あらすじ
第1巻
飼い猫のキャベツと暮らす26歳の青年、成瀬時生は、悪性の脳腫瘍で余命半年と医者から宣告される。ぼんやりとした絶望を抱えながら帰宅した時生を迎えたのは、時生と同じ顔をした若い男の悪魔だった。その悪魔は、自分が悪魔である事を証明してみせると、猫のキャベツに魔法をかけ、キャベツは人間の言葉を話し始める。悪魔は時生が明日死ぬと告げるが、世界から何かを一つ消すたびに時生は1日の命を得られると話す。何を消すかは悪魔が選び、消えたものは始めから存在しなかったように滞りなく世界は廻るという。キャベツを守るために死にたくない時生は、その取り引きを了承する。最初に消すものとして悪魔が選んだのは「電話」だった。悪魔のオプションサービスとして、消す前に一度だけ誰かに電話を掛けていいという。時生は母親の文子の死後、4年間も連絡を取っていない父親の顔を思い浮かべたが、昔好きだった淀川映美に電話を掛け、再会の約束をかわす。その後、時生の手から携帯電話が消え、街にあったはずの携帯ショップはコンビニに変わるのだった。4年ぶりに映美と再会した時生は、今でも彼女の事が好きである事に気づき、別れ際に映画を見る約束を取りつける。
映美と別れた帰り道、再び時生の前に現れた悪魔は、次に消すものとして「映画」を選ぶ。悪魔の仕事は、神が創った魂を誘惑して滅ぼす事。ただ滅ぼすだけじゃつまらないからと、追い詰められていく時生の姿を見て楽しむために、悪魔は時生の大切なものを消す対象に選んでいるのだった。何もできずに明日死ぬか、悪魔の思惑どおりに滅びへ向かうかの二択を迫られた時生は、翌日の映美との鑑賞を最後に、世界から映画を消す事を選択する。(第1話「悪魔」)
1日生きながらえるために映画を消す事を選んだ時生は、消される前の最後の1本を映美と観る約束をかわしていた。大好きな映画のそばで働くのが夢だった映美は、今は映画館で働いており、その映画館では上映が終わった午後8時からは、スタッフが好きな映画を観ていいとの事だった。時生は映画館で上映してもらうDVDを借りるためにレンタルビデオ屋へ出かけ、そこで働く旧友のツタヤと数年ぶりに再会する。大学生時代にツタヤと友達になったのも映画がきっかけだった。時生は、もし映画がこの世から消えるとしたらという仮定の話として、最後に観る1本をいっしょに選んでほしいとツタヤに伝えると、時生が映美を好きな事を知っているツヤタは、かつて時生と映美が映画館で二人で観た1本をチョイスするのだった。映画の鑑賞が終わり、映画の悲しい結末に沈んでいる時生を見た映美は、真っ白なスクリーンの映画館が写された1枚の写真を時生に渡す。それは映写室から劇場を撮った写真で、上映開始と同時にシャッターを開いて、終了したらシャッターを閉じたものだった。そうすると映画2時間ぶんの光を吸収して真っ白いスクリーンが写るらしい。映美はその白いスクリーンに何を移すかは自分の心が決めるのだと伝え、悲しい結末の映画であっても、観た者が映画の中に一つでも希望を見出せば、どんな映画でもハッピーエンドになる、と時生を励ますのだった。(第2話「映画」)
第2巻
花粉症でくしゃみが止まらない悪魔は、次に世界から消すものに「花」を選び、成瀬時生も了承する。悪魔の魔法によって人間の言葉を話せるようになった飼い猫のキャベツは、時生が好意を寄せる淀川映美に最後の花を贈るべきだと進言するのだった。花を贈るなんて照れ臭いと時生が迷っていると、映美が時生に借りた本を返しに訪ねて来る。本当は映画のDVDを貸していたのだが、悪魔によって世界から映画が消された今、本を貸した事になっていたのだった。その後、訪れた花屋で、時生がこれまでに誰にも花を贈ったがない事を知った映美は、亡くなった時生の母親、文子に花を捧げてはどうかと提案する。時生は文子の好きな花すら知らなかったため、映美は「母への愛」が花言葉の赤のカーネーションを選ぶが、店には「亡き母へ」が花言葉の白のカーネーションしか在庫がなかった。死んだ文子を思い出し、悲しそうな顔をする時生に、映美はヒマワリをプレゼントする。ヒマワリの花言葉が「あなたしか見えない」だと店員から聞いた時生は顔を赤らめつつ、文子の墓前に花を届けようと考えていた。(第3話「花」)
悪魔が愛用しているハート型のサングラスを紛失する。ネットオークションで8万円で競り落とした宝物らしい。仕方なくキャベツといっしょにサングラスを探す時生は、自分が死んだあとのキャベツの処遇が気がかりだった。亡き母がかわいがっていたキャベツとの別れは辛いが、明日の命も知れない時生は、今のうちにキャベツの引き取り先を探すべきかと迷っていた。いっそ大切なものなんて最初から作らなければいい、とさえ感じ始めていたが、車に轢かれそうになったキャベツを抱きしめ、時生は大事な宝物であるキャベツを手放すなどできない、という自分の気持ちに気づく。結局、サングラスは悪魔のズボンのポケットに入っていた。(第4話「宝物」)
悪魔は、次に世界から消すものに「写真」を選ぶ。オプションサービスは、最後に撮った1枚だけを残せるというものだった。アルバムを眺めていた時生は、プロの写真家を目指すといっていた友人の黒澤を思い出し、彼女を訪ねる。学生時代、黒澤は時生や映美、ツタヤの写真をよく撮っていた。再会した黒澤は、学生時代に黒澤の撮った写真を好きだと言ってくれた時生が、本気でプロの写真家を目指す事への後押しとなったを告げる。だが、今の黒澤はもう写真をやめていた。笑顔を撮るのがとても上手だと話していた父親を半年前に亡くし、黒澤の中では父親が笑わないままだ、と辛そうな顔を見せる。写真を世界から消さなければ生きられない時生だが、黒澤に夢を忘れないでほしいという願いが生じる。(第5話「写真」)
黒澤は真剣にプロの写真家を目指そうとしたが、写真館を経営する父親にはその思いが伝わらなかった。口論の末、彼女は父親の仕事や写真を否定するような言葉を口にしてしまい、その会話後に父親が倒れて亡くなってしまった。本当は写真が大好きで、プロになって父親の笑顔を撮って見せたかった、という黒澤の夢は果たされず、今も彼女にとって辛い思い出となっていた。世界から写真が消えれば、黒澤の辛い思い出もいっしょに消えるが、時生は黒澤の笑顔が戻らないまま写真を消す事はできなかった。黒澤の父親が撮った写真を見せてもらうと、時生は黒澤の父親が現像室で倒れた時に抱えていたというカメラに、まだフィルムが残っている事に気づく。現像した写真には、アルバムに収められた、父親が幼い頃から撮り続けてきた黒澤の写真が写っていた。アルバムの写真1枚1枚すべてに、娘がカメラが好きな事を喜ぶ父親のコメントも添えられていた。亡き父の思いを知った黒澤は涙し、笑顔を取りもどして再びカメラを手にするのだった。時生にも、父親や母親、キャベツといっしょに海辺で撮影した家族写真という大切な1枚があったが、残したい写真は1枚では足らず、オプションサービスには何も選ばない事に決める。そして文子が亡くなって以来避けてきた父親と、向き合わなければならないと感じていた。(第6話「笑顔」)
おすすめの本を渡すために時生の家を訪れた映美は、いつもとは別人のような言動の時生と対面する。頼まれてチャーハンを作った映美に、時生はコーヒーを差し出す。実は奥手すぎて映美との関係がまったく進展しない時生に代わって、時生のふりをした悪魔が映美に積極的にアプローチして、二人の距離を縮めようとしていたのだった。しかし、映美は時生と同じ顔をした悪魔が時生ではない事を見抜き、いつもオドオドしていて頼りなくて情けない時生だからこそ、いっしょにいるとほっとできると告げる。そこへ買い物へ行っていた本物の時生が戻る。時生は、この部屋には住人とそっくりな霊が出るという話で、強引に映美を説得するのだった。駅まで映美を送る道すがら、時生は自販機でココアを買って映美に渡す。映美は昔からコーヒーではなく、ココア派なのだった。電柱にぶつかった時生を笑いながら、映美は久しぶりにこの街に帰って来た時に、昔と変わっていない時生を見てほっとしたと話し、時生の手を握るのだった。(第7話「ココア」)
第3巻
近所の騒音で眠れない悪魔は、次に世界から消すものとして「音楽」を選ぶ。翌日、安眠できる場所がほしいという悪魔の求めに応じて、成瀬時生はキャベツと共に山へ向かい、音楽を消す取引に応じるのだった。山でキャンプを始めた時生は、14年前の担任だった溝口先生と再会する。当時、小学校の卒業式でソロパートの担当に選ばれ、人前で歌うのが嫌で仕方がなかった時生を、溝口先生はへたくそな歌で励ましてくれたのだ。しかし、溝口先生は式の前日に交通事故に遭い、命は助かったものの左耳の聴力を失い、教師も辞めたのだった。それ以来、山で暮らしている溝口先生は、自然に囲まれる中で食物連鎖を身近に感じる事で、生きる事は何かを失う事であり、失くしたものにも意味があって、ありがとうという気持ちがあれば、今を生きていけるという境地に至っていた。その言葉は日々何かを犠牲にして1日を生きている時生の心に響く。右耳の聴力も弱まり、やがて完全に音を失うという溝口先生に、時生は14年前に聴かせられなかった歌を披露するのだった。その1曲を最後に、世界から音楽が消えた。(第8話「音楽」、第9話「先生」)
悪魔と時生の取引によって、世界から「ネズミのおもちゃ」が消える。それはキャベツの宝物だった。ヘソを曲げたキャベツは家出するが、下手な似顔絵のチラシを描いて必死にキャベツを探す時生の姿を見て、家へと帰る。家では時生がキャベツのお気に入りの布団を洗濯しており、布団のヨレヨレ感がなくなってショックを受けるが、特等席である時生のあぐらの上で我慢するキャベツだった。(第10話「特等席」)
大好きなチョコ菓子「なめこの山」を食べ過ぎて気持ち悪くなった悪魔は、世界から消すものに「チョコレート」を選ぶ。原料である「カカオ」から根こそぎ消すという。チョコレートが消えれば、淀川映美が大好きなココアもこの世からなくなる。時生は映美に最後のココアを飲ませてあげたくて、キャベツといっしょに彼女を捜すが、職場である図書館は休館日で、映美が行きそうな場所を手当たり次第にあたるが、見つからない。トイレへ行きたいとウソを言って魚屋へ逃走したキャベツは、映美を目撃。猫がしゃべっているとバレないように映美にメッセージを伝え、時生と引き合わせる。時生に鉢合わせした映美はプレゼントを手渡す。その日は時生の誕生日だった。本当は迎えるはずのなかった自分の誕生日を迎え、映美の笑顔を見た時生は、生まれて、生きて、映美に出逢えてよかったと心から感じていた。(第11話「君のために」)
時生は、映美と二人で遊園地デートを楽しむ。映画が縁で知り合った二人で、映画館に勤めていた映美だったが、映画が世界から消え、今の映美は図書館勤めで、二人は毎日のように本を貸し借りしている。悪魔は遊園地のマスコットキャラの着ぐるみで現れ、大切なものを失う前に、はやく映美に気持ちを伝えるよう時生に促がす。時生は意を決して映美に思いを伝えようとするが、ひどい頭痛に襲われる。傍らに現れた悪魔は、次に本を消そうと囁くのだった。(第12話「本」)
世界から本が消え、映美が勤めていた図書館は公園に変わっていた。元気のない時生を心配する映美に、時生は自分の気持ちを伝え、病気で明日をも知れない命である事を告白する。それを聞いた映美は、彼女が大好きだという「人生を恐れてはいけない」という言葉を伝えて励ます。その言葉は二人が初めて出会った映画『ライムライト』の中のセリフだった。映画が消えてしまっても、映美の中にはその言葉が残っていたのだ。時生は、たとえ明日までだとしても、一瞬だとしても、生きて私を幸せにして、という映美と口づけをする。(第13話「告白」)
第4巻
成瀬時生の気持ちと余命僅かである事を聞いた淀川映美は、すべてを受け入れ、それまで以上に時生の支えになってくれていた。かつて、母親の文子が病気である事に辛くて悲しくて絶望を感じていた時生を、なにより安心させてくれたのは、文子の笑顔であった事を思い出した時生は、映美に笑ってみせるが、自然な笑顔が作れない。しかし、公園の水道が壊れてびしょ濡れになったキャベツがおかしくて笑う映美を見て、時生にも笑顔がこぼれるのだった。(第14話「安らぎ」)
悪魔は世界から「時計」を消そうと提案する。時生は、時計が消えてしまったら、時計店を営み、時計一筋だった父親はどうなるのだろうかと考えていた。文子が亡くなった日も、父親は文子に初めてプレゼントしたという腕時計を修理していて、病院に来たのは文子の死から30分後だった。文子の死を境に時生は父親と口を聞かなくなり、4年前に家を出て以来、顔を合わす事もなかった。(第15話「あの家」)
時生は、文子が亡くなる前にみんなで行った家族旅行を思い出す。母親と父親、時生、キャベツで海の見える温泉に行きたいという、文子のたっての希望だったが、旅館の手違いで部屋が取れていなかった。これが最後の旅行になるとわかっている時生と父親は、文子に海を見せたいという思いで走り回って、やっとの事でボロ宿を見つけたのだった。時生は、文子が本当に見たかったのは海ではなく、父親と時生がいっしょにいる姿であった事に気づく。そんな時生に悪魔は、次は世界から「猫」を消しましょうと告げるのだった。(第16話「家族」)
世界から猫を、キャベツを消す決断ができない時生は、キャベツの姿が見えない事に気づく。外でキャベツを見つけた時生は、映美と出くわし、そのまま彼女の家へと向かう。そして映美は、ふさぎこんだ時生に、預かっていた手紙を渡す。それは、文子が生前、時生が本当に辛くて苦しい時に渡してほしいと映美に託した手紙だった。その手紙には、まもなく死を迎える文子が、これからも時生が前を向いて生きていけるようにと、時生の素敵なところを書き連ねていた。改めて文子の愛を知って涙する時生に、キャベツは自分を消せばいいと伝える。時生は生前文子が言っていた「何かを得るためには何かを失わなくてはならない」という言葉を思い出すが、死にたくない、だけどもう何も失いたくない、という思いに苦しむ。(第17話「あなたの素敵なところ」)
時生はもう何も消さない事を決め、身辺整理を始める。これまでにいろいろなものを消してきて、自分にとってかけがえのないものや、大切だと思う人に気づく事ができて、後悔はなかった。取り引きが終了し、悪魔は消え、キャベツの言葉もわからなくなった。時生は映美を訪ねて、別れを告げる。そして、父親となかよく暮らしてほしいという文子の手紙に書かれたメッセージを胸に、実家にいる父親を4年ぶりに訪ねるのだった。(第18話「別れ」)
世界から時生が消えて1年が経ち、それまでに悪魔が消したものは世界に戻っていた。悪魔は時生の最後の頼みを受け、時生からの手紙を手渡すために時生の友人や知人を訪ねていく。その手紙には、時生が受け取った母親の手紙と同じように、相手の素敵なところがひとつひとつ書き記されているのだった。(最終話「世界から僕が消えたなら」)
登場人物・キャラクター
成瀬 時生 (なるせ ときお)
悪性の脳腫瘍が見つかり、もって余命半年と医者から宣告された26歳の青年。華奢な体つきで眼鏡をかけたイケメン。職業は郵便配達人。気弱で寡黙な性格で、酒も弱い。母親の文子を病気で亡くして以来、時生の父とうまくいかずに家を飛び出し、生まれ育った街で、飼い猫のキャベツと共に暮らしている。世界から何かを一つ消す事で1日を生き延びられるという取り引きを悪魔と結び、さまざまなものを失いながら日々を生きながらえている事に罪悪感を感じている。 悪魔の魔法によって、人間の言葉をしゃべるようになったキャベツからは「お代官様」と呼ばれる。一人称は「僕」。
悪魔 (あくま)
成瀬時生の前に突然現れた悪魔。時生と同じ顔をしているが、耳がとがっており、吸血鬼のように歯も2本、鋭く伸びている。花柄のアロハシャツに垂らしたサスペンダー、ブーツ、ハート型のサングラスを頭に乗せる、というチャラい恰好をしている。性格も軽く、よく自分が言った冗談で爆笑している。世界から何かを一つ消す事で1日を生き延びられるという取り引きを時生と結び、毎日何を消すかを選ぶ。 時生が追い詰められる姿を見て楽しむために、時生の大切なものを選んでいると言うが、時生との関係は険悪なわけでもなく、真意は不明。一人称は「アタシ」。
キャベツ
成瀬時生に飼われているオス猫。時生の母親、文子が拾って来た仔猫。柄が似ているので「レタス」と名付けられた成瀬家の猫に似ているため、「キャベツ」と名付けられた。悪魔の魔法によって、人間の言葉をしゃべるようになる。文子といっしょによく見ていたテレビの時代劇の影響で、「~でござる」のように武士のような口調で話し、時生の事を「お代官様」と呼ぶ。 一人称は「某(それがし)」。
淀川 映美 (よどがわ えみ)
成瀬時生が思いを寄せる女性。時生が大学生の頃に映画『ライムライト』を鑑賞しに映画館へ行ったところ、時生の指定席に間違えて淀川映美が座っており、それがきっかけで知り合う。時生と同じ大学の哲学科に在籍していた。映画好きで、映画関連の仕事をしたいと地元を離れていたが、戻って来て映画館に勤めている。「映画」が世界から消えたあとは、図書館勤めの本好きに変わった。 思いやりがあり、芯が強く、余命僅かという時生の告白を受け入れる。
ツタヤ
成瀬時生、淀川映美の大学時代の友人。誰とも話さず、群れず、口数が少なくとっつきにくい男性だが、大好きな映画の話題になると饒舌になる。映画好きで、好みも合ったため、時生とはなかよくなった。映画好きという事で時生が付けた「ツヤタ」というあだ名は気に入っていない。大学卒業後はレンタルビデオ屋で働いている。「映画」が世界から消える事になり、最後に観る1本を選ぶためにやって来た時生と、数年ぶりに再会する。
黒澤 (くろさわ)
成瀬時生、淀川映美の大学時代の友人。ショートカットの髪型で、元気いっぱいの女性。写真館を営む父親の影響から幼い頃から写真撮影が好きで、よく時生や映美、ツタヤのスナップショットを撮っていた。「写真」が世界から消える事になり、久しぶりに写真館を訪ねて来た時生と再会する。
溝口 (みぞぐち)
成瀬時生が小学生だった頃に担任を務めていた男性教師。よく学校でギターを弾いており、生徒達からの人気者だった。歌い声はひどく、人前で歌うのは苦手だが、卒業式で歌うを嫌がる時生を励ますために、勇気を出して歌ってくれた。しかし、卒業式の前日に交通事故に遭い、左耳の聴力を失って辞職。教師を辞めて山の中で暮らしていた。14年ぶりに時生と再会する。
文子 (ふみこ)
成瀬時生の母親。4年前に病死。心優しく、時生の父、時生、キャベツをひたすらに愛した。病気で入院中も、見舞いに来る時生に笑顔を見せ続ける。時生が辛く苦しい時に手渡してほしいと、時生への手紙を淀川映美に託す。
時生の父 (ときおのちち)
成瀬時生の父親で、文子の夫。時計店を営む。口数の少ない、実直な性格。文子の死を境に家を出ていった時生とは4年間、会っていない。時生が幼い頃は、仕事先の外国から手紙をよく送り、時生はその切手を集めていた。人に思いを届ける手紙に時生は心を惹かれ、郵便配達人になるきっかけにもなっている。
クレジット
- 原作
-
川村 元気