あらすじ
小説家の咲河聖奈は幼い頃、両親からネグレクトを受けたことが原因で、誰よりも自分を溺愛し、面倒をみてくれた実の姉、咲河優奈に恋愛感情のようなものを抱いていた。ある時、優奈から恋人として馬宮菊を紹介されたことをきっかけに、自分の中の気持ちがふつうでないことに気づき、聖奈は優奈から離れることを決意し、一人暮らしを始める。だが、心配した優奈は何かと聖奈のもとを訪れて世話をするため、結局二人が離れることにはならなかった。しかしその後、優奈が仕事で海外へ転勤することが決まり、聖奈は物理的に優奈と離れることになってしまう。これにより、決定的な喪失感に苛(さいな)まれた聖奈は、小説がまったく書けなくなり、小説家としての活動も停止。さらに家はゴミであふれ、食事も満足に摂(と)らず、真冬に布団にも入らずに床で眠るなど、日常生活も破綻する。聖奈と連絡が取れなくなったことを心配した優奈は、自分の元恋人にして親友であり、聖奈とも面識のある菊に連絡を取って様子を見て来て欲しいと依頼する。一方、菊に苦手意識を持っていた聖奈は、菊との接触を拒み、頑(かたく)なにかかわりを拒絶しようとするが、何を言っても一歩も引かず、しつこく訪ねて来る菊に振り回されつつも、絆(ほだ)されていく。そんな中、聖奈は菊から恋人になりたいとの思いを打ち明けられる。菊は拒絶されることも覚悟していたが、思いがけず聖奈の口から出たのは、承諾の言葉だった。菊は、聖奈が優奈に恋愛感情を持っていることを知ったうえで、自分が聖奈にとって安心できる場所になりたいと告げる。さらには聖奈と優奈がきちんと話をして互いのことを知ることが先決だとし、そのうえで菊が聖奈を好きな気持ちを信じてもらうため、物事をゆっくりと進めていこうと考えていた。そんな菊の優しさを知った聖奈は、ずっと避け続けていた優奈に連絡し、現状を報告する。
登場人物・キャラクター
咲河 聖奈 (さきかわ せな)
小説家を生業としている女性。咲河優奈の妹。両親からネグレクトを受けていたため、幼い頃から優奈の世話になっていた。その影響で、優奈を慕う気持ちが強くなり、いつしか恋愛感情のようなものを抱くようになった。優奈が大学生の時、優奈の恋人、馬宮菊を紹介されたが、執着心もないのにつねに周りから必要とされており、余裕のある感じを抱かせる菊のことが気に入らず、苦手意識を持っている。優奈への恋愛感情に気づいたのは、菊を恋人として紹介された時で、自分の中の異常な気持ちを自覚し、優奈から離れるために実家を出て一人暮らしを始めた。だが、何かにつけて訪問してくる優奈と過ごす時間は楽しく、結果的に優奈から離れることはできなかった。その後、優奈が仕事で海外へ行くこととなり、物理的に離れることになったが、姉への喪失感から、小説がまったく書けなくなってしまう。さらに家は荒れ放題で食事も満足に摂らず、真冬に布団にも入らずに床で眠るなど、日常生活も破綻している状態。小説家としての活動すら停止している現状を、優奈には知られたくないと思っており、優奈とは離れて以来連絡を取っていない。それからは菊が姉に代わり頻繁に様子見に訪れるようになり、寝食の面倒を見てもらっている。当初は菊に反発していたが、優しくも強引な菊に振り回される中で、菊からの告白を受けることになり、菊の恋人になることを決めた。しかし、菊に対して恋愛感情があるわけではなく、恋人になることを承諾したのは優奈への気持ちをごまかすためだった。おとなしく物静かな性格で、他人とかかわるのを苦手としている。頑固な割には意外と素直な一面もある。甘いものが大好き。
馬宮 菊 (まみや きく)
咲河優奈の元恋人の女性。現在はカメラマンの仕事に就いており、のもりゆりあや立崎たちと、出版関係の仕事で忙しい日々を送っている。明るい性格で面倒見がよく、お人好しな一面がある。周囲に流されない自立した大人の佇(たたず)まいを感じさせ、人への気遣いを怠らない優しさと強さを兼ね備えている。優奈とは、大学時代に知り合って恋人同士となったが、その後ほどなくして恋人関係を解消した。現在優奈とは、親友として交流が続いており、強い信頼関係を築いている。仕事で日本を離れた優奈から、連絡がつかなくなった妹の咲河聖奈の様子を見に行って欲しいと頼まれたことをきっかけに、何かと聖奈を気にかけ、面倒を見るようになった。実は、学生時代から聖奈に思いを寄せており、かかわりを持つことを望んでいる。ある時、拒絶されることを覚悟しながら、聖奈に自分の気持ちを告白したが、思いがけず承諾の言葉をもらうことになった。聖奈に、馬宮菊自身への気持ちがないことはわかっており、聖奈が優奈に対して特別な感情を抱いていることも理解したうえで、聖奈が安心できる存在になりたいという思いで聖奈のすべてを受け入れようとしている。好きなものは魚介類や卵料理で、お酒は非常に強い。
咲河 優奈 (さきかわ ゆうな)
咲河聖奈の姉。明るく穏やかな性格で、老若男女誰からも好かれるタイプ。ネグレクト気味の両親に代わり、幼い頃から聖奈の面倒を見てきた。そのため聖奈への思い入れは強く、大人になった今でも聖奈がかわいくて仕方がない。大学時代に馬宮菊と知り合って恋人同士となったが、その後ほどなくして恋人関係を解消した。菊とは強い信頼関係を築いており、親友として現在も交流は続いている。聖奈が実家を出て一人暮らしを始めると、心配して何かと聖奈の家を訪れては世話を焼いていた。のちに、仕事で海外へ行くことが決まり、聖奈とは物理的に距離を取ることになったが、それ以来連絡が取れなくなってしまう。聖奈への心配を募らせた結果、菊に聖奈の様子を見に行ってもらう。実は、海外で仕事中に知り合った人と結婚することが決まり、帰国時期を早める予定となっている。
のもり ゆりあ
出版関係の会社に勤める女性。馬宮菊や立崎の仕事仲間。髪にいつもリボンを付けており、女子力が高め。仕事には真摯に向き合っており、同じく仕事のできる菊に信頼を寄せている。動画投稿サイト「ミーチューブ」に、自作の動画を投稿している人気ミーチューバーでもある。甘党で、辛い物を苦手としている。
立崎 (たちさき)
出版関係の会社に勤める女性。馬宮菊やのもりゆりあの仕事仲間。最近菊が忙しそうにしているため、恋人ができたのではないかと勘ぐっている。だが、同僚の柏木からの差し入れを持って帰るようになったと聞き、甘いものが好きな年下の恋人ができたことを確信する。その噂(うわさ)の真相を探ろうとするも、うまくいかずに恋人の有無は確認できないままとなっている。至る所に推しがいて、最近の推しミーチューバーは仕事仲間ののもりゆりあ、推しカメラマンは菊であることを明かしている。
書誌情報
姉の親友、私の恋人。 全4巻 KADOKAWA〈電撃コミックスNEXT〉
第1巻
(2021-12-25発行、 978-4049141184)
第2巻
(2022-07-27発行、 978-4049145083)
第3巻
(2023-03-25発行、 978-4049149555)
第4巻
(2023-10-26発行、 978-4049153347)