あらすじ
第1巻
地味で冴えないOLの緒形栞は、父親の緒形浩二郎が作った借金の返済のために、手相占い師「新宿のアンジュ」として、会社では禁止されている副業を行っていた。日中とは打って変わって、ウィッグにカラーコンタクトを装着し、美しく変身したカリスマ占い師としての夜の顔は、絶対に内緒にすべき姿であった。そんなある日、栞が勤務する「三星不動産」の本社に、10年間営業成績トップのイケメンで、「将軍」の異名を取る松平健が配属される。健は仕事はできるが、ヒマさえあれば女性社員を倉庫に連れ込み、昼間からやりたい放題のサイテー男であった。そんなある日、新宿のアンジュのもとに健が姿を現す。彼は、このあと連れて来る女性客に対して、家を買うように手相占いで誘導してほしいと栞に10万円を手渡す。しかし噓を嫌う栞は、健の言う事を受け入れず、噓のない占いを行うのだった。翌日、いつも通り出勤した栞を待っていたのは、営業部への異動辞令だった。昨夜の一件で、栞が新宿のアンジュである事に気づいた健は、人事部に掛け合い、栞を自分の手元に呼び寄せたのである。禁止されている副業について弱みを握られた形となった栞は、クビになる事も覚悟するが、健から求められたのは、クビになりたくなければ奴隷となって俺のために働けという最悪なものだった。(Vol.1「運命の出会い線」。ほか、4エピソード収録)
第2巻
緒形栞は、副業のカリスマ手相占い師「新宿のアンジュ」に、最近客足が途絶え気味な事が気にかかっていた。その原因は、癒し系占い師としてブレイク中の手相占い師「六本木のカレシ」にあった。ある日、佐々木建設と一戸建て住宅見学会について打ち合わせを行った際、営業部長の杉良子といっしょに営業補佐の里見航太が現れるが、この里見こそが「六本木のカレシ」であった。かつて新宿のアンジュとして里見の手相を見た事がある栞は、里見に警戒心を抱き、要注意人物と位置づけるのだった。そんな中、マンション購入を検討中の客、中村一家が来店。ママは、言う事をよく聞く自慢の息子、中村裕の事が大好きで、内覧中も、飽きる事なくおとなしく同行する裕に、松平健と栞も感心していた。夫婦が家を見ているあいだ、裕を預かって面倒を見る事になった栞は、子供に人気の「地味ニャン体操第一」で気を引こうとするが、両親がいなくなったとたん、いい子だったはずの裕の態度が一変する。(Vol.7「運命の相手線」。ほか、3エピソード収録)
第3巻
ある日、「三星不動産」の緒形栞と松平健のもとを里見航太が訪れた。里見によれば、区議会議員の岩下紫真が再婚を機に、親子三人で住むための戸建て住宅を購入予定だったが、中学生の娘の岩下政子が猛反発し、契約が白紙になりかねない騒動に発展しているのだという。そして、何としても契約を成立させたく、健の力で説得してほしいと頼み込む。客の気持ちを尊重するべきだという考えの健は、当初、里見の頼みに応じない姿勢を見せていたが、相手が紫真である事を知ると態度を一転させ、現場に足を運ぶ事を承諾。現場には、親子で言い争っている紫真と政子、それを仲裁する杉良子の姿があった。そこで走り去ろうとする政子を引き止めた健は、母親に対する政子の思いを聞いたあと、若い頃の自分の事を話し始める。(Vol.10「三喜線」。ほか、2エピソード収録)
第4巻
里見航太は、手相占い師「新宿のアンジュ」の秘密を知ったと深刻な顔で話し出した。その内容は、緒形浩二郎がママを務める新宿2丁目のバーから、アンジュが出て来たところを目撃したという話だったが、そんな里見の話は、偶然登場した松平健によって遮られ、中途半端なまま終わりを迎える。アンジュが自分である事がバレたと思い込んだ緒形栞は、とうとう三星不動産をクビになると怯えながらも、健のもとでの奴隷生活も終わりを迎えるのではないかという期待も抱いていた。すでに健に従う事に限界を感じていた栞は、まずは無理矢理住まわされている健のとなりの部屋を出る決意をする。一方、会社が休みの水曜日に新宿2丁目のバーに向かった健は、そこで中村とママに再会。転勤による引っ越しの報告と、引っ越し先でのマイホーム購入の助力を頼まれる。その際、「運命の相手」について話題が及ぶと、浩二郎は本のしおりでつながった不思議な相手の事を話し始める。(Vol.13「ロマンチック線」。ほか、4エピソード収録)
第5巻
緒形栞は、松平健から突然キスされてからというもの、物事が冷静に考えられなくなっていた。健に対してキャーキャー言っている大多数の女性と同じように扱われたとショックを受け、凹んでいた栞は、健を好きになりかけている自分を認めたくなかったのだ。そんな中、栞は、支店主催のモデルハウスでの合コン「家コン」が開催される事に伴い、アドバイスをするため現場に足を運ぶ事になった。インフルエンザでダウンし、動けない健とはスマホで中継をしつつ、栞は健の指示に従ってアドバイスを続ける。家コンの参加者である紺野美香子は、友達の結婚ラッシュに焦り、彼氏を見つけに来ていた。しかし、知り合った小学校教師の赤井貴一にせっかく興味を持っても、無趣味なのが災いして会話の広げ方もわからないまま、ほかの女性参加者に奪われてしまう。一人になった美香子に栞が話し掛けると、美香子はダメな自分について語り始める。そんな美香子の手のひらに一発逆転線がある事に気づいた栞は、彼女をそっと勇気づける。(Vol.20「一発逆転線」。ほか、4エピソード収録)
登場人物・キャラクター
緒形 栞 (おがた しおり)
不動産会社「三星不動産」に勤めるOL。年齢は29歳。昼間は地味で冴えない印象だが、夜になるとウィッグやカラーコンタクトを着けて見目麗しい姿となり、よく当たると評判のカリスマ手相占い師「新宿のアンジュ」として、副業である手相占いを行っている。占い師をやっているのは父親の緒形浩二郎が負った借金を返済するためで、三星不動産では副業が禁止されている事から、会社には秘密にしたまま占い師を続けていた。 しかし、運悪く自社のエース社員の松平健に正体を知られてしまう。以来、強引に総務部から営業部へ異動させられ、秘密を盾に取られる形となって、健の思うがままに奴隷として仕えるはめになる。そのうえ、ひょんな事から健と同じマンションの隣室に住む事になる。 基本的に、いつも傍若無人な健に振り回されているが、時には逆に彼を振り回す事もある。中学時代に友人の沢井美和に噓をついた事を心の底から後悔しており、「幸せを求める客に噓をついてはならない」を信条として、占いに訪れた客には誠心誠意対応している。
松平 健 (まつひら たける)
不動産会社「三星不動産」に勤める男性。海外支社に勤めていたが、入社10年で本社の売買営業部に配属になった。営業成績は優秀で、つねに上から目線で人に接する。有能なうえ、かなりのイケメンで、女性には事欠かない人生を送っており、ヒマさえあれば、社内で女性社員と情事に及ぶなど、女性関係は非常にだらしない。一方で、仕事に関しては誠実な努力家でもある。 「幸せを求める客に噓をついてはならない」を信条としており、物件と客の情報はつねにチェックし、把握を怠らない。緒形栞が、手相占い師として、禁止されている副業を続けている事を知り、人事部に掛け合って彼女を強引に営業部へと異動させたうえ、自分の手元に置いて奴隷のように扱い始める。のちに、同じマンションの隣室に栞を住まわせる事となり、相容れないと思われた関係が次第に変化していく。 名前が有名芸能人に似ている事から、社内では「将軍」のあだ名で呼ばれている。手にドS線と鬼畜線の手相があり、エロぼくろを持っているため、特に栞は心の中で「クズ将軍」と呼んでいる。
緒形 浩二郎 (おがた こうじろう)
緒形栞の父親。新宿2丁目のバーで、「ヒロコママ」の名でママを務めているニューハーフ。妻を病気で亡くしたあと、性転換手術や豊胸手術を受けたため、多額の借金を背負っている。その支払いは娘である栞が肩代わりしており、彼女が手相占い師「新宿のアンジュ」として活躍しているのも、緒形浩二郎の借金返済が主目的である。
杉 良子 (すぎ りょうこ)
不動産会社「佐々木建設」の営業部長を務める女性。ショートヘアで色気のあるやり手の人物で、大口の顧客や住宅の見学会などのイベントには必ず絡んでいる。補佐を務める里見航太と行動を共にしている事が多い。
里見 航太 (さとみ こうた)
不動産会社「佐々木建設」の営業部に勤めている男性。日頃は杉良子の補佐としての仕事を主に行っているが、副業で手相占い師「六本木のカレシ」として活動している。占いの方針としては、悪い結果を伝えず、優しく導く事をモットーとしている。本物の彼氏よりも癒してくれるイケメン占い師として、話題の人となっており、その人気は「新宿のアンジュ」を凌ぐほど。 実は7年前、佐々木建設の内定が決まった折、手相占い師になる夢を捨てられないと、新宿のアンジュに相談に行った事がある。その際、「どちらか一つ、より安定した仕事のほうが向いている」と言われ、自分の夢を否定された事に憤りを感じたが、その怒りをバネにして二足のわらじを成功させた。松平健とアンジュの結婚線がぴったりである事から、二人が運命の相手であると占ったが、そのうえで里見航太自身もアンジュに心惹かれている。 アンジュが緒形栞と同一人物である事は気づいていない。
沢井 美和 (さわい みわ)
中学生の頃、緒形栞と仲がよかった女性。転校が決まった当時、想いを寄せていたクラスメイトの村上蒼太に告白するかどうかを悩んだため、栞に占ってもらった。しかし、告白しない方がいいという占い結果にへそを曲げ、「栞に見てもらわなければよかった」と栞を傷つける言葉を発し、そのまま疎遠となってしまった。しかし結婚を直前に控え、新居のための物件探しをしていく中で、偶然にも栞と再会を果たす。 旧姓は田中。
田辺 舞子 (たなべ まいこ)
一人用の賃貸アパートを探していた女性。10年以上前、教育実習生だった頃に、当時高校生だった松平健に英語を教えた事がある。その後、健の卒業と同時に健の父親、松平謙と結婚したため、健にとっては義母にあたる。夫に内緒で友人の連帯保証人になり、友人の借金を背負う事になった。これに責任を感じ、手紙1枚と離婚届を残して家を出て、旧姓の田辺を名乗って家探しをしている。 現在は女の子を妊娠中。
松平 謙 (まつひら けん)
松平健の父親で、田辺舞子の夫。離婚届と手紙を置いて姿を消した妻を探すため、手相占い師である緒形栞のもとを訪れた。オールバックにサングラスをかけ、開襟の柄シャツを着ているため、チンピラのような風貌をしているが、実は英語教師を務めている。妻には一途な想いを持っており、妻が肩代わりする羽目になった借金を、持ち家を売る事で支払い、解決した。
北大路 (きたおおじ)
不動産会社「三星不動産」の建設営業部に勤める男性。松平健の同期。不動産王と呼ばれている「関口グループ」の営業について、健と二人で任される事になった。これに伴い、最近関口グループの御曹司の関口正和が占いに凝っているという極秘情報を入手する。
関口 正和 (せきぐち まさかず)
関口グループのトップである関口の息子。社長業を譲り受ける事が決まり、これを機に会社の管理しているすべての物件を1社の不動産会社に任せる事になった。最近占いに凝っているという情報を入手したさまざまな不動産会社が、占い師を連れて来てはこぞってプレゼンをする中で、三星不動産から手相占い師「新宿のアンジュ」を紹介される。 そこで、人格者であり、実力を持った父親との違いに悩んでいる事を明かす。
関口 (せきぐち)
関口グループのトップを務める男性。「不動産王」と呼ばれる。どこの会社の営業担当者も顔を拝ませてもらえないほどの大の接待嫌いであり、マスコミ嫌いで有名。今回、息子である関口正和に社長業を譲るにあたり、会社の管理しているすべての物件を1社の不動産会社に任せる事を決めた。息子が取り仕切るプレゼンの席に身分を偽って運転手の格好をして参加し、心配な息子の行く末を見守る。
村上 蒼太 (むらかみ そうた)
緒形栞や沢井美和の中学時代のクラスメイトの男性。栞が幹事を務めたクラス会に参加し、その際、顔を合わせた女性のうち数人に言い寄ったうえ、金を貸してほしいと迫った。独身を装っているが、実は既婚者。手には不倫線と呼ばれる線があり、手相と同様に不倫真っただ中。しかし不倫が妻に知られてしまい、離婚に応じる代わりにマンションを購入して慰謝料とするように迫られている。 女性からお金をだまし取り、不倫相手の彼女を幸せにしたいと考えている。
藤田 真琴 (ふじた まこと)
自分名義のマンションを売りたいと考えている女性。半年ほど前に、手相占い師「新宿のアンジュ」から、「あげまん線」があると言われた事がある。大学時代は小説サークルに入っており、当時の仲間の一人である慎と同棲していた。小説家の卵である彼を支え続けて来たが、慎が突然姿を消し、すべてをあきらめるためにマンションの売却を決めた。
慎 (しん)
藤田真琴と同棲していた男性。大学時代には小説サークルに入っており、小説家の卵としてずっと執筆活動を続けていた。真琴とは結婚の約束もして、将来を見据えて彼女名義のマンションで同棲生活送っていたが、いつになっても芽が出ず、ある日突然姿を消した。真琴に甘えっぱなしの自分を変えるため、家を出たあとに小さい出版社に就職。新作小説を新人賞に応募したあと、真琴のもとに戻りたい一心で、何度もマンションを訪れていたが、勇気が出ず、真琴に会えないままだった。 しかし、その様子を見た松平健が声を掛けた事で、真琴のもとを訪れる決意をする。
中村 (なかむら)
ママの夫であり、中村裕の父親。中古マンションの購入を検討中で、妻と二人で「新宿のアンジュ」のもとを訪れ、金運を占ってもらった。アンジュからは、妻とは運命の相手だと言われたものの、それに関しては興味薄。目下はマイホームを手に入れるための資金繰りに絡めた金運が第一と考えている。夫婦共働きだが、子供の養育に関しては妻に任せっぱなしなのが現状。 そのうえ、少々潔癖すぎる子育てに思うところがある。
ママ
中村の妻であり、中村裕の母親。中古マンションの購入を検討中で、夫と二人で「新宿のアンジュ」のもとを訪れ、金運を占ってもらった。アンジュからは、夫とは運命の相手だと言われたものの、それに関しては興味薄。目下はマイホームを手に入れるための資金繰りに絡めた金運が第一と考えている。夫婦共働きに加え、子育てにも忙しい日々を送っている。 わがままを言わないかわいい息子が自慢だが、妻の子育てに関しては少々潔癖すぎるきらいがある。
中村 裕 (なかむら ゆたか)
中村とママの息子。マイホームの購入を検討している両親と共に、マンションの内覧に訪れた。日頃から、両親のいう事をよく聞くいい子。まだ幼い少年でありながら、共働きで不在がちな両親のもと、一人で留守番をする事もでき、わがままを言わないと、特に母親から溺愛されている。しかしそれは、大好きな両親に好かれたい一心で努力した姿でもある。 いっしょに過ごした緒形栞を慕い、彼女の前ではちょっと意地悪でわがままも言う、等身大の少年の姿となって本性を現す。
西郷 春彦 (さいごう はるひこ)
大御所感漂う地元オーナーの老紳士。東京K区の戦前からの地主で、彼の持つビルのほとんどが、「佐々木建設」の手掛けたもの。杉良子や松平健、緒形栞、里見航太らが同席する打ち合わせを兼ねた会食の際、「六本木のカレシ」に恋愛運を見てほしいと申し出た。新宿でふらりと入ったバーのママに一目惚れをした事を打ち明け、彼女に新しくて広い店をプレゼントしたいと考えている事を相談する。
由美 京香 (ゆみ きょうか)
伊吹四朗と結婚予定の女性。四朗とは親子ほども年が離れており、父親と娘のように見られるが、見合いで知り合った。結婚後、二人で暮らす家を探すため、松平健と緒形栞の案内を受け、さまざまなマンションの内覧を行っていた。しかし、つねに興味なさげな態度とわがままで自分勝手な言動を重ねており、印象は悪い。
伊吹 四朗 (いぶき しろう)
「角乃進」というペンネームで執筆活動を続けている小説家の男性。出す本すべてがベストセラーとなり、ドラマ化や映画化された作品も多数で、今や子供から大人まで誰でも知っている大人気作家となった。結婚予定の女性、由美京香と二人で暮らすための家を探している。娘ほど年の離れた京香とは、もともと見合いで知り合った。わがまま放題の彼女に対し、腹を立てる事なく、ただ優しい笑顔で寄り添っている。
丹下 (たんげ)
不動産会社「萬屋不動産」に勤める男性。町おこしで再開発計画がある事を理由に、田舎の土地の権利を購入するため、所有者である緒形浩二郎を訪ねて来た。しかし、萬屋不動産は西に強く展開している会社で、特に東海地方では「三星不動産」よりも管理物件数が多いのが現状。最近では関東に食い込み、オーナーに甘い言葉を掛けて、三星不動産の管理物件を略奪しようと企んでいる、という不穏な噂がささやかれている。
岩下 紫真 (いわした しま)
区議会議員を務める女性。中学生の娘を持つシングルマザーだったが、議員になる前まで働いていたスーパーの社長を務める男性と再婚する事になった。これを機に、娘の岩下政子と三人で暮らす戸建て住宅を購入予定だったが、政子が頑なに納得しようとしないため、住宅の購入自体を白紙に戻すかどうかを検討中。再婚を決めたのも、家を建てるのも、すべて「政子のため」が口癖。 何もかも、少しでもいい条件になる事にこだわっている。
岩下 政子 (いわした まさこ)
区議会議員の岩下紫真の中学生の娘。5歳の時に父親を亡くして以来、母親と二人で暮らして来た。母親が再婚するにあたり、家を建てる事になったが、すべてがいい条件になるようにと、「政子のため」と言って推し進めようとする母親に不満を爆発させた。だがこれは、条件よりも大切な事がある事に気づいてほしいと願い、母親を思う気持ちから来る反抗である。
竹中 尚人 (たけなか なおと)
現在住んでいるマンションの売却を希望している男性。電話を取るだけのためにモタモタしたりあたふたしたりと、何事にも余裕がない自分にコンプレックスを抱いている。仕事中のミスが原因で、ブラジルへの左遷が決まったが、同棲中の彼女の沢口弥寿子を巻き込む事ができず、好きな人ができたからと噓の理由をつけて別れを迫った。
沢口 弥寿子 (さわぐち やすこ)
一人用のマンション購入を希望している美人女性。終の棲家を探しに三星不動産を訪れた。実は3年間付き合っていた同棲中の彼氏、竹中尚人に捨てられ、傷心中。
日野 翔平 (ひの しょうへい)
結婚を機にマンションの購入を検討中の男性。大地喜美子とは、7年間付き合っており、彼女を安心させたい一心で結婚を決めた。マンションの内覧中、喜美子からクリスマスにプレゼントされたブレスレットをなくした事に気づき、大騒ぎする。しかし、案内中だった松平健がマンション内を探しておく旨伝えると、困惑したように表情が曇る。 手にはサギ師線が刻まれている。
大地 喜美子 (だいち きみこ)
日野翔平と7年付き合っている彼女。結婚を機にマンションを購入しようとしている翔平に付き添い、内覧に来ているが、始終機嫌が悪い状態が続いている。結婚で自分は本当に安心を手に入れ、幸せになれるのか疑問に感じている。
山口 いずみ (やまぐち いずみ)
不動産会社「三星不動産」の地方支社に勤めている女性。仕事で本社を訪れた際、松平健と男女の関係になった。健としては、あとくされなくセックスするだけの女性社員の一人だったが、彼女にとっては入社当時からあこがれの人であり、恋する人だった。抱いてくれたのに冷たく突き放す健と、つねにいっしょにいる緒形栞を恋人であると勘違い。 自分より冴えない栞が健の彼女である事が納得できず、健と栞を尾行していた。
唐沢夫妻 (からさわふさい)
照明デザイナーを務めている夫婦。間取りやインテリアなど、細部までこだわって建てた自宅兼事務所に住んでいる。40歳にして妻の妊娠が発覚。二人で働いて返すつもりで組んだローンは、一人で返すには無理な金額だったため、これを機に手放す事を決めた。しかし営業の松平健からは、売却の際はリフォームもやむを得ないかもとの話があり、本当は家を手放す事が本意ではない夫婦にとっては、不安の種となっている。
真田 幸弘 (さなだ ゆきひろ)
自宅マンションの売却を希望している男性。現在は他県に単身赴任中。マンションには妻が住んでいたが、妻を病気で亡くしたため、売却を決めた。妻を亡くしてすぐにマンションを売却してしまう事に、義母からは反対されているが、その意思は固い。
若尾 麻矢子 (わかお あやこ)
不動産会社「三星不動産」の、地方支店の営業所に勤めている女性。成績優秀なやり手で、営業所の販売実績がほかの支社と比較してずば抜けていいのは、ほとんど彼女が担当しているため。まじめで清楚な印象だが、実は男性客を対象に個人的に連絡が取れる電話番号を渡して枕営業を繰り返していた。
石坂 洋二 (いしざか ようじ)
高橋栄子と結婚予定の男性。結婚に際してマンションを購入する予定で、松平健、緒形栞に案内されてマンションの内覧に来ている。物件をピックアップしたのは栄子で、友人の新克由はマンションのアドバイスをするためについて来た。二人共に上から目線の物言いだが、なにを言われても苦笑いするだけで、特に反論はしない。
高橋 栄子 (たかはし えいこ)
石坂洋二と結婚予定の女性。結婚に際してマンションを購入する予定で、松平健、緒形栞に案内されてマンションの内覧に来ている。住む予定の自分達よりも、口出しをし続ける新克由に不満が募っている。
新 克由 (あらた かつよし)
石坂洋二の幼なじみの男性。インテリア会社に勤めている。洋二が結婚するにあたりマンションを探すと聞いて、アドバイスをするために内覧に同行した。手にはS線の手相を持っており、何かにつけて上からな物言いをする。マンションに関しては、住む予定の本人よりも文句が多く、何かとケチをつけては物件を決めさせない。実は幼い頃から洋二に想いを寄せている。 告白する事もできず、関係を終わる事もできないまま苦しい思いを胸の内に抱えている。
川上 卓也 (かわかみ たくや)
俳優を務める男性。女性人気も高い。劇団員として長い下積み経験があり、見た目はもちろん実力も高く、広い層から人気がある。内密に自宅の売却したいとの要望を受け、関口正和からの紹介で、松平健と緒形栞が担当する事になった。家を売るのは妻の由紀恵との離婚が決定したためだが、幸せの象徴である住宅メーカーのCMキャラクターを務めている関係で、マスコミ対策として内密に売却を進めたい意向がある。
由紀恵 (ゆきえ)
川上卓也の妻。身分を隠して新宿のアンジュのもとを訪れ、雑誌の切り抜きを持参して夫の手相を占ってもらう。その後、夫との離婚が決まり、自宅を売却する事になった。もともと卓也が売れる前の劇団員時代からのファンで、貧乏だった時代を支えた存在だった。しかし卓也が人気となり、忙しさのあまりいっしょにいる事も減って寂しさを感じるようになった。 卓也を応援したい気持ちと、寂しさの板挟みとなり、自分が妻でいる事で足を引っ張りたくないと考え、離婚する事を決意した。
紺野 美香子 (こんの みかこ)
モデルハウスで開催された合コン、略して「家コン」に参加した女性。28歳になり、友達がのきなみ結婚ラッシュのため、焦りがある。しかし、無趣味なのが災いして男性との知り合い方も、会話の広げ方もわからない状態。
赤井 貴一 (あかい きいち)
モデルハウスで開催された合コン、略して「家コン」に参加した男性。小学校で教師を務めており、趣味はロードバイク。参加者の紺野美香子が気になり、声を掛けたが、無趣味の彼女と話が広がらず、別の女性に強引に誘われてしまった。
釘原 茉莉子 (くぎはら まりこ)
松平健を訪ねて「三星不動産」を訪れた女性。釘原小巻の妹。シンガポールのホテルでの仕事が決まったため、自宅を売却してシンガポールで暮らす事を決めた。その挨拶に訪れたが、健の意向によって自宅売却の担当を健に頼む事になる。
釘原 小巻 (くぎはら こまき)
釘原茉莉子の姉。松平健が中学3年生になる前の春休み、彼の家庭教師を務めていた。高校合格に向けて共に頑張っていく中で、互いに反発しながらも惹かれ合っていった。健が高校に合格したら結ばれようと約束も交わしていたが、春を待たずに帰らぬ人となった。