はこぶね白書

はこぶね白書

ごく普通の女の子である福田ねこが「化アニマル」たちと送る、ちょっと普通じゃない高校生活を描いた青春物語。作者の桑佳あさが、「藤野もやむ」名義で活動していた時の作品で、「月刊コミックブレイド」に掲載された。

正式名称
はこぶね白書
ふりがな
はこぶねはくしょ
作者
ジャンル
ファンタジー
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世界観

本作『はこぶね白書』は化アニマルという、人間に化けることの出来る動物たちが存在する世界を舞台に描かれている。化アニマルらは人間に化けることで、人間たちの社会に溶け込み同じ生活を送っているが、もとが動物であるため人間社会の一般常識に欠けているという欠点がある。そのため、化アニマルたちが人間社会で生きるうえで必要な文字や道路標識、異なる死生観などを学ぶための学校「盛森高校」が存在している。盛森高校は人間社会側からも、政府の一部の人間など限られたごく少数の人間に認知されており、相互の協力によって成り立っている。化アニマルと人間が共に存在しているという世界観が生み出す価値観の違いやすれ違いが、本作における大きなテーマとなっている。

あらすじ

高校受験にことごとく失敗した少女、福田ねこは辛うじて盛森高校という学校に合格できた。入学の日、学校へと向かう電車の中でねこは同じ学校を目指す鈴原みぃ子と出会う。2人はともに盛森高校を目指すが、森盛高校は森の奥深くに存在しており、ねこは不安を隠せないでいた。ようやく学校へとたどり着いたねこは、入学の案内にしたがって学長のもとへと向かう。だがそこで、ねこは入学を許可できないと告げられてしまう。しかし、諦められないねこは、土下座までして入学許可を請い、根負けした学長はついにねこの入学を許す。だが、そこでねこはこの盛森高校が人間に化けた動物たち、化アニマルの通う高校であるという驚愕の事実を知ることとなる。

外伝

作者である藤野もやむ(桑佳あさ)の短編集『ひとさきの花 藤野もやむ短編集』に「コミックブレイドZEBEL」Vol.2に掲載された本作『はこぶね白書』の外伝作品『キモチクラベ ~夏~』が収録されている。

メディアミックス

ドラマCD

「コミックブレイド」「コミックブレイドMASAHUNE」「コミックブレイドZEBEL」の3誌連動企画としてオリジナルドラマCDが制作され、応募者全員サービスが行われた。キャストは福田ねこ役を高木礼子、鈴原みぃ子役をゆかな、綿抜先生役を野島裕史、荒木狐タ郎役を鳥海浩輔、宅間裕一役を日比愛子、鎌場梅花役を福圓美里が演じた。

登場人物・キャラクター

福田 ねこ (ふくた ねこ)

15歳のごく普通の少女。誕生日は2月22日。高校受験のことごとくに失敗し、全寮制の盛森高校に通うことになった。化アニマルのための高校である盛森高校では、唯一の人間。明るく元気で、頭は良くないものの何事にも必死で取り組む、まっすぐな性格をしている。入学式へ向かう途中に出会った鈴原みぃ子とは寮でも同室、クラスも同じ白組。 化アニマルであるみぃ子の存在に戸惑いながらも、友情を築き上げていく。家族は両親の他、ケン坊という弟がいる。忍者部という部活に興味本位から入部した。

鈴原 みぃ子 (すずはら みぃこ)

猫の少女。福原ねことは寮のルームメイトで、学校のクラスも同じ白組。普段は無表情でわがままな性格だが、時折、非常に魅力的な笑顔を浮かべる。入学前に偶然出会ったねこに懐いており、普段からさまざまなわがままやヤキモチをねこに対してぶつけている。鈴原輝雄という人間の男性のことが好きで、そのため人間になりたいと思っている。 お腹が空いていたある日に出会った老婆が偶然にも化アニマルの先輩だったため、彼女に色々と教わった結果、盛森高校へ入学することになった。その老婆には、他にも人間への化け方などを教わった。実は絵の才能があり、美術部のシルビノ・カラマツにうらやましがられている。忍者部にねこが入部したため、後を追って入部した。

鎌場 梅花 (かまば うめか)

狸の少女で3月7日生まれ。福田ねこたちと同じ白組のクラスメイトで、美術部に所属している。薄卯若葉とは寮のルームメイト。化けることが苦手で、姉にもらった花がないと上手く集中することができないため、いつも髪かざりとして身につけている。引っ込み思案で物静かな性格をしており、抗議する間もなく周囲に振り回されてしまうことがある。 姉も盛森高校に通っており、写真部の部長をしている。

荒木 狐タ郎 (あらき こたろう)

福田ねこたちと同じ白組に所属する狐の少年。嫁探しのために学校へ来ていると公言している。友人想いの気のいい性格で、化アニマルはみんな仲間だと考えている。クラスメイトに対しても分け隔てなく接するため交友関係が広く、友人の困難には積極的に手を貸すため、周囲からも好かれている。反面、自分が心を寄せている鈴原みぃ子からは積極的すぎることがあだとなって嫌われており、アプローチを掛けてはビンタされている。 宅間裕一とは寮で同室のクラスメイト。

宅間 裕一 (たくま ゆういち)

福田ねこたちと同じ白組に所属する少年。8月26日生まれ。福田ねこと同じく、これまで人間社会で育ってきたため、盛森高校の環境に上手く適応できずにいる。ねこのことを異性として気にしており、積極的にアプローチを仕掛けることもある。寮で同室の荒木狐タ郎とは仲が良く、鈴原みぃ子に想いを寄せる狐タ郎と互いに協力しあっている。

相模 左甫 (さがみ さすけ)

福田ねこたちと同じ白組に所属する少年。朴訥で無口なため、担任である綿抜先生ですら必要以上の会話を交わしたことがない。反面、福田ねことは何かにつけて会話をすることが多く、クラス内で噂になったこともある。自己主張をあまりせず、冷静で大人びた考え方をする消極的な性格のため、周囲に誤解を招くことも多い。美術部に所属しており、シルビノ・カラマツや鎌場梅花とは部活仲間。 木下景熊とはルームメイトである。瓜二つの外見を持った相良右甫は双子の兄。「九郎」という黒猫をパートナーにしている。

相模 右甫 (さがみ ゆうすけ)

1年赤組に所属する生徒。相模左甫と瓜二つの外見を持つ双子の兄。福田ねこや鈴原みぃ子と同じ忍者部に所属する。人にちょっかいを出して翻弄したりおちょくったりする癖があり、暇さえあれば左甫やみぃ子に絡んでは、騒動の種をばらまいている。過去の因縁から弟である左甫とはあまり良い兄弟仲とは言えない状態にある。 「四郎」という黒猫をパートナーにしている。

シルビノ・カラマツ (しるびのからまつ)

福田ねこたちと同じ白組に所属する、美術部員の少年。3月15日生まれの15歳。白組で唯一、正体が蛇である。背中の中ほどまである長い髪の毛を1本にまとめた髪型で、いつも不機嫌そうな表情を浮かべている。美術部には興味がなかったが、部活紹介を見て興味を抱き入部。絵にはそれなりのこだわりがあり、特に色彩感覚にはうるさい。独特のセンスを持つ鈴原みぃ子の絵を個人的にとても高く評価している。 相良左甫と会話していることが多い。

上杉 万次郎 (うえすぎ まんじろう)

福田ねこたちの所属する忍者部の先輩で部長を務めている少年。黒髪を刈り上げた坊主頭をしており、左の眉毛の上に特徴的なほくろが2つある。同じ忍者部に所属する三好ゼンダとは対照的に活発な性格をしており、部のムードメーカー的存在。校舎の雨樋を伝って窓際を疾走するなど、忍者と呼ぶにふさわしい運動能力を持つ。実は猫バカとゼンダに言われる程の猫好きで、人間に化けていない化アニマルや本物の猫を見かけると愛でずにはいられない性癖がある。

三好 ゼンダ (みよし ぜんだ)

福田ねこたちの所属する忍者部の先輩で副部長を務めている少年。正体は猫。色素の薄い髪を長めに伸ばしており、魚の骨が描かれたヘアバンドでかき上げている。部長でムードメーカー気質な上杉万次郎とは対照的にクールな性格をしており、ほぼ表情を変化させない。昔、車に立ち向かったことによってできたという、大きな傷が額にある。

学長 (がくちょう)

盛森高校の学長を務める人物。白く長い髪を持つ女性で、平安貴族のような時代がかった和服を身にまとっている。妙齢の女性といった顔立ちだが、実年齢は定かではない。不思議な力を持っており、自分の分身として活動できる白蛇を作り出すことが可能。

綿抜先生 (わたぬきせんせい)

福田ねこたちの所属する白組の担任を務める男性。教師としては若めな外見で、生徒たちに親身に接する好青年。盛森高校の教師として、人間社会と動物社会の双方に通じている。常に人間の姿を保っているが、正体は狸だとねこには告げている。ねこの入学時に立ち会った教師の1人で、ねこが本物の人間であることを知っている。

木下 景熊 (きのした かげくま)

福田ねこたちと同じ白組に所属する少年で、調理部に所属している。8月31日生まれ。「景熊」という名前だが、正体は猫。相良左甫とは寮のルームメイトである。入学して早々、草むらに隠れていた蛇に襲い掛かるなどお調子者で協調性に欠ける面があり、シルビノ・カラマツなどには、頭が悪そうで動くものは何でもおもちゃだと思っている、と評されている。

永泉寺 れいら (えいせんじ れいら)

福田ねこたちと同じ白組に所属する少女で正体は狸。4月1日生まれでテニス部に所属している。色素の薄いウェーブのかかった髪をしており、もみあげの部分をロール状にカールしてある。また、後頭部には大きなリボンを付けている。吊目がちの気の強そうな瞳をしており、「~だわ」と、お嬢様口調で話す。

とめ リン

福田ねこたちと同じ白組に所属する少女。3月12日生まれでバレー部に所属している。頬にそばかすがあり、髪型は薄い色の波打った髪のショートヘア。常に口を大きく開けた笑顔を浮かべている。好奇心が強く、気になることがあったら試さずにはいられない。

琴呼 トコ (ことこ とこ)

福田ねこたちと同じ白組に所属する猫の少女。3月2日生まれ。ショートヘアで、首元の髪が外側に跳ねた癖っ毛をしている。頭が良く、初めて行われた試験では学年4位の成績を収めていた。ちなみに、かつて人間社会でしっかりした教育を受けていた宅間裕一や福田ねこが上位に食い込んでいたため、化アニマルとしての教育を受けた者の中では2位となる。

小柳 馬子 (こやなぎ うまこ)

福田ねこたちと同じ白組に所属し、学級委員長を務める少女。背中にかかるほどのロングヘアで、ヘアバンドをしている。「馬子」という名前だが正体は狐。委員長らしく生真面目な性格をしており、なにかと他の生徒に小言を言っている。頭も良く、人間であるため学習進度が遙か先を行っている福田ねこに、成績で勝ったことがある。

高句 麗 (たかく うらら)

福田ねこたちと同じ白組に所属する少女。陸上部に所属している。4月19日生まれで正体は鹿。ウェーブのかかった長い髪をしており、ツーサイドアップの形にまとめている。西洋人形のようなお嬢様然とした外見ながら、口が悪く、その言動で周囲を驚かせることも。反面、表情を顔に浮かべることは稀で、無表情に近い。

柴 乱マル (ふし らんまる)

福田ねこたちと同じ白組に所属する少年。8月22日生まれ。大きなとんがりがある、独特なツンツン頭をしている。荒木狐タ郎とは親しくしており、食事の際にはちくわの奪い合いなどをしていた。狐タ郎が落ち込んだ際には、心の底から心配してはいたものの、いつもと調子の違う狐タ郎の様子にいらつきを隠せずにいた。

薄卯 若葉 (うすう わかば)

福田ねこたちと同じ白組に所属する少女で、新聞部に所属している。6月29日生まれで正体は狸。また、鎌場梅花のルームメイトでもある。表情をあまり変えない人物。黒髪を背中ほどまで伸ばしており、前髪はおかっぱのようにまっすぐに切りそろえられている。

長尾 隆彦

福田ねこたちと同じ白組に所属する少年で、新聞部に所属している。4月10日生まれ。髪色は薄く、髪の長さは瞳にかかる程度まで伸ばし、眼鏡をかけている。鎌場梅花と相良左甫が付き合っているのではないかという記事を新聞部が掲載したことによって騒動が発生するが、特に責任を感じることもなく、盛り上がっているならいいのではと、投げやりな態度を見せていた。

お父さん (おとうさん)

福田ねことケン坊の父親で、眼鏡をかけた中年の男性。朝は寝ていることが多く、滅多に起きてこない。ねこが高校入学のために家を離れる際には、起き上がって見送りに来たことを家族の皆が驚いたほど。ねこのことを親として心配している。

お母さん (おかあさん)

福田ねことケン坊の母親。共働きのため、夜遅くまで仕事で家を留守にしていることが多い。細かいことを気にしないさっぱりとした性格の女性で、ねこが突然家に帰ってきた際も理由などを深く問い詰めたりしなかった。また、ねこの高校入学の際にはわざと寝坊して仕事に遅れ、ねこを見送るなどしたたかな面も持つ。

ケン坊 (けんぼう)

福田ねこの弟。全寮制の高校へ入学した姉のことを気にかけている心優しい小学生。ねこが夜中に電話を掛けてきた際にも素直に応じ、姉のことを心配していた。夜に放送している教養番組を見るのが最近の習慣となっている。

鈴原 輝雄 (すずはら てるお)

鈴原みぃ子の飼い主であった男性。軒先で泥の塊のようになっていたみぃ子を保護した。千代子という妹がいる。病弱でいつも寝込んでおり、妹にはいつも心配されていた。作家として稼ぐことを夢見て小説を書いており、よく賞に応募している。神田の出版社から、小さな賞をもらったことがある。

ギテン

福田ねこの前にたびたび姿を現していた白蛇。頭の部分に真紫のライン模様が入っている。鈴原みぃ子に噛みつかれ怪我を負ったところを、ねこに治療された。その時の包帯が首もとに巻き付けられている。

集団・組織

忍者部 (にんじゃぶ)

福田ねこや鈴原みぃ子が所属している部活。他に同学年では相良右甫が所属している。上級生である上杉万次郎と三好ゼンダが前年度の勧誘に失敗しており、新入部員である1年生を入れても5人しか所属部員がいない。部活内容は独特で、1年生全員の名前と部活をそれとなく聞き出すことなどを中心に活動している。

場所

盛森高校 (もりもりこうこう)

人間になりたい動物である化アニマルが、人間世界の常識を学ぶため人間の姿に化けながら通う学校で、人間の生徒は福田ねこのみ。全寮制の高校で、山の奥深くに存在している。ねこや鈴原みぃ子らの1年には白組、赤組、青組の3組が存在しており、ねこたちはその中の白組に通っている。結界によって人間界への出入りが制限されており、簡単には入り込めず、また抜け出せないようになっている。

その他キーワード

人間道 (にんげんみち)

人間のための道のこと。一般的な道のことを、動物たちのための道である「獣道」と区別する必要がある際は、特に「人間道」という言い方で表現される。

化アニマル (ばけあにまる)

人間に化けている動物たち全般を指す言葉。狸や狐、猫などが含まれる。盛森高校に通っている生徒たちの大半は、将来人間として生活することを目標としている化アニマルである。化けアニマルの中には、両親が化アニマルでありながら人間社会で普通に暮らしてきたため、自分のことを人間だと思い込んでいる者もいる。

忍者 (にんじゃ)

文字通り、忍びとしての任務を生業としている者たちで、盛森高校にも人間世界から忍者が入り込んでいる。さまざまな任務に就いており、盛森高校に派遣されている忍者は特に、盛森高校に所属する化アニマルたちの素行を調査し、人間社会に移り住んでも問題がないか判断するためのデータを人間社会側へと送っている。

盛森辞典 (もりもりじてん)

盛森高校に関するあらゆることが記されているとされる本。盛森高校について調査をし、人間社会へ報告する任務に携わっている忍者によって利用されている。そのため、盛森高校に通う生徒たちの個人情報も細かく書かれている。

盛森ギテン (もりもりぎてん)

盛森辞典とよく似た機能を持つ本。盛森高校に関するあらゆることが記されており、それには所属する生徒の個人情報も含まれる。なかには、生徒がまだ決めかねている部活に関する情報なども記されており、情報はリアルタイムで更新されている。

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