世界観
突如、飼い犬が人間の女性に見えるようになった仲坂康一が、飼い犬を、ペットとしても、女性としても大切にすることで、人間的に成長していく姿を描いたラブコメディ。康一が、犬を飼う初心者として、自分で飼い方を勉強したり、ペットショップ店員である鈴木リオなど周囲の人物からアドバイスを受けながら、犬についての知識を学んでいく構成となっており、「動物擬人化もの」という点以外にも、犬そのものについて学ぶこともできる「教育もの」としての側面も持つ。なお、基本的に康一にはワン子とノルンのみが人間に見えているが、動物同士の目には、それぞれが互いに人間の姿をしているように見えている。
作品構成
本作『わんこナンバーわん』は基本的に1話完結の形式で、すべての話のサブタイトルには「HELP!」や「She loves you」などザ・ビートルズの曲名が付けられている。また、1話の扉絵も、ビートルズのアルバム「アビイ・ロード」のジャケット写真をオマージュして、仲坂康一とワン子が大きく腕を振りながら横断歩道を渡るイラストとなっている。
あらすじ
サラリーマンの仲坂康一は、子供の頃に犬に嚙まれて以来、犬が大の苦手となってしまった。それでも、交際中の岩田エリカに求められて、犬を飼うことを決意したところ、犬を購入したその日にエリカに振られてしまう。仕方なく犬を自宅に連れ帰った康一だったが、なぜか家にいる時だけ、ワン子と名付けたその犬が女子高校生の姿に見え、普通の人間のように会話ができることに気づく。こうして康一とワン子の、にぎやかな日々が始まる。
登場人物・キャラクター
仲坂 康一 (なかさか こういち)
自動車会社「MA社」で、ディーラーとして働いている男性。年齢は24歳。前髪を目の上で切ったストレートショートカットヘアにしている。岩田エリカからは「康ちゃん」、仲坂光司からは「兄ちゃん」と呼ばれている。やや頼りないところもあるが、明るく心優しい性格で、仕事で担当した客からの評判が良い。小学2年生の時に犬に嚙まれて以来、犬が大の苦手だった。 ある日、恋人のエリカのために犬を飼うことを決意する。しかし、買った当日にエリカには振られてしまい、ワン子と名付けたその犬と、自宅で暮らすことになってしまう。さらに、自宅内、あるいは密室で2人きりという状況でのみワン子が女子高校生の姿に見え、会話ができることに気づく。こうして慣れない犬の世話だけでなく、女子高校生にしか見えないワン子との同居生活も、始めることになってしまう。
ワン子 (わんこ)
仲坂康一が飼うことになった犬。ノルンからは名前を正しく覚えてもらえず、「イヌ子」と呼ばれている。犬のはずだが、なぜか康一の自宅内、あるいは康一と密室で2人きりという状況でのみ、康一には女子高校生に見えている。その時は、前髪を右寄りの位置で斜めに分けたショートカットヘアに犬の耳を生やし、セーラー服を着ている。 犬種はジャックラッセルテリアだが、ガガとロデムの飼い主からは雑種呼ばわりされていた。明るくいたずら好きな天真爛漫な性格で、康一のことが大好き。本来は康一が岩田エリカの誕生日プレゼントとして買った犬だったが、康一がエリカと別れたため、康一の自宅で飼われることになる。
岩田 エリカ (いわた えりか)
仲坂康一の元恋人で、化粧品販売員として働く女性。年齢は27歳。前髪を目の上で切りそろえ、胸まで伸ばしたロングウェーブヘアにしている。明るく穏やかな性格で、容姿端麗。康一とは合コンで知り合い、1年半交際を続けていた。しかし、結婚の話をすると、康一に毎回はぐらかされており、将来に不安を感じていた。そのため、康一が岩田エリカの誕生日を間違えたのを機に、愛想を尽かして別れを告げ、会社の上司に乗り換えた。 しかし、その後も康一のことを気にしており、たびたび姿を見せている。
鈴木 リオ (すずき りお)
ペットショップ「MOKO」で働く若い女性。前髪を右寄りの位置で分けて額を全開にし、ロングヘアをポニーテールにしている。犬を買いに来た仲坂康一に、ワン子を紹介した人物。その後、康一がワン子と散歩中に公園で再会し、以後は犬が苦手な康一に、犬の飼い方についてアドバイスするようになる。親切で犬の知識も豊富なので、康一にとっては犬を飼う上での先生のような存在。 また、親しくなる過程で康一の人柄に触れ、想いを寄せるようになっていく。
西園寺 アイコ (さいおんじ あいこ)
仲坂康一のお見合い相手の若い女性。康一の勤める「MA社」をグループ傘下に持つ、「西園寺グループ」の創業者の孫でもある。前髪を目の上で切り、顎の高さで内巻きにしたボブヘアにしている。超がつくほどのお嬢様で、お見合い写真では柔和な雰囲気に見えた。しかし実際は何に対してもランク付けをし、自分以下とみなしたものには非常に冷たい態度をとる、意地悪な性格。 仕事中心の生活を送っており、恋愛に関心は薄かったが、祖父の命により、仕方なくお見合いを繰り返していた。ある日、100人目のお見合い相手として康一と知り合い、当初は康一を低ランクの人間とみなして相手にしていなかった。しかし、お見合いの場に忍び込んでいたワン子が、かつて飼っていた犬のレイラに似ていると感じ、その飼い主である康一にも関心を持つ。 やがて康一自身の人柄にも惹かれ、想いを寄せるようになっていく。
ノルン
仲坂康一の会社の上司である部長が飼っている猫。猫種は不明だが、血統書付きの高級な猫。ある日、家族旅行に行くことになった部長の頼みで、一時的に仲坂家でノルンを預かったため、康一とワン子と知り合った。猫のはずだが、ワン子と同様になぜか康一の自宅内でだけ、康一には少女の姿に見える。その時は、前髪を眉上で短く切りそろえ、お尻まで伸ばしたストレートロングヘアに猫の耳を生やし、ブラウスにミニスカート姿をしている。 高貴で気まぐれな二面性のある性格で、康一のことを気に入っており、彼の前では猫をかぶっている。
岩田エリカの上司 (いわたえりかのじょうし)
岩田エリカの上司で、同じ化粧品会社に勤める男性。前髪を額が見えるほど短く切った癖のあるショートカットヘアに、眼鏡をかけ、顎ひげを伸ばしている。仲坂康一との関係が進展せず悩んでいたエリカの相談によく乗っている。康一と交際を続けるべきか悩んでいたエリカに、結婚前提の交際を申し込んだ。これが、康一とエリカが別れる決定的な要因となった。
栗原 (くりはら)
動物病院「アニマル病院」で院長を務める、獣医の若い男性。前髪を眉上で短く切り、癖のあるショートカットヘアにしている。やや太眉で、穏やかな性格のイケメン医師。ある日、ワン子の予防接種を担当することになり、ワン子の全身を検査することになった。しかし、ワン子を人間の女性同様に思っている仲坂康一には、栗原がワン子にセクハラしているように思えて、検査中頻繁に驚かれてしまう。 これにより、何かと検査を中断させる康一に困らされることになる。
ガガ
仲坂康一とワン子がドッグランで出会った犬。犬種はレヴリエで、性別はメス。60万円もする高級な犬で、ワン子いわく、クールビューティ。ワン子の目には、ショートカットヘアに犬耳を生やした、スレンダー体型の若い人間の女性に見える。飼い主は、康一に嫌がらせをするなど嫌味な女性だが、ワン子たち犬同士は仲良くなった。
ロデム
仲坂康一とワン子がドッグランで出会った犬。犬種はレオンベルガーで、性別はメス。日本に10頭しかいない非常に珍しい犬で、ワン子いわく、スーパーグラマー。ワン子の目には、前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸まで伸ばしたロングウェーブヘアに犬耳を生やし、色黒で肉感的な体型の若い人間の女性に見える。飼い主は、康一に嫌がらせをするなど嫌味な女性だが、ワン子たち犬同士は仲良くなった。
アクア
ワン子が仲坂康一とはぐれた際、商店街で知り合った犬。犬種はトイプードルで、性別はメス。まだ幼く、ワン子の目には、ふわふわのショートカットヘアに犬耳を生やし、ボーダーの帽子にパーカーを着てショートパンツをはいた人間の少女に見えている。ワン子と同様に飼い主とはぐれており、泣いていたところでワン子と知り合った。
ママ
アクアの飼い主の若い女性。アクアからは「ママ」と呼ばれており、本名は不明。前髪を右寄りの位置で斜めに分け、胸まで伸ばしたロングウェーブヘアにしている。以前アクアとはぐれた際、偶然居合わせたワン子が一緒に遊んでなだめてくれたことに感謝している。のちに公園で偶然ワン子と再会し、仲坂康一とも知り合うこととなる。
空き巣犯 (あきすはん)
仲坂康一宅周辺で頻発している空き巣の犯人の男性。前髪を上げて額を全開にした撫でつけ髪に、眼鏡をかけ、顎ひげを生やしてスーツを着ている。ある日、康一が不在中に仲坂家に空き巣に入った。しかし、空き巣犯と知らないままに、かまってもらおうとしたワン子によって撃退された。
仲坂 光司 (なかさか こうじ)
仲坂康一の弟で、製薬会社に勤めている。前髪を目の上で切りそろえ、顎の高さで切り揃えた前下がりのボブヘアにしている。一見女性のように可愛らしい雰囲気だが、気に入った相手をいじめるのが好きなサディスティックな性格。ある日、仕事の都合で康一の住む地域を訪れ、康一宅で食事することになり、ワン子と出会う。その際にワン子を気に入り、意地悪をして困らせる。
ほのか
仲坂康一とワン子が海で知り合った少女。前髪を目の上で切りそろえ、ロングヘアを高い位置でツインテールにしている。ワン子を気に入って康一に声をかけ、ユナも交えて一緒に過ごすことになる。現在恋人募集中で、康一に積極的にアプローチするが、その正体は、康一の持ち物を狙った二人組の泥棒。
ユナ
ほのかの友人で、仲坂康一とワン子が海で知り合った少女。前髪を右寄りの位置で斜めに分けた、癖のあるショートカットヘアにしている。明るく活発な性格で、一人称は「ボク」。ほのかが康一に声をかけたことで知り合い、ワン子も含めて4人で一緒に過ごすことになる。その正体は、康一の持ち物を狙った二人組の泥棒。
師匠 (ししょう)
仲坂康一とワン子が散歩中に出会った迷い猫。猫種は不明で、非常に太っており、唇が厚い。本名も性別も不明。ワン子からは動きが機敏で強そうに見えるため、「師匠」と呼ばれているが、飼い主からは「バカネコ」と呼ばれている。ワン子の目には、猫の着ぐるみをかぶった人間の姿に見えている。ある日、飼い主とはぐれてしまい、「拾ってください」と書かれた段ボールの中に入っていたところを、康一とワン子に発見されて知り合った。 太った容姿に反して非常に機敏で、人間が落とした焼き鳥をキャッチして、そのまま食べることができるほど動きが素早い。そこでワン子は、師匠に弟子入りすれば、キングにも勝てるのではないかと考えた。
キング
仲坂康一とワン子の知り合いの犬。犬種はマスティフで、性別は不明。また、擬人化した姿は描かれない。非常に大柄でがっしりしており、虎にも勝てるほど喧嘩が強い。そのため非常に威張っており、ワン子に対しても、顔を合わせてはすぐに意地悪していた。しかし師匠には一撃で倒されてしまった。
レイラ
西園寺アイコの家で、かつて飼われていた犬。犬種はジャックラッセルテリアで、首に花柄のスカーフを巻いている。ワン子の目には、前髪を目の上で切り、ロングヘアをポニーテールにして犬耳を生やした、胸が大きくスタイルの良い若い女性に見える。西園寺アイコの祖父とは、相棒と言えるほど仲が良く、まるで会話ができるかのように通じ合っていた。 しかし、3年前に突然姿を消してしまい、以来アイコの祖父もすっかり落ち込んでしまっている。実際はすでに亡くなっており、仮死状態になったワン子が一時的に迷い込んだ死後の世界で出会うことになる。
西園寺アイコの祖父 (さいおんじあいこのそふ)
西園寺アイコの祖父で、レイラの飼い主。仲坂康一の勤める「MA社」をグループ傘下に持つ、「西園寺グループ」の創業者でもある。前髪を眉上で短く切ったショートカットヘアに、口ひげとあごひげを長く伸ばしている。レイラが行方不明になってからふさぎ込んでおり、それを案じたアイコに、ワン子をレイラであると引き合わされた。 実は康一と同様に犬が人間の姿に見える特殊な目を持ち、すぐにワン子とレイラが別の犬であることを見抜いた。しかし、アイコとワン子の気持ちを受け入れ、だまされたふりをして一緒に過ごすことになる。
部長 (ぶちょう)
自動車会社「MA社」で、部長を務める中年の男性。本名は不明で、仲坂康一からは「部長」、飼い猫であるノルンからは「パパ」と呼ばれている。頭が禿げ上がって目が細く、やや太目の体格。面倒ごとは康一に押し付ける傾向があり、たとえばノルンを無理やり康一にあずからせたり、西園寺アイコとのお見合いを勝手に取り付けたりする。
ワン子の母親 (わんこのははおや)
ワン子の母親。犬種はジャックラッセルテリア。ワン子の目には、前髪を目の上で切り、胸まで伸ばしたロングヘアの若い人間の女性に見える。「木村」というジャックラッセルテリア専門のドッグブリーダーの家で暮らしており、以前は東京都にいたが、現在は埼玉県に引っ越している。ワン子だけでなく、非常にたくさんの子供を産んでおり、ワン子とは産まれてすぐ別れてしまった。
ワン子の弟 (わんこのおとうと)
ワン子の弟。犬種はジャックラッセルテリア。ワン子の目には、前髪を目の上で切り、癖のあるショートカットヘアの幼い少年に見える。母親とともに「木村」というジャックラッセルテリア専門のドッグブリーダーの家で暮らしている。ワン子と血が繋がっているが、ワン子は産まれてすぐ木村家を去ったため面識がない。ある日、母親に会いに、仲坂康一とともに木村家を訪れたワン子から、母親への手紙を預かることになる。
岩田 モモカ (いわた ももか)
岩田エリカの妹。前髪を眉上で切りそろえ、目の高さで内巻きにしたボブヘアにしている。結婚が決まっており、ウェディングドレスをエリカに預かってもらい、エリカの家に保管している。しかし、それを知った仲坂康一は岩田モモカではなくエリカが結婚するのだと思い込み、落ち込んでしまう。
その他キーワード
エリカのお土産のフィギュア (えりかのおみやげのふぃぎゅあ)
岩田エリカが、仲坂康一に贈ったフィギュア。エリカがアメリカ旅行の際に見つけたもので、帽子をかぶり、首にスカーフを巻いた、首が長い少年の形をしている。康一がエリカと別れた後も仲坂家で大切にされていたが、仲坂家の窓から偶然入り込んだ鳩に破壊されてしまった。