はるか遠き国の物語

第1巻

2泊3日の気ままなエジプト旅行から戻って来たアニース・ジャニースは、彼女の行方を心配していた父親のシャハリヤールからこっぴどく叱られるが、不思議な土産物を見せて、何とかその場をやり過ごした。そして、国王在位25周年の記念祭が執り行われる事になり、各国から多くの来賓達が訪れる。アニースはその中の一人、愛する婚約者のアラム・ディーンと久々に会う。来賓の中にいる怪しい雰囲気の男に目をつけたアラムは、その男を尾行して動向を探る。男はアニースのランプを我が物にしようと狙っていたのだった。

第2巻

ある日、シャー・ザマーンはシャハリヤールの命令で花嫁候補の姫君と謁見をする事になり、バグダッドのバスラ王国へ旅立つ事になる。シャーを心配しつつも、同行したくて我慢ができないアニース・ジャニースは、魔法の絨毯でシェーラと共にあとを追いかける。アニースの予想通り、シャーは護衛兵達と共に空飛ぶ黒い馬に襲われていた。かろうじて彼を発見したアニースは、少年の姿に逆戻りしてしまったシャーの姿を見て啞然としてしまう。

第3巻

バスラ王国の都で妖怪が出るという噂を聞きつけたアラム・ディーンは、身分を隠して町の中に潜入し、噂の真相を探っていた。ある時、追いはぎに襲われたところを女盗賊のシーリーンに助けられる。シーリーンは魔術師に殺された弟の仇を取るべく、その機会を狙っていた。そしてアラムの協力のもと、ついに魔術師に弟子入りをする事になったシーリーンは、美しい踊り子に扮して魔術師に近づく。

第4巻

シェーラやランプの精と共にサカールという国を訪れていたアニース・ジャニースは、町の中で騒ぎを聞きつけて駆けつける。そこで何者かに腹を刺された行きずりの男から、財宝が眠る宝島のありかを示した銅板の事と、バスラのムスタファという名前を、突如聞かされる。逃走した人物を追跡し、対峙したアルダシールはその者が不意に落とした銅板をアニースのもとへと持ち帰る。バスラに向かったアニースは、アラム・ディーンが住まう王宮を訪れ、早速、彼に宝島と銅板の話を聞かせて、ムスタファにかかわる情報を得るべくバスラの町を奔走するのだった。

第5巻

銅板を3枚集めたアニース・ジャニースは、アラム・ディーンやラシッド、そしてアクメッドと共に船で宝島を目指す。そんな中ラシッドは、慣れない船旅に疲れを隠せない自分を気遣ってくれるアニースに、少しずつ惹かれ始めている事に気づき始める。自分の想いを隠しきれなくなったラシッドだったが、その様子に勘づいたアラムに牽制される。やがて宝島に到着したアニースは、アクメッドの怪しい笑みに首を傾げつつも、その真意には気づいていなかった。

第6巻

ある日、王宮の中で水浴びをしていたマフディーアに突然キスをされたアスラーンは、その夜、自分が女性になってしまう夢を見る。すると翌日、シャー・ザマーンが何らかの不思議な力によって女性に変えられてしまっていた。そこへ姿を現したのは、マフディーアの姉、アイーシャという魔女だった。妹を泣かした人間に罰を与えるという名目でシャーを女性に変えたのだが、それが人違いだったという事がわかる。シャーを元の姿に戻してもらうため、アスラーンはアニース・ジャニースと共に、千里眼を持つ神像があるというカーフの神殿を目指す。

第7巻

カーフの神殿でシャー・ザマーンやシェーラと合流し、ついに千里眼を持つ神像と対峙したアニース・ジャニースは、アイーシャの居所を突き止め、再び元来た道を戻る事になる。そんな時、シャーはシェーラに「妃になってほしい」という自分の想いを告げた。とうとうアイーシャと決着をつける事になったアスラーンは、誠意を持って彼女に接する事で、自分に非がなかった事を認めてもらう。

第8巻

ある日、シャハリヤールから見事な黒真珠をあしらった首飾りをプレゼントされたアニース・ジャニースは、それを身につけた姿を、一目アラム・ディーンに見せるためにバスラへと向かう。だが、肝心のアラムは、2週間ほど前からどこかへ行ったきり行方がわからないと、王妃から聞かされる。シェーラより、バグダッドでアラムによく似た人物を見掛けた、という情報を摑んだアニースは、早速バグダッドへ向かった。

第9巻

ヒマを持て余していたアニース・ジャニースは、王宮の庭で傷ついた鳥を助ける。どこか見覚えのあるその鳥は、アブリーザといつもいっしょにいたアムジャドだった。アブリーザの身を案じたアニースは、不意に何者かに襲われて連れ去られてしまう。牢獄でふと目覚めたアニースがそこで出会ったのは、なんとヤスミンだった。彼女もアニースと同様に連れ去られて投獄されていたのだ。ヤスミンの口から魔王バルカーンの事を聞かされたアニースは、落ち込んでいられないと、自らを奮起させる。

第10巻

アーマドと共に、魔王バルカーンの手先に連れ去られたアニース・ジャニースとヤスミンの行方を捜していたアラム・ディーンは、ムルイシュが持つというアルマーヒクの剣についての情報を入手する。突如、襲い掛かって来た魔王バルカーンの手先と戦いながら、アラムはシーリーンと対面した。シーリーンはアラムの事を知っているようだが、シーリーンが何者なのか、彼にはまるで心当たりがなかった。一方、魔王バルカーンのもとに幽閉されていたアニースは、手下に変装して脱出を試みようとする。

第11巻

脱出を試みようとしていたアニース・ジャニースのところへ、シェーラとランプの精が潜入して来る。一方、アルマーヒクの剣を手に入れるため、ムルイシュに戦いを申し込まれたアラム・ディーンだったが、圧倒的な実力を持つムルイシュに圧されて、戦いの最中に右腕を負傷してしまう。だが、ほんのわずかなスキを突いて、ムルイシュを押さえ込んだアラムが勝利し、彼は既のところで剣を止めた。アルマーヒクの剣を手に入れたアラムは、目の前に現れたアブリーザから、アニース・ジャニースへの想いを告げられる。そして、二人はアニース・ジャニースをかけて戦う事になるのだった。

第12巻

魔王バルカーンの居城へ潜入したアラム・ディーンは、シーラーンと再会する。そこで、シーラーンは過去のしがらみからアラムに斬り掛かるが、その前にアブリーザが立ちはだかる。やがて魔王バルカーンの手下の魔物達が一挙に集結し、アラムはアブリーザと共にその場を離脱。しかし、シーラーンとの決着は避け得ず、あとを追って来たシーラーンと再び対峙する事となる。戦いの最中、アブリーザが持っていたシャハラーンの衣が盾に姿を変えた事で、一気に優勢となったアラムは、その剣でついにシーラーンの胸を貫く。だがその時、突如として居城は崩壊を始めるのだった。

第13巻

カムラ王国の宮殿ではシャハリヤールによって催事が行われ、各国から招待された要人が席を並べていた。招待されていたアラム・ディーンも、シャー・ザマーンやアスラーン達と久々の会話を楽しむ。ジャアファルをはじめとする語り部達の語りを聞きながら、アニース・ジャニースは再び旅に出たいという好奇心を抑えられずにいた。アニースは、見知らぬ老人から、美容にいいと言われる茶を渡され、それをアラムに飲ませる。すると彼は突如苦しみ始め、トキの姿に変身してしまう。見知らぬ老人の正体は、魔人ジャシルであった。そして正体を現した彼は、トキに変わってしまったアラムを抱えて、姿を晦(くら)ませてしまう。

第14巻

アラム・ディーンは、魔人ジャシルが持つ薬を飲んだ事でトキから人間へと戻り、ハディーブと共にサランディーブ王国へとやって来た。そこでアラムが出会ったのは、ドゥンヤーという名の妖しい気を持つ占い師の女だった。一方、カムラ王国では1羽のトキが現れ、アニース・ジャニースにアラムの無事を知らせる。安堵したアニースはいてもたってもいられなくなり、自らアラムに会いに行くためにサランディーブへと旅立つ。だが、その頃アラムは、ドゥンヤーの妖しい術によって陥れられ、アニースの事を忘れてしまっていた。

第15巻

アニース・ジャニースは、ジャアファルが探している、幸福をもたらすと言われる三つの首飾りがある場所に行けば、アラム・ディーンに会えるのではないかと考えていた。そんな中、アニースは旅の途中で立ち寄った村で少年と出会う。その少年は去り際にアニースに首飾りを託してくれたのだが、彼がサランディーブ王国のハディーブだと気づいたのは、彼と別れたあとだった。その後、さらに旅を続けていたアニースは、異国の町で不思議な笛を奏でるティヌから、首飾りに関連する井戸の話を聞き、さらなる情報を求めて、町のはずれに住むという老婆に会いに行く。その後、井戸の中から続く洞窟へと入ったアニースの目の前に現れたのは、魔物と記憶を失ったアラムだった。

第16巻

ついに三つの首飾りを揃えたアニース・ジャニースは、サミールという女性に会うために旅を続けているジャアファルの願いを何とか叶えたいと、砂漠へやって来た。古い塔の最上階にあるという、幸を呼ぶ笛を手に入れれば、ジャアファルはサミールに再会する事ができるのだが、笛のあるところには魔神イフリートが存在するという。たった一人で塔をのぼって行ったジャアファルは、イフリートと向き合う事になる。イフリートの質問には必ず「いいえ」としか答えてはいけないのだが、その答えはジャアファルの本心とは異なるものだった。そんな中、アラム・ディーンはジャアファルを助けるため、彼のもとへと走り出す。そんなアラムの無事を信じ、アニースはただ祈り続けるのだった。