虹と真珠たちへ

虹と真珠たちへ

女子高校生の草薙翠は、母親が最期を迎えるその時まで一切家庭を顧みなかった父親に反発するため、自立を決意する。お嬢様育ちの翠が公園で出会った有吉日出海、そしてまるで運命の相手と惹かれ合うかのように出会った桃井風生ら三人の、複雑に絡み合う関係を描いた青春ラブストーリー。「マーガレット」で1988年から連載された作品。

正式名称
虹と真珠たちへ
ふりがな
にじとしんじゅたちへ
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あらすじ

第1巻

草薙翠は、家庭を顧みない草薙翠の父に愛想を尽かし、母親を亡くしたことを機に、書き置きを残して家を出て行く決意をする。だが、友達の大友早樹子にアパートを紹介してもらう予定だったものの、あてが外れてしまい、行くところがなくなって途方に暮れていた。藁をもつかむ思いで、知り合いの有吉日出海が住む寮を訪ねてみたものの、そこでは日出海と女の子のラブシーンを目撃してしまう。万策尽き、ぼんやりと夜の公園をさまよっていた翠は、噴水の前で眠り込んでいた男を、水の中へと突き飛ばして逃走。そこを、父親の部下に見つかり、無理やり家へと連れ戻されそうになる。そんな翠を助けてくれたのは、さっき突き飛ばした桃井風生だった。奇妙な出会いとなったものの、風生のことを少しずつ知っていくうちに、翠の中で彼はかけがえのない存在へと変わっていく。風生もまた、世間知らずでウブな翠にどんどん惹かれていった。しかし風生は、翠が親友である日出海の想い人であるのも知っており、苦悩するようになる。

第2巻

桃井風生とずっといっしょにいたいと思っていた草薙翠は、二人で暮らそうと提案する。風生は即答を避けたが、翠のそばにいたいという気持ちに偽りはなかった。そんな中、風生が所属するサッカー部の応援に行った翠は、風生と親しげに話す絹川麻里子と出会う。そして麻里子は、サッカー部の部員達に、翠を有吉日出海の彼女として紹介する。そこで微妙な反応を返す翠の姿にその本心を知り、麻里子は日出海が報われない想いを抱いていることに胸を痛めるのだった。翠、風生、日出海、麻里子の想いが複雑に交錯する中、日出海が出した結論は、サッカー部を退部することだった。そして、翠に別れを告げる手紙を出した日出海は、翠と風生の前から姿を消す。日出海の行き先を突き止めた翠は、彼と向き合うために八ヶ岳へと向かう。

第3巻

有吉日出海から自分への気持ちを告げられた草薙翠は、それを受け入れられないまま八ヶ岳から帰還。自分の桃井風生への想いが日出海を深く傷つけたのだ、と思い込んで罪悪感に苛まれた翠は、風生から離れるために家を出る。しかし麻里子から中途半端な態度を激しく非難され、結局は風生のもとへと戻るのだった。一方、八ヶ岳から翠のもとへとやって来た小泉蒼子は、翠と風生と共に三人の共同生活を始めるようになる。そんな折、翠のもとに映画のオーディションの話が舞い込んできた。大友早樹子に反対されながらも、翠は風生の後押しを受けてオーディションに向かう。そのオーディションには、敏腕プロデューサーの朝田が仕組んだ仕掛けが隠されていた。主演俳優の台詞には、翠自身しか知らないはずの、草薙翠の父と母親の過去にまつわるエピソードが盛り込まれていたのである。こうして翠は、思いがけず謎のベールに包まれていた両親の過去と向き合うこととなる。

第4巻

かつて美術学校で共に学んだ草薙翠の父朝田は、数十年ぶりに再会を果たした。今頃になってお互いの本心をさらけ出した二人だったが、草薙翠の父が心から愛していたのは、妻ただ一人だった。その頃、草薙翠桃井風生と心も体も初めて結ばれ、揺るぎない気持ちを確認し合う。映画の出演作に意気込みを見せるようになった翠は、積極的に役作りに取り組むようになっていった。だが、そんな翠を目の当たりにした朝田が出した結論は、翠を主演女優から降板させること。翠は朝田の本心を知ろうと、過去のことを父親に確認するために、風生のもとを再び離れて家へと戻る。そこで父親から母親への想いを知らされた翠は、やはり風生と二人で生きていく道を選び、自身が通う学校で結婚式を挙げる。

第5巻

サッカー部の合宿で桃井風生が不在のあいだ、草薙翠はかつての命の恩人である東雲端午と再会していた。端午を覚えていなかった翠は、端午が自分に向けた真っすぐな想いを知るが、戸惑うことしかできなかった。そして自分でも気づかないうちに風生に惹かれ始めていた蒼子は、ひょんなことから自殺未遂を疑われてしまっていた。苦しい胸の内を風生に打ち明けたものの、風生の心の中には翠しかいないと思い知らされてしまう。蒼子が風生に惹かれているのを知った翠は、離れていてもお互いを信じ合おうと、蒼子のことは風生に任せる決意をする。そして、足にケガを負っている端午に頼まれ、しばらくリハビリに付き合う。ある日、翠達が住むアパートが端午の兄、当麻冬季によって取り壊されると知り、自ら掛け合いに行こうと決意する。

第6巻

桃井風生は、草薙翠の知らないところで単身、ブラジルへサッカー留学すると決意していた。突然、留学したいと風生から知らされた翠は、ショックのあまり家を飛び出し、当麻冬季のもとを訪れる。実は翠も北欧の美術学校へ留学したいという思いを持っていたが、ずっと風生には言えなかったのだった。冬季からそれを聞かされた風生は、夢も語り合えない仲なら別れた方がいい、という結論に至る。お互いの夢に向かって別々の道を選んだ翠と風生。翠は見送りに来るはずがない風生を空港で待ち、風生は飛び立っていった翠に想いを馳せるが、あとに残ったのはなぜか後悔だけ。しかし、空港でうなだれる風生の姿を見つけたのは翠だった。

登場人物・キャラクター

草薙 翠

聖朋女子学園の高等部に通う1年生の女子。草薙建設の社長令嬢として何不自由なく育てられたが、最近、最愛の母親を病気で亡くした。家族とのすれ違いにより、家庭を顧みなかった草薙翠の父とは非常に折り合いが悪く、精一杯の反発を見せつけるために、いるはずのない彼氏と結婚すると宣言して家出を決行。友達で大人気アイドルの大友早樹子のつてを頼って、何とか一人で生活を始める。 細くて華奢な美しい指を持っており、早樹子の吹き替えハンドモデルを密かに務めている。世間知らずで向こう見ずな性格だが、自分なりの生き方を見つけようと、必死にもがき続ける。有吉日出海とは母親との散歩中に出会い、会話をするうち、いつの間にか仲よくなっていった。日出海の気持ちに漠然と気づいていながらも、父親の部下に追われているところを助けてくれた桃井風生に、だんだん惹かれていく。

桃井 風生 (ももい かぜお)

花の谷集英高校に通う2年生の男子。サッカー部に所属している。面倒見のいい性格で、部ではキャプテンを務めている。複雑な家庭環境で育っており、現在は親元を離れて学生寮で生活中。噴水の前で寝ていたところを突然、草薙翠に突き飛ばされるが、その後、怪しい男達に追われていた翠を咄嗟に助けた。のちにチームメイトで親友である有吉日出海の片想いの相手が翠であると知るが、自分でもどうしようもないくらい翠に惹かれていってしまう。 日出海とは子供の頃からの付き合いで、お互いに何でも話し合ってきたが、翠への想いだけは、なかなか打ち明けられない。

有吉 日出海 (ありよし ひでみ)

花の谷集英高校に通う2年生の男子。サッカー部に所属し、副キャプテンを務めている。学生寮で生活しており、親友の桃井風生とは子供の頃からの付き合いで、お互いに何でも話し合える仲である。校内では有名な女たらしで、つねに女子との噂が絶えないプレイボーイだった。ところが、公園で偶然出会って本気で好きになった草薙翠に対しては、人が変わったかのように、まったく手が出せずにいる。 ある日、翠の風生への気持ちを知って、心が打ち砕かれてしまう。

大友 早樹子 (おおとも さきこ)

草薙翠の友達で、今をときめく大人気アイドルの女性。非公開情報だが、実は17歳という若さで結婚しており、もうすぐ1歳になる娘がいる。翠の華奢な手を気に入っており、自身のグラビアやCMの撮影などでは、すべて翠に手を吹き替えてもらっている。10代ですでに仕事と育児を両立しているためか、とてもしっかりした性格で、いつも翠のことを気にかけており、彼女が困った時には手助けを惜しまない。

絹川 麻里子 (きぬかわ まりこ)

聖朋女子学園の高等部に通う女子。美人で落ち着いているように見えるが、内面は激しい感情の持ち主で、自分の想いを全力で相手にぶつけようとするところがある。桃井風生とは幼なじみ同士で、かつては風生に想いを寄せていたが、現在は有吉日出海にずっと片想いをしている。自分の方をなかなか向いてくれない日出海の気を引くために、あれこれと無謀な行動に出てしまい、結果的に風生も巻き込んでしまうことが多い。 両親が喫茶店を営んでおり、手が空いた時は手伝っている。

小泉 蒼子 (こいずみ そうこ)

草薙家が八ヶ岳に所有する別荘の管理人の娘。高校1年生。草薙翠とは子供の頃から親しくしており、翠を子分のように扱ってきた。人前で翠をわざと大声で呼んだり、無免許で自動車を運転したりと、破天荒な性格をしている。翠と一緒に暮らすため、八ヶ岳から翠のもとへとやって来る。桃井風生が翠の恋人であると知りながら、いつしか彼に惹かれていくが、決して想いを打ち明けようとはしない。

草薙翠の父 (くさなぎすいのちち)

草薙建設の社長を務める男性。草薙翠の父親。仕事が忙しく、家庭をほとんど顧みなかったたため、翠から強い不信感を抱かれている。病気がちだった妻とは、若い頃に大恋愛の末に結ばれた。しかし、「ほかに好きな人がいる」と誤解されたまま彼女を病気で失っており、これが翠との関係をこじらせる大きな原因となった。翠には手を焼いているが、あまり干渉はしないようにしている。 本当は家族想いの優しい性格なのだが、すれ違いが原因で長年のあいだ、家庭不和のままである。かつて画家を目指していた頃があり、朝田とも親しくしていた。

朝田 (あさだ)

映画配給会社「集映」でプロデューサーを務める女性。新人を何人も発掘しては、スターへと押し上げて来た凄腕。さっぱりした性格で、作品作りのためならどんな犠牲もいとわない情熱家でもある。カメラマンがたまたま撮影した写真に写っていた草薙翠に目を付け、自身が手掛ける映画のヒロインに抜擢しようと、オーディションの話を持ち掛けた。 実は桃井風生の母親だが、風生がまだ幼いうちに、朝田自身は仕事に生きる決意をしており、家族とは長年会っていない。かつて美術を学んでいたことがあり、密かに若い頃の草薙翠の父に想いを寄せていた。

花摘 京子 (かつみ きょうこ)

大友早樹子と同じ事務所所属で、早樹子の後輩にあたる少女。デビューしたばかりの新人で、まだ芸能界の右も左も分かっていない。草薙翠と共に、朝田が製作を手掛ける映画のオーディションを受ける。非常に気が強く、初対面の相手にも物怖じせずに、何でもはっきりと意見を言ってしまうところがある。

東雲 端午 (しののめ たんご)

半蔵門高校に通う男子。子供の頃に草薙翠の命を助けたことがあり、それ以来ずっと翠が忘れられずにいたが、肝心の翠には自分のことを忘れられてしまっていた。翠に強く惹かれており、翠の恋人である桃井風生に対しては色々と嫉妬しているが、翠の恋自体は応援したいと思っている。同じ学校の女子から慕われているが、東雲端午自身はあまり気にしていない。

当麻 冬季 (たいま ふゆき)

レストランやブティックをいくつも経営する、やり手の青年実業家。名字は違うが、東雲端午の兄である。学生の頃は絵を描くことが好きで、画家になりたいと思っていたが、火事に遭ったことをきっかけに、絵を描く熱意を失ってしまった。端午が翠の命を救った時に草薙家へ招かれ、その頃から翠に惹かれていた。数年後、翠と再会して自分の想いを吐露してからは、翠を応援したいと思うようになり、少しずつ自分の夢も取り戻して行く。

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