あらすじ
詠国後宮内の雛宮。それは、次期皇后を育成するため、五つの名家から雛女(ひめ)を集めた宮である。現皇后陛下の姪である黄玲琳は、容姿端麗で才気に溢(あふ)れ、次期皇后の最有力候補とされていた。そんなある日の乞巧節(たなばたせつ)の夜。朱家の雛女、朱慧月が、玲琳を高楼から突き落とすという事件が起きる。朱慧月は、無能無才で不美人、高慢な性格で、周囲から「雛宮のどぶネズミ」と呼ばれて嫌われている雛女である。「殿下の胡蝶」と謳われ、皆に慕われる玲琳への嫉妬からの犯行だと思われた。屋根に打ち付けられて気を失った玲琳は、牢屋(ろうや)で目を覚ます。牢の外には、玲琳付き筆頭女官の冬雪が険しい表情で立っていた。冬雪は玲琳のことを「朱慧月」と呼び、玲琳を高楼から突き落としたことを厳しく攻める。信じがたいことだが、高楼から落ちた瞬間、慧月と入れ替わってしまったようであった。玲琳は、慌てて事情を説明しようとするが、釈明の言葉を何一つ話すことができない。冬雪によると、加害者である慧月には「獣尋の儀」という処刑が予定されているという。冬雪は玲琳からだという、自死用の毒薬を手渡し、牢を去っていった。目の前の蠟燭(ろうそく)の火を眺めながら、呆然(ぼうぜん)とする玲琳。すると、蠟燭の炎が大きくなり、その中に玲琳と入れ替わった慧月が姿を表した。慧月は玲琳を激しく嫉妬しており、あまりにも不公平な二人の境遇を正すため、道術を使って体を入れ替えたのだという。玲琳への恨みつらみを吐き出して、慧月は姿を消した。残された玲琳は、由々しき事態だと嘆くが、ふと気がつくとすこぶる体調が良い。腕もしびれず、息も上がらず、脈拍も正常である。これまでの玲琳は、油断すれば気絶するほど病弱であり、薬草や鍛錬でなんとか生きてきたのだ。常に死と隣り合わせであった玲琳は「鋼の精神(メンタル)」の持ち主である。健康な慧月の体を手に入れたことは、彼女にとってむしろ喜びだったのだ。こうして始まった玲琳と慧月の入れ替わり人生は、周囲の人間を巻き込みながら、ドラマティックに展開していく。
登場人物・キャラクター
黄 玲琳 (こう れいりん)
皇后と四夫人の座を分ける五家のうち、黄家の雛女(ひめ)。現皇后陛下の姪という恵まれた血筋であり、見目麗しく、才気に溢れており、慈悲深い性格で周囲から親しまれ敬われている。「殿下の胡蝶」と謳われ、次期皇后の最有力候補とされる。唯一の懸念は、あまりにも病弱であること。薬草実験で調合を模索し、身体の鍛錬によってなんとか生命を保っている。そんな、死と隣り合わせの生活を送ってきたため、鋼の精神(メンタル)を持つ。朱家の雛女、朱慧月の恨みを買い、道術によって彼女と体を入れ替えられてしまう。
朱 慧月 (しゅ けいげつ)
皇后と四夫人の座を分ける五家のうち、朱家の雛女(ひめ)。化粧も衣装も派手で下品な不美人で、そばかすが特徴。無能無才で性格も高慢、陰険であり、周囲の評判はすこぶる悪く「雛宮のどぶネズミ」とあだ名されている。「殿下の胡蝶」と謳われる黄玲琳を妬み、道術を駆使して、彼女と体を入れ替える。
クレジット
- 原作
-
中村 颯希
- キャラクター原案
-
ゆき哉
書誌情報
ふつつかな悪女ではございますが ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~ 7巻 一迅社〈ZERO-SUMコミックス〉
第1巻
(2021-06-28発行、 978-4758036269)
第6巻
(2023-12-28発行、 978-4758039772)
第7巻
(2024-06-28発行、 978-4758085403)
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