あらすじ
キマイラ編
農奴の少年・レウルスは、かつてブラック企業に勤めていた男が餓死して転生した姿だった。しかも転生後も幼少期からろくに食事を与えられないままこき使われ、さらに鉱夫として売られることになっていた。しかしレウルスは、その道中でキマイラに襲われたことをきっかけに、ラヴァル廃棄街へと逃げ延びることに成功する。空腹のあまり行き倒れたところを介抱してくれたコロナとドミニクに、一宿一飯の恩を返そうと森に薪拾いに入ったレウルスは、そこで角の生えた巨大な兎の魔物・イーペルに襲われるが、謎の力でイーペルを討伐する。その事実を知ったドミニクは、知り合いの冒険者兄妹のニコラとシャロンに対し、レウルスを冒険者として特訓するように指示する。レウルスが魔物を討伐できるようになった直後、以前レウルスを襲ったキマイラがラヴァル廃棄街に向かっていることを知った住民たちは、キマイラの狙いはレウルスだと見当をつけ、レウルスに街を出るように責め立てる。
吸血種編
キマイラを倒したことであらためてラヴァル廃棄街の住民と認められたレウルスは、ドミニクの武器を受け継いで本格的に冒険者としての活動を始めた。また、キマイラとの戦いにおいてレウルスが魔物の肉を食うことで、それを魔力に変える能力を持っていることが判明し、レウルスは「魔物喰らい」の二つ名で呼ばれるようにもなっていく。しかし能力の発動条件が判然とせず、森に入って一人で訓練を続けていたレウルスの前に、幼い吸血種の少女であるエリザ・ヴァルジェーベが現れる。出会った当初は、エリザから感じる謎のプレッシャーに圧倒されて襲いかかったレウルスだったが、エリザ自身に敵意がなく、吸血種であるというだけで特に強力な能力も持っていない様子を見て、ラヴァル廃棄街へと連れ帰ることにする。一人で1か月以上歩いてきたというエリザのただならぬ事情を察したレウルスは、ラヴァル廃棄街になじみ始めるエリザの姿に安堵するが、ラヴァル廃棄街にはエリザを追ってグレイゴ教の刺客がせまっていた。
関連作品
小説
本作『餓死転生 ~奴隷少年は魔物を喰らって覚醒す!~』は、池崎数也の小説『世知辛異世界転生記』を原作としている。原作小説版はTOブックスから刊行され、イラストはそゐちが担当している。原作小説版ではキマイラ編の戦いにおいて瀕死の重傷を負ったレウルスが、吸血種編における重要人物に礼を言うために訪問するシーンなどがあるが、コミカライズ版では省かれるなど、ストーリー展開に細かい差異がある。
登場人物・キャラクター
レウルス
農奴の少年で、年齢は15歳。ショートヘアで、色の濃い赤毛をしている。3歳の頃に両親が亡くなって以降は農奴として働かされ続けていたが、15歳になって鉱山に売られる途中でキマイラに襲われ、命からがらラヴァル廃棄街へと逃げ込んだ。行き倒れになっていたところをコロナとドミニクに介抱され、二人と知り合う。角の生えた巨大な兎の魔物・イーペルを武器もない状態で討伐したことからドミニクに気に入られ、ニコラとシャロンから冒険者としての特訓を受けることとなった。昔からろくな食事を出されなかったことから、雑草や虫などを食べて食欲を満たしていた。そのため、魔物に対しても食欲がそそられているが、ニコラたちからは気味悪がられている。しかし魔物の肉を食うことで、それを魔力に変えることができる能力を持っており、それが判明してからは、ニコラによって「魔物喰らい」という二つ名を付けられ、あだ名のように呼ばれるようになった。転生前はブラック企業に勤めていた20代の男性で、餓死している。
コロナ
ラヴァル廃棄街にある飲食店の看板娘で、ドミニクの娘。腰の下まである長い金髪で、一部を三つ編みにしている。ラヴァル廃棄街に逃げ込んだレウルスが店の裏で行き倒れているのを発見し、献身的に介抱した。人が傷つくことや死ぬことを非常に恐れており、キマイラがラヴァル廃棄街に襲来した際にも立ち向かう冒険者たちの安否を気にかけていた。また、このことがドミニクが冒険者をやめた原因でもある。
ドミニク
ラヴァル廃棄街で飲食店を経営している壮年の男性で、コロナの父親。金髪のショートヘアで、口周りに髭を蓄えている。無愛想で口は悪いが、弱者にはぶっきらぼうながらも優しく接している。元上級冒険者で、かつてはバルトロと組んで魔物の討伐を行っていたことから、ラヴァル廃棄街の住民たちからの信頼が厚い。レウルスを介抱した当初は、レウルスがコロナに必要以上の好意を抱かないよう、父親として警戒している様子が見られた。しかしレウルスが武器もない状態で、角の生えた巨大な兎の魔物・イーペルを討伐したことを知ってからはその実力を認めて気に入っている。ニコラとシャロンに対し、レウルスを冒険者として特訓するように指示した。多くの住民から「おやっさん」と呼ばれている。
ナタリア
ラヴァル廃棄街を拠点にした、冒険者の女性。ウエーブがかった腰の下までの長い黒髪で、胸元があらわになった露出度の高い衣服を身につけている。感覚が鋭く、強い魔力の放出を感知することができる。レウルスが特殊な条件下で強力な魔力を得ることも早い段階で確信しており、興味を持っていた。また、レウルスがこの世界ではなじみのない、敬語やお辞儀といった独特な習慣を持っていることにも興味を抱き、ただの農奴ではないのではないかと勘繰っている。多くの住民から「姐さん」と呼ばれている。
ニコラ
ラヴァル廃棄街を拠点にしている冒険者の男性で、シャロンの兄。ショートヘアで、明るい赤毛をしている。ドミニクを慕っており、レウルスを冒険者として特訓する指南役を務めている。その指南方法は超スパルタで、数体の巨大なカマキリの魔物・シトナムを、いきなりレウルス一人で討伐させようとした。
シャロン
ラヴァル廃棄街を拠点にしている冒険者の女性で、ニコラの妹。襟足は短く、横髪だけを長く伸ばした赤毛をしている。ドミニクを慕っており、レウルスを冒険者として特訓する指南役を務めている。ラヴァル廃棄街において唯一、中級相当の魔法を使用することができる。
バルトロ
ラヴァル廃棄街にある冒険者組合で、組合長を務める壮年の男性。スキンヘッドで、左目に眼帯をつけている。キマイラがラヴァル廃棄街に近づいていることを知り、かつての冒険者仲間であるドミニクに出陣要請をした。重く巨大な斧を武器としており、これを軽々と振り回す剛力を持っている。
エリザ・ヴァルジェーベ
吸血種の少女で、年齢は13歳。ピンク色の髪を腰まで伸ばしており、大きなリボン付きローブを羽織っている。ハリストという街から、1か月かけてラヴァル廃棄街まで逃げ延びてきた。レウルスと初めて遭遇した際、レウルスはエリザ・ヴァルジェーベから強大な魔物のような雰囲気とプレッシャーを感じて襲いかかった。また、魔物たちもエリザに怯えて近づかないなど内包された能力が匂わされているが、エリザ本人は戦闘力などをまったく自覚していない。かつてグレイゴ教の教徒たちによって、家族を皆殺しにされた経験がある。
集団・組織
グレイゴ教 (ぐれいごきょう)
ラヴァル廃棄街から徒歩で1か月ほど離れた街「ハリスト」で布教活動をしている宗教団体。龍などの強大な魔物を神として崇めている一方で、神と崇める魔物を狩ることに心血を注いでいる武闘派集団でもある。教義と行動が矛盾しているように見え、その真意は教徒以外には理解しがたく、グレイゴ教の詳細についてはまったく外部に公開されていない、閉鎖的な宗教団体である。
場所
ラヴァル廃棄街 (らゔぁるはいきがい)
大国家マタロイの南部に位置する、スラムの街。石造りの防壁に囲まれた城塞都市ラヴァルに隣接しており、木造の塀で囲まれている。荒くれ者やならず者が集まっており、脱走奴隷なども受け入れている。冒険者としては下級の腕前の者が多いが、上級冒険者の経験があるドミニクやバルトロ、また中級相当の魔法を使用できるシャロンが中心となって街の防衛に努めている。
クレジット
- 原作
-
池崎 数也
- キャラクター原案
-
そゐち