重厚な人間関係と繊細な描写が魅力‼ 「よしながふみ」の世界
57 Pt.

1994年『月とサンダル』で商業デビューして以来、数々の名作を世に送り出している。一度「よしながふみ」ワールドにハマれば全作読んでみたくなるだろう‼

徳川15代にわたる将軍家。その歴代の将軍の大半が実は女だった!? 日本を襲った、男性だけが死ぬ奇病、男女比が大きくくずれ、やむなく将軍代理を努め始める姫、その姫の子孫を残すために大奥には美男が三千人。陰謀と虚栄、結局男女が入れ替わってもドロドロの人間関係は変わらないどころかいっそう悲壮さを増して行く歴史ファンタジー。史実を変えることなく男女逆転の世界を作り上げ、キャラクター1人1人の心理描写が細かく描かれている映画化もされた作品である。

弁護士の「筧 史朗」と美容師の「矢吹 賢二」。ふたりは同性愛者のカップルで一緒に暮らしている。料理を作るのは「史朗」の仕事で、彼の毎日のレシピに一喜一憂する姿とふたりで食卓を囲む姿が描かれる。料理過程の描写に大きな比重を置いていて、実に家庭的で実際に作ってみたくなるようなレシピが満載だ。最初は同性愛者である事をひた隠しにしていた「史朗」だったが、愛情表現の激しい「賢二」の影響か、だんだん丸くなってゆくその心情の変化にじんわりと来るものがある。

「女性との結婚」をテーマに据えたオムニバス集。突如再婚すると言い出した母の再婚相手は20代の元ホストだった‼ 心中穏やかではない30すぎの娘「雪子」の本音や、「全ての人に分け隔てなく接しなさい」と祖父に言われて育った「莢子」は、恋愛の本質に気がついてしまう。胸がえぐられる切なさと愛に振り回されながらも逞しい女性達を描く。肝心なところは、台詞ではなく絵で魅せてあり、微妙な視線の動きや表情の変化などがグッとくる。