少年少女のサバイバル漫画53 Pt.

大災害、異世界転移、あるいは残酷な事態が発生した世界。大人が守ってくれない環境で、子どもたちが生き延びるため必死で奔走する漫画を集めた。命の大切さや、平穏な社会のありがたみが感じられる作品群だ。

ひとつの学校が、まるごと異界へ行ってしまう…という展開の、元祖となったのが本作だ。大人たちは狂気に支配されほとんどが命を落とし、未来人類や、巨大なサソリのような「怪虫」の襲撃によって、子どもたちも数を減らす。挙げ句の果てに、飢餓や疫病、不安から来る絶望から、子どもたちは醜い争いを繰り広げていく。凄惨極まりないグロテスクなシーンが続くが、そんな中でも希望を見失わずに生きようとする翔と、はるかな過去から翔たちに救援の手を差し伸べ続ける、翔の母親との絆が描かれる。2人の絆は、暗さに支配された本作のなかで、ひときわ輝く。ホラー漫画としての完成度もさることながら、そういった中でも絶望に屈しない、”希望”を描いた作品でもある。

主人公・エマたちの、一見すると幸せそうな孤児院での生活シーンから、第1話は始まる。だがその後、一転して描かれるのは、子どもたちの異様な学習風景や、食用として命を奪われたシーンである。孤児院・グレイス＝フィールドハウス。そこは、人間と対立する種族である「鬼」が、食用の人間を飼育するために作ったとされる施設だったのだ。エマたちは11歳と幼く、当然ながら力では「鬼」にも「大人」にも勝つことはできない。だが3人は、大人顔負けの心理戦でピンチを切り抜け、生き延びていく。なぜ孤児院のような施設があるのか、孤児院の外の世界はどのようになっているのか。多数の伏線が張られた本作。世界の謎が解き明かされていく展開に注目しよう。

本作の登場人物は、それぞれ個性的な「アリス」と呼ばれる能力を持っている。蜜柑は「無効化」、そのパートナーであり、蜜柑の恋の相手にもなる日向棗は「火」など、そのアリスの能力自体にも細かな区分がある。なかでも棗の能力は、使いすぎると自らの命が危険にさらされるものだ。蜜柑の「めげへん」「くじけへん」という明るい性格は、棗にとって大きな救いとなり、棗は次第に蜜柑やその友人に心を開いていくようになる。能力者同士のバトルシーンが描かれる一方で、蜜柑と棗、ふたりの恋の行方も気になる一作。コメディ要素が多めの作品ではあるものの、異能力・ファンタジーものとしての要素はしっかり押さえられている。

全編に渡り、圧倒的な狂気と恐怖に満ちている本作。外界から遮断された、トンネルという閉鎖空間での人間の心理が描かれている。絶望的な状況のなか、偶然にも生き残った3人。その一人であるノブオは、狂気に染まり、顔面に化粧を施し、自らを神格化するなどの異常行動を行うようになる。テルとアコはなんとか外界への脱出に成功するが、そこに広がっていたのは、とうてい日本とは思えない光景だった。極限状態に置かれた少年たちの恐怖の表情が強く印象に残る。