あらすじ
第1巻
高校1年生の神庭夜一は、子犬のライルとなり、魔法大国リンファルドイルガリアの王子、リンカーネルにかわいがられる、という不思議な夢を毎晩見ていた。16歳を迎えたリンカーネルは成人の儀に臨むが、儀式の最中に水の神、リュスインに見初められ、連れ去られてしまう。そして、リンカーネルを助けようとしたライルがリュスインに殺されたところで、いつも目が覚めるのだった。夢の中のリンカーネルを愛おしく思う夜一は、自身の前世はライルだったのではないかと思い悩む。そんなある日、夜一は占いの店で、怪しげな謎の占い師に魔法のコインをもらう。その夜、魔法のコインを持ち、眠りについた夜一は、魔法大国リンファルドイルガリアに立っていた。そして西の森でリンカーネルを見つけるが、そこで目が覚めてしまう。翌日、夜一は占い師に魔法のコインを取り上げられてしまうが、異世界に執着する夜一は占いの店に忍び込み、魔法のコインを勝手に持ち出してしまう。その晩、夜一はさっそく魔法大国リンファルドイルガリアの城下町に降り立つが、ミラ=オルドとシャイ=オルドという双子の兄弟に捕まってしまう。夜一は、なぜか歌姫のティアを誘拐した主犯とされていたのだ。ティアの正体は、夜一の現実世界の知人である天王寺若葉で、彼女は夜一を陥れようとしていたのである。しかし、処刑されそうになったところで、夜一はミラとシャイにより命を救われる。彼らは前世では、ライルすなわち前世の夜一の兄犬だったというのだ。懐かしさを覚えた夜一は二人に心を許し、三兄弟は、リュスインに連れ去られたまま行方のわからなくなっているリンカーネルを救い出す事を決意する。
第2巻
魔法大国リンファルドイルガリアでの暮らしに馴染んでいく神庭夜一だったが、ティア誘拐容疑をかけられた際にシャイ=オルドに雷魔法を当てられた事を根に持ち、未だにシャイに素直に甘えられずにいた。なんとかして夜一の機嫌を取りたいシャイは、花好きの夜一が喜びそうな幻の花、セルリアンセレスを摘みに天空の湖へと向かう。一方、予知能力を持つティアがシャイの死を予言した事で、夜一とミラ=オルドは慌ててシャイを追う。天空の湖に着いた夜一は、無事にシャイを見つけるが、同時にリンカーネルとも対面。そして水の神、リュスインにあやつられている様子のリンカーネルに攻撃を受け、夜一ら三兄弟は重傷を負ってしまう。三兄弟を救った護衛のゲート・ジルは、ティアのもとへ赴き彼らの治療を依頼。そこでティアは一瞬のスキを突き、夜一にナイフを突き刺すのだった。
ティアに刺されたショックで現実世界に戻って来た夜一は、天王寺若葉に文句を言おうと彼女の入院している病室を訪れる。そこで、夜一は若葉の母親に会う。中学1年生の時に彼女が事故で意識不明になってから、もう3年が経つ。このままでは死んでしまうと泣き崩れる母親を前に、夜一は若葉が現世に戻らない理由が理解できず、首をかしげるのだった。その夜、再び魔法のコインの力で魔法大国リンファルドイルガリアに戻った夜一は、ティアを捕まえて事の次第を聞く。若葉が現世に戻らない理由が、持っていた魔法のコインを奪われてしまったせいだと知った夜一は、共に探す事を約束。かくしてティアこと若葉は夜一に心を開き、強力な味方となるのだった。ある日の深夜、夜一はリンカーネルを連れ去られた事で心が折れた女王のジェラが、夢遊病者のように城中を徘徊する姿を目撃。ジェラを助けたい夜一は、ミラの助言で東のトアリスの街に至高の回復薬、幻のティアスを買いに行く。無事に幻のティアスの買い付けに成功した夜一は、一晩トアリスの街の近くの湖のほとりで宿を取り、薬の完成を待つ。しかし、その日の深夜、幻のティアスの精製を依頼していたトアリスの薬士、フィスが、夜一の目の前でリンカーネルに刺殺されてしまう。
第3巻
フィスを刺したリンカーネルと対峙した神庭夜一は、リンカーネルに忠犬ライルとして再び共に在りたいと訴える。だが、リンカーネルは、魔法を使えない役立たずに用はないと一蹴し、夜一を攻撃するのだった。凄まじい攻撃を受けて夜一は意識を失ってしまうが、目覚めると、夜一の息の根をとめる事を躊躇したリンカーネルは、すでにその場を去っており、目の前には殺されたはずのフィスに加え、ミラ=オルドとシャイ=オルド、ゲート・ジルがいた。彼らに事情を聞くと、ジェラに渡すはずだった至高の回復薬、幻のティアスをフィスに使用したのだという。だが、いくら幻のティアスでも死人を生き返らせる事はできないはず。困惑する一行は、トアリスの街が50年間、時間の流れが止まったままであり、街の人々が不死になっているという真相を知るのだった。
トアリスの街の一件を城に報告した夜一は、ゲートに魔力を覚醒させるための修行に誘われる。修行の最中、夜一は魔法大国リンファルドイルガリアでライルとして生きる事を決めた場合、現世にある自身の本体はどうなってしまうのかと考える。そして、天王寺若葉のように寝たきりになり、周囲の者を心配させるかもしれないが、リンカーネルと共に在る事が何よりも大事だという結論に至る。この決意により、夜一の魔力はついに覚醒。この夜一の魔力は、リンカーネルと同じく世界に無二の光属性のものであった。やがて修行を終えて城に戻った夜一とゲートは、パトス・ガルディアが何かのトラブルに巻き込まれて、城から連れ出された事を知る。トアリスの街郊外の研究所に忍び込んだ夜一は、フィスに案内人を頼み、無事にパトスと落ち合うが、脱出の際、大量の魔法のコインが浮かぶ部屋に入り込んでしまう。
第4巻
大量の魔法のコインが浮かぶ部屋で、ミスティ・ミストラルの策により、生きる屍であるフィスが凶暴化し、パトス・ガルディアは殺されてしまう。息絶えたパトスを見てゲート・ジルは正気を失うものの、神庭夜一の言葉に落ち着きを取り戻す。そして城へと帰還したゲートは、殺されたはずのパトスが記憶を失い、生き返っている事を知る。困惑したゲートは、事情を知る国王を問いつめるが、逆に幽閉されてしまう。ゲートを助けに行った夜一は、彼と共に国王に捕らえられそうになるが、そこをリンカーネルに救われるのだった。そしてリンカーネルは、夜一らを水の神、リュスインのもとへと連れていく。前世でリュスインに殺された事を恨む夜一は牙をむくが、リュスインはそんな夜一に対し、当時の真実を語り始める。魔法大国リンファルドイルガリアの国王は、50年前にトアリスの街の人々を殺害。そして殺されたトアリスの人々の体から現れた魔法のコインを集めたのちに、魔法を使ってトアリスの人々を生き返らせた。さらに年月を経て彼らが魔力を取り戻した頃に再び殺害し、新たな魔法のコインを得るという事を繰り返していたのである。しかも、それはトアリスの街だけでなく、同じような被害にあった街が国内に18もあるという。神々は、国民を犠牲にして魔力を多量に蓄えようとする国王を正そうと、魔法大国リンファルドイルガリアの消滅を計画していた。だが、それを察したリュスインがリンカーネルを連れ去って人質とする事で、国王のそれ以上の暴挙を止め、魔法大国リンファルドイルガリアの消滅を回避していたのだった。それを知った夜一は、国民を犠牲にして魔力を得ようとする国王を諫めるため、立ち上がったリンカーネルに、力を貸す事を決意する。
登場人物・キャラクター
神庭 夜一 (かんば よいち)
高校1年生の男子。前世は魔法大国リンファルドイルガリアの王子、リンカーネルの忠犬、ライル。ライルは魔法大国リンファルドイルガリアの古語で「夜」を意味し、リンカーネルが名付けた。生まれてからずっと病弱で生死をさまよっていたが、無事に夜を越えて生きながらえた事から、これからもいくつもの夜を越えていけるようにと願い、名付けられた。 神庭夜一は母子家庭で育ったが、10歳の時に母親を亡くし、以後、葬式の日に引き取りに来た父親の家に住んでいる。母親は、いつも遊びに来ていた夜一の同い年の友達、神庭薫が、川で溺れたのを助けようとして亡くなった。その後、夜一は父親に連れられて行った先で紹介されたのが薫だった事から、薫に対して非常に複雑な感情を抱いている。 夜一は接し方のわからない継母や薫と過ごさねばならず、居心地の悪い家庭環境に悩んでいる。高校では共に過ごす友人達には明るく振る舞っているものの、心を開いていない。母親を亡くしてからは、自分には本当に近しい存在がいなくなったのだと絶望して、夜な夜なリンカーネルの夢を見るようになった。前世でライルだった時には花が好きで、よく食べていた。 水の神、リュスインに殺されたトラウマから水が苦手で、泳げない。ゲート・ジルとの修行の結果、魔力覚醒に成功するが、光属性の魔力は魔法大国リンファルドイルガリアで、唯一リンカーネルの持つ魔力属性と同じものだった。光属性の魔力は火、水、風、川、氷、地、聖、癒しという、闇以外のすべての力を持っている。 なお、母親は実は魔法大国リンファルドイルガリアの伝説の歌姫、ティアスミリスで、国民を犠牲にして多量の魔力を集めようと企む国王に意見したところ、現世へ飛ばされた。その後、夜一の父親と出会い、夜一を身ごもったという経緯がある。
リンカーネル
魔法大国リンファルドイルガリアの王子で、年齢は16歳。光属性の魔力を具えており、同じ属性の人間は魔法大国リンファルドイルガリアに一人もいない。本名を「リンカーネル=リンファルド=イルガリア」と言い、次期国王予定者である。リーガルという兄がいたが、彼は生後まもなく何者かに連れ去られた。無類の犬好きで、特に兄弟の中で一番小さかったライルをかわいがっていた。 歴代の王子の中でも最高の魔力を持っており、その力は自身でコントロールできないほどである。そのため、16歳の成人の儀を迎えるまで魔力を封印される事になった。冒険心の強さが仇となり、天空の湖で水の神、リュスインの姿を見てしまった事から、リュスインに見初められ、成人の儀の最中にリュスインに連れ去れられる。 魔力のほか、ゲート・ジルに師事していた事から剣技にも秀でる。
パトス・ガルディア (ぱとすがるでぃあ)
魔法大国リンファルドイルガリアで、城仕えの召使いをしている女性。実家は名門ガルディア家で、貧しいが、歴史も古い貴族家系の出身である。ゲート・ジルとは親の決めた許嫁同士であり、非常に仲がいい。リンカーネルとも世間話をするような砕けた仲であったが、リンカーネルが水の神、リュスインに連れ去られたあとは、行方を追うゲート達騎士の身の回りのサポートを積極的に行うようになった。 非常に姉御肌で、サバサバした性格である。
天王寺 若葉 (てんのうじ わかば)
高校1年生の女子。中学1年生の時に遠足で登山した際に滑落し、以後意識不明状態で入院している。神庭夜一とは小学校と中学校が同じで、ピアノを弾いたり歌ったりする事が得意な天王寺若葉は、校内で目立つ存在であったため、当時の級友の多くが若葉のファンで、夜一も少なからず惹かれていた。魔法大国リンファルドイルガリアでは、歌姫、ティアとして朝晩に魔法の歌を歌い、国中に結界を張る重責を負う。 癒し属性の魔力を持っているため、癒しの能力に特に秀でている。先代の歌姫、ティアスミリスに酷似した容姿だが、前世が魔法大国リンファルドイルガリアの住人ではなかったため、魔法大国リンファルドイルガリアに来た当初は言葉がわからなかった。そのため盗賊に襲われて人身売買されそうになるなど、非常に危険な目に遭った。 盗賊団から騎士達に助け出されたあと、たまたま自身の歌に強力な魔力を持っている事を知り、城へ迎えられる事になった。その時以来、近衛兵の名門、センシズ家のイルリオットが側近として四六時中そばに侍る事となる。ティアは非常に多才で、歌う歌には傷を治す癒しの力があり、ほかに予知能力を持っている。 ただし、垣間見えた未来を自身の感じるままに言葉に置き換えるだけの能力のため、見たものへの彼女の主観次第で予言が外れる事もある。夜一と魔法大国リンファルドイルガリアで出会った当初、現世に戻れなくなる前に夜一をもとの世界に戻そうと、あえて冷酷に振る舞っていた。自らが魔法のコインを奪われたために現世に戻れなくなった事情を夜一に話したあとは、共に魔法のコインを探す約束をしてくれた夜一に心を許すようになった。 現実の世界と魔法大国リンファルドイルガリアをつなぐ魔法のコインは、小さい頃に本屋で購入して以来の宝物で、つねに病院の個室で若葉の傍らに置かれている。
神庭 薫 (かんば かおる)
高校1年生の男子。神庭夜一の異母兄弟。夜一が10歳の時、夜一の母親が自分をかばって死んでからは、夜一に心を閉ざし、不愛想に振る舞うようになった。高校では「黄昏の貴公子」と呼ばれて女子に絶大なる人気がある。魔法大国リンファルドイルガリアでは、小動物、うなとして、夜一のそばに付き従い、冒険をサポートする。
謎の占い師 (なぞのうらないし)
神庭夜一の通学途中に占いの店を構えている占い師の男性。フードを目深にかぶり、眼鏡をかけているため素顔は見えない。しかし、初対面の夜一が複雑な家庭事情を告白するほど、気の許せる雰囲気を漂わせている。同時に非常にミステリアスな空気をまとっており、夜一が、自身の前世がライルという子犬だったのではないかと聞くや、魔法大国リンファルドイルガリアとつながる魔法のコインを手渡す。 実は魔法大国リンファルドイルガリアでの名を「レイス」といい、在住する魔法大国リンファルドイルガリアで眠ると現世に来る事ができる。ティアスミリスの親衛隊長を務めていた人物で、ティアスミリスの息子である夜一を温かく見守る。
ゲート・ジル (げーとじる)
魔法大国リンファルドイルガリアの騎士を務める男性。「炎を斬る男」の異名を持ち、その異名通りに炎の攻撃を斬撃で払う事ができる。公爵家の一人息子だが、生まれつき魔力を持たないシフスとして生まれた事で、過剰な侮蔑を受けて育つ。魔力を持たない代わりに剣術を磨き、シフスでありながら騎士になった努力の人。騎士団入団試験では、魔法使い99人を一人で倒し、その実力を国中に知らしめた。 以後、歴代最年少で騎士団長となり、王子、リンカーネルの親衛隊長を務めていたが、目の前でリンカーネルを水の神、リュスインに連れ去られてしまい、彼を守り切れなかった事を非常に悔いて、行方を必死に追っている。パトス・ガルディアとは親が決めた許嫁同士で、本人達も非常に仲がいいが、リンカーネルを連れ戻すまでは結婚する気になれない、とパトスを待たせている。 シフスであるためにほうきをあやつる事ができないが、代わりに修行時代に友となった天馬のシェドウィンに乗り、空を駆ける。ストラ・ジル公爵の一人息子として生活しているが、実際には産後すぐに森に捨てられ、拾われた孤児院を経由して幼少期にジル公爵の養子となった過去を持つ。 血のつながりがない中、自分によくしてくれたストラ・ジルを心から尊敬し、世界で一番大事に思っている。ミスティ・ミストラルにより自身が魔法大国リンファルドイルガリアの第一王子、リーガルである事を知らされたあと、封印されていた魔力が解放され、剣技魔力に秀でた新国王として即位する事となった。
イルリオット
魔法大国リンファルドイルガリアの騎士を務める男性。近衛兵の名門、センシズ家出身である。ティアこと天王寺若葉の第一の護衛で、若葉を一騎士として以上に大事に思っている。そのため、若葉の命令には絶対服従する。
ミラ=オルド
魔法大国リンファルドイルガリアの騎士を務める男性。大臣トール=オルドの息子であり、シャイ=オルドの兄である。シャイとは双子で、「オルド兄弟」として有名。火属性の魔力を持っているため、火の魔法が得意である。生まじめで、貯金が趣味の堅実な性格の持ち主。飄々としているシャイによく振り回されている。神庭夜一が、自らをライルと名乗るのを聞き、前世に弟犬だったライルだと気づき、以来実の弟としてかわいがるようになった。 夜一をおおらかな愛で包み、実母を亡くして以来の孤独感を払拭させた人物である。しかし酒癖が悪く、酔うと溺愛している夜一にキスを迫る。前世で、水の神、リュスインに殺されたトラウマで水が苦手である。
シャイ=オルド
魔法大国リンファルドイルガリアの騎士を務める男性。大臣トール=オルドの息子であり、ミラ=オルドの弟である。ミラとは双子で、「オルド兄弟」として有名。飄々とした性格の持ち主で、犬や人間に惚れやすい一面を持つ。神庭夜一が、自らをライルと名乗るのを聞き、前世に弟犬だったライルだと気づき、以来実の弟としてかわいがるようになった。 雷属性の魔力を具えているため、雷の魔法が一番得意。指名手配されていた夜一に雷をあててしまったため、夜一には嫌われている。しかし夜一の機嫌を取るために、危険な思いをして天空の湖に幻の花、セルリアンセレスを摘みに行った覚悟を認められ、夜一の許しを得た。酒癖が悪く、酔うと溺愛している夜一にキスを迫る。 前世で、水の神、リュスインに殺されたトラウマで水が苦手である。
ジェラ
代々癒し属性の魔力を持つ、魔法大国リンファルドイルガリアの女王。普段は明朗快活で温厚な性格だが、第一王子のリーガルに続き、第二王子のリンカーネルをも連れ去られた事で心が折れ、精神を病むようになった。深夜零時を過ぎる頃から城中を徘徊し、夢遊病のような状態で血を求めて無差別に人を襲っていた。実際は愛息のリンカーネルが連れ去られてすぐに自害し、国王の魔法で生きる屍とされていたための徘徊であった。
フィス
魔法大国リンファルドイルガリアで、薬士を生業にしている女性。東のトアリス在住。ティアスミリスの祈りの歌を歌い、水をあやつる事ができる。笑顔がかわいらしく、ガラドという同郷の婚約者がいる。癒しの歌を歌う天王寺若葉にあこがれているため、いつか城付きの薬士となり、若葉に会う事が目標である。
ガラド
魔法大国リンファルドイルガリアで、薬士を生業にしている男性。東のトアリス出身だが、薬に必要なドラグルの血を求めて旅に出てから、長く帰郷しなかった。帰って来ると、婚約者のフィスをはじめ街中の人々が年を取らず、不死状態となっていた。以後50年間、時間の流れがとまったままの街で、寂しさを抱えながら生きる事となった。 夜になると、不死の街人達が暴れ出すため、旅人が夜のあいだにトアリスの街に入り込むのを防ぐ目的で、近くの湖のほとりに宿屋を建て、街を見守り続けている。
ミスティ・ミストラル (みすてぃみすとらる)
魔法大国リンファルドイルガリアで孤児院を経営していた女性。雷属性の魔力を持っている。生後まもない状態で森の中に捨てられていたゲート・ジルを拾い、孤児院で育てる事を決め、その際、ゲートに「セイス」という名を与えた人物。「セイス」の名は、古語で「六番目」という意味で、孤児院に入居したのが六番目だったために名付けた。 勝ち気で、強引なところがあるが、優しく接せられたため、ゲートの初恋の女性となった。一見善人だが、孤児院経営者として教会から金銭援助を受けつつ、裏では人買いに孤児院の子供を売っていた悪党。元孤児で、彼女とつるむ人買い達も元孤児という因縁を持つ。人身売買の罪を問われてからは15年服役し、出所後、物乞いをしながらゲートが立派な公爵家にもらわれた事を知り、ゲートを幸福の道へ導いた、自分のこれまでの行為は間違っていなかったのだと確信。 生気を取り戻し、魔法の腕を活かしてトアリスの街郊外の王立研究院で働く事になった。
ストラ・ジル (すとらじる)
魔法大国リンファルドイルガリアで城付きの大臣を務める男性。ゲート・ジルの養父。公爵の位に就いており、国一番の金持ちである。本物の息子「ゲート」を生後2か月で亡くし、また妻も産後すぐに亡くしたため、天涯孤独の身の上となった。その後、死んだ息子と同じシフスであるという条件で孤児を探し、ゲートと出会って、養子に迎え入れた。 厳格な見た目に反して、明朗快活で、冗談好きな親しみやすい性格をしている。
うな
魔法大国リンファルドイルガリアに生息する小動物。全身を真っ白な毛で覆われており、子狐のような風貌をしている。トアリスの街のほとりの湖で出会って以来、神庭夜一に懐く。鋭い嗅覚で夜一をサポートする。
場所
魔法大国リンファルドイルガリア (まほうたいこくりんふぁるどいるがりあ)
王族はもちろん、一般市民も魔法を使用できる国家。国花はガリアで、言語はガリア語である。国民はみんな、生まれた時から魔力を持っているが、まれに魔力をいっさい持たずに生まれてくる人間もいる。そういった人間は簡単な火を起こす事さえ叶わず、シフスと呼ばれて差別対象となっている。ほとんどの国民が魔法を使える事から、無用な争いを避ける目的で、街中での攻撃魔法使用は禁止されている。 神庭夜一の住まう現実世界を伝説の異界と呼んでおり、二つの世界は魔法のコインを介して行き来する事ができる。
天空の湖 (てんくうのみずうみ)
魔法大国リンファルドイルガリアの天上に浮かんでいる湖。ほうきを使って高くまで飛べる者しかたどり着く事ができない場所。入り口は流れ落ちる滝のカーテンで覆われており、悪意のある者はその滝をくぐれずに、滝の一部になってしまう。水の神、リュスインが守護している場所。稀少な花、セルリアンセレスは天空の湖にしか咲いていない。
ラーム川 (らーむがわ)
魔法大国リンファルドイルガリアを流れる巨大な川。川の水にマナが含まれている事から、修行に最適な環境であるため、修行者達がよく野営し、修行に励む地。下流にトアリスの街がある。
その他キーワード
魔法のコイン (まほうのこいん)
現世と魔法大国リンファルドイルガリアをつなぐもの。現世を生きる者が握ったり、そばに置いておく事で、眠ると魔法大国リンファルドイルガリアに行く事ができる。現世でも魔法大国リンファルドイルガリアでも、硬貨として使用する事はできない。魔法大国リンファルドイルガリアでは、生き物が死ぬと、その者が持っていた魔力の源になる生命エネルギーのマナが魔法のコインに変わるとされており、魔法のコインを多く持つ魔法使いほど強い。 そのため、戦争ではより多くの魔法のコインを集めた者が勝利する仕組みになっている。戦争で魔法のコインを集めるほか、魔物を倒して魔法のコインを手に入れたり、家人の死後に現れた魔法のコインを当主が受け継いだりする事で、魔法使い達は魔法のコインを収集する。
シフス
魔法大国リンファルドイルガリアで、魔力を持たずに生まれてきてしまった人間の俗称。シフスとして生まれた人間は一切の魔法が使えないため、簡単な火をおこす事すらできない。一般的に侮蔑の意味で使われる。シフスとして生まれた人間は特別カリキュラムを組まれ、魔力の覚醒訓練を受けるが、まず魔法が使えるようになる事はない。
幻のティアス (まぼろしのてぃあす)
魔法大国リンファルドイルガリアで精製されている至高の回復薬。薬作りに特化した東のトアリスの街の魔法使い達が精製、販売している。ティアスミリスの聖杯から湧き出る、1年に10本分しか取れない貴重な聖水で、飲めば体力回復はもちろん、潜在魔力も上がる特効薬。
クレジット
- 原作