地球に降り立ったタコピーは空腹で倒れそうになっていたところを、小学生の少女・しずかちゃんに救われる。もともとタコピーという名前ではなかったが、タコに似ているからという理由で彼女から“タコピー”と命名され、それ以来タコピーと名乗る。そして、彼女が放つ魔性の魅力に惹かれたタコピーは、一飯の恩を返すという理由で彼女と行動を共にするようになる。タコピーはしずかちゃんに、空を自由に飛べる、時間を元に戻せる……といったハッピー道具を見せるものの、いまいち彼女の反応は薄い。その背景には、複雑な家庭環境で育ち、学校では親が原因で酷いいじめに遭っているというつらい出来事がある。そんな重い事情を理解できないタコピーは彼女に対して、無邪気にハッピー道具を披露し続けるが、ある日彼女の家に行った際に飼い犬・チャッピーの存在を知る。絶望的な状況下にいる彼女にとって唯一の希望であるチャッピー。チャッピーに対して今まで見せたこともないような笑顔を見せる彼女を見て、もっと彼女を笑わせたいとあらためて心に誓うタコピーだったが、その願いは次の日に脆くも崩れ去る。翌日、いつものように公園で待っていたタコピーのもとに、全身傷だらけで、手にはチャッピーの首輪を持ち、まるで死んだように絶望的な表情をしたしずかちゃんが現れる。読者からすると、同級生たちから暴力を振るわれ、何らかの理由でチャッピーがいなくなってしまったのだろうと推測できるが、何も理解できないタコピーはまたもや無邪気にハッピー道具を使って彼女を励まそうとする。そのハッピー道具とは「仲直りリボン」。このリボンをケンカしてしまった相手の小指と繋げば、すぐに仲直りができるという平和的な道具だが“無限に伸ばすことができる”と聞いたしずかちゃんは、初めてハッピー道具を貸してほしいとタコピーにお願いする。そして、本来ハッピー道具は異星人の手に委ねてはいけないという掟があるにもかかわらず、彼女に好意を持っているタコピーはそのまま貸してしまう。その結果、彼女は「仲直りリボン」を使って首をくくり、自ら命を絶つという衝撃的な行動に出る。ハッピー道具の掟を破り、挙句の果てには地球人を死へと導いてしまう……。タイトルにもあるタコピーの「原罪」の始まりであり、読者を震撼させた印象的なシーンだ。
「仲直りリボン」を使って自ら命を絶ったしずかちゃんだったが、その後タコピーは「ハッピーカメラ」を活用して、彼女の時間を巻き戻すことに成功する。彼女が自殺をしてしまった原因を知りたい一心で、自分も学校に連れて行ってほしいと提案したタコピーはその日から彼女と一緒にこっそり登校するようになる。そこで待ち受けていたのは同級生のまりなちゃんによる過酷ないじめだった。しずかちゃんの母親と自身の父親が不倫関係にあることで家庭が崩壊してしまったまりなちゃんは、彼女に対して、尋常ではない憎しみを抱いている。だが、まりなちゃんがしずかちゃんをいじめる理由は好きの裏返しだと勘違いしたタコピーは、ある日ハッピー道具「変身パレット」を使ってしずかちゃんに成りすまし、まりなちゃんとの仲直りを試みる。いつもの無邪気なテンションでまりなちゃんと会話をするタコピーだったが、そんなタコピーが扮するしずかちゃんを見て、まりなちゃんは顔色を変えずに暴力を振るう。今まで見たこともないような地球人の冷徹な表情、そして暴力から感じる激しいほどの憎悪に恐怖を感じるタコピー。諦めずに会話を続けるものの、まりなちゃんから振り下ろされる凶器を前にして、とうとう「無理だ」と心の中で呟く。いつもは無邪気で嫌になるほど前向きなタコピーが、初めて地球人の憎悪にあてられて絶望するシーンは、読者も思わず戦々恐々としてしまう。
その後、口論になったしずかちゃんとまりなちゃんの仲裁に入ろうとしたタコピーは、誤って「ハッピーカメラ」でまりなちゃんを撲殺してしまう。その一連の様子を見ていたのは、2人の同級生である東くん(あずまくん)だった。メガネをかけて真面目そうな雰囲気を醸し出す彼は、どこかしずかちゃんに好意を寄せているようで、今回も彼女が気になって後をつけたところ、タコピーの犯行現場を目撃してしまう。まりなちゃんが死んだことに対して、今まで見せたこともないような笑顔を浮かべるしずかちゃんと呆然とするタコピー。自首するべきだと冷静にアドバイスをする東くんだったが、捕まりたくないしずかちゃんは、東くんにどうすれば隠蔽できるのかと、淡々と質問をし始める。東くんが親から見放されているコンプレックスを抱えていることを知らずに、「東くんしかいないの 助けて」と切ない表情を浮かべながら懇願するしずかちゃん。こうして、ひそかに好意を寄せている女子から自分が最も欲しかった言葉をかけられた東くんは、しずかちゃんやタコピーと一緒にまりなちゃんの死体隠蔽に手を貸すこととなる。しずかちゃんが秘める魔性な一面、そして新たな罪が生まれるこのシーンは誰もが心の中で悲鳴をあげることだろう。