「ねずみ」と呼ばれる殺し屋の少女
ねずみは幼い頃からヤクザ組織で殺し屋として育てられた少女。少し虚(うつ)ろなまなざしとかわいらしい顔立ちで、一見暴力とは無縁の可憐な少女に見えるが、ヤクザ組織のボスを務める鯆(イルカ)に「最強の道具」と評される実力の持ち主。ねずみは誰かを使って人を殺すのでも、毒を盛って人を殺すのでもなく、ねずみの身体ひとつでターゲットの命を奪う。ねずみは鯆から必要な時に呼び出されて使われるだけの「人を殺す道具」でしかなく、彼女の子どものような純粋さが、殺害シーンの恐ろしさをより一層際立たせている。
人の愛を知らずに育った殺し屋の初恋
これまで人として扱われず、ましてや女の子として扱われたことがなかったねずみは、殺害現場のゲームセンターで碧と出会う。その後、公園で再会した碧に告白されると、これまで人から愛情を受けた経験がなかったねずみは、一気に碧のことを好きになってしまう。ねずみのアパートで同棲生活を開始した二人は、ふつうのカップルのように幸せな時間を過ごすが、最強の殺し屋を所有するヤクザ組織がそれを許すはずがなかった。半年が過ぎたある日、碧が組織に拉致され、ねずみは鯆から碧を殺すよう命令されるが、碧という大切な存在を得て幸せを知ってしまった彼女は、愛しい碧を殺すことができない。するとねずみは碧を助けてくれるなら、自らが碧を殺し屋に育てあげ、組織に貢献させると懇願する。そしてこの提案を承諾しなければ、ねずみ自らの命を絶つと交換条件を突きつける。
純情少年の愛と暴力の物語
碧はちょっと気弱で頼りなく見える青年だが、ねずみを愛する思いは誰にも負けず、彼女に関することになるとその印象は180度変わる。ねずみとの何気ない日常に幸せを感じ、ねずみとのエッチを夢見て一喜一憂するうぶな様子が微笑ましい。一方で、ねずみに一目惚(ぼ)れしたことでヤクザ組織から壮絶な拷問を受けた際は、気持ちも折れそうになりながらも気丈に振る舞い、彼女への揺るぎない愛を示した。その後、碧は殺し屋として生きていくという現実を受け入れ、ねずみを縛っているものすべてを自分が殺すと宣言。そして、二人が幸せになるためなら何も厭(いと)わないという覚悟を決め、殺し屋になるための一歩を踏み出す。
登場人物・キャラクター
ねずみ
殺し屋の少女。ボスの「鯆(イルカ)」率いるヤクザ組織で物心ついた時から「人を殺す道具」として育てられたため、愛情を知らずに成長した。見た目はふつうの華奢(きゃしゃ)な女の子だが、命令されれば女性や子どもであっても表情ひとつ変えずに容赦なく命を奪ってきた。現在はアパートの一室で一人暮らしをしており、仕事が入るたびに鯆に呼び出され、密かにターゲットの命を奪う日々を送っている。ある日、ターゲットを殺害した直後のゲームセンターで、碧と出会って恋に落ちた。その後、碧と幸せな同棲生活を送り始めるが、ヤクザ組織はそれを許すはずもなく、碧は拉致され暴行を受ける。自分のせいで組織に命を奪われそうになった碧を助けるため、彼を殺し屋にすることを交換条件に鯆を説得し、ねずみは碧を殺し屋として教育することになる。育った環境が特殊だったことから、「キス」イコール「エッチ」と認識しているなど、世間知らずで初心(うぶ)なところがある。
碧 (あお)
ごくふつうのちょっと頼りない青年。ゲームセンターでねずみと出会って一目惚れし、公園で再会して不器用な告白を経て、ねずみと同棲生活を始める。幸せな生活が半年ほど過ぎたある日、碧はヤクザ組織に拉致され壮絶な拷問を受ける。すべては殺し屋であるねずみとかかわったことが原因だったが、彼女への愛情は揺らぐことはなかった。碧はねずみの前で無惨に殺されそうになるが、ねずみの「碧を殺し屋にする」という交換条件に助けられる。そして人に刃物を向けることすらできなかった気弱な自分が、ねずみの教育によって殺し屋になるという、第二の人生を歩むことになる。表裏のない真っ直ぐな性格で、ねずみへの愛情は揺るぎなく、どんなに痛めつけられても動じない心の強さを持つ。学生時代に姉を亡くした辛い経験があり、今でも忘れられずにいる。
書誌情報
ねずみの初恋 3巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉
第1巻
(2024-03-06発行、 978-4065344231)
第2巻
(2024-06-06発行、 978-4065358252)
第3巻
(2024-09-05発行、 978-4065368800)