ゆりあ先生の赤い糸

ゆりあ先生の赤い糸

結婚してお互いに年齢を重ね、穏やかに過ごしていた伊沢ゆりあと伊沢吾郎の二人だったが、ある日、吾郎が寝たきりの介護状態になってしまう。そのうえ、吾郎の恋人だという男性の箭内稟久や、吾郎と親しい間柄だったシングルマザーの女性、小山田みちるも出現。一変するゆりあの日常と、そんな彼女を取り巻く人間関係を丁寧に描いたヒューマンドラマ。作中では、介護を取り巻く現状が説明されている。講談社「BE・LOVE」2018年第5号から2022年10月号まで連載。第45回「講談社漫画賞」総合部門受賞。第27回「手塚治虫文化賞」マンガ大賞受賞。2023年10月テレビドラマ化。

正式名称
ゆりあ先生の赤い糸
ふりがな
ゆりあせんせいのあかいいと
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
レーベル
BE LOVE KC(講談社)
巻数
既刊11巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

幼い頃からかわいらしさとは無縁の伊沢ゆりあは、年を重ねるに連れて自分に対するコンプレックスも消え、夫の伊沢吾郎と平和に暮らしていた。ゆりあは吾郎に対して、まるでブーメランのように投げたら必ず戻って来る存在として、行動を束縛する事もなかった。しかしある日の晩、ゆりあの携帯電話に「吾郎がくも膜下出血で倒れて緊急搬送された」と病院から連絡が入る。急いでゆりあが病院に駆けつけると、吾郎が治療を受けている部屋の外のイスに、一人泣きじゃくる青年、箭内稟久がいた。吾郎が倒れた際、箭内がそばにいて救急車を呼んでくれたと聞き、ゆりあは彼にお礼を言う。結局、吾郎は緊急手術により一命を取り留めるが、依然として意識は戻らないままだった。ゆりあは若い箭内と吾郎が年齢を超えた友達だと思い込んでいたが、箭内から吾郎と恋人関係にある事を聞かされる。

第2巻

伊沢吾郎は命には別条ないものの意識が戻らず、全介護が必要な「要介護5」と認定される。つまり吾郎は、他人に力を借りなくてはまったく生活できない状態だった。から介護施設に入れるべきだと言われ、伊沢ゆりあは自信がないままに、最初から投げ出す事はしたくないと、吾郎を自宅で介護する事を決意。そして業者を呼んで部屋の模様替えをしたり、ヘルパーとケアプランを立てたりと忙しく過ごす。こうしてゆりあの自宅介護がスタートするが、初日の夜に義理母の伊沢節子が激しく咳込み、病院に連れて行かなくてはいけない状態に陥ってしまう。しかし、義理姉の伊沢志生里は自分勝手な都合で自宅に来られないといい、窮地に立たされたゆりあは箭内稟久に助けを求める。これを受けて箭内は数時間だけ吾郎の介護をする事になるが、訪れた男性ヘルパーに嫉妬する。そして箭内は自分も吾郎の介護に参加したいと言い出し、売り言葉に買い言葉で、ゆりあはそれを受け入れるのだった。そんな中、突然吾郎をパパと呼ぶ二人の子供がゆりあの自宅にやって来る。

第3巻

伊沢吾郎をパパと呼ぶ小山田まに小山田みのんの二人の子供が現れた事で、箭内稟久は吾郎に裏切られていたのかと、ショックを受ける。一方の伊沢ゆりあは、まにとみのんを伴い、彼女達の母親の小山田みちるが入院している病院へと向かう。申し訳ないとベッドの中で涙するみちるを前に、吾郎との離婚を決意するゆりあだったが、行く場所もなく不安そうな顔をするまにとみのんを憐れみ、家へと連れ帰る。そんなゆりあの行動に怒った箭内は、数日休暇をもらうと出て行ってしまう。そんな中、みちるの夫がゆりあの家に話し合いにやって来る。だが、そこで眠っている吾郎の姿を見て逆上したみちるの夫は、模擬刀で吾郎に襲い掛かかる。そこへ間一髪のタイミングで訪れた便利屋のおかげで、ゆりあと吾郎はどうにか事なきを得る。ゆりあがこの件をみちるに伝えると、みちるは自分と吾郎の関係、そして吾郎がどのような経緯で箭内に惹かれていったのかを語り出す。

テレビドラマ

2023年テレビドラマ化。10月19日からテレビ朝日系列にて放送。主人公の伊沢ゆりあを菅野美穂が演じる。

登場人物・キャラクター

伊沢 ゆりあ (いざわ ゆりあ)

自宅で刺繡教室を営んでいる女性。年齢は50歳。伊沢吾郎の妻で、旧姓は「長田」。独身時代に出版社の編集者を務めており、その際に吾郎と出会って結婚した。骨太な大柄な体型をしており、濃く太い眉毛と強い目力を持っているため、一見とっつきにくい人物に思われがち。しかし内面は心優しく、人に気配りができる性格をしている。またかわいらしいものを好む。幼少期から20代前半までは、かわいらしさのかけらもない自分にコンプレックスを抱いていたが、吾郎にかわいいと言われた事と共に、年齢を重ねた事で気にしなくなった。吾郎がくも膜下出血で倒れた事をきっかけに、吾郎と箭内稟久が交際している事や、小山田みちるとも親しい間柄だった事を知る。その後は刺繡教室を休業して、自宅で吾郎の介護生活をしている。

伊沢 吾郎 (いざわ ごろう)

伊沢ゆりあの夫で小説家。過去に一度だけ大きな賞を取った事があるが、その後は細々と文筆活動を続けている。ゆりあが独身時代に出版社で編集者を務めていた際に、自分の担当になった事で知り合い、そのまま結婚した。恋愛対象は女性だが、居酒屋で偶然出会った箭内稟久と性別を超えて恋愛関係になった。また、小山田みちるとも正式に交際していないものの、非常に親しい間柄である。ある日、箭内とのデート中にくも膜下出血で倒れ、一命は取り留めたものの全介護が必要な「要介護5」が認定される。ふだんは寝たきりの状態で反応もなく、倒れてから2回ほど意識が戻った事があるが、その際も会話はできなかった。

箭内 稟久 (やない りく)

伊沢吾郎と交際している独身の男性。年齢は28歳。なにもしなくても周囲から注目を集めるほどの長身のイケメン。格式高い旅館の跡取りで、30歳になるまでは東京で好きに暮らしていいと言われており、タイムリミットが迫っている。幼い頃から男性にしか恋愛感情がなく、居酒屋で偶然出会った吾郎と交際を開始した。吾郎がくも膜下出血で倒れた際も、デート中だった。伊沢ゆりあから数時間吾郎の世話を任されたをきっかけに、箭内稟久も介護に参加すると言い出す。現在は仕事をしていないが、住んでいるマンションは父親の持ち物である事から、悠々自適な生活を送っている。

伊沢 節子 (いざわ せつこ)

伊沢ゆりあの義理母。年齢は81歳。息子の伊沢吾郎とゆりあと共に暮らしている。ゆりあとの仲は悪くはないものの、時々きつい言葉を口にする事がある。娘の伊沢志生里の事は無条件にかわいがっている。人見知りで、家に他人が入って来る事を極端に嫌がる。

伊沢 志生里 (いざわ しおり)

伊沢ゆりあの義理姉。年齢は48歳。伊沢吾郎の妹。バツイチで現在は独身だが、彼氏がいる。職業はグッズデザイナーと言っているが、詳しい事は家族にも話していない。海外や日本中を自由気ままに旅している。表向きは穏やかな性格に見えるが、自宅を離れる際には、ペットのオカメインコのセバスチャンをゆりあに当然のように預けるなど、図々しい一面がある。吾郎の介護に参加すると言いつつも自分の予定を優先させるなど、自己中心的な性格の持ち主。しかし悪気はまったくなく、ゆりあには「よくも悪くも子供のまま」と評されている。

セバスチャン

伊沢志生里に飼育されているオスのオカメインコ。志生里が旅行に行く際にはつねに伊沢ゆりあに預けられていた事もあり、ゆりあや伊沢節子に非常に懐いている。基本的に志生里の家で暮らしていたが、志生里の新しい彼氏が鳥アレルギーのために、ゆりあの家で過ごす時間が長くなっている。

(らん)

伊沢ゆりあの姉。既婚者で、年齢は53歳。骨太で大柄な体型のゆりあとは対照的に、小柄で華奢な体型をしている。また、顔立ちも女性らしい。バレエなどのかわいらしく華やかな世界を好んでいるが、非常に飽きっぽい。現在は某有名会社勤務の夫と子供がいるが、刺激を求めて年下の男性と浮気をしている。言いたい事をはっきりと口にするタイプ。

石浦 暁子 (いしうら あきこ)

伊沢ゆりあの友達の女性。50代で独身。ゆりあとは幼い頃に同じバレエ教室に通っていたものの、その頃は接点がなかった。偶然にも同じ大学に進学し、それからは適度な距離を取って付き合っている。積極的に結婚したいわけではないが、一度くらいは結婚生活を体験してみたいと思っている。ゆりあからは「アッコさん」と呼ばれている。

小山田 みちる (おやまだ みちる)

伊沢吾郎と親しくしていた既婚の女性。小山田まにと小山田みのんの母親。穏やかな性格で、女性らしく振る舞っている。まにとみのんには吾郎を「パパ」と呼ばせるなど、家族同然の親密な関係だったが、吾郎とは身体の関係もなく、正式に交際していたわけではない。吾郎が箭内稟久から恋心を打ち明けられて迷っていた際には、快く相談に応じていた。6年前にDV気質のみちるの夫のもとから逃げ出しており、シングルマザーとして暮らしているものの、感情的になる夫とまともな話し合いができず、籍はまだ抜いていない。ちなみに、みのんの父親は別の男性で、夫には吾郎が不倫相手だと誤解されたままになっている。ある日突然、小山田みちるが入院してしまい、困ったまにとみのんが伊沢ゆりあの自宅を訪ねた事で、吾郎と疑似的な家族のように過ごしていた事がばれてしまう。

みちるの夫 (みちるのおっと)

小山田みちるの夫で、小山田まにの父親。小山田みのんとは血がつながっていない。常識人に見えるがDV気質で、興奮すると挑発的な言動を取ったり、力に任せて相手を服従させようとする。6年前からみちるとは別居しているものの、離婚の意思はない。みちると伊沢吾郎が不倫していると思い込んでおり、伊沢ゆりあに対しても、家庭を崩壊させた者の関係者だと逆恨みをしている。そのため、ゆりあの家で模擬刀を振り回すなど大暴れをしたが、便利屋に征された。

小山田 まに (おやまだ まに)

小山田みちるの娘。小学校3年生。妹の小山田みのんをかわいがっている。年相応だが、非常にしっかりしている。雰囲気や性格がどことなく伊沢ゆりあに似ている。みちるが急遽入院してしまい、頼れる大人がいない事から伊沢吾郎を訪ねた事でゆりあと対面した。その後はみちるが退院するまで、ゆりあの世話になる。周りの空気を読みつつ、寂しさや不安を隠しながら生きている姿が小山田まに自身と重なる事から、ゆりあからシンパシーを抱かれている。みちるの夫がDV気質だという事を知っており、恐れている。

小山田 みのん (おやまだ みのん)

小山田みちるの娘。年齢は2歳。姉の小山田まにを慕っており、ふだんは保育園に通っている。みちるの恋人の伊沢吾郎を、離れて暮らす本当の父親だと思っており、みちるの夫に対してはどんな存在なのか理解していない。みちるが急遽入院してしまい、頼れる大人がいない事から、まにに連れられて吾郎を訪ねた事で伊沢ゆりあと対面した。その後はみちるが退院するまで、ゆりあの世話になる。

便利屋 (べんりや)

引っ越しから家具の移動まで、雑事の代行業務を行う会社に勤務している男性。既婚で、年齢は28歳。来年幼稚園に入園する娘のゆりあがいる。伊沢ゆりあとは伊沢吾郎が退院してくる際に家具の移動を依頼された事がきっかけで知り合い、その後も度々ゆりあからの依頼を受け、自宅を訪れている。みちるの夫が模擬刀を振り回していた際にはうまく仲裁に入るなど、頼れる人物である。

書誌情報

ゆりあ先生の赤い糸 11巻 講談社〈BE LOVE KC〉

第1巻

(2018-07-13発行、 978-4065122488)

第2巻

(2018-10-12発行、 978-4065135976)

第3巻

(2019-03-13発行、 978-4065148983)

第4巻

(2019-09-13発行、 978-4065168486)

第5巻

(2020-01-10発行、 978-4065184097)

第6巻

(2020-06-11発行、 978-4065197639)

第7巻

(2020-11-13発行、 978-4065213995)

第8巻

(2021-04-13発行、 978-4065229606)

第9巻

(2021-09-13発行、 978-4065247709)

第10巻

(2022-03-11発行、 978-4065270394)

第11巻

(2022-09-13発行、 978-4065290545)

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