大正時代に華族の男爵の娘として何不自由なく育った主人公が、相思相愛だった恋人との仲を引き裂かれ、成金上がり男の元に嫁ぐことになる大正ロマン。成金資産家である貿易商・荘田勝平(しょうだかっぺい)の園遊会に招かれた唐沢瑠璃子と恋人の杉野直也だったが、直也が園遊会を悪しき浪費と非難したことで荘田の怒りを買ってしまう。荘田は自分を侮辱した直也を屈服させるため、瑠璃子を金の力で自分のモノにしようと画策する。菊池寛による同名小説が原作。2002年テレビドラマ化。
大正時代半ば、世間には第一次世界大戦による好景気で「成金」と呼ばれる資産家が次々と生まれていた。唐沢家当主の光徳は、華族の男爵とは名ばかりで多額の負債を抱えていた。ある時、直也の父親である杉野子爵が唐沢家に挨拶にやってくる。直也との結婚についての報告に来たのだと心躍らせていた瑠璃子だったが、杉野が縁談として持ってきたのは直也ではなく、50歳に手が届く荘田勝平だった。光徳は金で寝返った杉野の裏切りに激怒する。「純粋さ」、「純潔」の象徴であり6月の誕生石である「真珠」。これは真珠のごとき純粋な心を持っている瑠璃子が、時代と運命に翻弄され、貞操観念を捨てて男を惑わす妖艶な女性へと変わっていく、美しくも哀しい物語である。
家庭をなおざりにしていた父親に反抗したお嬢様育ちの主人公が、母親が亡くなったことがきっかけで家を出て自立を目指すも、次々と問題に巻き込まれてしまう青春ラブストーリー。女子高校生の草薙翠(すい)は、浮気により母を裏切った父を見返すために置手紙をして家出する。友人で売れっ子アイドルの大友早樹子(さきこ)の部屋を借りる予定だったが、急遽早樹子の予定が変わり、翠は宿泊先をなくしてしまう。
「一生をかけた愛に裏切られても、自分の手だけで夢をつかめる」、そんな力が欲しいという思いで家出した翠に、早樹子は「翠のようなお嬢様育ちの子に自立は無理だ」と諭す。早樹子の忠告に耳を貸さない翠は自暴自棄になり、酔って公園の噴水池の縁で寝ていた青年を噴水池に突き落としてしまう。そこに翠を探していた父親の部下たちが現れ、翠は捕まえられそうになる。ピンチに陥った翠の前に、先ほど噴水に突き落とされた青年が「嫌がっているだろう」と止めに入る。翠は咄嗟に部下たちに、その青年が自分の結婚する相手だと言い放つ。実は、置手紙に「彼氏と結婚する」と書いていたのだった。ある偶然から貝の体内に宿り、少しずつ育っていく天然真珠のように、ピュアな心を持った翠が日々成長していくストーリーが描かれている。
故郷の島を追われた主人公がお遍路(巡礼者)に化けて四国の山奥を逃げ回っているところを、とある家族に助けられてからの日々などを描いたヒューマンドラマ系ハートフルオムニバス漫画。時は明治16年、「盗っ人が!」と追ってくる老人から一人の少女が逃げていた。少女は空腹に堪えかねて、老人の蔵から芋を盗んだのだった。老人から石を投げらつけれている少女の名は、みつ。その時、少女が故郷から出て半年以上が経っていた。
「島を追い出されてもう半年以上経った。よくここまで生き延びられたもんじゃ」硬くて土の味がする生の芋を齧りながらみつは思った。そして、盗っ人呼ばわりされたことが、彼女の心に相当な傷を与えていた。やがて空腹と疲れでみつは意識を失ったが、そこにまさ兄と呼ばれる青年と妹が通りかかり、彼女を助ける。みつが目を覚ますと、そこには青年と彼の家族たちの姿があった。タイトルに「真珠」とあるが、最初の巻ではまだ真珠に関するくだりは出てこない。「優しい気持ちになれる作品で心癒される」、「絵がキレイで人の温かみや生きることの大変さが感じられるストーリー」と、ネット上での評価は高く、みつのこれからを見守りたくなる作品だ。
筋金入りの箱入り息子で、女性の扱いが全く分からない主人公に贈られた理想の女の子にはとんでもない秘密があったというギャグコメディ。ローベル男爵の一人息子であるエドワード・ローベルは、女の子が大の苦手。初めて行ったダンスパーティでは下手な踊りを笑われ、女の子の足を踏みつけてしまいビンタされ、泣きながら帰る始末である。ローベル家の行く末を案じた使用人たちは、エドワードのために彼の理想とする「ケーキみたいな女の子」を準備する。
エドワードに贈られた女の子は、愛らしいドレスに身を包み、宝石で飾られ、甘い香りのする、正に「ケーキみたいな女の子」だった。エドワードは使用人のアーサーから「坊ちゃんが女性に慣れるためだけに用意された娘なので、お好きなように恋愛シミュレーションしてください」と言われたものの、目を覚ました彼女は言葉すら話せない、マナーも何も分かっていない女の子だった。エドワードは彼女にパールがよく似合っていることから「真珠」と名付ける。彼女がどこから来たのか不思議がるエドワードに、アーサーは「彼女は元々娼館に売られる予定の娘だった」と告げる。ショックを受けたエドワードは真珠のように無垢な彼女を「僕が守る」と決意するのだった。
独身でバツイチの銅版画家の主人公と、彼女の前に現れた17歳年下の青年との恋愛を描いた同名小説のコミカライズ作品。45歳の内田咲世子(さよこ)は銅版画家だ。父親が遺してくれた逗子の別荘で、愛犬パウルと気ままな一人暮らしを楽しんでいる。知り合いは「庭園住宅なんてリタイアした人が住むところ。東京においで」と誘ってくれるが、咲世子は海が近くて、ひとり言も許してくれそうなこの地が気に入っていた。2017年テレビドラマ化。
咲世子の今の仕事は新聞に連載されている小説の挿し絵である。作家が遅筆なため、夜中に原稿が送られてくることも多い。実際に作業に取り掛かるのは明日だが、アイデアだけは原稿を受け取ったその晩の内に出さねばならない。咲世子がアイデアを練る場所は行きつけのカフェ。いつもの席に着くと、ロイヤルミルクティーのダブルを運んできてくれたのは新人ウエイターの徳永素樹(もとき)だった。咲世子はカップを置く彼の指先に好感を抱く。素樹の指先に触発されてイメージを湧かせた咲世子だったが、突然倒れてしまう。冒頭にいわく、女は2種類に分かれる。光を外側に放つダイヤモンドタイプの女と内側に秘める真珠タイプの女。タイトルがなぜ「眠れぬ真珠」となったのか。咲世子の気持ちになって読み解いて欲しい。