらった地図で最上層を目指すチトとユーリであったが、周囲を白一色に染め上げる吹雪に行く手をさえぎられていた。寒さに耐え切れなくなった二人は、かまくらを作って暖を取る。(41「吹雪」)
チトとユーリは傾いたロケットを見つける。ロケットの近くの施設を探索したチトとユーリは、そこで宇宙に関する知識に触れる。ちょっとした好奇心で施設を調べ始めた二人は、昔の人の好奇心は宇宙の果てを目指すものだったのだ、と共感を抱いた。(42「宇宙」)
チトとユーリは暗い道を進んでいたが、そこは本があっちこっちに落ちていた。二人は落ちている本をたどる内に、多くの本が蔵された図書館にたどり着く。たくさんの本を前に珍しく興奮を隠せないチトは、人が存在した証であるたくさんの本を前に、「言葉の宇宙」のようだとつぶやいた。(43「図書」)
最上層を目指して進む二人であったが、ケッテンクラートが故障して立ち往生してしまう。嫌な予感に包まれながらも、チトは昼夜を徹して必死にケッテンクラートを修理しようとする。しかし修理の果てに、寿命だと結論を出したチトは、最後だからとケッテンクラートを風呂に改装し、ユーリと二人で暖を取る。泣きながら最後の「びう」を飲むチトは、ケッテンクラートに感謝の気持ちを述べ、別れを果たす。そして荷物をまとめた二人は、最上層を目指して歩き出す。(44「喪失」)
ケッテンクラートを失った事で、歩きで旅をする二人は疲労の限界だった。体力的に限界なため、今まで大切にしていた荷物も次々と放棄しながら二人は前に進む。チトも今まで大事にしていた本を燃料代わりに燃やして暖を取り、眠って起きて歩いて眠るサイクルに、二人の心はどんどん磨り減っていく。(45「睡眠」)
最上層を目指す二人。遂にはランタンの燃料さえ切れ、暗闇をひたすら歩く。ケッテンクラートも、大事な物も、光すらも失った二人は、お互いの手の温もりだけを信じて前に進む。体力的にも限界で、お互いに掛ける言葉も失った二人は、沈黙の闇の中をただひたすらに歩く。(46「沈黙」)
暗い闇をくぐり抜け、チトとユーリは最上層にたどり着く。そこで二人は思いがけない景色を目にし、今までの人生は最高だった、と互いに言葉を交わす。(47「終末」)
テレビアニメ
登場人物・キャラクター
チト
ユーリと旅する黒髪の少女。ユーリからは「チーちゃん」と呼ばれている。自分達を送り出したおじいさんの言葉に従い、上層部を目指して旅をしている。ユーリとは違って体を動かすのは苦手だが、その分、手先が器用で頭がいい。二人旅ではケッテンクラートの運転と整備を担当し、直感で行動するユーリを度々たしなめながら旅を主導する。 好奇心が旺盛で、さまざまな知識が書かれている本が好き。多くの本が収められている図書館を訪れた際には、普段の冷静さとは打って変わって、思わずテンションが上がるほどである。また日記という形で自分達の旅の記録を取っており、手持ちの日記とわずかな本を何より大切にしている。ユーリの言動には振り回される事が多いが、希望の見えない廃墟の旅路においては、彼女の楽天家なところに救われている部分もある。
ユーリ
チトと旅する金髪の少女。チトからは「ユー」と呼ばれている。考えるよりも先に体を動かす行動派で、楽天的な性格も相まって衝動的な行動を取る事が多い。チトと違って体を動かす事が得意異なため、ユーリの言動が思わぬトラブルを呼び込んだり、ピンチをくぐり抜ける大きな力になったりする。楽天的な性格をしているが、物事の本質を見抜く力に長けており、その言葉は真実を突いている場合が多い。 またユーリの楽天的な思考は絶望の裏返しでもあり、嫌な事を考えたくない、思い出したくないという事から来ており、チトに言われるまで、自分達の旅の目的すら忘れていた。その危うさは旅の中でも時折出ており、チトの大事にしている本を間違えて燃やしたり、破壊兵器を作動して周囲を火の海にしたのを喜んだりと、たびたび問題行動を起こしている。 ただ根は素直で、問題行動を起こした際にはチトに怒られる事で自らの行いを反省し、素直に謝罪をしていた。食べる事が好きで、旅の途中で「魚」を食べて以降は、魚を好物にしている。
おじいさん
チトとユーリの世話をしていた壮年の男性。好奇心旺盛なチトに勉強や運転を教えた。ある日、住んでいた場所が剣呑な雰囲気になった際に、チトとユーリにあつらえた装備とケッテンクラートを与え、上層を目指すよう伝えて逃がした。チトとユーリが去った直後に戦闘が行われたため生死不明となっている。コーヒーを愛飲し、読書家で、家には多くの蔵書を有していた。
カナザワ
中年に差し掛かった男性。「連絡塔」近くの溝で立ち往生しており、ビルを爆破して橋を架ける際にチトとユーリに出会った。地図を作るのを生きがいにしており、以前はバイクに乗って旅をしていたが、今はバイクが壊れたため徒歩で旅をしている。荷物を乗せるため、道案内と引き換えにチト達の旅に一時的に同行し、彼女達に廃墟都市や「連絡塔」の昇降機について教えた。 昇降機の故障で落ちかけた際に、生きがいとしていた地図を失って絶望に暮れるが、また地図を作ると言い残して、チト達が向かう先とは別方向に向かって去って行った。別れ際に写真機をチト達に渡しており、のちにチトとユーリは写真機に記録されていた過去のカナザワの記録をかいま見る事となった。
イシイ
チトとユーリが出会った、飛行機を研究していた女性。旧空軍基地で飛行機に関する資料と設備を見つけ、廃墟都市を脱出するため独学で飛行機を作っていた。チトとユーリには壊れたケッテンクラートの修理と引き換えに、自分の作っている飛行機の製作の手伝いをお願いした。飛行機が完成したあとは、チトとユーリには食料の生産施設の場所を教え、違う都市を目指して飛行機で飛び立った。 しかしチト達の目の前で飛行機の翼が折れ、イシイは墜落する飛行機からかろうじて脱出。しかしその後、生きる目的を見失った事で、風に流されるまま下層へと落ちて行った。
ヌコ
白い体をした謎の生物。チトとユーリが戦場のクレーターの底で出会った。発声器官はないが、電波により会話をする事が可能で、ユーリが持っていた受信機を通じて自分の意思を二人に伝えた。チトが「ねこ」のようだと言った際に「ヌコ」と返したため、以降二人からは「ヌコ」と呼ばれるようになった。高い知性を持ち、最初は二人の言葉を受信機でおうむ返ししていただけだったが、次第に言葉を覚え、二人と意志疎通していく。 ユーリにかわいがられたため、彼女の影響を強く受けた言動をするようになった。火薬や燃料を食料とし、電子設備に介入できたりと、その生態には謎が多い。実は群れからはぐれた子供で、「フネ」にいた成体で構成された群れと合流した際に、チトとユーリと別れる事を惜しみつつ群れに帰っていった。
自律機械 (じりつきかい)
食用の魚を育てる施設を管理している自律機械。人間とコミュニケーションを取るために「共感」と呼ばれる機能が付いており、人間の感情を理解し、共有する事ができる。そのため言動に人間味があり、チトからは「生きている」みたいと言われていた。チト達には友好的に接し、施設と自分達機械の事を教えた。自分と同じく生き残っていた建設用の自律機械が暴走した際には、「魚」を守るため二人と協力して建設用の自律機械を爆破した。
人工知能 (じんこうちのう)
チトとユーリが訪れた第六機関塔を管理する人工知能。人間の少女のような顔に長い体をしているが、これは立体映像であるため基本的に体は自由に形を変えられる。チトとユーリに会った際には、うれしさの余り体を長く伸ばしていた。機械と人の仲立ちをする仕事をしており、人と機械の双方の価値を勘案して、安定した結果を導くのを役目としている。 同じ役割を持つ姉妹が5体いたが、それとも連絡が取れなくなったため、孤独の中、永遠に蓄積され続ける記憶を重荷に感じてしまう。このままでは都市のエネルギーが尽きるまで自分が延々と生かされ続ける事になってしまうため、人工知能は自分の死を願い、自滅用のコードを数十年かけてひたすら作っていた。しかし最後の認証は、人間に行ってもらわなければならないため、偶然訪れたチトとユーリに昇降機を動かすのと引き換えに自滅コードの認証を頼む。 最後は自らを「失敗作の神様」と言い、ユーリとチトに感謝の言葉を伝えながら消滅した。
場所
廃墟 (はいきょ)
遥か古代の人間によって作り出された階層型の巨大都市。現在は文字通り廃墟と化している。現代の人間は古代人達が去ったあとにこの廃墟に住み着いたに過ぎず、都市内部には現代の人間が把握していない設備が存在している。上層と下層は「連絡塔」と呼ばれる巨大な塔にある昇降機で行き来する事ができるが、一部の「連絡塔」の昇降機は現代の人間には動かす事ができないため、外付けに昇降機を作って行き来していた。 戦争によって大部分が壊されており、整備をする人間もいなくなったため、戦争後は、次々と都市内部の設備が機能を停止している。都市内部の整備をする自律機械や人工知能も存在するが、それらも徐々に壊れていっており、現存するものは少なくなっている。 チトとユーリが旅をする廃墟都市以外にも都市が存在し、昔は飛行機で行き来していたが、現在は音信不通状態で、ほかの都市がどのような状況になっているかは不明である。
その他キーワード
ケッテンクラート
チトとユーリが旅の足代わりに使っている半装軌車。バイクと戦車を合わせたような見た目の乗り物で、バイクのように運転が簡単にもかかわらず、戦車のような履帯を持っているため悪路にも強い車体となっている。設計自体は相当古い物であるが、チトとユーリが乗っている物は文明崩壊後に作られた比較的新しい車両である。おじいさんがチトとユーリに託し、主にチトによって運転された。 本来は相応に速度を出す事ができるが、チトの慎重な性格から、普段はほとんどスピードを出す事はない。旅の中で度々不調になりながら最上層まで二人の旅を支えたが、遂に故障して動かなくなってしまう。修理が不可能だと察したチノによって、最後は風呂として改装され、最後の最後まで二人の役に立った。 チトはケッテンクラートに強い愛着を持っており、別れる際には涙ながらに感謝の言葉を伝え、その後も歩きの旅で苦労した際には、今まで旅ができたのはケッテンクラートのお陰だったと、たびたび実感する事となる。
写真機 (しゃしんき)
カナザワがお礼としてチトとユーリに渡した映像を記録する装置。写真を撮る以外にもタイマー機能など幅広い機能を備えているが、チトとユーリは把握できておらず、偶然見つけたタイマー機能以外を活用する事はなかった。記憶容量と電源の持続時間も恐ろしく長い。チトとユーリは写真を撮るのを気に入り、機会があれば次々と写真を撮っていった。 実は古代文明によって作られた遺産で、カナザワ以外にも多くの人の手を渡ってきている。「フネ」を訪れた際には、ヌコの手助けによってその内部データにアクセスし、チトとユーリは古代の人々の暮らしぶりを見た。
書誌情報
少女終末旅行 6巻 新潮社〈バンチコミックス〉
第1巻
(2014-11-08発行、 978-4107717818)
第2巻
(2015-07-09発行、 978-4107718303)
第3巻
(2016-02-09発行、 978-4107718747)
第4巻
(2016-11-09発行、 978-4107719294)
第5巻
(2017-09-08発行、 978-4107720092)
第6巻
(2018-03-09発行、 978-4107720603)