下足痕踏んじゃいました

下足痕踏んじゃいました

交番に勤務していた巡査長・加藤宙は、川崎東警察署刑事第一課凶行犯係に配属されることになった。教育係の巡査部長・工藤花とバディを組み、次々と発生する事件に向き合いながら日々成長していく宙の姿と、警察の内部事情をユーモアたっぷりに描いた警察ヒューマンコメディ。「メロディ」2021年4月号から掲載。

正式名称
下足痕踏んじゃいました
ふりがな
げそこんふんじゃいました
作者
ジャンル
警察官・刑事・検察官
 
ヒューマンドラマ
レーベル
花とゆめコミックス(白泉社)
巻数
既刊2巻
関連商品
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あらすじ

ある日、マンションの一室に警察の家宅捜索が入る。部屋の中からは少女たちが発見され、未成年者誘拐の容疑がかけられた住人の男は窓から逃走を図る。男の逃走路は左右に別れていたが、そこには警察官・やっさん工藤花が待機していた。男はやっさんを目視するや否や身をひるがえし、女性の花の方へと逃げようとする。その一部始終を見ていた交番勤務の巡査長・加藤宙は、自転車を乗り捨てて花を助けに向かおうとするが、花は向かってくる男をあっさりと確保してしまう。実は花はその華奢な見た目からは想像できないほど体を鍛え抜いていたのだ。そんな事件から約1年後、宙は川崎東警察署刑事第一課凶行犯係に配属されることになった。そこで花と再会した宙は、自分の教育係を務める花とバディを組むことを知り、1年前の事件を思い出して気持ちを高ぶらせる。松雪新太率いる松雪班は、宙と花に加えて、星野隆二月本義彦の五人で構成されており、和やかで温かい印象の捜査班だった。だが、警察という狭い社会の中において、未だ少数の女性は生きにくい職場というのが現状だった。周囲からの女性警察官に対する偏見も少なくなく、何げない言動からもセクシャルハラスメントが見え隠れする。しかし花は、基本的にそういった雑音は自分の中で消化しており、自分の実力を示すことで業務を行っていた。配属初日にして宙は花の苦労を知ることになるが、直後、二人は遺体が発見された現場に急行することになる。その現場で花は、飼い猫を逃がすまいと部屋の中を追いかけ回して現場を荒らしてしまう宙のポンコツぶりを目の当たりにする。花は頭を抱えながら、どうして宙が凶行犯係に配属されたのかと疑問をぶつけると、松雪から語られたのは、1年前に起きた未成年者誘拐事件に関する、宙の意外な功績についてだった。

登場人物・キャラクター

加藤 宙 (かとう そら)

長らく交番勤務をしていた男性で、階級は巡査長。年齢は28歳。川崎東警察署刑事第一課凶行犯係に配属されることになり、松雪新太率いる松雪班で教育係を務める巡査部長・工藤花とバディを組んで行動を共にするようになる。お人よしの性格で、生粋の平和主義者。事件現場では何かとポンコツぶりを発揮するが、意外と細かいことに気づく観察力と繊細さを持ち、松雪からは将来的にいい仕事をする職人的な刑事になってほしいと期待されている。1年前、地域課に所属していた時は、田舎の駐在さんとして地域の人々から慕われていた。ある日、顔見知りの大家と世間話をしていた際、若い男性の部屋に怪しい男女が出入りしているとの話を聞き、パトロール時に気を配るようになった。すると、その部屋のカーテンの隙間から覗いている不審な二人の少女に気づき、写真に撮って行方不明者のデータベースと照合する。そして少女のうちの一人が、家出中の捜索対象者であることが判明し、捜索令状を取ることとなった。加藤宙のとっさの判断が家出少女を人身売買から守り、被疑者を確保することにつながった。その家宅捜索の際、小柄な花がいとも簡単に被疑者を確保する瞬間を目撃していた。そのため、新たな配属先で花と再会を果たした時には内心胸を躍らせた。現在は単身者用の男性寮に住んでおり、刑事ドラマに強い影響を受けている。猫が大好きながら、猫が近くにいるだけで目のかゆみやくしゃみなどのアレルギー反応が出てしまう。

工藤 花 (くどう はな)

川崎東警察署刑事第一課凶行犯係に所属する女性で、階級は巡査部長。年齢は27歳。数少ない女性警察官として、女性被疑者の身体検査や強姦被害者の事情聴取などに駆り出されることが多く、本来なら2年以上勤務することになっている交番には、特別待遇で1年しか配属されていない。松雪新太率いる松雪班の一員で、これまで自分の教育係兼バディだったやっさんが定年退職となったため、新しく配属された加藤宙の教育係を任され、新たにバディを組んで行動を共にするようになる。小柄な体型で見た目も華奢ながら、高い身体能力を誇る。その鍛え抜かれた肉体は、女性というだけの理由でなめられたくない一心に築き上げたもの。警察内部は何かとセクシャルハラスメントの多い職場環境であり、周囲から放たれる言葉に思うところはあるものの、基本的には軽く受け流して日常をやり過ごしている。職場の仲間からは「お嬢」と呼ばれているが、その呼び名にも嫌気が差している。博多出身で、横浜の大学を卒業して警察官になった。現在は武蔵小杉在住のため、南武線を利用して通勤している。

やっさん

川崎東警察署刑事第一課凶行犯係に所属する男性で、階級は巡査部長。定年で退職となったが、これまでは工藤花の教育係でバディだった。生涯刑事でいたいという強い思いから、出世を望まずに何十年も現場に立ち続けた。熟練職人のようなベテラン刑事ながら、屈託なくセクシャルハラスメントをするタイプで、花との初対面で女とバディを組めるかと暴言を吐いた。また、嫁の貰い手がなくなるとか、孫の顔を早く見せてくれなど、女性に対する問題発言が非常に目立つ。

松雪 新太 (まつゆき あらた)

川崎東警察署刑事第一課凶行犯係に所属する男性。松雪班を率いる班長を務めている。穏やかな性格で、眼鏡をかけている。松雪班はやっさん、工藤花、星野隆二、月本義彦の五人で構成されており、やっさんが定年退職となったことで、新たに加藤宙が配属されてきた。宙が少々天然気味であることは知っているが、1年前に起きた未成年者誘拐事件での宙の功績を評価し、将来的にいい職人刑事になりそうだと期待を寄せている。

星野 隆二 (ほしの りゅうじ)

川崎東警察署刑事第一課凶行犯係に所属する男性で、階級は巡査長。松雪新太率いる松雪班の一員で、月本義彦とバディを組んで行動を共にしている。工藤花に対して、女性であるだけで特別待遇扱いされているとパワハラまがいの発言をしている。また、早く出世して自分を引き上げてほしいと本音ともつかない態度を見せている。面倒事が嫌いで出世欲もなく、昇任試験も受けていない。川崎西署の藤島とは年齢が離れているが同期で、管轄を越えてよくつるんでおり、仲がいい。最近腹が出てきてベルトがきつくなっているが、それは禁煙が成功したためだと吹聴している。しかし喫煙室に入り浸り、副流煙を吸っているため、月本からは再び喫煙を始めるのも時間の問題だと思われている。最近盗犯係が捜査している連続事務所荒らし事件について、担当でもないのに現場写真を保有し、その犯行について推理し、みごと犯行の共通点を見いだした。何も考えていないようで、刑事の勘は意外と鋭い。前職はオフィス什器の総合リース会社のサラリーマンだっため、警察官とは違う視点から物事をとらえることができる。

月本 義彦 (つきもと よしひこ)

川崎東警察署刑事第一課凶行犯係に所属する男性で、階級は巡査部長。松雪新太率いる松雪班の一員。堅物で口うるさい性格をしている。星野隆二とはバディを組んで行動を共にしている。自分の方が年下であるにもかかわらず、権限が上の立場にあるため、星野から煙たがられることも少なくない。最近星野の腹が出てきたことに気づき、酒を控えたらどうかと声をかけた。また、禁煙が成功したと吹聴しているのに喫煙室に入り浸り、副流煙を吸っているため、星野が再び喫煙を始めるのも時間の問題と思っている。

山本 哲也 (やまもと てつや)

傷害事件の被害者の男性で、年齢は25歳。ある日の夜、霜降りグレーのパーカーを着た男性と目が合って視線をそらしたところ、無視をするなと言いががりをつけられて殴られてしまう。右頰を殴られて倒れ込んだ際、後頭部に激痛が走って意識を失った。翌日病院で目を覚ましたが、事情聴取に来た加藤宙と工藤花に対し、犯人は知らない人物だったと証言した。似顔絵捜査にも協力的だったが、何かと話を盛り気味なところがあり、警察からは要注意人物として扱われていた。川崎生まれ川崎育ちで、実家が経営するコンビニエンスストアを手伝っている。小中高校はつねにスクールカーストの最上位に位置し、お調子者で知られていた。周囲からも一目置かれる存在で、大人になった今でもそのコミュニティーから離れることができないでいる。川崎という土地柄、交通の便もよく都市機能も充実していることから、地元から離れない人も多く、家族ぐるみの知り合いをはじめ、交友関係は広い。

川瀬 翔太 (かわせ しょうた)

山本哲也の見舞いに訪れたチンピラ風の男性。年齢は25歳。哲也とは幼なじみで、小中高校時代ずっといっしょだったいわゆる腐れ縁。今でも時折飲みに行くことがあり、交流を続けている。そんな中、哲也が死んでしまったとか、植物状態になったとかの物騒な噂話を聞いたため、自分がこの目で確かめてやると豪語し、入院している哲也の病室を訪れた。だが、そこで事情聴取に来ていた加藤宙、工藤花に遭遇して思わず逃走するものの、女子トイレに籠城したあげく捕まってしまう。その際、指定薬物・合成カンナビノイドが大量に混ざったポプリを所持していたため、聴取を受ける。哲也への暴行事件に関して何らかの関係があると思われたが、結局直接的なかかわりはなかった。

草間 宗介 (くさま そうすけ)

山本哲也と同じ中学校出身の男性。年齢は哲也よりも2歳年下。哲也とは直接かかわりを持ったことはないが、目立つ存在だったため、よく知っていた。とある会社のシステムエンジニアで、主に在宅で仕事をしている。中学の同窓会のライングループに、哲也が生きているかを確認するようなメッセージを送信。さらに友人の和田に、哲也が意識不明であるかのようなメッセージを送信した。この件について自宅を訪ねてきた警察官の加藤宙、工藤花から聴取を受けることになった。実は同じマンションのとなりの部屋に住む木梨智哉とは幼なじみで、彼から詳細は伏せた形で哲也に関する相談を受けていた。そのため、哲也の現状を知ることが目的で各方面にメッセージを送信した。その後、智哉が哲也を殴ったことを知るが、事情を知ったうえで智哉に寄り添った。

木梨 智哉 (きなし ともちか)

草間宗介と同じマンションのとなりの部屋に住んでいる男性。宗介のもとに警察官・加藤宙、工藤花が事情聴取に訪れた際、自分が山本哲也を殴ったと自首した。哲也とは小中学校がいっしょで、当時から日常的に哲也から執拗ないじめを受けていた。そんな日々から逃げたい一心で死に物狂いで勉強し、他県の寮付きの進学校に合格した。さらに有名大学に進学し、有名企業に就職して哲也を見返すくらいの立場になってようやく哲也の呪縛から逃れられると考えていた。しかし、不況のあおりで会社の事業規模が縮小され、パワーハラスメントや退職を強要されたことで、木梨智哉自身の過去のトラウマが発動。心労で倒れた末に退職を余儀なくされ、結局帰る場所が地元の川崎しかなかった。半年ほど前から実家で引きこもり生活を送りながら、幼なじみの宗介と交流を続けていた。最近になってようやくカウンセリングに通う気になり、クリニックの下見に駅近くまで出掛けた。そこで偶然に哲也と遭遇し、侮辱の表情を浮かべて目をそらした哲也に腹が立ち、思い余って殴ってしまう。すぐに捕まるだろうと思い、腹をくくって自宅で待っていたが、いつまで経っても警察がやって来なかったため、不安になって詳細を伏せたまま宗介に相談した。そして宗介は、哲也の現状を知るべく知人たちにメッセージを送ってもらう形となった。哲也が生きているのに捜査線上に自分が上がっていないことを不審に思っていたが、結局哲也が自分をまったく覚えていなかったことがわかり、自分はいつまでも哲也の存在にがんじがらめになっていると気づかされた。

社長 (しゃちょう)

大田原商事で社長を務める男性で、大田原和子の夫。深夜、忘れ物を取りに事務所に戻ると、事務所荒らしの犯行グループに遭遇。ナイフで脅され、ガムテープでぐるぐる巻きにされた状態のまま放置され、翌朝出勤した社員に発見された。その後救急車で病院に搬送され、軽い脱水症状だけで特にケガもなく無事だった。のちに事情聴取を受けた際、事件のあらましを説明し、犯人は男性二人組だったことを証言した。しかし、さらに捜査を進めようとする加藤宙、工藤花に対し、何も盗られていないことから捜査をしないでいいと申し出た。実は社長は事件の真相を知っており、ウソの証言をしていた。自社はアジア中心の食材や雑貨を販売する会社なのにもかかわらず、ヨーロッパ志向な妻のため、自宅のインテリアもすべて洋風のデザインに統一させられ、さらにリサーチと称して取り引きのない外国に経費を使って旅行三昧の日々を送っていた。そんな中、和風美人の小野寺純と出会い、のめり込んでしまう。和子には知られないように純を仮面社員として雇い入れ、毎月給与を振り込んで愛を育んでいた。しかし、いつしかその費用が重荷になり、別れを決意。会社の事務所で最後の逢瀬を交わそうとしたが、逆上した純にガムテープで縛りつけられ、身動きが取れなくされたあげく、事務所を荒らされて放置される結果となった。最近、川崎市内で連続する事務所荒らしの事件とは無関係で、単なる痴情のもつれだった。その後、ガムテープでぐるぐる巻きにされたのは、単なる社長の趣味だったことが明らかになる。

大田原 和子 (おおたわら かずこ)

大田原商事で専務を務める中年女性で、社長の妻。事務所が何者かによって荒らされる事件が発生し、警察に事情を聞かれることになった。しかし、会社のことはいっさい把握しておらず、名前だけの仮面役員で、夫との関係も冷え切った状態だった。社長の会社はアジア中心の食材や雑貨の販売会社ながら、大田原和子自身は根っからのヨーロッパ志向。自宅も洋風のデザインでインテリアも洋風でそろえ、リサーチと称して会社とは取り引きのない外国に、会社の経費を使って旅行三昧の日々だった。

小野寺 純 (おのでら じゅん)

大田原商事の社員名簿に名前が登録されている女性。表向きは社長の姪とされている和風美人で、勤務実態のない仮面社員ながら、給与が支払われていた。社員名簿に記載されている住所からはすでに転居しており、現在の所在は不明。給与の振込口座のお金は、大田原商事の事務所が荒らされた事件のあとにすべて引き出されていた。実は社長の愛人で、最近になって突然社長から別れを告げられた。深夜、社長に呼び出されて大田原商事の事務所を訪れたのち、怒りにまかせて社長をガムテープでぐるぐる巻きにし、動けなくしてから事務所を荒らしてその場を去った。

藤島 (ふじしま)

川崎西署、盗犯係の男性刑事。川崎市内の事務所に侵入し、窃盗を繰り返している事件を捜査している。川崎東警察署の星野隆二とは管轄を越えてよくつるんでいることがあり、仲がいい。年齢は星野よりだいぶ下だが、実は星野と同期。

下小園 雅志 (しもこぞの まさし)

下小園建志の兄で、前科三犯の男性。年齢は33歳。川崎駅前の大型ホームセンターで、ラッカースプレーを万引きする姿が防犯カメラにとらえられていた。このラッカーは、川崎市内で連続で発生している事務所荒らしの事件に使われた物と同じだった。防犯カメラの犯人の衣服も背格好も、下小園雅志と酷似していた。そのため、事務所荒らし事件の犯人である可能性が高いとして警察から任意同行を求められた。

下小園 建志 (しもこぞの けんじ)

下小園雅志の弟で、年齢は28歳。会社の事務所に置く菓子コーナー「オフィストリーツ」の商品補充や代金回収などを担当している。最近、川崎市内で連続で発生している事務所荒らし事件で、被害に遭った事務所にはすべてオフィストリーツがあり、それがすべて下小園建志の担当したものだった。雅志と共に事件に深くかかわっている可能性があるとして、警察から任意同行を求められたが、社用車で逃走を図った。逃走中に事故を起こして、多摩川に入って逃げようとしたが逃げ切れず、結局逮捕されることとなった。実は担当していた事務所の中で、目星を付けた事務所にはあらかじめ隠しカメラを設置し、内情を視察してから犯行に及び、その後カメラを回収していた。

書誌情報

下足痕踏んじゃいました 2巻 白泉社〈花とゆめコミックス〉

第2巻

(2022-12-05発行、 978-4592228752)

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