虫由来の能力を持つ殺し屋たち
とある組織に所属する殺し屋たちは、現代社会の闇に潜み、無価値な人間を殺して戸籍や資産、臓器を商品化している。その実態は謎に包まれており、名前すら誰も知らないことから、ただ単に「組織」と呼ばれて裏社会では恐れられていた。本作に登場する殺し屋たちはそれぞれ虫由来の特殊能力や武器を持ち、それらを駆使して派手なバトルアクションを繰り広げる。本作の主人公の芋蟲は、昆虫が進化する前の原型を留めており、極限まで単純化された構造はどんな環境をも生き抜く力を持つ、サバイバルの完成形でもある。
謎の人物「鳳蝶」が主催するVIPパーティー
芋蟲は天性の戦闘センスを持つ殺し屋で、組織の命令に従って標的を次々と闇に葬ってきた。しかしある日、組織ですら知らない蟲「鳳蝶(アゲハ)」に狙われる。鳳蝶からの挑発とも取れるメッセージの背後に、かつて実の姉のように慕っていた稲生美香の影を見た芋蟲は、鳳蝶を追うことに決め、そのメッセージに従って豪華客船で行われる謎のパーティーにパートナーの華蟷螂と共に参加する。しかし、その豪華客船には鳳蝶に雇われた殺し屋も集結しており、豪華客船で生き残りを懸けたデスゲームが行われる。
アラクニドの前日譚
本作は、本編である『アラクニド』の1年前を舞台とするスピンオフ作品で、多くのキャラクターが共通して登場する。中でも本編におけるキーキャラクターでありながら序盤で死亡する蜘蛛は、本作においても重要な役割を担って登場している。蜘蛛と芋蟲の関係は時に敵となり、時に味方となって共闘する関係で、蜘蛛の活躍が掘り下げられて見られるのも、前日譚(たん)である本作ならではの醍醐味となっている。
登場人物・キャラクター
芋蟲 (いもむし)
「組織」に所属する暗殺者の女性。金髪ショートヘアで、長身でスレンダーな体型をしている。ターゲットを正確無比に殺害する非情な殺し屋ながら、「標的以外を殺すのはルール違反」と戒めており、標的以外は仮に自分が命を狙われことになっても殺すことはない。さばさばとした大雑把な性格で、姉御気質(かたぎ)。所持する能力は自然界では最弱と思われがちな「芋蟲」だが、極限まで単純化されたゆえに高い適応能力を持ち、あらゆる敵や環境にすぐに順応する。家族はおらず児童養護施設「紫陽花学園」で暮らしており、血のつながりはないが、同施設にいた稲生美香を実の姉のように慕っていた。幼少期からその戦闘センスの片鱗(へんりん)を見せていたが、そのせいで周囲から疎まれ、どこにも自分の居場所がなかった。美香だけが自分の拠り所となっていたが、実は美香は自分を守るため学園の学園長、柳亜貴穂の言いなりとなって性的虐待を受けていた。稲生美樹自身が美香を守っていたつもりが守られていたことを知り、大人たちに弄ばれた姉の姿を目撃して激昂。その場にいた人間を皆殺しにするが、同時に姉の死も目の当たりにしてしまう。その後、絶望していたところを雀蜂にスカウトされ、組織に入ることとなる。突如襲ってきた最強の殺し屋「針蟻」との戦いを皮切りに、謎の人物「鳳蝶」からのメッセージ、そしてその裏に姉の存在を垣間(かいま)見て、その真実を確かめるべく自ら死地に飛び込むことを決める。かつての名前は「稲生美樹」。
華蟷螂 (はなかまきり)
「組織」に所属する暗殺者の少年。銀髪ツインテールに、ゴスロリドレスを身につけている。一見美少女にしか見えないが、性別は男性。染色体の異常で男性にもかかわらず女性っぽい肉体的特徴を持つ、「クラインフェルター症候群」を患っている。雀蜂の命を受け、芋蟲の新たな相棒として派遣される。実直な性格ながら気難しいところがある。また、華蟷螂自身の肉体にコンプレックスを抱いており、性別に触れられると機嫌が悪くなる。その仕草がどことなく稲生美香を思い出させるため、芋蟲ともすぐに打ち解けた。しかし、自堕落な芋蟲は相性最悪で、汚部屋と化した彼女の部屋を見たとたんに激怒した。擬態を得意とする「華蟷螂」の特徴を持つため、擬態の邪魔となる汚れを嫌悪しており、極度の綺麗好き。またグルメで食の好みにもうるさい。好物は一部のコンビニで限定販売されている棒付きキャンディーの「プリンアラモード&レッドベリー味」で、芋蟲は華蟷螂のご機嫌取りのためにこのアメを大量に常備している。
クレジット
- 原作
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村田 真哉
関連
書誌情報
キャタピラー 全11巻 スクウェア・エニックス〈ヤングガンガンコミックス〉
第1巻
(2012-08-22発行、 978-4757536975)
第11巻
(2018-06-25発行、 978-4757557628)