あやかし温泉奇譚綺譚

あやかし温泉奇譚綺譚

舞台は日本の僻地にある、妖怪がやって来る老舗の温泉旅館「鳳泉閣」。この旅館の御曹司である真綺桜一郎が、二人の付け人の妖怪であるカゲヒト、カヲルと共に、妖怪たちの抱える問題を解決していく姿を、各話完結式で描いた和風現代ファンタジー。「マンガUP!」で2018年9月から連載の作品。

正式名称
あやかし温泉奇譚綺譚
ふりがな
あやかしおんせんきたんきたん
原作者
辻森 惺
作画
ジャンル
お化け・妖怪
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あらすじ

第1巻

老舗の旅館の鳳泉閣に「ナショ神」を名乗る老人がやって来た。カヲルが術を用いて調べたところ、その気は確かに神聖なものであり、世には知られていないが実際に神であるようだった。酒はうまいが料理は口に合わないと言い出すナショ神のために、さらに詳しく調べてみると「ナショ」とは、うどんに用いる香辛料の「那椒」であることが判明する。香辛料を添えたうどんを差し出すと、ナショ神は満足そうにその場を立ち去るのだった。(参の湯「ナショ神様」。ほか、5エピソード収録)

第2巻

老舗の旅館の鳳泉閣迦陵と呼ばれる歌姫がやって来た。迦陵は遙か海の中の海宮(わだつみのみや)において、海神(うみがみ)の前で舞い歌うことをただ一人許された存在だった。迦陵がやって来るのは海の世界の時間において1年に一度、地上の時間でいえば12年に一度であった。迦陵は自分が修行中だった数十年前に地上で出会った、ナオタカという男性にどうしても会いたいと願っていた。(九の湯「白砂青松」。ほか、4エピソード収録)

登場人物・キャラクター

真綺 桜一郎 (まき おういちろう)

老舗の旅館、鳳泉閣の御曹司である男子高校生。心優しい性格をしている。孝凛法師が開湯した天海温泉の源泉の力を授かっており、人間ながら非常に強い霊力の持ち主で、悪霊などを祓う浄化の力を使うことができる。まじめな性格と未成年ということもあり、酒を勧められてもしっかり断る。小さい頃から大人の言うことをよく聞く子供で、いい子として振る舞っていた。母親の真綺春椰が結界の中に閉じ込められているため、触れ合うことができない現実に寂しさを感じている。また父親の真綺典次も鳳泉閣に不在なことが多いため、ふだんはカゲヒト、カヲルと共に暮らしている。

カゲヒト

真綺桜一郎の付き人をしている妖怪、ぬらりひょん。鳳泉閣には10年前にやって来た。見た目はイケメン青年のような姿をしているが、非常に永い歳月を生き抜いてきた妖怪。ぬらりひょんであるため、人の家や部屋に勝手に上がり込み、まるで古くからの友人であるかのように接する性質を持つ。腕っぷしがかなり強い。

カヲル

真綺桜一郎の付き人をしている妖怪、烏天狗。見た目は金髪碧眼の男性のような姿をしているが、性別は不詳で非常に永い歳月を生き抜いてきた。鳳泉閣では主に妖怪客の応対をする役割を担っており、人間の客の前に姿を現すことはあまりない。剣術が得意で、空を飛ぶ能力や雷をあやつる能力を持ち、戦闘能力は非常に高い。カゲヒトよりもずっと前から鳳泉閣にいるが、かつては鞍馬の山に住んでいたこともある。

誰そ影鬼 (たそかげおに)

人間の影を本体から切り離す力を持つ悪戯者の小鬼。見た目は角と尻尾の生えたフカフカの小動物のような姿をしている。饅頭が大好物で、カヲルに餌付けされてその従者となっている。もともと客として鳳泉閣にやって来たわけではなく、真綺桜一郎に悪戯して影を切ったあと、そのまま鳳泉閣までついて来て居着くようになる。

真綺 カズ江 (まき かずえ)

真綺桜一郎の祖母で、鳳泉閣の大女将を務めている。長年、その貫録で鳳泉閣をまとめ上げており、肝っ玉は非常に太いが説教が異常に長い。桜一郎には厳しく接しているが、お客様に対する態度はつねに真摯で誠実に対応している。

真綺 春椰 (まき はるな)

真綺桜一郎の母親。かつては鳳泉閣の有能な若女将として将来を嘱望されていたが、生まれつき体が弱かったこともあって桜一郎を出産した際に心身に変調をきたし、異形になりかけている。現在、完全な異形となってしまうことを防ぐために、鳳泉閣の離れの結界が張られた一間に幽閉されている。若女将だった頃の記憶や自我はすべて喪失しており、現在の自分は鳳泉閣で長湯治をしている客という認識で、息子である桜一郎のこともよくわからなくなっている。

真綺 典次 (まき のりつぐ)

真綺桜一郎の父親で、鳳泉閣の現当主を務めている。異形になりかけている妻、真綺春椰を人間に戻すための手段を探すべく旅に出ており、久しく鳳泉閣には戻っていない。しかしまったく音信不通というわけではなく、よく旅先の土産物を桜一郎に送っている。

百日 (ももか)

座敷童と呼ばれている妖怪の少女。昔、人間の少女と交した「また明日遊ぼうね」という約束を守って、ずっと天海温泉でその少女を捜し続けている。真綺桜一郎によって鳳泉閣に招かれ、百日紅(さるすべり)の下にいたという理由で「百日」という名を付けられた。

毬藻 (まりも)

楓川稲荷神社の森に住んでいる、化け狐の少女。楓川一家の親分である文蔵という化け狐の娘で、意に沿わぬ相手と結婚させられそうになったため、鳳泉閣に逃げ込んで、真綺桜一郎と結婚すると言い張ってひと騒動を巻き起こした。

ナショ神 (なしょがみ)

T県の倉野武(くらのたけ)村で祀られていた神。見た目は老人の姿をしている。鳳泉閣の料理について、「はかはか」が足りないから口に合わないと言い出し、宿の者たちが総出で調査することになる。ナショとは香辛料の那椒のことを意味しており、はかはかとは香辛料の温かい口当たりを指している。つねに女湯を覗きたがるなど、助平でおちゃめな性格をしている。

帰ろか火 (かえろかび)

天海温泉の鳳泉閣の近くで灯台守をしている妖怪。見た目は仮面をかぶった壮年男性のような姿をしている。海で遭難した者が沖から見てもわかるように、港で焚いたかがり火から生まれた妖怪で、基本的に灯台から離れることはない。本業ではないが、冥府への送り火を焚く力も持っている。

(かげ)

誰そ影鬼によって切り離された真綺桜一郎の影。見た目は桜一郎とそっくりだが、影であるため色は黒い。通常は誰そ影鬼の切った影は一晩で自然に元の場所に戻るが、桜一郎の霊力が強いために、この影は独自の自我と意思を持ち、本体である桜一郎の体を乗っ取ろうとした。

熊野目 (くまのめ)

鳳泉閣にやって来た人間の青年。ふつうの人間は鳳泉閣に入っても妖怪たちとは別のエリアで滞在することになるが、自殺志願者であった熊野目は生者と死者の狭間にいたため、誤って妖怪たちのエリアにまぎれ込むことになった。

アイリ

犬神と呼ばれる妖怪。複数の子犬が蠱毒を形成して生まれた集合霊であるが、人間に化けるときは少女の姿になる。自分たちを死に追いやった人間に復讐するため、人間の子供の体を乗っ取ろうとしていたが、真綺桜一郎によって阻止されて成仏する。

迦陵 (かりょう)

海神(うみがみ)の住まう海宮(わだつみのみや)の歌姫。見た目は若い女性の姿をしているが、人間なのか妖怪なのかは不明。海宮では時間の流れが地上と異なるため、迦陵の主観では1年に一度、人間界の尺度では12年に一度、骨休めのために鳳泉閣にやって来る。

場所

鳳泉閣 (ほうせんかく)

孝凛法師が開湯したといわれる、天海温泉にある温泉旅館。S県天海(あまみ)市に所在する。高台の上にあり、近隣一帯の中では最も古くから営業を続けている。神や妖怪が癒しを求めてやって来る妖(あやかし)のための旅館であるが、人間の客が泊まることもある。従業員として数多くの妖怪が働いている。鳳泉閣の敷地内には、天海温泉の源泉の力を受けて一年中咲き続ける万年桜が生えている。露天風呂の中には、人間が近寄れないような呪術を施された妖専用のものもある。「常闇の間」という妖怪のための部屋は現世から少し隔離された空間に作られており、内部は真っ暗で、その中では人間も妖の存在を認識することができる。

クレジット

原作

辻森 惺

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