あらすじ
陰の実力者
幼い頃から、物語に陰ながら介入することでひそかに実力を示していく「陰の実力者」にあこがれを抱く少年は、ふだんはモブキャラに徹して目立たずに生活する裏で、実力者となるためのさまざまな修行を積んでいた。厳しい修行を重ねた末に、鍛え上げられた肉体は屈強に成長し、高校生になった少年はやがて、核で蒸発しないための未知の力を得ようと、さまざまな実験と過酷な修行に挑むが、その帰りに幻覚を見て交通事故に遭って死亡する。命を失ったこの少年は、魔法や魔力が存在する異世界に転生し、前世の記憶を引き継いだままでカゲノー男爵家の子息として転生し、シド・カゲノーの名前で新たな人生を歩み始める。転生から10年後、異世界でもシドは前世と変わらずに実力を隠しながら、なんの力も持たない凡人のフリを徹底する生活を送りながら、姉のクレア・カゲノーと共に修行をしていたが、気まぐれに盗賊団を討伐したことで謎の肉塊を拾う。魔力の実験をするために引き取ったシドの力を得た肉塊はエルフの美少女に変化し、救ってもらった恩を返したいと言う彼女に、彼は「アルファ」という名前を与える。アルファを自分の配下にしたシドは、これ幸いと魔人ディアボロスの復活を狙う闇の教団「ディアボロス教団」の設定を適当に作り、それを壊滅させるための組織という設定で、闇組織「シャドウガーデン」を設立。その後も仲間を増やしながら、異世界で陰の実力者を演じるという目的のため、架空の存在であるディアボロス教団を倒すべく、おふざけで暗躍するが、彼が妄想で語ったはずのディアボロス教団は異世界ですでに実在していたのだ。それを知らないままのシドが、ノリで配下にしたアルファをはじめとする少女たちは、カンちがいしながら彼を崇拝するようになり、シドは彼自身の知らぬうちに本物の陰の実力者となっていく。やがて、「シャドウ」と名乗るようになったシドが率いるシャドウガーデンは、闇世界への影響力を強めていき、彼らの暗躍は世界の闇を打ち砕いていく。平穏な学園生活の裏でシャドウとしての暗躍を続けるシドは、ひょんなことから第2王女のアレクシア・ミドガルに気に入られて友人となり、みんなの前では彼女と交際しているフリをする羽目になる。そんな中で何者かにアレクシアが誘拐されてしまい、その犯人がディアボロス教団であることが判明する。悪友のアレクシアを助けるべく、シドは仲間たちと共にディアボロス教団のアジトに潜入する。
学園占拠事件
主人公でもラスボスでもない「陰の実力者」を目指して異世界生活を楽しむシド・カゲノーの周りに、闇組織「シャドウガーデン」を名乗って悪事を働く謎の偽物集団の噂が流れていた。シドが疑問に思う中、彼らの通っているミドガル魔剣士学園が、噂(うわさ)の偽シャドウガーデンによって占拠されてしまう。生徒たちに危機がせまる状況の中、学園を舞台にしたテロ事件というシチュエーションにひそかにあこがれを抱いていたシドは、モブキャラとして殺されたフリをしながらひそかに活躍する絶好のチャンスだと考える。率先して前に出て敵に斬られかけた生徒会長のローズをとっさに庇(かば)って背中を負傷したシドは、過去の魔力研究で得た技術を応用して一時的に死んだフリを試み、敵味方問わず欺くことに成功する。ローズをはじめとする生徒たちがシドが死亡したとカンちがいする中、人気がなくなった教室で目覚めた彼はさっそく、本物のシャドウガーデンを率いるシャドウとして、シャドウガーデンの名を騙(かた)る者たちの正体を探り始める。その中で、シェリー・バーネットの義父である副学園長のルスランが今回の黒幕だと気づいたシドは、ルスランがシェリーの両親を殺してアーティファクト「強欲の瞳」を奪った過去と、彼の恐ろしい計画を知る。シドは即座にシャドウの姿に変わり、アーティファクトの強力な魔力を開放して襲ってくるルスランを返り討ちにする。
聖地の試練
陰の実力者として闇組織「シャドウガーデン」の配下と共に暗躍したシド・カゲノーの手によって、ミドガル魔剣士学園襲撃事件は幕を下ろした。この事件で学園を襲撃・占拠したテロリスト集団がシャドウガーデンを名乗っていることを知り、彼らを次第に追い詰めたシドは、この偽物集団をあやつっている陰の存在に気づく。多くの謎を遺した事件の大半は、生徒たちが奇跡的に一命を取り留めたものとして片付き、半焼した学園は再建のためにしばらく休みとなる。休暇中に新たな奥義の習得に勤(いそし)んでいたシドはある日、事件の中で命を救った生徒会長のローズ・オリアナとなぜか二人きりで馬車に乗っていた。事の始まりはアルファから届いた「聖地リンドブルムへ来て欲しい」という内容の手紙で、馬車を待っている途中でリッチな馬車に乗って来たローズと遭遇したシドは、彼女と共にリンドブルムに赴くことになったのだ。リンドブルムは魔人ディアボロスの伝説も伝わる街でもあり、この国でもっともメジャーな宗教である「聖教」による「女神の試練」という式典の開催もせまっていた。リンドブルムに到着したシドは買い物や散策を楽しんだあと、売れっ子小説家、ナツメのサイン会に気づいたローズに引っ張られて、ナツメのもとへ向かうが、その正体は彼の配下の一人、ベータだった。ナツメとして式典に招かれたベータを通してネルソン大司教代理と出会ったシドたちだったが、ネルソンには大司教を殺したという黒い噂が流れていた。そして式典が開始され、1年に1度だけ開かれる聖域の扉が動いたその時、「災厄の魔女」の異名で知られるアウロラが出現する。予想外な出来事が次々と起こる聖地の試練で、アウロラと聖域、そしてディアボロス教団の思惑が錯綜する中、シャドウガーデンはある目的のために動き出す。アウロラに勝利したシドの目の前に現れた扉の向こうは、聖域という名の記憶の牢獄(ろうごく)だった。この牢獄にはアウロラが鎖でつながれた状態になっており、呼び寄せられたシドは彼女を解放して共に記憶の無限回廊をさまよう。その中で明らかになっていくのは、一般的に知られている魔人のおとぎ話とは異なる、闇に葬られた数々の真実だった。
ブシン祭
聖地、リンドブルムの試練から無事に帰還したシド・カゲノーは、最強剣士決定戦として知られる剣士同士の祭典「ブシン祭」への出場に燃えていた。しかし、ただ単にシドとして参加するのではなく、彼の本当の目的は、見た目も実力を偽って「一見弱そうだがなぜか一瞬で勝利する謎の戦士」として出場し、周りをざわつかせることだった。そのためにはいかにも弱そうな青年を装う必要があり、闇組織「シャドウガーデン」の配下たちの力を借りて、シドは行方不明になった人物の戸籍を利用して「ジミナ・セーネン」という弱者に変装することになる。予定どおりジミナのフリをしながら出場したシドは、誰もが侮るような雑魚(ざこ)戦士を装いつつ、一部の参加者だけには異常な強さをチラ見せしながら、ここぞという場面で強さを発揮することを目指し、さっそく第1試合目から番狂わせを起こして観客の注目を浴びていた。対戦相手を一発で返り討ちにして順調に勝ち進んでいくシドだったが、このブシン祭の裏では、シドの目的だけでなく何者かによる陰謀や謎も渦巻いていた。一方、ミドガル魔剣士学園では、過去の事件でシドと行動を共にしていたローズ・オリアナが婚約者を斬り倒して逃亡し、指名手配になったという噂が流れていた。ローズは父親が縁談を進めてきた婚約者のドエム・ケツハットが、裏でディアボロス教団とつながって芸術の国、オリアナの乗っ取りを狙っていることに気づいて彼らに反発するも負傷し、一人で逃亡している最中だった。孤独と不安の中で、ひそかにシドに助けを求めながらさまようローズは、使用されていない聖堂でピアノの音色を聞く。気になって進んだ先では、シャドウが一人でピアノを演奏していた。シャドウから闇の力を得たローズは、意味深な言葉を残して彼が消え去ったあとに、一人で追っ手を全滅させる。
血の女王
波乱のブシン祭に乱入し、闇組織「シャドウガーデン」のシャドウから闇の力を得ていたローズ・オリアナは、自らの父親であるオリアナを殺害する形で洗脳から解放する。父親を失い行き場をなくしてしまったローズに声をかけたのは、遠くから様子を見守っていたアルファで、ローズはシャドウガーデンの新たなメンバーとして迎え入れられる。一方、ブシン祭をはじめあらゆる物事に陰から介入して力を示してきたシド・カゲノーは、始祖の吸血鬼「血の女王」討伐をすると言い出したクレア・カゲノーに無理やり連れ出され、彼女と共に「無法都市」と呼ばれているスラム街に赴く羽目になる。いつものようにモブキャラを演じていると逆に目立ってしまうほどに治安が悪いこの無法地帯で、シドは殺伐とした状況を見ながら怪しく笑う謎の少年を演じながら、いつものように暗躍を楽しもうとする。能天気に自らの設定や妄想を楽しむシドの頭上に輝く月は、吸血鬼伝説の「赤き月」となって怪しい色を放ちながら、凶兆を告げていた。実はこの赤き月は血の嵐の前触れでもあり、かつて人間に虐げられていた吸血鬼たちの反逆と、この地に眠る血の女王の目覚めの前兆でもあった。この赤き月が夜空に現れてから、街のあちこちでは凶暴なグールが暴れ出して人を襲うようになる。しばらくはクレアとはぐれたフリをし、チンピラ狩りやグール狩りを楽しんでいたシドは、シャドウの姿になってこの異様な状況の詳細を探り始める。一方、シドとはぐれたクレアは、最古のヴァンパイアハンターを名乗る謎めいた美少女のメアリー、そして独自に侵入して調査を始めていたベータに出会う。無法都市の三大勢力として知られる荒くれ者のジャガノート、色街を牛耳る妖狐のユキメ、吸血鬼のクリムゾンも動き出す中、吸血鬼と悪魔憑きの関係を探るシャドウガーデンも乱入し、混迷を極める戦場には血の女王の覚醒の時がせまっていた。
関連作品
小説
本作『陰の実力者になりたくて!』は、逢沢大介の小説『陰の実力者になりたくて!』を原作としている。原作小説版は KADOKAWA「エンターブレイン」から刊行され、イラストは東西が担当している。
メディア化
テレビアニメ
2022年10月から、本作『陰の実力者になりたくて!』の原作小説『陰の実力者になりたくて!』のTVアニメ版『陰の実力者になりたくて!』が、TOKYO MX、サンテレビほかで放送された。監督は中西和也、キャラクターデザインは飯野まことが務めている。キャストは、シド・カゲノーを山下誠一郎が、アルファを瀬戸麻沙美が演じている。
登場人物・キャラクター
シド・カゲノー 主人公
日本に住む男子高校生。主人公でもなくラスボスでもなく、影ながら暗躍することでひそかに実力を示す「陰の実力者」という中二病設定に幼い頃からあこがれてきた。そのために隠れて努力を重ねながら屈強で筋肉質な少... 関連ページ:シド・カゲノー
アレクシア・ミドガル
ミドガル王国の第2王女。銀髪をツインテールにまとめて黒いリボンを結んでいる。剣士として優秀な姉のアイリス・ミドガルを尊敬しつつも劣等感を抱いており、強くなるためにひたむきに努力を重ねるまっすぐな性格の持ち主。ミドガル魔剣士学園に通う生徒でもあり、1回生ながら上級クラスに在籍し、学園の高嶺(たかね)の花として多くの生徒たちから羨望を集めている。表向きは清楚(せいそ)な美少女を装っている一方で、相手によっては罵詈(ばり)雑言を浴びせたり冷淡な態度で見下したりなど、腹黒い本性を見せる。婚約者候補の教師、ゼノンに対抗するために、友人との遊びでウソの告白をしてきたシド・カゲノーに目を付けて偽の恋人役を依頼して恋人に仕立て上げるも、何者かに誘拐されてしまう。この誘拐事件で闇組織「シャドウガーデン」に救出されてリーダーのシャドウと出会い、事件以降はシャドウガーデンやディアボロス教団の謎にかかわっていくことになる。事件後もわけあってシドに彼氏のフリを依頼しており、彼とは悪友のような関係だが、裏では犬のように扱っている。
アイリス・ミドガル
ミドガル王国の第1王女で、アレクシア・ミドガルの姉。深い赤毛のロングヘアで、凛々(りり)しく気高い雰囲気をまとった美女。大剣を武器に戦う、王国最強と名高い優秀な天才魔剣士でもあり、王女でありながら王国騎士団にも所属している。つねに正義感と気高い精神を持つが、クマのぬいぐるみを抱いて寝るなど、かわいいものが好きで子供っぽい一面もある。妹のアレクシアに対してはやや過保護な一面を持ち、彼女が誘拐された際にはあらゆる手を尽くして助けようとしていた。アレクシアの誘拐事件を通して闇組織「シャドウガーデンやディアボロス教団に対抗すべく、調査団を兼ねた独自の騎士団「紅の騎士団」を結成し、世界の闇をつき止めるべく奮闘している。学園ではシド・カゲノーと知り合いでシャドウガーデンのシャドウとも遭遇しているが、二人が同一人物であることは知らない。ブシン祭ではジミナと対戦するもほとんど歯が絶たぬままで敗れ、彼の正体がシャドウだったと知ったあとは、敗北のショックから自分の剣の修行ばかりに打ち込むあまり、ほかのことが目に映らなくなるほどに視野が狭まっている。
クレア・カゲノー
カゲノー男爵家の長女で、シド・カゲノーの二つ年上の姉。紫がかった黒のロングヘアの美少女で、気が強く時には暴力的な一面も見せるが、家族思いな優しい性格をしている。弟のシドを溺愛しており、彼に対しては幼少期から過保護な態度を見せ、何かと気にかけて世話を焼こうとする。幼少期からシドを剣の修行に連れ回して共に修行をすることも多かったが、彼が家族にも実力を隠してモブキャラのフリをしていたため、彼のことは武術の才能に恵まれない冴えない少年だとカンちがいしている。15歳の頃に誘拐されことがあったが、知らぬ間にシドによって助けられた過去を持つ。剣の実力は家系の能力を引き継いでおり、カゲノー家のホープとして両親からの期待も厚い。ブシン祭ではほかの参加者のリタイアなどがあったものの、最終的には優勝した。幼少期にはディアボロス教団の陰謀に巻き込まれて悪魔憑きになって全身が痣(あざ)だらけになっていたが、シドがこっそり治療したことにより回復し、現在は痣も消え去っている。
アルファ
闇組織「シャドウガーデン」の精鋭「七陰」第一席の少女。明るい金髪のロングヘアと青い瞳を持つエルフで、シャドウガーデンの最初のメンバーでもあり、実質的な七陰の統括役も務める。信じる対象があればとことん突き進むほどに強気だが、時おり優しさも見せる。完璧超人のオールラウンダーで、魔剣士としての能力も高い。かつて悪魔憑きに蝕まれたことで家族から捨てられ、瀕死(ひんし)の状態で盗賊団に捕まっていたが、気まぐれに盗賊狩りをして拾った腐乱死体を魔力の実験台にしようとしていたシド・カゲノーのおかげでもとの姿に戻ることができ、これ以降は彼に恩義を感じて心酔すると共に、生涯を懸けて恩返しすることを誓っている。また、悪魔憑きをはじめとする行き場のない少女たちを拾っては、シャドウガーデンに引き入れている。
ベータ
闇組織「シャドウガーデン」の精鋭「七陰」第二席の少女。水色のセミロングヘアを三つ編みにまとめたエルフで、泣きボクロがある。理知的な雰囲気をまとい、外で行動する時は眼鏡をかけていることがある。悪魔憑きになって捨てられたあとに、アルファに拾われてシャドウガーデンの一員となった過去を持つが、この時点では気弱な性格だった。何かあるたびにシド・カゲノーに畏敬の念を抱いては、彼の英雄譚(たん)「シャドウ様戦記」を書き綴っている。ふだんは「ナツメ」というペンネームで小説家として活躍しており、あちこちに赴いては小説のネタと情報集めをしている。実はナツメとして書いている小説は、かつてシドが前世で得た記憶や知識をもとに聞かせてくれたおとぎ話や、人気映画などの内容がもとになっており、シドからは内心パクリ扱いされている。これらの小説はいずれもベストセラーやロングセラーを誇り、熱心なファンも多い。ブシン祭では熱心なナツメのファンであるローズ・オリアナ、特別招待されていたアレクシア・ミドガルと親しくなって情報収集などに役立てているが、アレクシアとは水面下で争っている。
ガンマ
闇組織「シャドウガーデン」の精鋭「七陰」第三席の少女。黒のロングヘアで、恵まれた商才を活かして商売や資金集めを担当している。卓越した頭脳の持ち主でシド・カゲノーの言葉をすべて記憶・理解している。しかし運動能力は最低レベルで、何もない場所で転ぶほどのドジっ子で、戦闘も苦手としている。シドが前世の記憶をもとに話した知識を頼りに、チョコレートなど異世界では珍しい食品をはじめとするさまざまな商品を開発しており、それらを製造・販売するために作った「ミツゴシ商会」の会長も務めている。
デルタ
闇組織「シャドウガーデン」の精鋭「七陰」第四席の少女。黒のロングヘアで猫のような獣耳と大きな尻尾が生えた獣人。語尾に「~なのです」を付けて話し、七陰の中ではもっとも子供っぽく無邪気な性格をしている。七陰の中でも突出した戦闘能力を持っているが、その戦い方はとても荒々しい。型や奥義などにとらわれない野蛮な戦い方から、シド・カゲノーからは「無鉄砲特攻兵器」などと評されている。戦闘時は周囲の人にも物や建物などにも破壊の限りを尽くすため、味方すら驚かせることがある。捕えた魔物をそのまま食らうなど、かなり野性的な一面もある。
イプシロン
闇組織「シャドウガーデン」の精鋭「七陰」第五席の少女。魔力コントロールの才能がずば抜けている、水色のロングヘアをツインテールにまとめたエルフ。優秀な一方で子供っぽい体型を気にしており、特殊なスライムスーツを装備することで胸の大きさを盛るなど、スタイルをごまかしている。七陰の中でも特に発育のいいベータを「天然物」呼ばわりして観察しながら、就寝中以外はスライムスーツを着用しているため、戦闘中などにスーツが破られるなどのアクシデントがあると動揺する。ピアノが得意で、表舞台ではシド・カゲノーから聞いた音楽をもとに、有名なピアニストや作曲家として活躍している。
ゼータ
闇組織「シャドウガーデン」の精鋭「七陰」第六席の少女。主に隠密行動を担当している獣人。淡いベージュ色のセミロングヘアで、キツネのような獣耳と長い尻尾を持ち、野性的な格好をした美少女。ふだんは世界各地を飛び回りながら、一人で諜報(ちょうほう)活動を行なっている。
イータ
闇組織「シャドウガーデン」の精鋭「七陰」第七席の少女。技術や研究を担当しているエルフ。濃い赤茶色のロングヘアで、おとなしくミステリアスな雰囲気をまとった美少女。技術面で優れているが、かなりマイペースな性格で、一度寝るとなかなか起きず、寝たまま歩き回るなど寝相も悪い。建築家としても優秀。
シェリー・バーネット
ミドガル魔剣士学園に通う女子。シド・カゲノーの学友。桃色のセミロングヘアを二つのおさげにまとめており、控えめな性格の持ち主。両親はすでに亡くなっており、養父となったルスランに育てられながら、アーティファクトの研究に力を入れている。シドから気まぐれにチョコレートを貰(もら)ったのをきっかけに、彼と友人になる。母親がアーティファクトを研究する有名な学者であり、亡くなった母親の研究を引き継いでいるため、アーティファクトに関する情報を中心にさまざまな知識を持つ。学園が偽シャドウガーデンに占拠された際に巻き込まれるが、その首謀者がルスランであったこと、また強盗を装って両親を殺したのも彼であった真実は知らぬままでシャドウに遭遇する。このため、学園を占拠したのは闇組織「シャドウガーデン」であり、ルスランはシャドウガーデンの陰謀に巻き込まれてシャドウに殺害されたと誤解している。ルスランの死後は学術都市に留学することを決意し、シドに別れを告げて去った。
ルスラン
ミドガル魔剣士学園の副学園長を務める中年男性。細身で眼鏡をかけ、おだやかで優しい性格をしている。強盗に両親を殺害されて行き場をなくしたシェリー・バーネットを引き取り、養父として育てながら彼女の研究をサポートしている。実は裏ではディアボロス教団とつながっており、偽シャドウガーデンを率いて学園を襲撃した学園占拠事件の首謀者。シェリーの両親を殺害した犯人でもあり、もとから研究仲間だった彼女の母親からアーティファクトを奪い、両親を亡くしたシェリーを引き取ることで彼女にアーティファクトの研究を引き継がせていた。事件の途中で首謀者の正体にいち早く気づいたシド・カゲノーにこれらの事実を語り、シャドウの姿に変わって行動していた彼に対しては、アーティファクト「強欲の瞳」を繰り出して戦うも惨敗して死亡する。
ニュー
闇組織「シャドウガーデン」の精鋭「七陰」に仕える「ナンバーズ」の女性。もとは侯爵家令嬢の人間で婚約者もいたが、悪魔憑きになった際に捨てられ、存在自体をなかったことにされた。ウェーブのかかったロングヘアで、変装時は眼鏡をかけたり髪をまとめたりしている。当初はガンマのもとで連絡係を務め、シャドウガーデンを騙る謎の集団について調査していた。化粧や変装が得意で、ある目的で生徒のフリをしてミドガル魔剣士学園に潜入していたこともある。また、ブシン祭で弱そうな戦士のフリをしたいと言うシド・カゲノーの要望に応じて変装のためのメイクを施した。
ラムダ
闇組織「シャドウガーデン」の精鋭「七陰」に仕える「ナンバーズ」の少女。主に新人の教育・訓練を担当している。種族はダークエルフ。ふだんはシャドウガーデンの基地に留まり、シャドウガーデンに加入したばかりの新人たちに戦闘訓練を施している。
ローズ・オリアナ
オリアナ王国の王女。ミドガル王国のミドガル魔剣士学園にやって来た留学生で、生徒会長を務める。金髪のロングヘアを縦ロールにしている。芸術の国であるオリアナ出身でありながら剣術を極めており、生徒たちからは学園最強とも評される。学園が偽シャドウガーデンに占拠された際には、生徒を守るために積極的に戦おうとするが、とっさに庇(かば)ったシド・カゲノーに救われて以来、彼のことを気にかけている。ひそかにシドを慕い、いくつかの事件を経てシャドウにも遭遇しているが、二人が同一人物だとは気づいていない。音楽をはじめとする芸術の道を歩もうとするも剣術に惹かれ、剣術が野蛮とされるオリアナで周囲に反対されながらも剣の道に進むことを決意し、ミドガル王国に留学するようになった。オリアナ国王でもある父親からの無理な縁談でドエム・ケツハットと婚約するが、彼が薬草で国王をあやつって王国の乗っ取りを目論んでいることに気づき、反発して一人で逃亡する。逃亡先では一人でピアノを弾いていたシャドウに再会し、彼から謎の力を受け取ったことで戦闘力が大幅に強化される。小説家のナツメの作品の大ファンでもある。幼少期に盗賊に誘拐された過去を持ち、当時「スタイリッシュ盗賊スレイヤー」を名乗っていたシャドウに助けられ、彼が誰なのかわからぬままでずっとあこがれをを抱いていた。
アウロラ
最凶の魔女として知られる謎の女性。「災厄の魔女」の異名を持つ。黒のロングヘアで深い赤色の瞳の持ち主。聖地リンドブルムにて開催される、古代の戦士を召喚して戦う式典「女神の試練」によって呼び出された。かつて世界に破壊と混乱を招いた伝説の存在で、多くの者に恐れられている。シド・カゲノーからは瞳の色にちなんで「ヴァイオレットさん」と呼ばれている。女神の試練の中でシャドウとして乱入したシドと戦うも敗北し、彼が開いた聖域への扉の奥では記憶の牢獄に鎖でつながれていた。呼び寄せたシドによって解放され、彼と協力しながらディアボロス教団の陰謀に立ち向かう。
メアリー
「最古のヴァンパイアハンター」を名乗りながら吸血鬼狩りをしている、謎めいた美少女。深紅のロングヘアで黒いコートを羽織り、長剣を武器に戦う。始祖の吸血鬼「血の女王」が眠ると言われている無法都市に現れ、血の女王の討伐依頼を受けて無法都市に来ていたクレア・カゲノーと出会い、お互いの目的のために行動を共にすることになる。吸血鬼のことに異様に詳しいほかに、不審な言動や行動が見られるため、クレアからは怪しく思われている。
集団・組織
シャドウガーデン
シド・カゲノーが異世界で「陰の実力者」として暗躍するために作り出した闇の組織。当初は気まぐれで助けたアルファと共に、陰に潜み陰を狩る者が集う組織として結成され、彼女が拾って来た少女たちによってメンバーが増えていった。リーダーであるシドは「シャドウ」を名乗っている。シドが軽いノリで作り出した設定では「ディアボロス教団」という架空の闇組織と対峙していることになっているが、ディアボロス教団自体は実在しているため、それらの設定はさまざまな出来事を経て、シドの知らぬ間に現実化しつつある。アルファを筆頭とする七人の精鋭部隊「七陰」を中心に驚異的な戦闘力を誇るメンバーが多く、ディアボロス教団が起こす事件を中心にさまざまな出来事に介入し、次第に一部のあいだで強力な悪の組織としての知名度が上がり、恐れられるようになっていく。シド以外のメンバーの大半は悪魔憑きになって捨てられた少女であり、エルフや獣人など人間以外の種族も多く所属している。アルファたちが活動を拡大していくと共に組織のメンバーや活動資金も増えており、シドの知らぬ間に組織としての規模がどんどん大きくなっている。
ディアボロス教団 (でぃあぼろすきょうだん)
異世界で暗躍している悪の邪教集団。魔人ディアボロスを崇拝している。ディアボロスを復活させるための特殊な薬を、身寄りのない子供や誘拐した子供に打って実験を繰り返し、それが原因で悪魔憑きが生まれている。シド・カゲノーの中では妄想やでっち上げの存在であったが、闇組織として実在しており、一部の国やほかの宗教の要人などとつながって悪事を働くこともある。活動の中で闇組織「シャドウガーデン」とぶつかることが多く、目論みや陰謀の多くは彼らの活躍によって打ち砕かれている。魔力適性の高い孤児をさらっては洗脳教育や薬物供与で強化した「ディアボロス・チルドレン」を作って戦力を得ており、それに耐えられずに捨て駒に使われる者は「3rd」、正気を保てている者は「2nd」、強大な力を持つ者は「1st」と呼ばれている。また、ディアボロス・チルドレンの中でも特に組織に貢献し二つ名を与えられた者は「ネームド・チルドレン」と呼ばれ、幹部クラスの「ナイツ・オブ・ラウンズ」に昇格することがある。
その他キーワード
悪魔憑き (あくまつき)
ある日を境に肉体が腐り出し、一般的に治療法がないとされる奇病。教会が浄化と称して悪魔憑きとなった者を引き取っているが、裏では虐殺されているという噂もある。この状態になった子供は、保護者から捨てられることが多い。発症すると体のあちこちに黒い痣(あざ)が現れ、悪化すると死亡する。
クレジット
- 原作
-
逢沢 大介
- キャラクター原案
-
東西
書誌情報
陰の実力者になりたくて! 13巻 KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉
第1巻
(2019-07-25発行、 978-4041084717)
第2巻
(2019-09-24発行、 978-4041086834)
第3巻
(2020-06-25発行、 978-4041093269)
第4巻
(2020-08-25発行、 978-4041093320)
第5巻
(2021-02-26発行、 978-4041110027)
第6巻
(2021-06-25発行、 978-4041115640)
第7巻
(2022-03-26発行、 978-4041115657)
第8巻
(2022-09-26発行、 978-4041129364)
第9巻
(2022-10-25発行、 978-4041129371)
第10巻
(2022-11-25発行、 978-4041129388)
第11巻
(2023-05-26発行、 978-4041136843)
第12巻
(2023-10-26発行、 978-4041136850)
第13巻
(2024-05-24発行、 978-4041149683)