暁のARIA

暁のARIA

時は大正時代。ピアニストを目指す少女が、東京音楽学校の予科の入学試験を受けた。天才的な腕前を持つ少女の周囲には良くも悪くも人が集まってくる。時代の波に流されながらも、懸命に音楽の道を志す少女の物語。「flowers」2006年6月号から2012年3月号にかけて掲載された作品。

正式名称
暁のARIA
ふりがな
あかつきのありあ
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
関連商品
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概要・あらすじ

ピアニストを目指す海原ありあは、東京音楽学校の予科の入学試験を受けることになる。その試験で、一番上手いと噂される西御門亜耶子を退けて、ありあは周囲の注目を浴びる。そんなありあの前に、亜耶子の兄を名乗る西御門夏王が現れる。彼に好感を抱くありあだったが、夏王は彼女の異母兄であることが発覚。ありあはその関係性に思い悩んだ末、気持ちを封じるかのようにピアノ教師の白雪真之介と恋に落ちる。

順調に交際を進めていた2人だったが、真之介の死、そして左腕の故障という悲運が立て続けにありあを襲う。それでも音楽への情熱を失わないありあは声楽科へと転向。そして時を置かず、ありあと夏王の間には、血の繋がりがないことが発覚する。ついに心を通わせ合うありあと夏王だったが、その先にはさらなる受難が待ち受けていた。

登場人物・キャラクター

海原 ありあ (かいばら ありあ)

東京音楽学校のピアノ科に入学した少女。のちに左手の故障によって、声楽科へと転向する。ピアノ科の先生であった白雪真之介と恋に落ちるも、教師と生徒という関係性に胸を痛める。母親の海原みやとの関係はあまり良くない。当初は西御門王介の隠し子で、西御門亜耶子、西御門夏王とは兄妹関係にあるとされていたが、本当の父親はルパート・ジェンナーである。 ピアノが弾けなくなった後はオペラの道へ進み、欧州へと旅立つ。真之介が亡くなった後は、夏王に想いを寄せるようになるが、互いの環境や境遇に阻まれ、想いを伝えた後も会えない日々が続いている。

西御門 夏王 (にしみかど なつお)

西御門夫人と西御門王介の息子。西御門亜耶子の兄。当初は海原ありあとは異母兄妹だとされていたため、血の繋がりがあるありあに対して、道ならぬ恋心を抱き苦しんでいた。しかし、ありあとはまったく血が繋がっていない事実を知ると、その想いを隠そうとしなくなる。ありあをとても大事に思っており、欧州へ渡る彼女に同行するつもりだったが、嫉妬にかられた九条紅子に刺されて重症を負い、1人日本に残ることとなる。

西御門 亜耶子 (にしみかど あやこ)

西御門夫人と西御門王介の娘。西御門夏王の妹で、緑川の婚約者。王介に愛され、かつピアニストとしても優秀な海原ありあに嫉妬し、嫌がらせをしていた。しかし、夏王とありあの関係を知り、また関東大震災で「簡単に人は亡くなる」ことを学んだ後は考えを改め、ありあと親交を深めていく。

海原 みや (かいばら みや)

海原ありあの母親。かつて芸者をしていた頃にルパート・ジェンナーと出会い、恋に落ちた。この時にありあをもうけている。いつか迎えにくるというルパートの言葉を信じて待ち続けていたが、結局彼は帰ってこなかった。現在は、彼女とルパートの関係を知っている西御門王介の妾となっており、いろいろな援助を受けている。

西御門 王介 (にしみかど おうすけ)

西御門夏王と西御門亜耶子の父親で、名門である西御門家を背負う立場にある。海原ありあを実の娘のように愛しているが、自分の娘ではないことも知っている。夏王と亜耶子に対しても甘い。時折、妾の海原みやのもとを訪れては援助をしている。

西御門夫人 (にしみかどふじん)

西御門王介の妻で、西御門夏王と西御門亜耶子の母親。海原みやが自分から王介を奪ったと思い込んで恨んでおり、みやの娘であるありあに対しても強く当たる。夏王とありあが付き合い、結婚に至った後は、ありあのことを夏王を奪った娘と吐き捨てる。

西御門 月王 (にしみかど つきお)

西御門夏王のいとこにあたる男性。本家である西御門王介邸によく出入りしている。画家を志しており、関東大震災の後、単身パリへ渡った。優しく繊細な性格で、パリで1人暮らしをしている時に酷く心を病んでしまう。密かに海原ありあに想いを寄せていたが、夏王のありあに対する気持ちを知っていたこともあり、言い出せずにいた。

白雪 真之介 (しらゆき しんのすけ)

東京音楽学校の教師を務める男性。妻がいるが、既婚者であることは隠している。海原ありあのピアノの音色に惚れ、次第にありあ自身のことも好きになっていく。ありあとは真剣に交際し、妻が亡くなった後はともに暮らそうと考えていたが、結核を患ったことから、迷惑をかけまいとありあのもとを離れていく。

桐島 笙子 (きりしま しょうこ)

東京音楽学校の声楽部に所属している女性。海原ありあとも仲が良く、一緒にいることが多い。さばさばした性格で、何かと嫌がらせを受けていたありあを助けてくれた心強い友達。声楽で自分の力を試すため、欧州へと単身旅立つ。のちにありあと欧州で再会する。

小松 早苗 (こまつ さなえ)

東京音楽学校の寮で海原ありあルームメイトの女性。おさげで地味な印象のある少女だが、小説家への夢を持っており、時折西御門月王と自作の作品を見せ合って楽しんでいた。月王のことが好きだったが、月王のありあに対する気持ちを知っていたこともあり、自身の想いは伝えずにいた。

北山 キリト (きたやま きりと)

ピアニストの男性。人嫌いで誰の伴奏も引き受けないことで有名だったが、東京音楽学校に所属していた時の海原ありあの声を認め、彼女の伴奏だけは引き受けるようになった。のちにありあとともにパリへ渡ってコンクールに出場し、その後は海外公演を重ねるほどに実力を知られるようになる。密かにフランツに想いを寄せており、ありあにだけはその気持ちを知られている。

ペッツォルト先生 (ぺっつぉるとせんせい)

東京音楽学校でピアノ教師を務めるドイツ人女性。生徒の間では厳しいことで有名だが、有望な生徒には目を掛けて熱心に指導していた。関東大震災の後はドイツに帰らざるを得なくなり、東京音楽学校の生徒たちと涙ながらに別れる。

(ふみ)

海原家で働く心優しい家政婦。海原みやと海原ありあによく尽くしており、関東大震災の時にも、ありあとともに最後までみやを看取った。海原家と西御門家の者以外で、ありあが西御門王介の子供ではないことを知っている唯一の人物。

三浦 環 (みうら たまき)

日本の誇る世界のプリマドンナ。東京音楽学校出身で、夫とともに渡欧してロンドンに渡り、オペラ「蝶々夫人」を堂々と歌い上げた実績を持つ。海原ありあの声を聞いて興味を持ち、ありあを探しに東京音楽学校へ訪れる。実在の人物、三浦環がモデル。

藤原 義江 (ふじわら よしえ)

イタリアから凱旋した男性で、オペラ界の英雄。当初から、海原ありあのピアノの才能を認めていたが、ありあの声楽家としての才能にもいち早く気づき、一緒に歌ったことがある。ありあと会った次の日にアメリカへと旅立つ。実在の人物、藤原義江がモデル。

大道寺 茂臣 (だいどうじ しげおみ)

輸入業を営んでいる男性。海原ありあのお見合い相手。お見合いを断ったありあに対して、「いつか欧州の街角で再会できますよ」と言って、本当にそれを実現させた。事業の拠点は欧州にあり、家も欧州にある。ありあのことが好きだったが、ありあの西御門夏王への気持ちを理解しており、自身のありあへの想いを諦めた。

九条 紅子 (くじょう べにこ)

西御門夏王のお見合い相手の女性。一度は夏王との交際を自分から断っておきながら、その後しつこくつきまとい夏王を困らせている。激情的な一面を持ち、欧州に旅立とうとしていた海原ありあと夏王を船着き場まで追いかけ、ついには嫉妬から夏王を刺すという凶行に及ぶ。

緑川 (みどりかわ)

西御門亜耶子と婚約した男性。優しく実直な性格で、兄である西御門夏王に想いを寄せていた亜耶子を慰め愛した。会社を経営しているが、関東大震災の後に西御門の傘下に入った。のちに亜耶子と結婚し、一人息子をもうける。

安藤 節子 (あんどう せつこ)

東京音楽学校の女性教師。声楽部で海原ありあを担当した。キツいもの言いをすることで知られ、彼女に厳しい言葉を投げつけられて教えを請うことをやめてしまった学生がたくさんいる。安藤節子が出した課題の曲をありあが見事に歌い上げたことで、ありあの才能を認める。

フランツ

日本で教会の牧師をしている男性。明るく朗らかな性格で、子供たちに慕われている。北山キリトは彼の教会でよくピアノを弾いていた。実はキリトの想い人だが、その想いには気づいていない。キリトが海原ありあとともにパリへ旅立った後も、教会に残り牧師をしている。

ルパート・ジェンナー (るぱーとじぇんなー)

海原ありあの実の父親。マーガレット・ジェンナーの父親でもある。舞台演出家で、「MIYA」を手がけた人物。マスコミなどの表舞台に立つ仕事はマーガレットに託しており、舞台演出の仕事以外に手を付けることはほとんどない。

マーガレット・ジェンナー (まーがれっとじぇんなー)

ルパート・ジェンナーの娘。海原ありあとは異母姉妹。母親は既に亡くなっているが、ルパートには日本に待たせている別の女性がいることに気づいており、その子供であるありあとルパートとの接触を阻み続けていた。しかし、ありあの歌により舞台「MIYA」が完成したことを受け、ありあと和解する。

ジャコモ・プッチーニ (じゃこもぷっちーに)

作曲家の男性。海原ありあと西御門月王たちが、ミケランジェロの「ピエタ」を見に行った際に出会った。彼がジャコモ・プッチーニ本人であることに気づかないまま、ありあはプッチーニの前で彼が作った曲「私の名はミミ」を歌い、賞賛を得た。プッチーニは立ち去り際に、いずれありあの歌う「蝶々夫人」を聞きたいと告げた。 実在の人物、ジャコモ・プッチーニがモデル。

メイ・ルーファ (めいるーふぁ)

舞台「MIYA」のプリマドンナに抜擢された女性。気が強く誰にでも強く当たるため、劇場関係者からは嫌われている。当初は海原ありあに対しても当たりが強く、ありあも彼女に対して苦手意識を抱いていた。だが、「MIYA」のプリマドンナの代役として歌ったありあの歌声に感激し、以後はありあと仲を深めていく。

汪 暁展 (おう しゃおつぁん)

馮月旦の跡継ぎの男性。トルコで自動車事故を起こしたものの、一命を取り留め上海に帰ってきた。その正体は、事故で死亡した汪暁展になり替わった西御門夏王である。上海でも指折りの会社を経営しており、のちに映画製作にも乗り出し、映画の歌姫として海原ありあを抜擢する。

莉莉 (りーりー)

汪暁展の婚約者の女性。暁展の優しさを快く思っていたが、徐々に違和感を感じるようになり、友人に彼の調査を依頼。そこで暁展の正体が、暁展と入れ替わった西御門夏王であることを知ってしまう。

(ゆえ)

汪暁展の弟分。莉莉に好意を寄せている。暁展の会社で働いており、暁展のことも慕っている。そのため、莉莉と暁展が婚約した時には自分の気持ちを押し隠して祝福したが、のちに暁展が別人であることが判明した後は、莉莉に想いを告げて彼女と付き合うようになる。

杜 月龍 (どう ゆえろん)

上海のトップ3に数えられる実力者の男性。かつて自身に逆らう者たちを大虐殺したことがあり、誰からも恐れられている。汪暁展のことを気に入っており、彼の会社の業績がいいことにも気を良くしている。映画に出演した海原ありあに目を付けて、彼女を手に入れようと企むが、暁展に阻まれる。

馮 月旦 (ふぉん ゆえたん)

汪暁展の身元保証人を務める壮年男性。頑固な人物で知られていたが、暁展がトルコから無事帰ってきたことを誰より喜んでおり、これをきっかけに自分の今までの態度を反省した。莉莉と暁展の婚約にも喜んでいた。暁展に自分の会社を相続させた後に亡くなる。

梅 蘭麗 (めい れいりー)

京劇の女形で、多国語を理解する聡明で美しい男性。汪暁展を優秀な人物と見込んでおり、映画制作の際にも力を貸す。映画のキャスティングにおいて海原ありあのことを推薦し、暁展とありあを引き合わせることにも一役買う。

ジェームズ・セロン (じぇーむずせろん)

新聞記者の男性。舞台「MIYA」を見て、世間に「MIYA」と海原ありあの素晴らしさを伝えた。ありあと、実の父親であるルパート・ジェンナーの再会について、「まるでマダムバタフライの子供で、生まれながらにしてのオペラだ!」と絶賛する。

エリザベス・スミス (えりざべすすみす)

女性マネージャー。マーガレット・ジェンナーが海原ありあに紹介した。第二次世界大戦でありあと引き離されるまで、ありあに尽くし続けた。仕事中心で利益や損得ばかり気にするところがあるが、それもありあを思ってのことであった。

西御門 蘭夏 (にしみかど らな)

西御門夏王と海原ありあの娘。見た目はどちらかというと夏王に似ているが、天真爛漫な性格で歌が大好きなところはありあに似ている。誘拐されてもその場でどうやったらありあに見つけてもらえるかを考えるなど、幼いながら機転に優れている。のちに、ありあのような歌手への道を歩む。

場所

東京音楽学校 (とうきょうおんがくがっこう)

海原ありあが受験し、合格した音楽学校。本科と予科があり、予科を終えないと本科に入ることはできない。西御門亜耶子や桐島笙子がありあとともに通っていた学校で、白雪真之介やペッツォルト先生が教鞭を執る。

イベント・出来事

土曜演奏会 (どようえんそうかい)

東京音楽学校で開かれる演奏会の1つ。才能ある本科の学生から出演者が選ばれることが多いが、海原ありあが入学した年は桐島笙子とともに予科のありあが選ばれた。この例外的なありあの出演には、白雪真之介をはじめとする先生たちからの推薦があった。

定期演奏会 (ていきえんそうかい)

東京音楽学校の定期演奏会。音楽界の最先端であり、当時日本のどこよりも先駆けて交響曲やオペラを上演していた。東京音楽学校に所属している者にとってはこの舞台に出ることは晴れ舞台であり、優秀であることの証となっている。

その他キーワード

MIYA (みや)

当初オーディションで選ばれたメイ・ルーファをプリマドンナに据えていたが、海原ありあが代役で歌った舞台があまりにもぴったりだったため、ありあがプリマドンナを務めることとなった。タイトルの「MIYA」はありあの母親である海原みやの名前から付けられている。

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