櫻子さんの足下には死体が埋まっている

櫻子さんの足下には死体が埋まっている

太田紫織の小説『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』のコミカライズ作品。骨格標本を作る標本士を務める九条櫻子は、3度の飯より骨が好きというちょっと変わり者の美人お嬢様。一方、平凡な男子高校生の館脇正太郎は、そんな櫻子と出会ってからというもの、さまざまな事件に遭遇するようになる。そして、数々の遺体や骨を発見しては警察に通報する役目を負わされてしまう。そんな二人が真実を暴くために奔走する姿を描くミステリー。「ヤングエース」2015年8月号から2017年12月号にかけて掲載された作品。

正式名称
櫻子さんの足下には死体が埋まっている
ふりがな
さくらこさんのあしもとにはしたいがうまっている
原作者
太田 紫織
漫画
ジャンル
警察官・刑事・検察官
 
推理・ミステリー
関連商品
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あらすじ

第1巻

5月某日、九条櫻子館脇正太郎は、北海道の増毛にある海岸で骨を拾っていた。そもそも今日は、櫻子から新車の納車祝いでドライブに行こうと誘われたはずの正太郎は、結局骨拾いになったことに憤慨しつつも、櫻子という人となりを知っていればわかったことなのにと、自分が気づかなかったことを悔やんでいた。櫻子は骨格標本を作る標本士を務めており、かなりの美人でお嬢様ながら3度の飯より骨が好きという残念なところがあり、外見とのギャップで人をがっかりさせていた。そんな彼女に振り回されながら、骨を探していた正太郎が拾ったのは、なんと人骨。頭蓋骨の一部だと言う櫻子の発言に驚き、落としそうになる正太郎に対し、櫻子はウキウキと楽しそうにその骨を持ち帰ろうとする。それを必死で制止した正太郎は、警察に通報。ほどなくして留萌警察署の山路巡査が駆けつけて来る。一部分の骨なのに、これが人骨であると決めつける櫻子に対し、山路は疑惑の視線を投げかけるが、彼女の職業が標本士であること、そして叔父が法医学教室の先生だったことを知ると、態度を急変させる。櫻子の叔父の設楽は、警察の捜査にもたびたび協力してきた有能な人物だったのだ。山路に直接の面識はなかったが、噂でその存在の大きさはよく知っていた。その後、櫻子と正太郎は詳しく事情を聞かれることになり、警察署へ向かう途中、一組の水死体が上がったという現場を通りがかり、櫻子からのたっての希望で、現場の遺体を見せることになった。山路は、この一件を警察が遺体の死因を心中として処理しようとしていることに違和感を感じていたが、上司に意見することができず、苛立ちを感じていたのだ。ほかの警察官は彼女の意見に耳を貸そうとはしなかったが、櫻子の鋭い洞察力により、遺体の死因が心中によるものではないと断定した彼女の意見に山路は関心を寄せる。

第2巻

ある夏の日の明け方4時頃、館脇正太郎は家の扇風機が壊れ、暑くて寝付けなかったため、近所のコンビニエンスストアに買い物に行き、涼んでいた。すると、まだ幼い子供がたった一人で歩いているのを発見する。ところどころに血を付けた姿で、はだしで歩いている富永柚胡香を迷子としてを保護し、正太郎は交番に連れて行く。早朝、対応にあたった巡査の内海洋貴は、柚胡香の名前や身元を確認しようと、正太郎と共に奔走するが、なにぶん幼い子供のためにそう簡単にことは運ばない。近所を捜索するもなんの手がかりも得られなかったため、正太郎の提案で九条櫻子を頼ることにした。早朝、突然の訪問に不機嫌な櫻子だったが、柚胡香の体型と運動能力から年齢を3歳前後と推察。そのうえで、左腕にはく離骨折の跡があったことから、近隣の整形外科の診療記録を辿ることを洋貴に指示し、無事に柚胡香の身元が判明する。柚胡香を連れて住所を辿って家を訪れると、ドアを開けた瞬間、血の匂いでむせ返るほどの状態に緊張感が走る。そしてキッチンで、血だらけになった母親の遺体が発見されるのだった。惨憺たる状況にもかかわらず、櫻子は洋貴に応援を呼ぶように指示すると、冷静に分析を始める。そんな中、現場の状況の違和感に気づいたのは、柚胡香から話を聞いていた洋貴と正太郎だった。二人は、この家には赤ちゃんがいたはずと話し、それを聞いた櫻子が不自然に横たわる母親の遺体を動かすと、その下にあった床下収納庫から、仮死状態の赤ん坊を発見する。

関連作品

小説

本作『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』は、太田紫織の小説『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』を原作としている。原作小説は、2012年に「E★エブリスタ」に掲載され、同年角川書店「E★エブリスタ 電子書籍大賞ミステリー部門」の優秀賞を受賞した。2013年2月23日に角川文庫から刊行された。

登場人物・キャラクター

九条 櫻子 (くじょう さくらこ)

北海道旭川市内にある大きなお屋敷に住んでいるお嬢様。育ちがよく、すらりとした長身で頭脳明晰な美人だが、骨格標本を作る標本士を務めており、何よりも骨を愛するという点において「残念美人」と揶揄されている。札幌の大学で法医学教室の先生を務めていたことがある叔父の設楽を慕い、幼い頃から設楽の法医学教室に入り浸っていたため、死体や死因などに関する知識はかなり豊富。そのため、事件に遭遇したり、死体を見ることも多くあり、警察とかかわることも少なくない。叔父の影響はかなり色濃く、知識だけでなく、九条櫻子自身の男性のような語り口もその一つ。人間嫌いの気があり、馴れ合うのを嫌がるが、何かといっしょにいることの多い館脇正太郎には気を許している。しかし、彼を名前で呼ぶことはなく、いつも「少年」と呼んでいる。相手に自分の意に沿う言動が見られると、口笛を鳴らす癖がある。また、遺体や遺骨を前に親指と親指を合わせ、手を三角形に合わせる特有のスタイルで考えを巡らせ答えを導き出す。呪いや運命などの非科学的なことは信じていないため、どんなことにも必ず原因があると考えている。コーヒーなど苦いものは苦手だが、甘い物には目がなく、飲み物では砂糖を入れた紅茶やホットチョコレートが好き。公安に勤める婚約者がいると噂されている。

館脇 正太郎 (たてわき しょうたろう)

平凡な男子高校生。九条櫻子と知り合ってからは、たびたび櫻子から呼び出されて骨拾いに付き合わされるなど、何かと櫻子には翻弄される日々を送っている。日常的に事件と遭遇するようになり、警察に通報する役目を担っている。櫻子の助手として協力しながらも、自分の存在を櫻子に認めてもらえず、いつまでも「少年」と呼ばれていることに失望しながらも、名前で呼んでもらえる日が来ることを期待している。人がいいこともあり、同じ学校に通う友人の鴻上百合子の亡き祖母のことについて相談に乗ったり、迷子の富永柚胡香を保護して交番に連れて行ったりと、何かと自分から首を突っ込むことも少なくない。しかし、その都度櫻子を頼っており、彼女への信頼度は高い。館脇正太郎自身は、特になんの知識も能力も持ってはいないが、祖父に習った護身術を身につけている。

山路 (やまじ)

留萌警察署に勤務する巡査の男性。増毛町の海岸で人骨の一部が見つかったと、九条櫻子、館脇正太郎から通報を受け、現場を訪れた。骨が部分的すぎることもあり、見つかった骨が本当に人間の骨なのかどうか判断できず、当初は異常なまでに骨について詳しく説明する櫻子に疑いの目を向ける。しかし、その後櫻子が法医学に精通する設楽の姪であることを知り、態度を改めた。もともと近隣の海岸で水死体が打ち上げられたため、その捜査に参加していた。死体は手首ががっちりと紐で結ばれた男女で、警察は心中として処理しようとしているが、それに納得できないでいる。ただ上司に意見できる立場でもなく、黙って従うことしかできない自分に静かな苛立ちを感じている。また、死因を解明するにあたり、消極的な現在の状況が遺族を苦しめることになっていると胸を痛めている。

設楽 (したら)

九条櫻子の叔父。もともと札幌の大学で法医学教室の先生を務めていた。死体や死因などに関する知識が豊富なため、警察の捜査にも協力していたが、現在は入院中。幼い頃から設楽自身の法医学教室に入り浸っていた姪の櫻子には、法医学の知識だけでなく性格面でも多大な影響を与えている。

鴻上 百合子 (こうがみ ゆりこ)

館脇正太郎と同じ学校に通う女子高校生。以前から行方不明となっていた祖母の鴻上アサが遺体となって発見されたが、それを見つけたのが正太郎だったことを知り、お礼を言いに正太郎のクラスを訪れた。去年の秋から探し続けてきた祖母の消息がはっきりしたことで、ほっとした部分もあったが、遺体発見時の状況から、介護疲れによる自殺と判断されたことで、なぜ相談してくれなかったのかと心にモヤモヤを抱えたままになっていた。それを知った正太郎の紹介により、九条櫻子にアサの死因について話を聞くことになる。

鴻上 アサ (こうがみ あさ)

鴻上百合子の祖母。昨年の秋頃から行方不明になっていたが、先日山中の登山道をはずれた崖の下で白骨化した遺体となって発見された。発見者は九条櫻子と館脇正太郎。彼らの通報によってやってきた警察の調査により、遺体発見時の状況から自殺と判断された。脳梗塞で倒れて介護が必要になった夫が認知症になり、その面倒を一人で見ていたために、自殺の原因は介護疲れによるものとされた。しかしその後、櫻子の調査によって鴻上アサの死因は自殺ではなかったことが判明する。

内海 洋貴 (うつみ ひろき)

北海道警察で巡査を務める男性。気さくで明るい性格をしている。ある日の明け方4時頃、交番で当直中に館脇正太郎が迷子として連れてきた富永柚胡香を保護。はだしだった柚胡香に拾得物の長靴を履かせるなど、彼女の身元を明かそうと奮闘した。しかし、まだ幼い柚胡香と意思の疎通を図ることは難しく、正太郎の提案により九条櫻子の力を借りることになった。その結果、柚胡香のはく離骨折跡から、整形外科の診療記録を辿って身元が判明。住所の家へと向かうと、柚胡香の母親が血まみれで死んでいるのを発見する。その後、母親が守った赤ちゃんが仮死状態で発見され、必死の救命措置が取られる中、包丁を手に持った犯人の男が再び現場に姿を現した。これ以上の犠牲を出さないために、玄関先で男を懸命に食い止めようとするも、相手の強い力に負けて男を家の中に入れてしまう。その際、男に殴られたことで気絶してしまうが、正太郎の活躍により、犯人を無事逮捕するに至った。のちに、中学時代の友人の藤岡毅が抱えている悩みについて解決して欲しいと再び櫻子のもとを訪れた。友達思いなところがあり、毅のことを自分のこと以上に心配している。犬には苦手意識がある。

富永 柚胡香 (とみなが ゆうか)

3歳前後の幼女。ある夏の日の午前4時頃、パンダのリュックを背負い、ところどころに血を付けた状態で、一人ではだしで歩いているところを館脇正太郎に保護された。その際、迷子として最寄りの交番に連れて行かれたが、身元不明だったため、内海洋貴巡査からさまざまな質問をされることになる。意思の疎通は図れるものの、自分の名前を「いいちゃ」と言ったり、「あーちゃん」「ちっとい」など、幼い彼女の言動を理解するのは困難だった。彼女の全身にはそこそこの量の血液がついているものの、体に傷はなかった。しかし、腹部にあざがあることが判明し、ネグレクトの疑いも持ち上がった。その後、近隣で捜索を行うも、なんの手がかりも得られなかったため、正太郎の提案で九条櫻子のもとへと連れて行かれることになった。櫻子に見てもらったことにより、おおよその年齢がわかり、左腕にはく離骨折のあとがあったことから、整形外科の診療記録を辿って身元が判明した。自宅では、母親が血まみれの状態で死亡しており、危険を感じた母親が富永柚胡香をキッチンの窓から逃がしたと推測された。事件解決後、母親が身を挺して守った赤ちゃんと共に、親戚に引き取られることになった。

犯人の男 (はんにんのおとこ)

富永柚胡香の母親を殺害した犯人の男。母親が守った赤ちゃんの父親。無職で、日常的に昼間からふらふらしているところを近所の人に目撃されている。内海洋貴、九条櫻子、館脇正太郎が殺害現場を訪れて調査していた際に血まみれの状態で包丁を手に持ち、再び玄関から姿を現して洋貴に襲い掛かった。「いつもいつもガキ共の声がきこえている」「うるせぇんだよクソ女が」「ころすころす」など、物騒なことをぶつぶつと口走っており、ふつうではない精神状態にある。洋貴にケガを負わせるが、正太郎の活躍によって取り押さえられる。

母親 (ははおや)

富永柚胡香の母親。柚胡香の弟にあたる赤ちゃんを産んで間もない。柚胡香が交番で保護された日、自宅のキッチンで血まみれになって死んでいるのが発見された。その際、すでに死斑や硬直が見られたため、死後4時間は経過している状態だった。玄関で犯人の男に斬りつけられ、急いで玄関を施錠。その後、柚胡香をキッチンの窓から逃がし、赤ちゃんを床下収納庫に隠し、扉をふさぐようにうつぶせになった。結果的に赤ちゃんを守るかたちで、背中から包丁で何度も刺されて亡くなった。

藤岡 毅 (ふじおか たけし)

内海洋貴の中学時代の友人男性。旭川にある自宅は、黒色で重々しい印象の近代的なデザインの建物。そこで妻の藤岡美幸と娘の希美、犬のへクターと共に暮らしている。数年前に引き取ったへクターの存在がきっかけで、自分は近いうちに死ぬと繰り返し口にしており、久しぶりに会った洋貴にも相談し、周囲から心配されている状態。そのため、問題解決を図ろうとした洋貴と共に家を訪れた九条櫻子、館脇正太郎に細かく記された資料などを差し出し、自分が死ぬと思い至った経緯について説明した。父親は36歳で亡くなり、叔父は50歳手前で急死するなど、藤岡毅自身の家系の男性が代々短命であることも手伝って、自分は死ぬ運命にあると決めつけている。それを否定しようとすると逆上して聞く耳を持たない。喘息の持病があり、最近1か月ほどで状態が悪化しているが、現在も喫煙は続けている。学生時代から子供っぽさのない達観した人物だったが、中学3年生の時に父親を亡くしてからは、覚悟を決めたかのような落ち着きを見せるようになる。その後、美幸と出会った頃は全身に棘を持ったように攻撃的になり、運命に逆らおうと必死に抗っていた。仕事上でも強気で、周囲からは勝負師と称されることもあった。だが、子供が生まれたことで生きることへの執着を強く持つようになり、株に加えて投資の仕事をするようになった。そうすることで、自分が死んだあと、残された妻子が不自由なく暮らしていけるようにと準備を進めていた。そんな中、呪われた犬と噂されるへクターを引き取ることになり、持ち主が次々に亡くなるという曰くつきの呪われた絵までも引き継ぐことになった。絵は飾らないと公言していたが、実は毅しか入らない書斎にひっそりと飾ってあり、彼にとっては疲れた時に見ると不思議と癒しになっていた。実は最近1か月の体調不良はその絵に原因があったことを櫻子が解明。さらに家系の男性が短命にあったことの原因すら明らかにされ、長らく悩んでいた悩みから解放されるはずだったが、彼の真の悩みはほかにも存在している。

藤岡 美幸 (ふじおか みゆき)

藤岡毅の妻。旭川にある一戸建てで娘の希美と、毅と犬のへクターと暮らしている。夫といっしょに100歳まで生きるという夢を胸に抱いているが、毅が36歳の誕生日を控え、自分は死ぬ運命にあるとナーバスになり、自分が死んだあとの準備を行っていることに心を痛めている。もともと調理師だったため、家を訪れたお客様にはお腹いっぱいになって帰って貰わないと気が済まない。毅を心配して家を訪れた内海洋貴、九条櫻子、館脇正太郎の三人を温かく迎え入れ、ケーキでもてなそうとした。

へクター

藤岡毅、藤岡美幸夫妻に飼われている大型犬。以前飼い主だった毅の叔父が本の虫だったため、夏目漱石の愛犬と同じ名前が付けられている。もともと親犬を飼っていた家が火事に遭い、家主や親犬、兄弟犬も犠牲になったが、へクターだけが腸炎で入院していたため運よく火事を免れた。その後、伯父の友人に引き取られ、飼われていたが亡くなり、伯父に引き取られたものの、その伯父も急死。別の叔父が引き取ることになったが、ある日突然倒れ、死後1週間経過した状態で発見された。その後、藤岡家へと引き取られてかわいがられているが、懐いた飼い主を殺すいわくつきの呪われた犬として気味悪がられている。死んだ動物の匂いに敏感で、散歩中に死んだ動物の匂いに気づくと嬉々として走り出したりすることもあり、そのせいか、標本士を務める九条櫻子が自宅を訪れた際には入って来るなり飛びついた。のちに櫻子に引き取られ、共に暮らすことになる。

クレジット

原作

太田 紫織

キャラクター原案

鉄雄

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