あらすじ
先輩はバニーガール編
海と空に囲まれた湘南の町で暮らす梓川咲太は、ゴールデンウィークの最終日に訪れていた図書館で、野生のバニーガールと出会う。静かな図書館の中を堂々と歩き回るそのバニーガールの正体は、咲太と同じ峰ヶ原高校に通う国民的女優の桜島麻衣だった。周囲からひと際目立つ格好をしている麻衣だったが、なぜか彼女の姿は咲太以外の人からは見えていない様子だった。咲太に見られていることに気づいた麻衣は、彼に意味深な言葉を残してその場を立ち去ってしまう。そしてこの日の出会いをきっかけに、咲太と麻衣の不思議な日常と恋が始まるのだった。金輪際かかわるなと麻衣に言われていた咲太だったが、駅のホームで彼女に再会し、電車の中で話をすることになる。麻衣の身に以前から起こっている不思議な現象について聞かされた咲太は、自分と梓川かえでに起こった出来事について思い出す。麻衣の透明化現象は、都市伝説として知られている謎の現象「思春期症候群」の一種であった。過去に思春期症候群を体験している咲太は、麻衣の話や友人の双葉理央の意見を聞きながら、思春期症候群の原因を探っていく。女優業休業をきっかけに麻衣が学校で空気のような存在を演じていたことが原因だと推測した咲太は、彼女に芸能界に復帰すべきだと指摘する。
君だけがいない世界編
桜島麻衣の思春期症候群の影響は少しずつ広がっていき、彼女を認識できない人間がどんどん増えていった。麻衣の思春期症候群の原因を探りながら奔走する梓川咲太は、芸能界復帰を決意した彼女とデートをすることになる。デート当日、藤沢駅に向かう途中で迷子になった少女を助けようとした咲太は、通りすがりの古賀朋絵から変質者だと勘違いされてしまう。朋絵に弁解を繰り返していたことで、約束の時間に遅刻してしまった咲太はほとんどあきらめていたが、待ち合わせ場所では機嫌を損ねた麻衣が待っていた。なんとかなだめて麻衣の許しを得た咲太は予定どおりデートをすることになるが、彼女は行き先を変更して彼を七里ヶ浜に連れて行く。麻衣はかつてのマネージャーでもある麻衣の母をメールで呼び出し、母親の事務所とは違う事務所に入って芸能界に復帰すると、宣言しようとする。だが、いくら話しかけても母親に麻衣の姿が見えている様子はなく、近くにいた咲太が指摘しても麻衣のことは知らないと言う。そしてこの日を境に、麻衣の存在を認識できないどころか、彼女に関する記憶を失う人が増えていく。その日の夜はホテルに泊まり、朝には学校に戻った咲太たちであったが、双葉理央は学校内に麻衣のことを覚えている人間はいないと語る。麻衣を忘れてしまうのはある行為が原因だという仮説を聞いた咲太は、試行錯誤しながら麻衣の記憶を失わないために奮闘する。
メディアミックス
小説
本作『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』は、鴨志田一の小説「青春ブタ野郎」シリーズの『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』を原作としている。原作小説版は電撃文庫から刊行され、イラストは溝口ケージが担当している。
登場人物・キャラクター
梓川 咲太 (あずさがわ さくた)
峰ヶ原高校2年1組に在籍する男子。藤沢駅近くのマンションで、妹の梓川かえでと二人暮らしをしている。携帯電話を持っていないなど少々変わり者で、場の空気が読めるのに、あえて読まないことが多く、女子相手でもデリカシーのないことを言える鉄のメンタルの持ち主。あだ名は「青春ブタ野郎」。過去に暴力事件(病院送り事件)を起こしたという噂が広まったために学校では浮いているが、あまり気にすることなくふつうに通学している。家では料理から買い物まで家事全般を担当しており、ファミリーレストランでアルバイトをしている。図書館で遭遇した桜島麻衣と知り合い、彼女が思春期症候群の一種である透明化現象を体験していると知る。かえでと共に思春期症候群を体験したことがあるため、これらをただの都市伝説ではなく実際にある現象だと認識している。このため、透明化現象で困っている麻衣の相談に乗りながら、積極的に彼女の力になろうとする。かえでがいじめに遭っていた時期に突然胸が血まみれになり、病院に搬送された。これ以降、胸元には3本の大きな傷跡が残っている。かえでを大切に思う妹思いなところがり、彼女をいじめや思春期症候群から救えなかったことを悔いている。誰にでも優しいわけではないが、家族はもちろん、数少ない友人である国見佑真と双葉理央のことを大切に思っている。一見やる気がないように見えるが、思春期症候群を誰にも信じてもらえなかった体験や、ある人物から受けた言葉が人格生成に大きく影響しており、自分と似たような境遇の人を見つけると進んで助けようとする。誕生日4月10日で、身長は172センチ。
桜島 麻衣 (さくらじま まい)
峰ヶ原高校3年1組に在籍する女子。梓川咲太の先輩で、国民的な人気女優だったが、現在は芸能活動を休止している。黒のロングヘアで、ふだんはウサギ型のヘアアクセサリーで髪をまとめており、ウサギ耳付きのスマートフォンケースを愛用している。成績もよくまじめで礼儀正しいが、気が強い性格をしている。元は子役出身で、6歳の時に人気連続ドラマに子役としてデビューし、昔から高い演技力を持つ。出演作品はヒットを繰り返し、モデルやCMなど幅広い仕事をこなし、国内で知らぬ者はいないほどの知名度と人気を誇っていた。現在は親元を離れ、咲太が住むマンションの向かい側にあるマンションで一人暮らししている。芸能界を去ったあとに、他人に声と姿を認識されないという、謎の透明化現象を体験するようになった。自分が他人に認識されないか確かめるべく、目立つバニーガールの格好をして図書館内を徘徊していたところ、たまたま近くにいた咲太には姿を認識されていることがわかり、思春期症候群の原因を彼と共に探っていく。芸能界に送り出したマネージャーでもある麻衣の母に、グラビア撮影など嫌な仕事に押し付けられたことで関係が悪化し、高校入学を機に芸能活動を休止。しかし、休止宣言前から続いていた仕事でほとんど通学できず、まともに通えるようになったのは2学期以降で、有名人であることも相まって学校になじめず孤立しがちだった。咲太の推測で、学校で空気のような存在を演じ続けたことが思春期症候群の原因であることがわかり、芸能界に復帰するよう勧められる。察しがよく大人っぽく振る舞っているが、デートの服装や髪型で悩んだり、予想外の事態には弱気になったりなど、年相応の女の子らしい一面を見せることがある。誕生日は12月2日で、身長は165センチ。特技は料理。
梓川 かえで (あずさがわ かえで)
中学3年生の女子。梓川咲太の妹で、年齢は15歳。左右にはねた癖毛のセミロングヘアで、家ではパンダの着ぐるみパジャマで過ごしている。つねに明るく天真爛漫な性格で、誰に対しても敬語で話す。過去のいじめが原因で外出できず、いつも家で留守番をしている。パンダと兄の咲太のことが大好きなブラコンで、彼の理想の妹になるために日々邁進している。しばしば咲太のベッドに潜り込むことがあり、朝に咲太を起こすのが日課と化している。趣味は読書で、特に児童文学系を好んで読んでいる。数年前にSNSが原因でクラスメイトからいじめられ、不登校状態が続いている。いじめに遭っていた頃に、SNSの書き込みを見るたびに体に傷が刻まれるという謎の思春期症候群を体験した。傷が刻まれる瞬間を見た咲太が周りの大人に説明するも、自傷行為扱いされ信じてもらえなかった。このトラウマからスマートフォンに恐怖心を抱き、家の固定電話も相手が咲太だと確認しない限りは出ないようにしている。誕生日は11月5日で、身長は162センチ。大好物はプリンで、特技は忍者ごっこ。
国見 佑真 (くにみ ゆうま)
峰ヶ原高校に通う2年生の男子。梓川咲太と双葉理央の友人。咲太、理央とは1年生の時にクラスメイトだった。明るい性格の友人思いのイケメンで、咲太や理央の評判を気にすることなく、気軽に接している。以前はバスケットボール部に所属していた。現在は上里沙希と交際しており、放課後は咲太と同じレストランでアルバイトをしている。ふだんは咲太と軽口を叩き合う仲だが、彼から相談事があれば理由を聞かずに聞き入れるなど、優しい一面がある。理央から好意を抱かれており、彼女の気持ちには気づいているものの、沙希と付き合っているためどうしていいのかわからず、気づかないふりを続けている。
上里 沙希 (かみさと さき)
峰ヶ原高校2年1組に在籍する女子。国見佑真の彼女で、梓川咲太のクラスメイトでもあり、女子グループの中心としてクラスを仕切っている。病院送り事件などの悪い噂がある咲太を一方的に毛嫌いし、評判が悪くなるという理由で、咲太が佑真に近づくことを嫌がっている。このため、佑真のスマートフォンから咲太の電話番号だけを消したり、咲太を直接呼び出して忠告したこともある。佑真は咲太との仲が険悪であることを心配し、二人の仲を取り持とうとしているが、あまりうまくいっていない。一方的に敵視されている咲太からは、苦手意識を持たれている。
双葉 理央 (ふたば りお)
峰ヶ原高校に通う2年生の女子。梓川咲太と国見佑真の友人で、科学部に所属しているが部員がほかにおらず、校内では変人として知られている。癖のある茶髪のロングヘアで、スタイル抜群の巨乳の持ち主。制服の上から白衣を着用し、眼鏡をかけている。理知的で冷静沈着な性格で、感情をあまり出すことはない。咲太の数少ない友人で相談相手でもあり、彼に「青春ブタ野郎」というあだ名を付けた張本人。咲太に対して毒舌を吐くこともあるが、決して嫌っているわけではなく友人として大切に思い、文句を言いながらも相談に乗ってさまざまなアドバイスを送っている。佑真にはひそかに好意を抱き、彼に彼女ができたことで表向きはあきらめたような態度を取るが、本音ではあきらめ切れずにいる。男子の視線が苦手で、いつも白衣を羽織っているのは、大きな胸を隠すためでもある。科学部が廃部にならないよう実績を残そうと、一人で物理実験室などに出入りしながら活動を行っている。このため物理実験室をほぼ私物化しており、実験中に校内の一部を停電させたことからボヤ騒ぎを起こしたことで変人として知られ、クラス内でも浮いている。物理学に詳しく、量子論や相対性理論などをもとに、思春期症候群について考察や解説をしている。かつては思春期症候群を信じていなかったが、桜島麻衣の透明化現象について咲太から相談を受け、実際に目撃してからはその存在を信じるようになった。何事も論理的に分析し、理屈で話す傾向にある。誕生日は10月23日で、身長は155センチ。特技は不思議な現象をすべて科学的に説明すること。
豊浜 のどか (とよはま のどか)
高校2年生の女子。桜島麻衣の異母妹。麻衣の父親の再婚相手の娘で、売り出し中のアイドルグループ「スイートバレット」のメンバーでもある。金髪のロングヘアをサイドテールにまとめた少女で、勝気な性格で麻衣以上に気が強く、少々短気なところがある。自他共に認めるシスコンで、麻衣には芸能人としてのあこがれや尊敬を抱いている。母親と麻衣の母による代理戦争の駒にされており、麻衣のような有名人を目指して、母親の期待にも応えようと勉強や芸能活動に励んでいる。誕生日は3月14日で、身長は158センチ。特技は早着替え。
南条 文香 (なんじょう ふみか)
ジャーナリストの女性。梓川かえでがいじめに遭っていた時に、「中学生のいじめ問題」という名目で彼女を取材したことがある。その際に思春期症候群に興味を抱き、それを体験した梓川咲太に近づこうとしているため、彼からは毛嫌いされている。咲太のアルバイト先で再会し、再び取材を求めるも断られる。のちに桜島麻衣の芸能界引退の真実を教える代わりに、咲太の胸の傷の撮影許可を得た。しかし、麻衣が南条文香自身の芸能界復帰スクープの代わりに咲太の写真の取り下げるよう求めたことで、彼の記事を書くことはあきらめる。その後は麻衣と咲太の関係を探っていたが、思春期症候群の影響を受けて彼女の存在自体を忘れてしまう。
古賀 朋絵 (こが ともえ)
峰ヶ原高校1年4組に在籍する女子。梓川咲太の後輩。癖のあるショートヘアで、前髪をT字型のヘアアクセサリーでまとめている。空気の読める今時の女子高校生で正義感も強いが、少々そそっかしい性格をしている。校内で浮いている咲太のことを「先輩」と呼ぶ唯一の人物でもある。福岡県出身で、訛(なま)りを隠すためにふだんは標準語で話すが、気を抜いた時は思わず博多弁が出てしまう。迷子の少女を助けようとしていた咲太を不審者扱いし、尻に蹴りを入れるが誤解だとわかって謝罪した。この際にお詫びとして自分の尻に蹴りを入れるよう求めるが、駆けつけた警官から咲太と共に不審者扱いされた。誕生日は5月23日で、身長は152センチ。特技はスマートフォンの早打ち。
麻衣の母 (まいのはは)
桜島麻衣の母親。麻衣の元マネージャーでもあり、彼女を子役としてデビューさせ、芸能事務所を立ち上げた。麻衣の人気が急上昇していくと同時に、彼女が嫌がるような仕事も引き受けるようになったため反感を買い、彼女が芸能活動を休止してからは不仲状態が続いている。元夫の再婚相手でもある豊浜のどかの母親への対抗心を燃やして、麻衣を芸能界に送り出していたことから、麻衣を芸能界に連れ戻そうとしている。のちに芸能界復帰を決意した麻衣に呼び出されたが、思春期症候群の影響で彼女を認識できず、そのまま存在自体を忘れてしまう。
その他キーワード
思春期症候群 (ししゅんきしょうこうぐん)
梓川咲太たちの周囲に起こる不思議なオカルト現象。主に思春期の少年少女が体験しており、インターネットを中心に都市伝説として話題になっている。しかし、実際に体験した者以外からはほとんど信じてもらえず、精神科医などからは、多感な思春期にありがちな思い込みの一種と評されている。また、新種のパニック症状や、集団催眠の一種と評する者もいる。具体的には梓川かえでと咲太が体験した、唐突に体にアザや傷が現れる謎の傷現象をはじめ、桜島麻衣が体験した、姿と声が他人に認識されなくなる透明化現象などがある。
クレジット
- 原作
-
鴨志田 一
- キャラクターデザイン
-
溝口 ケージ
書誌情報
青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない 全2巻 KADOKAWA〈電撃コミックスNEXT〉
第1巻
(2016-10-08発行、 978-4048924801)
第2巻
(2018-10-10発行、 978-4049120684)