難聴に悩む大学生と不器用な同級生
中学生時代に難聴を発症して以来、自然と一人でいることを選ぶようになった航平は、同級生の太一と出会ったことで物語が始まる。その後、航平は手作り弁当を提供する代わりに、聴覚に障害がある生徒に講義内容を伝えるボランティア「ノートテイク」を太一に依頼する。大学内のさまざまな出来事を通して、少しずつ心を通わせていく航平と太一のキャンパスライフと恋愛模様が、ラブコメディやヒューマンドラマを交えて展開される。当初は太一の視点で物語が展開されるが、途中からは航平の視点も増えていき、それぞれの繊細な心の変化と切なくも儚(はかな)いラブストーリーが楽しめる。
天真爛漫な青年×孤立しがちな難聴の青年
主人公の航平は、難聴を患ってからは周囲との人間関係に悩み、少しずつ心に傷を抱えるようになる。航平は同級生から注目を浴びたり、過剰に特別扱いされることに居心地の悪さを感じ、大学に入学した頃には誰ともかかわらずに一人で過ごすことが当たり前になっていた。そんなある日、いつものように一人で弁当を食べていた航平は、同じ大学に通う太一と出会い、おいしそうに弁当を食べる太一と友人になる。歯に衣着(きぬ)せぬ物言いながら明朗快活な性格の太一は、航平が難聴だと知ったあとも彼を特別扱いすることなく自然に振る舞い、何かと悩みが尽きない航平をまっすぐな言葉で励ましている。
ノートテイクを通して心を通わせていく
太一の笑顔と言葉に心を救われた航平は、次第に太一と友達以上恋人未満の感情を抱くようになる。しかし難聴が悪化したことで、航平は太一と距離を取るようになるが、二人は悲しいすれ違いを繰り返しながらも心を通わせていく。当初は謎多き青年として描かれていた航平の過去や家庭環境が、ストーリーが進むにつれて明らかになる。難聴が原因でさまざまな悩みを抱えていた航平が、太一に心を救われていく姿や、大学生活を通して距離を縮める二人の関係性が見どころとなっている。また、聴覚障害者にとってのシビアな現実や、健常者とかかわっていくうえでの悩みなどがリアルに描写されている。
登場人物・キャラクター
杉原 航平 (すぎはら こうへい)
とある大学に通う男子。法学部に在籍している。太一の同級生。明るい茶髪をショートヘアにしたイケメン。クールな雰囲気を漂わせて無表情なことが多い。中学校卒業後に突発性難聴を発症し現在も補聴器を付けているが、相手にゆっくりと話してもらえれば、ほぼすべての会話は聞き取ることができる。手話は学んでいないため、唇の動きを読み取ることで言葉を理解している。難聴が原因で同級生たちとの接し方に悩み、他人と距離を置いてしまいがち。一人で過ごす時間が増える中で太一と出会い、彼と接するうちに明るさを取り戻していく。母親は料理教室の講師をしている。
佐川 太一 (さがわ たいち)
航平と同じ大学に通う男子。経済学部に在籍している。黒髪のショートヘアで、裏表のない素直な性格をしている。両親の離婚後は祖父に預けられ、苦しい家計を支えるためにアルバイトに明け暮れているが、喧嘩(けんか)っ早いことからすぐにクビになってしまう。次のアルバイトが決まらずに悩んでいた際に、一人で昼食を食べていた航平と出会い、弁当をもらったお礼として彼のノートテイクを担当するようになる。これ以来、行動を共にするようになり少しずつ交流を深めていく。