みつあみの神様

みつあみの神様

海辺の小屋でひとりで暮らすみつあみとその周りでおしゃべりをしている「洗濯バサミ」や「枕」たち。彼女たちの生き方を通じて「3.11」以降の未来への情景と再生を描く叙情マンガ。2013年手塚治虫文化賞新生賞受賞対象作品。

正式名称
みつあみの神様
ふりがな
みつあみのかみさま
作者
ジャンル
その他
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概要・あらすじ

荒涼とした海辺の一軒家でひとりで暮らすみつあみ。彼女の周りでは、「洗濯バサミ」や「歯ブラシ」、「」たちが勝手におしゃべりを繰り広げている。彼女の家に訪れるのは、郵便配達の少年と白い防護服の調査団だけ。次第に心を通わせていくみつあみ郵便配達の少年。しかし、郵便配達の少年は自分が生きる世界の秘密を知ってしまい、みつあみと世界の外へ逃げ出そうとする。

登場人物・キャラクター

みつあみ

荒涼とした海辺の一軒家にひとりで暮らす少女。その周りでは様々な無生物たちがおしゃべりを繰り返している。大きな災害が起こる前は、両親と幸せに暮らしており、その頃のことを夢に見て涙することがある。郵便配達の男の子に手紙をもらって以来、お互いに心をかわすようになる。自分の生きる世界の秘密を知った郵便配達の少年に逃亡を誘われるが、自分を待つたくさんの人々のため世界に残ることを選択する。

洗濯バサミたち (せんたくばさみたち)

みつあみが洗濯を干すために使う洗濯バサミ。みつあみの家の他の道具同様、おしゃべりをする。古くからいるのが赤バサミで、白バサミが新しく加わった。赤バサミは白バサミが来たことで「出番が減った」と不平をもらし、白バサミの押さえる力が強すぎて跡がつくとなじる。 白バサミは赤バサミは古くて力が弱いと見下し、「古参というだけで我が物顔をして楽をしている」と文句を言う。とうとう両者は潰しあいをはじめ、彼らの体はバラバラになってしまう。みつあみは、バラバラになった彼らのパーツを拾い集めて、赤と白がまざった洗濯バサミを作り上げ、洗濯ものを干すのに使用した。

石鹸 (せっけん)

みつあみが洗濯に使っていた石鹸。人の役に立ちたいという思いはあるものの、洗濯バサミの「ここにいても溶けて消えるだけだもんな。外にはもっと楽しい世界があるぞ」という言葉を受け、外の世界に逃げ出した。小さくなることを怖がっていたが、話しかけた小石の「いずれは砂になり、さらにはもっと大きなもの(海)の一部になる」という言葉を聞き、みつあみの元に戻った。

ゴム手姉妹 (ごむてしまい)

みつあみが洗いものをする時に使う一対のゴム手袋。満月の夜家を抜け出し海岸を散歩していたところ、調査団に捕獲されそうになった子亀を一匹助ける。姉妹は次の満月の夜まで、自分たちの中で子亀を育て、海に逃がそうとした。しかし、落ちてきた石に口をふさがれ子亀を外に出すことができなくなってしまう。 ゴム手姉妹は捨てられる覚悟で、子亀に内側からゴムをかみきるよう指示する。結果、ゴム手姉妹の片方の薬指に穴が開いたが、みつあみは紐でしばって穴をふさぎ、洗物をした。

浮輪

みつあみが子供の頃愛用していた浮輪。抱きつかれることを嫌がり、みつあみの手から離れ、きままに海を漂った。災害が起こった時も人に抱きつかれることを拒絶し続けたが、最後は空気がしぼんで海の底に沈んでしまう。海岸にゴミとして打ち上げられた浮輪は、みつあみに拾われ抱きつかれることで、「抱きつかれると、とてもあたたかいこと」を思い出す。

(まくら)

みつあみ愛用の枕。両親が亡くなった時のことを思い出すみつあみの悪夢を共有し、一日おきに涙のしみをつけられている。年に一度の枕サミットに出席し、仲間に仕事の愚痴をこぼすが、諭されてみつあみの悪夢を受け止めるために帰ってくる。

ポスト

みつあみの家に設置されている郵便ポスト。災害後、久しく手紙が配達されてこないことをなげき、自分の中に手紙が入らなくなった代わりに、小鳥たちを入れて保護しはじめた。その後、みつあみへの手紙を自分の中に入れようとした郵便配達の少年に「直接渡したらどうだい。申し訳ないが」とアドバイスする。

郵便配達の少年 (ゆうびんはいたつのしょうねん)

郵便配達の職につく少年。災害で両親は亡くなり、兄とふたりで暮らしている。みつあみの家の配達担当だが、彼女のポストに手紙が届いたことは一度もない。ある日、郵便配達の少年は自分でみつあみあてに書いた手紙を彼女に手渡し、以来、手紙を交換しあう仲となる。その後、少年は兄から自分たちの世界の真実を知らされ、みつあみと共に世界の外へ逃げ出そうとする。

調査団 (ちょうさだん)

白い防護服に身を固め、定期的にみつあみの体の検査にやってくる集団。物資や薬の配布も行っている。動物をとらえ調査する事も行っている。

テレビ

郵便配達の少年に拾われた古いコンパクト・テレビ。拾われた時、対岸では原子力発電所らしきものが爆発していた。テレビはみつあみに渡され、家の中でニュースを映す。真実を伝えようとするテレビのニュースはモノたちに不評で、ゴム手姉妹には「あなたの真実って何? いたずらに恐ろしいニュースのこと? わたしたちの真実はすでにここにあるのよ」と言われる始末。 だが、みつあみと郵便配達の少年の手にとられたテレビは、壊れる直前、ふたりに映画「サウンドオブミュージック」を見せた。映像にあわせて歌うふたりにゴム手姉妹は「久しぶりにこの世界で歌をきいたわ」とつぶやく。

キャンディ

みつあみが郵便配達の少年に手渡したキャンディたち。少年はがれきの山の側らの小屋で兄とふたりでキャンディを食べる。キャンディの中には食べられることを怖がっているモノもいるが、仲間は「たとえ一瞬で消えるとしてもその人の心をなぐさめる光になればいいの」と語りかけた。

郵便配達の少年の兄 (ゆうびんはいたつのしょうねんのあに)

郵便配達の少年の兄。眼鏡をかけた落ち着いた雰囲気の少年。がれきの山の側らの小屋に弟とふたりで住んでいる。仕事はがれきの山の片づけ。ある日壁の向こう側に連れていかれ、世界の真実を知る。そのことを何とか弟に知らせたが、結局はまた連れ戻されて命を落とした。

おそうじロボ

郵便配達の少年の兄が拾ってきた円形の古い自動おそうじ装置。おばあさん言葉で話しながら、床を掃除して回る。兄が倒れた時、彼の眼鏡をのせた状態で、みつあみの家までやってきた。そして事態を弟に知らせ、息絶えた。

そうじの女の子 (そうじのおんなのこ)

壁の向こうの世界に行った郵便配達の少年の兄が仲良くなった少女。施設の掃除を仕事にしている。左手が生まれつきない。兄が施設から逃げ出す手伝いをした。

大きな犬のぬいぐるみ (おおきないぬのぬいぐるみ)

がれき山に捨てられた大きな犬のぬいぐるみ。おなかの綿を抜かれた小さなぬいぐるみたちに自分の綿を抜いて与えた。綿を抜いたためくたびれた姿になり、小さなぬいぐるみたちに心配されるが、「大丈夫よ。おなかが空っぽでもとっても満たされているの」と答えた。

はさみと目覚まし時計 (はさみとめざましどけい)

みつあみ愛用の枕の綿が少なくなったことから、はさみと目覚まし時計は、がれきの山に出かけ、そこに捨てられていた小さなぬいぐるみたちから綿を抜いて持ち帰り、枕に与える。その後、再び綿を手にれるべく、がれきの山を訪ねたふたりは、大きな犬のぬいぐるみが小さなぬいぐるみたちに自分の綿を与えている光景に凍り付き、汗を流す。 しかし、大きな犬のぬいぐるみは「何も恥じることはありませんよ。あなたは友達を助けようとしただけなのですから」と優しく語りかけた。

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