アリスとアマリリス

第1巻

小学5年生の薊野ありすは、美しい母親の薊野麗珠とまじめなありすの父と共に、まるで絵に描いたような幸福な家庭で育っていた。そんなある日、ありすの父は家族に関西方面へ出張すると言い残し、そのまま蒸発してしまう。すぐにありすの父が多額の借金を背負っていた事実が発覚し、麗珠は言われるがままに離婚する。その後、ありすと母親は茶畑郁や北原淳一の力を借りて夜逃げをする。これまで短期間のアルバイトの経験しかなかった麗珠だったが、生きていくために寮つきのパチンコ店で勤務を開始。懸命に生きようとする麗珠を見たありすは、この状況をのみ込めない事もあり、麗珠がありすの父を忘れてしまったのかと否定的な気持ちを抱く。ありすは麗珠から、借金取りに住所を知られるから、絶対に手紙を書くなと念押しされていた。しかし、ありすは元の生活への恋しさから一人で茜坂理一達に会いに行く。ありすは理一に現在の住所を記した手紙を渡すが、運悪くその現場を借金取りの黄田に目撃されてしまい、理一は黄田に手紙を渡すように迫られるのだった。

第2巻

薊野ありすは、引っ越した先で同じ寮に住んでいる高橋真と知り合う。新しい土地で初めてできた友達にありすは喜ぶが、すぐに真は引っ越してしまう。さらに真のこれまでの浮世離れした言動から、彼と面識のあるありすも変わった人物に違いないと偏見の目で見られ、これまで以上にクラス内で孤立してしまう。こうしてありすは、どこにも行き場がなくなる中、薊野麗珠の妊娠が発覚し、ありすは自分を孤独から救ってくれた事を大いに喜ぶ。その後、偶然会話を交わしたクラスメイトの鳴海月と親しくなった事をきっかけに、ありすは少しずつ友達ができるようになる。そして北原淳一、西村、近藤の助けもあり、麗珠は薊野紅子を無事出産。やがて中学校に進学したありすは、周囲が楽しく青春を謳歌しているにもかかわらず、自分は家事や紅子の世話をしている状況を寂しく感じ始める。同時に、クラスメイトの吉羽渉を、気になる存在として意識するようになっていた。