思春期の性をテーマにした青春ドラマ
内気な眼鏡男子・亀川洋平、ミステリアスな美少年・室田慧、清楚な美少女・三谷結衣の三人が微妙なバランスの三角関係になる青春群青劇。小学生時代までの三人は性別を強く意識することなく、楽しい時間を過ごしていた。しかし、中学生になると異性を意識し始め、関係は少しずつ変化し、慧の転校をきっかけに三人は疎遠になってしまう。そんなある日、高校生になった洋平と結衣の前に、慧は女装した姿で現れる。思春期における葛藤や矛盾、性への衝動を巧みに描写した先鋭的な作品となっている。
男を降りた幼なじみとの再会
高校生になった亀川洋平は、幼なじみの三谷結衣と同じクラスになった。美しく成長した結衣に淡い恋心を寄せる洋平の前に、かつて突然転校してしまった室田慧が現れる。そして慧は、「男は降りた」と公言し、美しい女装姿で学校生活を送るだけでなく、学校や自宅など、場所や時間を問わず洋平を誘惑する。一方の洋平は結衣が好きなのに、男であると同時に友達でもある慧に心を惹かれるのはおかしいと自問自答しながらも、慧の魅力に抗えない。そんな、常識と欲望のあいだで揺れ動く洋平の感情が本作の根幹となっている。
怒りと対抗心で壊れていく美少女
三谷結衣は清楚な雰囲気を漂わせた美少女で、クラスでも人気が高いマドンナ的存在。中学時代に室田慧に告白して初めてのキスを経験した。そのため、「男を降りた」と公言し、女装して亀川洋平を誘惑する慧を受け入れられないでいた。結衣は行き場のない怒りと戸惑い、そして慧への対抗心を燃やすようになり、自分に好意を持ち、慧が手に入れたがっている洋平と交際を開始。当初は天使のようにかわいらしかった結衣が、物語が進むうちに性的なアプローチや嫌がらせをするなど、悪魔のような存在へと変貌していく。
登場人物・キャラクター
亀川 洋平 (かめかわ ようへい)
池寺高等学校に通う1年生の男子。内気な性格で、自己肯定感が非常に低い。黒髪のショートヘアで、眼鏡をかけている。室井慧、三谷結衣とは幼稚園の頃からの幼なじみ。中学1年生の時に思いを寄せていた結衣が、慧に告白してキスをする場面を目撃して以来、慧とはぎこちない関係が続いていたが、彼が突然北海道に転校してしまう。高校進学を機に結衣と付き合うことを目標に掲げるが、東京に戻って来た慧が女性の姿になっていることに戸惑いを覚えると共に、何かと翻弄されるようになる。結衣と性的関係を持つことにあこがれを抱いているが、慧の主導で自慰行為やファーストキスは体験済み。
室田 慧 (むろた けい)
池寺高等学校に通う1年生の男子。亀川洋平、三谷結衣とは幼稚園の頃からの幼なじみだが、突然中学1年生の時に両親の仕事の都合で北海道に引っ越した。その後、高校進学を機に東京に戻って来て一人暮らしを始める。入学式の日に肉体は男性ながら「男はもう降りた」と宣言し、二人の前に突然現れた。金髪ロングヘアで女子の制服を身につけているが、女性になりたいわけではなく、性自認や性について思い悩んでいる。洋平に自慰行為を教えたり、結衣と性的な関係になった際の練習だと言ってベッドに誘ったりと、洋平に好意を寄せているような行動をたびたび見せている。
書誌情報
おかえりアリス 7巻 講談社〈講談社コミックス〉
第1巻
(2020-10-09発行、 978-4065205938)
第2巻
(2021-06-30発行、 978-4065228890)
第3巻
(2021-10-08発行、 978-4065251355)
第4巻
(2022-04-08発行、 978-4065275337)
第5巻
(2022-10-07発行、 978-4065294093)
第6巻
(2023-04-07発行、 978-4065312339)
第7巻
(2023-10-06発行、 978-4065331484)