あらすじ
第1巻
若いながらも冒険者として大成したデイル・レキは、魔物退治の依頼をこなすものの、ちょっとしたトラブルに見舞われ、山の中での野宿を余儀なくされる。一人、焚火を前に黄昏ていたデイルは、そこで魔人族の少女と出会う。言葉が通じずコミュニケーションに苦労したが、デイルは少女の名前がラティナで、彼女が仲間たちから追放され、家族とも死に別れ、たった一人であることを知る。彼女の家族らしき者の亡骸を埋葬したデイルは、ラティナを引き取ることを決意。クロイツの街へと帰還し、踊る虎猫亭の店主夫婦、ケニス・クリューゲルとリタ・クリューゲルの力を借りて、ラティナとの生活を始める。かわいらしく健気なラティナを見て、デイルは父性を目覚めさせすぐに彼女を溺愛するようになる。一方、ラティナも特異な経緯からワガママを言わず、言葉の通じない人間族の街での生活に必死に順応していく。そして言葉を覚え、仕事を少しずつ手伝い始めたラティナは、踊る虎猫亭の新しい看板娘として評判になり、常連客たちからも微笑ましく見守られるようになるのだった。
第2巻
デイル・レキは若いながらも高名な冒険者で、貴族からの依頼もたびたび舞い込んでいた。しかし遠方の貴族の依頼があると、ラティナと離れ離れになってしまう。ラティナと離れることを心配したデイルだったが、当のラティナは気にする素振りも見せずに彼を送り出し、二人は一時的に離れ離れとなる。ラティナは気丈に振る舞っていたが、デイルのいない日々に次第に寂しさを募らせていく。そんなラティナを見ていたケニス・クリューゲルは、彼女に料理を教えることを提案。ラティナは帰ってきたデイルを喜ばせるため、ケニスから料理を学ぶことにする。一方、デイルは依頼主である公爵の息子、グレゴールにラティナに会えない愚痴を言っては彼を困らせていた。辟易したグレゴールは、ラティナへのお土産を口実にデイルをうまく導き、無事に凶悪な魔族を打ち倒す。無事依頼も終わり、デイルはすぐさまラティナへのお土産を抱えてクロイツに帰還。デイルは上達したラティナの料理で労わられ、感動するのだった。
第3巻
デイル・レキは、小柄なラティナが5歳くらいだと考えていたが、彼女はすでに7歳で、もうすぐ8歳になるところだった。クロイツの街では、子供は8歳になると黄の神の学び舎に通うこととなるため、デイルは慌ててラティナが学び舎に通うための準備を開始。ほどなくラティナは友人のクロエ・シュナイダーたちと学び舎に通い始める。学び舎の教師の話は楽しく、新しい友達もできて充実した日々を送るラティナだったが、ある日、新しい教師に教わることとなる。新任教師はふだんは素行はまじめだが、人間族以外の人族を亜人と見下す差別主義者で、ラティナは新任教師に魔人族であることがバレ、学び舎でその秘密を暴露されてしまう。心無い言葉を浴びせられたラティナは深く傷つき、残った自らの角を折って、大ケガを負う。ケニス・クリューゲルが早期に発見したことで事なきを得たラティナは、デイルやクロエたちに励まされ、気持ちを新たにする。一方、怒り心頭のデイルは黄の神の神殿を訪問。件の教師に裁定を下すよう依頼し、ラティナの平穏を守ろうとする。
第4巻
ラティナは再び学校に通い始め、穏やかな日々を過ごすようになる。そんな中、ラティナは友人たちと過ごすうち、デイル・レキが自分に過保護すぎなのではないかと徐々に気づき始める。デイルが喜ぶ姿を見ていたいと思いつつ、このままではいけないと感じたラティナは、感謝の気持ちとしてデイルに贈り物をすることを決める。ラティナからそのことを相談されたケニス・クリューゲルは、彼女の接客に助けられていることもあり、彼女を正式に踊る虎猫亭の従業員として雇い、贈り物を買うためのお金として彼女に給金を渡すことを決める。そして一生懸命に仕事をしてお金を稼いだラティナは、そのお金で大きな布を買い、手作りポーチを作ってデイルにプレゼントするのだった。大喜びのデイルはケニスたちと会話し、そこでも喜ばしい知らせとしてリタ・クリューゲルの懐妊を聞かされる。ラティナが自分の思っている以上に看板娘として活躍している話も聞き、デイルはリタが子育てで忙しくなる前に、防具の新調のため一度ラティナを連れて故郷に戻ることを決める。
第5巻
デイル・レキは故郷へ戻ることを決めるが、今回は仕事ではないこともあり、デイルはラティナをいっしょに連れていくことを決める。相変わらず過保護気味なデイルは、ラティナのため高価な旅の道具を買い集め準備を整える。そしてラティナと共に旅立ったデイルは、ラティナが周囲の危険に非常に敏感なことに気づく。加護とも違うラティナの謎の能力を疑問に思いつつも、デイルとラティナは旅を続ける。そして二人は港町、クヴァレに到着。ラティナは異国情緒あふれる街並みを楽しみ、初めて見るばかりの街に興奮する。そんな中、デイルとラティナは、レストランで食事中に店で演奏する女性に注目する。ラティナの持つ腕輪と同じ物を身につける女性に興味を覚えた二人は、女性に頼み込んで、腕輪にまつわる話を聞くこととなる。
関連作品
小説
本作『うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。』はCHIROLUの小説『うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。』を原作としている。原作小説版は、本作と同じく冒険者のデイル・レキが魔人族の少女のラティナを拾い、子育てに奮闘するファンタジー小説となっている。ほかにも、CHIROLUが「小説家になろう」に投稿している、本作と世界観を共有する小説『虹の見守る世界の物語』シリーズもある。このシリーズの一作『素直になれない彼女と、戦斧を包丁に持ち変えた彼。』では、本作にも登場するケニス・クリューゲルとリタ・クリューゲルの馴れ初めが描かれている。
メディアミックス
TVアニメ
本作『うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。』のTVアニメ版『うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。』が、2019年7月から9月にかけて、TOKYO MX、インターネット配信ほかで放映された。制作はMAHO FILMが担当している。デイル・レキ役を岡本信彦、ラティナ役を高尾奏音が演じた。TVアニメ版の内容は、デイルがラティナを拾ってから、ラティナが学び舎を卒業するまでの内容が描かれている。またTVアニメ化にあたり、WEBアニメ『ラティナの日記』も制作され、2019年4月29日から9月24日にかけて、公式Twitter上で公開された。
登場人物・キャラクター
デイル・レキ
冒険者の青年。登場時点の年齢は18歳。茶色まじりの黒髪をした若者で、冒険者としては若輩者ながらもすご腕と評判の人物。魔物の討伐中、ラティナと出会い、身寄りのない彼女を養子として育てることを決める。冷静沈着な性格で、魔法も使いこなす。そのため、言葉が通じないラティナとも当初から呪文言語を使って会話をすることができた。ふだんはまともに振る舞っているが、ラティナに父性を目覚めさせ、過保護ともいえる溺愛っぷりを見せる。冒険者として結構稼いでいるが、その大金をラティナのためにつぎ込んでは周囲を呆れさせている。実は高位の加護を持ち、神官としてもかなり高い地位に就いている。
ラティナ
魔人族の少女。登場時点の年齢は7歳。白金色の髪に灰色の瞳を持つ幼児で、年齢のわりに小柄な体型をしている。魔人族の特徴である2本の黒い角が側頭部から生えていること以外は5歳ほどの人間の子供のような姿をしている。子供であるため自らの出自もよく理解しておらず、罪人として左の角を折られ、父親の亡骸のそばにいたところ、デイル・レキに拾われる。子供らしい無邪気で明るい性格をしているが、魔人族の自分が人間の街で暮らすことの意味も朧気ながら理解しており、子供ながら周囲に遠慮し、聞き分けのよい子供として振る舞っている。折れた角に大きなリボンを付け、ふだんは魔人族としての正体を隠して、踊る虎猫亭で看板娘として働く。当初はお世話になっている店の手伝い程度だったが、愛らしく健気な様子から常連客に気に入られ、正式に雇用される。今では彼女抜きでは店が回らないと言われるほどで、大活躍している。金銭感覚もしっかりしており、正式に雇用されてから給金ももらっているが、必要な分以外は貯金に回している。努力家で記憶力がいいため、学習能力が非常に高い。当初は人間の言葉をしゃべれなかったが言葉をすぐに覚えたほか、接客業を見様見真似で覚えたり、魔法のコツを聞いただけですぐに使いこなしたりして、周囲を驚かせている。
ケニス・クリューゲル
踊る虎猫亭の店主を務める中年の男性。大柄な体型で、ヒゲを生やしている。元冒険者で、現在はリタ・クリューゲルと結婚し、踊る虎猫亭の店主兼料理人として働いている。デイル・レキとは昔馴染みで、彼に頼まれてデイルの留守中、ラティナの面倒を見ている。ラティナの面倒を見ているうちに、その健気な姿に絆(ほだ)される。当初は荒くれ者たち相手の客商売であるため、お菓子のレパトリーは多くはなかったが、ラティナを喜ばせるためにお菓子作りを始めた。また、のちにラティナに料理を教えている。凝り性な職人気質で、彼の作る料理やお菓子は絶品と評判。年長者としてラティナの相談にたびたび乗っており、彼女の悩みを解決している。その一環で、ラティナを踊る虎猫亭の正式な従業員として雇い、給金の管理の仕方も教えた。
リタ・クリューゲル
ケニス・クリューゲルの妻。黒い髪をポニーテールにした若い女性で、朗らかな性格をしている。夫のケニスと共に踊る虎猫亭を切り盛りしており、店の事務や接客を担当する。デイル・レキが連れてきたラティナをかわいがっており、何かと彼女の面倒を見る。同性の年長者としてラティナに色々アドバイスをするほか、保護者のデイルに対しても女の子の生活の大変さを教えている。ラティナが来るまでは看板娘だったが、ラティナが自分の見様見真似で接客を覚えてからは、接客を彼女に任せることも多い。また、ケニスの子を妊娠して以降は、出産や育児のために店で働ける時間も少なくなり、ラティナがいなければ店が回らなくなると零(こぼ)すほど、彼女を頼りにしている。
クロエ・シュナイダー
クロイツの街に住む茶色の髪をした少女。登場時点の年齢は8歳。男勝りな性格をしたおてんば娘で、近所の子供たちのリーダー的な存在。ラティナがルドルフ・シュミットに絡まれているのを助け、彼女と友達となる。面倒見のよい性格で、何かとラティナの世話を焼いており、のちに魔人族と知っても変わらず友人として接している。実家は仕立て屋で、裁縫ができる。ふだんは嫌々ながら家の手伝いをしているが、ラティナが裁縫を習い始めてからは対抗心を燃やし、メキメキと腕を上げている。
シルビア・ファル
クロイツの街に住む少女。登場時点の年齢は8歳。明るめの茶色の髪を肩口で切りそろえ、おしゃれに気を使っているため年齢よりも大人びた雰囲気を漂わせている。ラティナたちが黄の神の学び舎に行くようになって知り合う。さっぱりとした性格で、ラティナやクロエ・シュナイダーと意気投合し友人となる。ラティナが魔人族と知っても態度を変えることなく、友人として付き合っている。街の中でも裕福な家の生まれで、父親は領主館の憲兵をしている。
ルドルフ・シュミット
クロイツの街に住む少年。登場時点の年齢は8歳。赤毛の髪をした子供で、明るく活発な性格をしている。年齢相応に少し乱暴なところがあり、ラティナと初対面の際、悪気はなかったがラティナに絡んでしまう。クロエ・シュナイダーがあいだに入ったことで誤解が解かれ、すぐにラティナと友人となる。ラティナのことが気になっており、何かと彼女にちょっかいを出しては、クロエに怒られている。実家は鍛冶屋を営んでおり、兄と姉が一人ずついる。
マルセル
クロイツの街に住む少年。登場時点の年齢は8歳。金色の髪を短く切りそろえて眼鏡をかけ、ぽっちゃりとした体型をしている。穏やかでのんびりとした性格をしており、ルドルフ・シュミットやアントニーといっしょによく遊んでいる。ルドルフの起こした問題に巻き込まれ、クロエ・シュナイダーにルドルフといっしょに怒られるという経験を重ねたため、年齢の割に達観しており、非常に聞き分けがいい。実家はパン屋を営んでおり、将来は実家を継ぐつもりでいる。
アントニー
クロイツの街に住む少年。登場時点の年齢は8歳。黒い髪に青い瞳をした子供で、すらりとした体型をしている。頭の回転が速く、要領がいいため黄の神の学び舎での成績も優秀。ルドルフ・シュミットやマルセルとなかよしで、よくいっしょにいることが多い。父親は領主館で働いているが、世襲制の仕事ではないため、将来働く選択肢を増やすためにも、学び舎を卒業後は高等学舎に進学するつもりでいる。
グレゴール
エルディシュテット公爵家の三男坊。長く伸ばした黒い髪を後ろで一つ結びにした青年で、精悍な顔立ちをしている。国内でも屈指の名家の出身ながら、後妻の子ということで立場が弱く、兄たちの存在もあるため実家の後継者争いには見切りをつけている。それらの経緯から貴族としての立場にも固執しておらず、剣の腕を鍛え、領内の荒事を冒険者と共に解決している。デイル・レキとも依頼を通じて知り合い、気心が知れた友人関係となる。最近はラティナを保護してから親バカになったデイルに辟易している。
ジルヴェスター・デリウス
ヒゲを生やした初老の冒険者の男性。強面で、老いてなお初対面の人間は思わず怯えるほどの迫力を持つ。近隣諸国にまで名が轟くほどの数々の伝説を残す高名な冒険者で、現在は半ば引退し、冒険者や町民の相談役として過ごしている。踊る虎猫亭の常連客で、ラティナを自分の孫のようにかわいがっている客の一人。基本的に気難しい人物だが、ラティナの頼みだけは喜んで受けている。またラティナを喜ばすためだけに、町の顔役としての立場を活かしてサーカスの興行に便宜を図ったり、デイル・レキに負けず劣らずラティナへの溺愛っぷりが加速しつつある。
場所
踊る虎猫亭 (おどるとらねこてい)
クロイツの南地区にある酒場。虎猫の意匠をした看板が目印で、主な客層は冒険者や旅人。酒場として飲食を提供しているほか、緑の神の認可を受けた店であるため、神殿から賞金首や災害の情報をもらい、その情報の掲載も行っている。町民と冒険者の依頼の斡旋も行っているため、冒険者が入り浸っているが、そのせいで人相が悪い人が集まる場所となっており、一般人には近寄りがたい場所となっている。
クロイツ
ラーバンド国にある都市。北には他国への窓口である港町があり、南には王都が存在するため、クロイツはその双方をつなぐ中継地点としての役割を担っている。各地から人と物が集まる交易の拠点として栄え、王都に次ぐほど規模を持つ町となっている。また街に暮らすのは人間族がほとんどだが、人が集まる関係上、人間族以外の種族にも寛容な土地柄となっている。
その他キーワード
冒険者 (ぼうけんしゃ)
未知の地を探求する職業。英雄譚などで語られることが多い職業だが、実際には明確な定義などは存在しない自称的な職業で、誰でも簡単になることができる。流れ者や荒くれ者が多く、まとまりのない集団であるが、緑の神の出張所で情報や仕事を仕入れることで辛うじて職業として成立している。冒険者の仕事は危険な魔獣の駆除から街の雑用まで多岐にわたり、一部の高位冒険者は貴族のお抱えになるケースも存在する。一方、実力のない冒険者は、街で下働きしている者が多く、理想と現実のギャップにあえいでいる。
人族 (ひとぞく)
7種の人種族の総称。ふつうの人間のような姿をした「人間族」、ずんぐりむっくりとした体型の「鉱人族」、長い耳を持つ「妖精族」、獣の特徴を色濃く持つ「獣人族」、背に翼を持つ「翼人族」、鱗で覆われた体を持つ「水鱗族」、そして人族の中で最も強いものの謎が多い「魔人族」が該当する。それぞれ見た目も文化も違うが、一部では交流があり、交わることで互いに種族を残すことができるため、本質的には同じ種族という考え方が一般となっている。ただし寿命や生活様式の違いから偏見もあり、一部では差別されたりする。他種族同士の子供は、ほとんどはどちらか一方の親の種族の特徴のみを引き継いで生まれる。ただ人間族と獣人族のように近しい性質を持つ場合、両種族の性質が混ざり合った子供が生まれることがあり、その子供は「混血(ミックス)」と呼ばれる。妖精族の混血は寿命が半分となるため、親よりも子供の方が早く亡くなることが多い。このため、妖精族は混血を忌避する傾向にある。またそれぞれの人族は「種族特性」と呼ばれる能力を有しており、翼人族が空を飛んだり、水鱗族が水中で呼吸できたりする能力がこれに当たる。目立った特徴のない人間族は、道具の扱いに秀でているのが種族特性とされ、魔道具を作り出す「魔法付与」の力に高い適性を持つ。
魔人族 (まじんぞく)
7種存在する人族の一つ。頭から角が生えていること以外は人間族と余り変わらない外見をしているが、寿命が長く、7種族中最大の能力を持つのが特徴。ほかの人種は魔法は適性のある者しか使えないが、魔人族は種族特性としてほぼ全員が使えるため、魔人族は「すべてが生まれながらの魔法使い」とも呼ばれる。このため魔人族の使う言葉は呪文言語とほぼ同じで、呪文言語さえ話せれば他種族でも会話ができる。魔人族は高い能力を持つが、同時に排他的で、他種族との交流はほとんどない。また排他的な分、仲間意識は強く、特に子供は数が少ないだけあり大事にされる傾向がある。仲間意識が強い分、追放刑が重い罰として採用されており、罪を犯した魔人族は角を片方だけ切り落とされて追放される決まりとなっている。これらの情報からラティナが子供にもかかわらず追放刑をされているのは大きな謎とされている。魔族になる者は魔人族が圧倒的に多く、また魔王も魔人族に似た姿をしているため、魔人族も魔王に連なる邪悪な存在だと差別する者が一定数存在する。
魔族 (まぞく)
魔王の眷属。魔族は世界に7体存在するいずれかの魔王の配下として行動している者たちの総称で、魔人族のように種族的な総称ではない。魔族にはさまざまな種族の者たちがおり、その姿かたちもそれぞれ違う。魔族となった者は、もとの種族を超える力を身につけ、主である魔王の意に沿って行動するようになる。また魔族は7種族の人族だけではなく、高い知性を持つ「幻獣」などがなるケースもあり、人の姿をしているとは限らない。魔王に関してはあまり判明しておらず、魔王は魔人族と同じく2本の角を生やした人族の姿をしており、魔族も魔人族の数が圧倒的に多いため、一部には魔人族も魔王に連なる者だと敵視する者も存在する。
緑の神 (あくだる)
世界の理を司る「七色の神」の1柱。情報を司り、旅人を守護する神で、緑の神を奉る神殿ではありとあらゆる情報の収集を行っている。徽章は緑の天馬。集めた情報の中には賞金首や危険な魔物、災害に関する情報も存在するため、それらの情報は認可した店などを通じて市井に通知している。また緑の神の認可した店は、情報が集まる場所であるため必然的に旅人や冒険者の集まる場所となり、それに応じて冒険者向けの依頼なども集まる傾向がある。
黄の神 (あすふぁる)
世界の理を司る「七色の神」の1柱。学問を司り、支配者を守護する神で、ある程度大きな町の黄の神を奉る神殿には学び舎が併設され、就労前の子供たちに最低限の教育を行っている。黄の神が信徒に求めるのは「知識を求める者を導くこと」「生きる道に迷う者を導くこと」で、自然と黄の神官には教師として働く者が多い。クロイツの街では、子供は8歳の秋から黄の神の学び舎に通うこととなるため、識字率が高くなっている。
青の神 (あずらく)
世界の理を司る「七色の神」の1柱。商業を司り、貨幣を守護する神で、青の神を奉る神殿は通貨の両替や金庫としての役割を担っている。徽章は青のイッカクで、海洋を司る神ともされる。青の神の与える加護は「当人を見分ける」というものが多く、他人による成りすましを防ぐ効果がある。このため加護持ちの神官によって行われる金庫の管理・運用は、信用度が高く、顧客には貴族や大手商会も多い。金庫の登録は神具を使って行われ、カード状の認識札を発行して金庫と紐づけする。金庫はお金だけではなく貴重品を預けることも可能。お金は青の神の神殿ならばどこでも引き出すことができるが、預けた品物は預けた神殿でなければ引き出すことはできない仕組みとなっている。また青の神の神殿は職務の関係上、貴重品が大量にあるため赤の神の神殿に並ぶほど警備が厳重となっている。
赤の神 (あふまる)
世界の理を司る「七色の神」の1柱。戦を司り、裁きと調停を守護する神で、赤の神を奉る神殿は国家権力にすら縛られず、独自の裁きを下す機関として知られている。また戦の神として知られる赤の神の信徒には精強な者が多いのが特徴。争いに対して無慈悲なほど「適切な裁き」を下すため、不正を犯した者たちからは恐怖の代名詞として知られている。また赤の神はほかの神々の神殿に対してもいっさい容赦せず裁きを行うため、神殿同士の調停でもその姿を見ることがある。
加護 (かご)
神が信徒に与える奇跡の力。加護の与える能力は、信仰する神や個々人によって違いがあり、さまざまな種類が存在する。神は自らの領域内の者を守護するために加護を与えるが、逆にその力を悪用し、罪を犯す者を絶対に許さないという側面を持つ。罪の内容は神々によって違うが、貨幣を守護する青の神の場合は、窃盗や横領など「他人の財を汚す行為」がこれに当たり、罪が露見し神に問われると、加護を失ってしまう。ただし神が問う罪は人間の法とは異なるため、青の神の場合、他人の財を汚す以外の殺人などの罪を犯したとしても神が罪に問うことはない。罪を問うのは高位の神官にのみ許されている「裁定」と呼ばれる特別な行為をして行われる。罪に問われ、加護を失った信徒は神殿から追放されるため、信徒にとって加護を失うのは死活問題に直結する。このため神々の信徒に職務上の不正は許されず、自然と彼らの社会的な信用の上昇へとつながっている。
魔法 (まほう)
魔力を用いて行使する技。魔力は誰しも持ちうるものだが、魔法を行使するための素質である「属性」は個々人によって違い、魔法は適正のある属性のものしか使えない。属性は「天」「地」「水」「冥」「火」「風」「央」の七つで、これらは図で「央」を中央に六つの属性が円形に並ぶように記される。適正は独立した属性である央属性一種か、もしくは正反対の属性を2種、親和性の高い3種を持つことが多い。魔法を行使するための過程は、使う「属性を指定」し、その力の「制御を明確化」して、「現象を明確化」することで行われる。最終段階まで進んだ魔法は「呪文言語」によって「現象名」を告げることで発動する。
呪文言語 (じゅもんげんご)
魔法を使う際に用いる特殊な言語。使う単語が多く、文章が長くなればなるほど、魔法の威力は強力となるが、使う魔力が多くなり、制御も困難となる。そのため使う単語を敢えて少なくし、文章を短くすることで使い勝手を向上させた「簡易式」というものも存在する。簡易式は威力は低いものの、魔力の消耗が低く、制御もしやすいという利点が存在する。また魔法の属性と同じく、呪文言語も使うための適性が存在し、大多数の人族には適性が存在せず、発音すらできない。唯一の例外は魔人族で、魔人族は種族特性として高い魔法への適性を持ち、すべての魔人族は呪文言語をあやつることができる。このため魔人族は呪文言語を常用語としており、呪文言語を話せる者ならば他種族の者とも会話が可能。
魔道具 (まどうぐ)
魔法の力を宿した道具の総称。夜の街を照らす灯りや食料を保存するための冷蔵庫などさまざまな種類が存在し、人々の生活を支えている。また魔法を使う際、その制御を助ける「補助具」も存在し、これを利用することで魔法の効率は大幅に上昇する。魔道具の最大の特徴は、適正以外の属性の魔法を使える点にあり、魔力さえあれば誰でも使うことができる。魔道具の製造は人間族の種族特性「魔法付与(エンチャント)」によって作られるため、魔道具は人族の特産品となっている。このため人族と交流がない魔人族は、ほとんど魔道具を持っていないとされる。また魔道具は有用な物が多いが、その分、貴重で非常に高価。
クレジット
- 原作
-
CHIROLU
- キャラクター原案
-
景・トリュフ
書誌情報
うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。 6巻 KADOKAWA〈MFC〉
第1巻
(2017-01-23発行、 978-4040687865)
第2巻
(2017-08-23発行、 978-4040693699)
第3巻
(2018-02-22発行、 978-4040696812)
第4巻
(2018-08-23発行、 978-4040650463)
第5巻
(2019-06-22発行、 978-4040657660)
第6巻
(2020-10-23発行、 978-4040659992)
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