概要・あらすじ
東京K病院に勤務し始めた新米ナース似鳥ユキエは有能な看護婦になるべく日々奮闘するが、気が強いため患者とぶつかる事が多く、トラブルばかり起こす。そのため先輩たちがフォローする事になり、きつく指導される。そんな似鳥ユキエは同僚の本田雅子と愚痴をこぼしながら、先輩たちの指導を理解し、時には悩みながら成長していく。
東京K病院に勤務する初年度から、後輩の新人が入って来る二年目までを描いている。
登場人物・キャラクター
似鳥 ユキエ (にたとり ゆきえ)
『おたんこナース』の主人公で、東京K病院の6階にある内科に勤務しはじめた新人ナース。茨城県出身の21歳。有能な看護婦になるべく様々な工夫をするが、新人ゆえの思い込みと早とちりで多くの失敗を経験する。先輩ナースに叱られることも多く、様々な性格の患者とどう向き合えばいいか悩む。しかし負けん気の強さとチャレンジ精神で、徐々に学びながら成長していく。 高校3年生の受験の時には、壁に「緊褌一番」(褌をかたくしめて奮発して物事にあたること)という張り紙をしていた。太宰治のファンで、高校生の頃は太宰治の本を読みふけっていた。患者に対して対等でいたいタイプ。注射が好き。高原の落葉松林の中で車椅子を押しながら患者さんと散歩するのが憧れ。
本田 雅子 (ほんだ まさこ)
主人公似鳥ユキエの幼馴染であり、同僚の新人ナース。子供の頃は似鳥ユキエが学者、本田雅子が助手という設定でよくおままごとをして遊んでいた。似鳥ユキエと山ぶどうをとりに山に入り、遭難しかけたことがある。似鳥ユキエが患者と対等でいようとするタイプであるのに対し、本田雅子は患者を労わるタイプ。 髪は長いが勤務中は束ねている。眼鏡をかけた落ち着いた性格で、2年目にはホスピス勤務を希望するようになる。
久米先生 (くめせんせい)
主人公似鳥ユキエと同期の研修医。ベテランのナースたちにはボーッとしていて要領が悪いと思われているが、似鳥ユキエは医師の素質があると思っている。真面目だが自信が無いため、診断に時間がかかることがある。無神経な発言や小さなミスも多い。東京K病院の方針で、研修医の身分は日雇い。 太宰治のファン。
本条先生 (ほんじょうせんせい)
お気楽なことを言うが、腕は確かな初老の医師。主人公似鳥ユキエの真似をしてちゃかしたり、面白いことが好き。似鳥ユキエが患者の心電図を取る際に、間違えて電極を右胸につけて奇妙な波形になった時も、似鳥ユキエがいつ気づくか面白がっていた。老眼で目をしょぼつかせて注射を打つ。
主任さん (しゅにんさん)
主人公似鳥ユキエの憧れであり、目標とするナース。常ににこやかで患者に対してキツイ言い方をしない。似鳥ユキエがナース2年目に入った時に、実家の母親が倒れたため退職することになる。その際、忙しいなかストーマ(人口肛門)が造設された患者に対するマニュアルを作成するなど、他のナースに対しても行き届いている。 失敗した似鳥ユキエを優しくフォローするが、時には厳しくたしなめる。
堀田さん (ほりたさん)
整形外科、ICU(集中治療室)を経て6階の内科に勤務している。主人公似鳥ユキエに対してキツイ言い方になる事が多い。子供嫌いだが、病院の屋上で車椅子の子供の患者と散歩している時には、子供が歩けるようになるといいと思っていた。
丸田さん (まるたさん)
産婦人科、CCU(冠疾患集中治療室)、脳外科を経て内科に勤務している。完璧主義。高校のバレー部出身のため、職員の親睦をはかる院内バレーボール大会で内科チームのキャプテンになる。「平成版東洋の魔女」として優勝候補の内科チームを引っ張る。その際、主人公似鳥ユキエにバレーボールの特訓をつける。
婦長さん (ふちょうさん)
患者へ鋭い観察力と機知に富んだ絶妙なタイミングで、ナースたちをフォローする。主人公似鳥ユキエが浅草の鳶職人坂田の担当になった際は、ナースは本来患者と医師の仲をとりもつ役目だと似鳥ユキエにさとす。担当医師錦織先生と坂田の両方を怒らせ、最悪の事態に陥ってしまった似鳥ユキエに助け舟を出し、事を丸くおさめる。
一条 (いちじょう)
看護学校始まって以来の秀才で、全科目トップの成績。主人公似鳥ユキエが二日間だけ一条の学生指導を行う担当ナースとなる。学生とスタッフの違いを見せつけたい似鳥ユキエだったが、看護に対する理論的な理解に自信のある一条は堂々とした態度のため、似鳥ユキエは敵対心を抱く。 似鳥ユキエは一条に実務経験がものを言うことを知らしめるために、奮闘する。
錦織先生 (にしきおりせんせい)
3年目の研修医。家は代々医者で、父親は大学医学部の教授。浅草の鳶職人の患者、坂田を受け持った時に、コミュニケーションがうまく取れず、落語を聞いたり浅草に行くなど努力するが、その方向性に問題があるとナースたちから冷ややかな目で見られる。坂田への治療をあきらめ、転院をすすめるよう似鳥ユキエに指示した事で似鳥ユキエに叱られ、機嫌を損ねる。 セオリーどおりの検査をしただけで「問題なし」と患者を退院させたことがある。
千代 (ちよ)
主人公似鳥ユキエの祖母。膵臓癌で亡くなり、似鳥ユキエの故郷の風習にのっとり土葬される。似鳥ユキエは千代に昔教わった通りの作法で葬儀にのぞむが、参列者に変に思われる。しかし、千代は似鳥ユキエをだますのが生き甲斐だったため、それが亡くなった千代を一番喜ばせることだった。
江田 冴子 (えだ さえこ)
癌性腹膜炎の末期で個人病院から転院し、東京K病院の602号室で最期を過ごした。夫と子供を事故で亡くした40歳の江田冴子は、ナースたちに「恨んでやる」と言いつづけ、主人公似鳥ユキエの幼馴染で同僚の本田雅子は胃けいれんで吐いてしまう。似鳥ユキエは江田冴子が本意な最期を過ごせるよう試行錯誤する。
磯山さん (いそやまさん)
糖尿病と高血圧で603号室に入院した。息子たちや夫の面会の回数が多く、大事にされているものの、家族になかなか磯山さんの本当の意志は伝わらない。似鳥ユキエは家族のあり方について考える事になる。
小田 健一郎 (おだ けんいちろう)
605号室に入院し、自分が癌ではないかと疑い続ける。63歳の小田健一郎は手術も不可能な末期の膵臓癌だったが、家族の意向で本人には告知せず、慢性膵炎で通すことになった。しかし小田健一郎はあの手この手を使って、主人公似鳥ユキエに真実を吐かせようとする。
富永 崇 (とみなが たかし)
主人公似鳥ユキエが看護学生時代に小児科病棟の実習で担当した少年。慢性の腎疾患で病院慣れしている。なかなか打ち解けられずにいたが、江戸時代の平賀源内の話をきっかけに仲良くなり、富永崇が殿で似鳥ユキエがその家来として、入院生活を過ごすようになる。しかし実習が終わり、お別れの時に似鳥ユキエは子供とうまくつきあう難しさを知る。
前園 ルリ (まえぞの るり)
主人公似鳥ユキエが担当にした患者で、22歳のモデル。痛風の第二期、急性間欠性関節炎期と診断されて東京K病院の613号室に入院した。15歳の時からモデルとして食事制限をしてきたため、前園ルリは好物のカニの食べ放題へ行くのが夢だった。一生食事制限が必要となった事に絶望した前園ルリだったが、猫の餌やりをきっかけに希望を持ち始める。
三浦君 (みうらくん)
主人公似鳥ユキエが担当した患者で、注射が嫌いな過敏性腸症候群の高校3年生。三浦君は似鳥ユキエの注射がヘタだと文句をつけたため、似鳥ユキエは三浦君にこの世で一番痛い注射を打ってやろうと目論む。東京K病院の614号室に入院した。614号室はベッド数16の大部屋で、ナースコールで呼ぶとナースステーションで「614右」「614左」と表示される。
本宮 真理子 (もとみや まりこ)
主人公似鳥ユキエが担当した患者で、東京K病院看護学校+AH191の教官だった。42歳の本宮真理子は本態性高血圧で、外来通院では血圧のコントロールが難しく、東京K病院の615号室に入院した。本宮真理子は似鳥ユキエに厳しく指導しはじめたため、同室の患者で十二指腸潰瘍で入院していた石川つね子が似鳥ユキエに助け舟を出す。 しかし石川つね子もまたT病院の総婦長で同業者あることが発覚する。
大谷 ミワ (おおたに みわ)
主人公似鳥ユキエが担当した患者で、食道癌の疑いで精密検査を受けるために転院してきた。86歳で長く寝たきりだったため、足腰が弱り頭もボケてしまっていた。子供に還ったようになり、ナースたちからミワちゃんと呼ばれていた。リハビリが進むうしちにボケが回復し無邪気だったミワちゃんからおばあさんの大谷ミワに戻っていく。
安藤さん (あんどうさん)
主人公似鳥ユキエが担当した患者で、病院で正月を迎えた。617号室を使用した。糖尿病を中心に4つの病気を患っていたが、容態が急変し生死をさまよう。病院に残っていた他の患者や見舞いに来ていた若手役者は、安藤さんが三途の川から戻ってくるよう、のど自慢大会や獅子舞などを披露して賑やかにする。
加藤 てう (かとう ちょう)
似鳥ユキエが学生指導で看護学校始まって以来の秀才一条を指導する際、一緒に担当した患者。脳卒中の後遺症で右半身に軽いマヒがある。76歳でボケの兆候もあったが元の性格も気分屋。体を清拭する際は熱めが好き。清拭後に髪にネットをかけるのが似鳥ユキエの楽しみだったため、一条にその役目を奪われ似鳥ユキエはガッカリする。
秋山 伸子 (あきやま のぶこ)
主人公似鳥ユキエが担当する患者で、不明熱(熱が続いているが、その原因がわからない状況)で入院して三週間目。しかし詐病(仮病のこと)である事が発覚する。夫とともに弁当屋を営んでいたが、夫に自分の有難みを分からせるために入院した。自分に素直に従ってさえいれば良いと考える夫と、対等に仕事をしているつもりの秋山伸子との対立が、医師とナースとの対立に通じるものがあり似鳥ユキエたちは八ッとさせられる。
大江 スミ (おおえ すみ)
似鳥ユキエが10人のナースをまとめるチームリーダーを初めて任された時の患者。63歳で糖尿病のコントロールを自分でできるようにす教育目的で入院した。しかしすぐ癇癪をおこし、間食をしてしまう。夫の事を「パパァ」と呼び甘える。しかし大江スミを甘やかしてきた夫も倒れてしまい、大江スミより重症な糖尿病の可能性で入院してしまう。 似鳥ユキエらがいくら努力しても変わらなかったのが、夫の入院により大江スミに変化があらわれる。
山本 圭祐 (やまもと けいすけ)
主人公似鳥ユキエの見合い相手。叔父は開業医で職業は図書館司書の28歳、次男。過去に足を骨折して入院した際に、ナースの献身的で温かくきめ細やかな気遣いに感動したため、そういう妻がほしいと似鳥ユキエと見合いをする。
大家さん (おおやさん)
親切で善良な人柄。主人公似鳥ユキエが生理痛で鎮痛剤が切れた際に大家さんに助けを求めた。大家さんの目の前で似鳥ユキエは倒れてしまい、救急車を呼んでくれるが、親切心から似鳥ユキエが勤める東京K病院へ運ぶよう言う。顔見知りの医師に診察されるのを避けるために、似鳥ユキエは迷惑な患者の真似をしてしまう。
松永 順 (まつなが じゅん)
主人公似鳥ユキエが看護学校1年生の時に恋人に発展する事を夢みたカメラマン助手。保険証を持っていなかったため、病院にかかれず道端で倒れているところを似鳥ユキエに助けられ、その後も献身的に看病をしてもらう。熱にうなされている際に、うわごとで似鳥ユキエの戴帽式(ナースキャップをはじめて頭につける儀式)で写真を撮る約束をする。
日向時 (ひゅうがじ)
薬剤部の職員で、主人公似鳥ユキエとは面識がなく、普段伝票にそえるメモでしか交流がない。キツイ文面で似鳥ユキエとケンカになり、ちょうどその時行われた院内バレーボール大会で内科と薬剤部が優勝候補であることから、バレーボールが不得意な似鳥ユキエは日向時にライバル心を燃やしバレーボールの特訓を受ける。
場所
601号室 (ろっぴゃくいちごうしつ)
『おたんこナース』に登場する病室。601号室で死亡した患者が続いたため、「六〇一号室に入ると生きて出られない」という噂が流れ、恐れられる。自分の杖を探しに、亡霊となって登場する大森(もともと左足が悪く、癌で亡くなった)や噂を流した張本人で東京K病院の守衛をしている鮫島信夫が急性心筋梗塞で入室した。
大星 元彦
『おたんこナース』に登場する病室。主人公似鳥ユキエが担当したアルコール依存症の患者。618号室を使用した。54歳の大星元彦はアルコール性の肝硬変で、夜中に自宅で飲酒していたところ意識を失い緊急入院した。似鳥ユキエは入院中も飲酒していないか疑うが、大星元彦はナースの目がかいくぐって飲酒する。
619号室 (ろっぴゃくじゅうろくごうしつ)
『おたんこナース』に登場する病室。主人公似鳥ユキエが担当した患者が多く使用した。下町の畳職人で糖尿病の本間、銀行勤めの好青年で腎疾患の山村、狭心症または心筋梗塞の疑いで入院した小島、慢性肝炎で入退院を繰り返している27歳の区役所職員柳田、脳出血で左半身マヒと軽度の言語障害のリハビリで入院した76歳の山田欣治、肺癌が骨に転移した浅草の鳶職人坂田、直腸癌でストーマ(人口肛門)が造設された46歳の地下鉄職員笹目五郎、電気メーカー勤務で社会人ラグビーの選手灰田が胃潰瘍で入院した際に使用した。 柳田はしょっちゅうベッドを抜け出し、院内で女性をナンパするため行方不明になるため似鳥ユキエたちナースをやきもきさせた。
クレジット
- 取材
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小林 光恵
書誌情報
おたんこナース 5巻 小学館〈コミック文庫(青年)〉
第1巻
(2002-09-14発行、 978-4091926517)
第2巻
(2002-09-14発行、 978-4091926524)
第3巻
(2002-10-16発行、 978-4091926531)
第4巻
(2002-10-16発行、 978-4091926548)
第5巻
(2002-10-16発行、 978-4091926555)