人間嫌いの中学3年生。三人目のプレイヤーとして召喚された本作の主人公で、情に流されることなく、徹底的に合理的な判断を下す戦略家。魔物討伐やクエスト攻略の戦略を編み出して作戦の指揮を執ることも多く、パーティー内で一目置かれている。人の命は平等ではなく、その人物の行いを考慮して公平に扱われるべきという信念を持ち、自分より強く高潔な信念を持つ者は生き延び、クズは死んだ方が世の中のためだという独善的にもみえる価値観に従って行動する。自分や仲間がひどい目に遭っても、誰か一人が最終的にクエストをクリアできれば問題ないというルールを前提にした人の感情を考慮しない判断は、時に仲間からドン引きされることも。実際に参加直後の時舘由香からは「クズ男」と呼ばれ、箱崎紅末やグレンダ・カーターに諫められることもある。
ゲームマスターのルーレットで決定された最初の職業は「農民」であり、まったく戦力にならなかった。しかし、トロール戦では攻撃される直前に転職可能なランク10に達して「料理人」にジョブチェンジ。固有スキルで魔物の体内の構造を透視し、胃袋にとらわれていた新堂衣宇と箱崎を救出した。その後も、自身の言動の説得力を上昇または低下させる「魔術士【生物】」や鍛冶屋、盗賊などトリッキーな職業を引き当てがちだが、真正面から戦いを挑むよりも、敵の裏をかき、チーム全体の勝率を上げることを考える四谷にとって、そうした職業こそ適職といえるかもしれない。
一人目のプレイヤーに選ばれた四谷のクラスメート。運動神経抜群の美少女で、雑誌で読者モデルデビューも果たしている。誰からも好かれるクラスの人気者だが、姉のように慕っていた年上の幼馴染みがいじめを苦に自殺し、自身も小学校で教師にいじめられた暗い過去を持つ。自身が教師から目をつけられた際に友達が助けてくれた経験から、「仲間は力」という信念のもと、周囲の人の絆を一番大切にしつつ、世界を少しでもよくしようと努力を重ねて今の地位を築いてきた。基本的には明るく前向きな性格だが、異世界で死ぬことで、現実で努力して得た仲間や力が失われることに心細さも抱いてもおり、四谷に「あたしを助けて」と涙ながらに訴えるなど意外なメンタルの弱さを見せたこともある。
異世界においての戦闘能力はパーティー内でもトップクラス。「魔術師【風】」の職業を与えられた最初の状況では身体能力低下の影響を受けて苦しんだが、その後「戦士【剣】」に転職してから本領を発揮した。5周目のオーク戦では凄腕の傭兵であるカンティルの剣技を習得し、オーク女王を翻弄。6周目には「上級戦士【剣】」にクラスアップ。イハル・ネモアに襲来するカマキリ型の魔物、マンティスを次々と薙ぎ払った。強い意志で困難を乗り越える新堂はまさに戦士にふさわしいキャラクターである。
二人目のプレイヤーで四谷のクラスメート。生まれつき病弱で、現実世界では高額な薬を飲み続けている。すべてを犠牲にして自分を育ててくれた両親に恩返しするため、薬の研究者になり、自分と母親の病気を完治させることが将来の夢。その生い立ちゆえに、弱い立場の者に寄り添い、どんな命も大切にしたいという思いが強い。基本的には気弱だが四谷とは異なる正義観を持ち、彼が魔物に襲われた子供をスルーしようとした際も「私は子供を見捨てたら意味ないから」と言い返す芯の強さも持つ。悪人を躊躇なく手にかけようとする四谷に心を痛め、「相手も自分自身も傷つけて欲しくない」と何度も説得を試みているが、彼の行動を止められることは少ない。ただし、四谷も他人のために尽力できる箱崎の強さを認めており、彼なりに彼女の言葉を受け止めてはいる。
暴力が嫌いで体力もない彼女が最初に与えられた職業は、「戦士【剣】」。当初は剣を持ちあげる力もなく、パーティーに迷惑をかけている負い目の意識が強かった。しかし、4周目には女性騎士カハベルの指導を受けてゴブリンを撃破し、自分には不向きな戦士職から脱するために魔物を殺す決意を固め努力を重ねた。ところが6周目にオーク女王を倒した時に引き当てたのは「重装戦士【剣】」。まだまだ戦士職に縁がありそうな箱崎だが、6周目には大量のマンティスと互角に渡り合えるほどの成長を見せている。
アニメとソシャゲ好きのオタク女子高生。四人目のプレイヤーとして召喚された。クラスの女子グループから孤立することを恐れ、空気を読んで立ち回る処世術を身につけている。些細なきっかけで仲のよい女子グループ三人の怒りを買い、裸の写真を撮影されそうになったところを、ゲームマスターから指示を受けて駆けつけた四谷に助けられた。しかし、写真データを消すために三人のスマホをへし折ってトイレに流す彼の所業を見て、「ヤバいやつ」だと思い警戒をしていた。自分が勇者一行に加わった4周目では、盗賊に捕まった新堂を見捨てて先に進んだ方が合理的だと平気な顔で主張する四谷にドン引きし、「クズ」の評価を下す。ただ、それ以後の彼の行動で助けられてもおり、その評価は多少向上している。
最初の職業は「魔術師【熱】」。魔法少女アニメシリーズ「マジハ」の大ファンだった時舘は、魔法少女に変身する夢を叶えられたと浮かれるが、初めて放った「ファイヤー」は「杖先端の空気10センチの温度を24℃上昇させる」だけで、あっさり魔物に殺された。その後も戦闘で目立った活躍をすることはほとんどない。しかし、4周目のミッションである「(この世界の)MAPの5%踏破」では、突然の猛吹雪で全員の足が止まる中、朦朧とする意識の中でマジハパープルに励まされる妄想を見て立ち上がり、偶然通りかかった大魔法使いファティナに助けられてクエスト目標を達成。パーティーの窮状を救った。ややひねくれた性格ではあるが、いかなる時も2次元を糧に異世界を生き延びるたくましいオタクである。
五人目のプレイヤー。腕っぷしに自信アリの中卒の19歳で、現実世界では父親が長く刑務所に収監されているため、母親と弟の三人で暮らしている。生活苦で闇金の借金が膨れ上がり、麻薬の売人の殺害計画に加担させられそうになるが、ゲームマスターの指令を受けた四谷がその現場に乱入して阻止。借金取りは逮捕され、結果的に借金も帳消しになった。そんな過酷な生い立ちだが、本人はいたって陽気な楽天家。誰とでもすぐに打ち解けられる裏表のない性格で、6周目で四谷が麻薬「虹の階段」をばらまく最大カルテルのゲレーロハグァ幹部と一触即発の状態になった時も、その性格で場を和ませて彼らの心をつかみ、カルテル潜入を成功させている。
もともとの身体能力が高い上に、最初の職業としてステータスが大幅アップする「戦士【槍】」を引き当て、初参戦した5周目からパーティー最強クラスの実力を誇っていた。コミュ力と状況適応能力にも優れているが、根が単純で、何も考えずに行動することが多いため、パーティーでは四谷やグレンダの立案した作戦に沿って行動することが多い。だが、決して頭が悪いわけではなく、カルテル麻薬戦争の裏で暗躍していた竜術士エピファニオを逃げ場のない地下室に追い込み、爆薬の樽を爆発させて重傷を負わせている。
6周目から参戦したアメリカ国籍の女性プレイヤー。レズビアンで、反戦活動と自主映画の撮影をしながら世界各地を旅している。グレンダの父はイラク戦争の陸軍兵士だったがPTSDを発症して帰国。彼女に兵士やイラクに住む人々の死体写真を見せつけ、「俺に感謝しろ」と強要するようになった。そのトラウマから異世界でも死体を見るのは苦手。ハリガネワームが寄生した人間を傷つけられずに悩む箱崎に対しても、それが正しい感覚だと語り、世の中には数多くのやるべきことがあるのだから不得意なことを無理にやる必要はないと諭している。パーティー内で最も見識が広く冷静沈着。頭の回転も速いため、それまで四谷に一手に委ねられていたミッション攻略の方針を立て、共に牽引するようになる。
職業は「戦士【斧】」で、自らの力で敵の包囲網を突破できるだけの力を持ちながら、できるだけ犠牲を出さず、戦術的な勝利を目指す軍師タイプ。初参戦の6周目に、麻薬産出国イハル・ネモアの麻薬カルテルと全面対決になった時は、山の地形を生かして2倍の戦力差という劣勢を覆し、国の自警団を勝利に導いた。さらに麻薬の原材料であるレイハーブ売買の国営化を政府に提言。イハル・ネモアの社会構造に根深く食い込んだ麻薬カルテルを、法改正によって撲滅する作戦を推進した。
七人目のプレイヤー。現実世界では1日15時間労働を課してくるブラック企業に務めるシステムエンジニアだった。過酷な労働で追い詰められ、会社への復讐として自殺しかけたところを四谷に救われた。その後、四谷がオフィスに殴り込みをかけて、パソコン機材一式を徹底的に破壊したために会社は倒産。二繁羽樹はつかの間の解放感を味わうが、職も決まらず所持金ほぼ0円になったところで異世界に飛ばされた。冷笑的な指示待ち人間で、初参戦した7周目の序盤ではパーティー内でやや浮いている。ただ、就職後は女性との接点も皆無だったため、アニメの話で盛り上がった時舘には速攻で惚れた。
最初の職業では「魔術師【風】」を当てて喜ぶものの、低レベルの魔法では微風しか起こせないことに気づいて落胆。そもそも、現実世界に夢も希望もない二繁は異世界でも生に対する欲望が薄く、ゲームマスターから課されるミッションに対してもやる気がなかった。だが、そんな彼が社畜生活で身につけた習慣が思わぬ成果を上げることも。7周目で山の魔物討伐に出かけた勇者一行が、高山病で倒れてリタイアした二繁を残して全滅した時は、「仕事を引き継いで次の指示を仰ぐこと」を刷り込まれていた彼が、必死に駆け出してそれを生き返った四谷たちに報告。そのことがパーティーを救い、ミッションの攻略につながった。