ほいくの王さま

ほいくの王さま

保育園を2か月で退職してしまった男性保育士が、子供嫌いの園長と知り合い、先生も園児も男ばかりという変わった保育園で働くことになる。個性豊かな男性保育士たちが、子供や保護者たちに振り回されながらさまざまな問題解決のために奔走する。男性保育士の理想と現実を描く、奮闘物語。「モーニング」2015年34号から2016年47号にかけて掲載された作品。

正式名称
ほいくの王さま
ふりがな
ほいくのおうさま
作者
ジャンル
妊娠・出産・育児
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概要・あらすじ

男性保育士の福田育は、大学を卒業後に就職した保育園で、女性ばかりの職員、そして母親たちを相手にするからこそ起こり得る「女尊男卑」を体感し、たった2か月で退職。子供が好きなだけではやっていけないと、夢に見ていた保育士という職業に就いた自分に自信をなくしてしまっていた。そんなある日、育は子供嫌いのイケメン園長・大鳥教一郎が営むおおとり保育園の前を偶然通りかかる。

そこは、保育士も子供たちもすべて男だけの、変わった保育園だった。一見横暴で、ワンマンな教一郎のもと、成り行きで保育士として働くことになった育は、まだ理解者の多くない厳しい環境の中、さまざまな問題に直面することとなる。だが、各々に事情を抱えた子供や保護者に振り回されながらも、男性保育士として日々奔走し、成長を遂げていく。

登場人物・キャラクター

福田 育 (ふくだ いく)

22歳の男性保育士。幼く見えるため、学生に間違えられることが多い。母親の反対を押し切って上京し、保育士になったものの、女性ばかりの職場で受けた扱いに耐えられず、たった2か月で退職。しかし、保育士としての夢をあきらめられず次の職場を探していた時、おおとり保育園の存在を知る。子供嫌いの園長・大鳥教一郎の教育に対する姿勢には反感を覚えつつも、流れでおおとり保育園に勤めることが決まる。 教一郎からは子供っぽさを揶揄されて「いっくん」と呼ばれている他、何かと厳しく指摘されることも多く、教一郎に対する反発心は強まる一方。誰よりも情熱を持って仕事に向かっているが、実際には保育士として未熟な部分が多い。

大鳥 教一郎 (おおとり きょういちろう)

おおとり保育園の園長を務めるイケメンの男性。子供嫌いを自称しており、子供の扱いは下手。保護者に対して、まるでホストのような物腰で対応する姿は、およそ園長とは思えない。近隣住民や母親たちとの良好な関係を築くため、日々奔走しており、保育園を留守にすることも少なくないが、不思議と子供たちには好かれている。福田育が心身ともに子供っぽいことを揶揄して「いっくん」と呼び、いつも半人前扱い。 しかし、表には出さないが、心の奥底では期待を寄せ、成長を願って接している。「保育士はママの奴隷」や「保育士はホストであり、ママの要望を叶えるサービス業」など、保育園を運営するにあたって独自の持論を展開。新宿には、自らが社長を務める会社を持っており、保育園を営んでいるのは亡き母親の遺言による。

及川 有人 (おいかわ あると)

おおとり保育園に勤める先輩男性保育士。浅草で生まれ育ち、実家の両親はせんべい屋を営んでいる。自宅から保育園までは自転車で通勤している。少々女性らしいところがあり、音大出身のため、ピアノが得意。ピアニストになる夢を途中であきらめ、保育士になるために学校に入りなおした過去を持つ。ワンマンで誤解を受けやすい園長・大鳥教一郎をよく理解しており、教一郎の身の回りの世話までよくやく若妻のような存在。

東郷 潮 (とうごう うしお)

秀平の後輩にあたる男性。いつも前向きでポジティブな性格。体の大きな体育会系だが、子供好きで気は優しい。大学時代に保育士の資格を取得。子供向けのショーでスーツアクターを務めていたが、怪我が原因で続けられなくなった。その後子供に携わる仕事を希望していたため、福田育を通しておおとり保育園に勤めることになる。 外見のせいで、保育士に見られず、不審者扱いされることが多いことに頭を痛めている。意外にも料理が得意。

吉岡 桜介 (よしおか おうすけ)

おおとり保育園に新たに勤務することになったアルバイトの男性。保育士の資格は持っていない。子どもがいるが離婚歴があり、保育に関してはド素人。本を読んで知識を仕入れているせいか、情報だけにとらわれやすく、考えが固くなりがち。実は保育園に来る前までは一級建築士として働いていた。その能力を有効活用し、園庭に滑り台を作成する。

藤 絵利央 (ふじ えりお)

おおとり保育園にアルバイト職員として勤める20歳の男性。母親のロザリーの希望により、引きこもりからの社会復帰のために保育園に勤務を始めた。母親からはエリーと呼ばれている。パソコン操作が得意。いつも部屋の隅でゲームをしているか、カーテンの陰に隠れているため、保育には参加していないが、次第に子供たちとの距離が縮まっていく。 ヨーヨーの元世界チャンピオン。

キミ子 (きみこ)

総菜屋を営む女性。明るく気の良い情報通のおばちゃん。おおとり保育園の園児に給食を作っているほか、人手が足りない時は保育の手伝いも行っている。昔は肉屋を営んでいたため、商店仲間からは、「肉のキミ子」と呼ばれることもある。40年以上前、「谷中のハニー」と呼ばれていた頃、超ミニスカートを履いて歩いていた際に、大西から「太い足をさらして歩いている」と非難されたことを今でも根に持っている。

明美 (あけみ)

おおとり保育園の近所に住むおばさん。保育士の手が足りない時に、手伝いに来ている。主に赤ちゃん担当。保育にも口を出しがちなため、過去にはそれが原因でおおとり保育園にいた女性保育士とトラブルになったことがある。

秀平 (しゅうへい)

福田育の従兄にあたる男性保育士。育が受験で上京した際には、合格祈願に付き合ってくれたり、親身になって相談に乗ってくれた。桜新町にある保育園に勤めている。育にとっては憧れであり、男性保育士として目標にしている人物。大学時代から付き合っている彼女がおり、結婚を考えてはいるものの、今のままでは家族を養えるほどの給料がもらえないため、転職を考えている。 育からは、「秀兄」と呼ばれている。

ロザリー

藤絵利央のフランス人の母親。たどたどしい日本語を話す。引きこもりの息子を社会復帰させたい一心で、おおとり保育園のアルバイト職員として働かせてもらえるように大鳥教一郎にお願いした。毎日絵利央を保育園まで車で送り、17時には欠かさずに迎えに来ている。

ごとう 将直 (ごとう まさなお)

おおとり保育園に通っている5歳の男児。昨年の七夕に事故で母親を亡くし、寂しいなか父親と2人で慌ただしい毎日を送っている。ある時、福田育が約束を守らなかったことで落ち込み、ふさぎ込んでしまうようになる。

(みなみ)

谷中にある「料亭みなみ」の令嬢。4歳の息子をおおとり保育園に預けており、息子の顔を特に大事にしている。自己主張が激しく、自分が中心でないと気が済まないタイプで、思った通りにならないとすぐに文句を言う。北島とよく行動をともにして他人の噂話や悪口を言っており、その中には保育士に対する不満の言葉も多い。

はるか

近所にある「玉染保育園」の女性保育士。根津神社にはよく子供たちをつれて散歩に来るため、おおとり保育園とも親交がある。偶然見かけた福田育が仕事で悩んでいる様子を見て、先輩保育士として、相談に乗ろうと声をかける。

寺山 (てらやま)

寺山翼の母親で、おおとり保育園に息子を預けている。同居の姑の反対を押し切って最近働き始めたばかり。最近息子の発熱が多く、職場にお迎えの連絡がくることが頻繁になっており、会社を早退する日が続いていることに悩んでいる。しかし、夫は悩みを真剣に受け止めてくれず、その悩みを1人で抱え込んでいる。

寺山 翼 (てらやま つばさ)

おおとり保育園に通っている2歳の男児で、寺山の息子。平熱が37℃で、いつも熱っぽいことが多い。夕方には熱が上がってしまい、母親に、予定より早くお迎えに来てもらう日が続いている。母親のことが大好きだが、自分が熱を出すことで母親が困っていることに心を痛めている。

大志 (たいし)

おおとり保育園に通っている3歳の男児。いつも明るく元気いっぱい。おっぱいが大好きで、女性を見ると胸を触りに行くおっぱい星人。お散歩で偶然知り合ったはるかを見るなり、おっぱいを触りに行ってしまう。

松井 (まつい)

松井宇伊里の母親で、おおとり保育園に息子を預けている。夫婦で漫画家を務めており、徹夜明けで育園に来ることも少なくない。息子の生活リズムが、自分の職業の影響を受けてしまっていることに、良くないと思いつつもなかなか改善できずにいる。

松井 宇伊里 (まつい ういり)

おおとり保育園に通っている3歳の男児で松井の息子。両親の生活リズムの影響か、登園後午前中もうとうとと寝ていることがあり、午後のお昼寝時間になっても寝ようとしない。そのうえ、眠っている他の子供たちを起こすなど問題も多い。しかし、いつも悪気はなく、悪かったことについては素直に謝罪する。

立花 ゆか (たちばな ゆか)

立花涼真の母親。おおとり保育園に息子を預けている。シングルマザーの料理研究家で、最近ブログで人気に火が付いたため、テレビに出演するなど忙しい毎日を送っている。離婚し、片親で育てていることもあり、甘やかすことが無いように日々子育てには気を遣っている。周囲からは、応援の声もあるが、陰口もあり、順調にいかない毎日に疲れを感じている。

立花 涼真 (たちばな りょうま)

おおとり保育園に通っている3歳の男児で立花ゆかの息子。いつもうさぎのぬいぐるみ「こきち」を抱いており、静かでおとなしい。お昼寝の時間に眠らない日が続いており、松井宇伊里と一緒になって眠っている子供たちにいたずらをしたことで福田育に怒られたが、誤解があったことが判明。その際頭ごなしに叱りつけた育に苦手意識を持つようになった。

北島 (きたじま)

北島都桃輝の母親。おおとり保育園に息子を預けている。保育園には南とともに訪れることが多く、何かと他の子や保護者の陰口を言い、園や保育士に対する不満も多い。都桃輝が怪我をした際には逆上し、関わった子と親に対して必要以上に謝罪を求めた。

北島 都桃輝 (きたじま ともき)

おおとり保育園に通っている4歳の男児で北島の息子。いつも元気でヤンチャなタイプ。縁側から落ちて、頭にたんこぶをつくった時には、激昂した母親を見て怖くなり、怪我の原因を作った相手の名前についてしゃべろうとしなかった。

水谷 (みずたに)

水谷総一郎の母親。おおとり保育園に息子を預けている。芸者上がりで、有名俳優の愛人になったことは保育園のお母さんの間でも有名。息子が北島都桃輝にけがをさせたことを知り、謝罪の意思を見せるが、北島には受け入れてもらえず、親同士も子供同士も関係がこじれていく。

水谷 総一郎 (みずたに そういちろう)

おおとり保育園に通っている5歳の男児で水谷の息子。すべり台での順番待ちをしていた際、偶然体が当たってしまい、北島都桃輝を保育園の縁側から落としてしまう形になった。自分の非を認め、謝罪もおこなったが、相手側の誤解から、都桃輝との関係がこじれてしまう。

一ノ瀬 要 (いちのせ かなめ)

おおとり保育園のかかりつけ医を務める男性医師。園長である大鳥教一郎とは大学時代の友人。顔を合わせれば互いに憎まれ口を聞くものの、仲は良い。ぼさぼさ頭に無精ひげを生やしており、ぶっきらぼうな印象だが近隣に住む患者さんからは慕われている。

加藤 玲 (かとう れい)

福田育の大学時代の友人で、男性保育士として保育園に勤めている。中島さらから愚痴を聞いてほしいと誘いがあったため、大学卒業以来しばらくぶりに仲間に招集をかけ、飲み会を開いた。勤め先の先輩がキツくあたるため、怒られてばかりいる。園児にはひっかかれたりかじられたりと、身も心もボロボロの毎日に疲れている。

小山 (こやま)

福田育の大学時代の友人で、男性保育士として保育園に勤めている。加藤玲からの誘いで、しばらくぶりの飲み会で友人と再会した。恰幅が良いため、お馬さんごっこで何人も子供を背中に乗せ、遊ばせることができ、園児には懐かれている。保育士としては、先を見て自分で行動を起こせないため、つい指示を待ってしまうことに、職場の先輩からダメ出しをされている。

中島 さら (なかじま さら)

福田育の大学時代の友人で、女性保育士として保育園に勤めている。ショートヘアで快活なイメージ。勤め先の先輩が、皆頭が固く、保守的な考えの持ち主であるため、意見が通らず、ストレスをため込んでいる。愚痴を聞いてほしかったこともあり、加藤玲に声をかけた。

友人 (ゆうじん)

福田育の大学時代の友人で、女性保育士として保育園に勤めている。加藤玲からの誘いで、しばらくぶりの飲み会で友人と再会した。今の職場では、子供と接するよりも掃除や洗濯ばかりの毎日を送っているため、手荒れがひどいのが悩みの種。

大西 (おおにし)

おおとり保育園の向かい側で「大西古書店」を営む老人男性。妻を亡くしたため今は独り身。偏屈で口が悪く、いつも喧嘩腰。保育園の子供に関して、散歩に行く時の声がうるさいなど、何かと文句や意見、要望が多い。そのつど園長・大鳥教一郎が対応しているが、教一郎を嫌っている。息子とは折り合いが悪く、陶芸家になりたいと出て行ったきり連絡を取っていない。 町内会でも厄介者扱いされているほか、キミ子を「肉だぬき」と呼び、40年以上前のことで恨みを買っている。保育園の子供たちからは、「ふるほんじいじ」と呼ばれ、慕われている。コマ回しが得意。

舞斗 (まいと)

おおとり保育園に通っている5歳の男児。最近になっておねしょが続いているため、母親から心配されている。福田育からは、ストレスがあるのではと考えられているが、実はお化けが怖くてトイレに行けないだけ。小さな弟の手前、言い出せずにいた。同じマンションに住んでいる少女「えま」とは親公認の恋人同士。

武井 (たけい)

東郷潮がスーツアクター時代に世話になった男性の先輩。現在もスーツアクターとして一線で活躍している。保育士を諦めた潮が、スーツアクター時代に怪我をして仕事を続けられなくなった時、保育園で子供たちのヒーローを目指せと、男性保育士になるよう背中を押した。潮が再び保育士を目指すきっかけを作った人。

お母さん (おかあさん)

福田育の母親で、女医。夫とは離婚している。息子には、もともと医者になってほしいという願いを持っており、片親ながら教育にはお金をかけてきた。そのうえ、保育士は女性が就く仕事であるという固定観念から、保育士の道に進みたがった育に大反対。その後もわだかまりが残ったままの状態となっている。

江口 (えぐち)

おおとり保育園に1歳の息子を預けている母親。夫がリストラに遭い、収入が激減。急遽自分が働きに出ることが決まったが、認可保育園に入ることができず、おおとり保育園に入園した。しかし、保育料が納められず、1か月待ったが滞納が続いたため、退園を余儀なくされている。

平野 (ひらの)

平野勇気の45歳の母親。おおとり保育園に息子を預けている。いつも明るく快活な印象。高校生の娘もおり、勇気を産んだ時は高齢出産で、緊急帝王切開となり大変な思いをした。誕生日が勇気と同じ10月5日。

平野 勇気 (ひらの ゆうき)

おおとり保育園に通っている4歳の男児で平野の息子。いつも元気で明るく正義感が強い。園長・大鳥教一郎を「あくのていおう」と呼んでいる。福田育には、初めて会った時から優しい言葉をかけてあげた思いやりのある男の子。母親と誕生日が同じ10月5日。年の離れた高校生の姉がいる。

場所

おおとり保育園 (おおとりほいくえん)

園児も保育士も男ばかりの保育園。国の設置基準は満たしていないため、認可外保育園であり、公的補助は受けられないが、そのぶん規定に捕らわれない保育サービスを提供することができるのが特徴。園長は大鳥教一郎。日暮里駅近くにある谷中ぎんざ商店街を通り、曲がりくねった通称「ヘビ道」を抜けた先にある和風な佇まいの建物。以前、教一郎と女性保育士たちが保育方針で対立し、多くの園児は女性保育士たちとともに、近所に新しくできた保育園に移ってしまった。 そのため、残った園児と男性保育士のみで再開したものの、園児が少なくまずは園児を増やすための活動を行わなければならない状態にある。

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