あらすじ
第1巻
カレリア学園に通う侯爵令嬢のメアリ・アルバートはある日、唐突にこの世界が自分が前世にプレイした乙女ゲーム「ドキドキラブ学園~恋する乙女と思い出の王子~」の世界であると気づいた。同時に、自分がゲームにおいて主人公をいじめていた悪役令嬢であることも思い出したメアリは、従者であるアディにそのことを説明し、朗らかに「アルバート家の没落」を目指すと宣言する。呆気にとられるアディを引き連れ、メアリは没落する手段として、ゲームの主人公であったアリシアをいじめることにする。二人は、庶民の出でありながら、カレリア学園に転校してくるアリシアを待ち構えていたが、彼女を一目見たアディは金髪に紫色の瞳という特徴から、ゲーム中ではシナリオ終盤まで明らかにされない、王族の一員であるという真実を悟る。ゲームではオープニングに過ぎない時点で、重大な伏線に気がついてしまったアディをたしなめながらアリシアの前に姿を現したメアリは、開口一番、人を下に見たあいさつで彼女を威嚇する。その態度に萎縮するアリシアだったが、差しせまった事情からしぼり出すような声でメアリに学生寮の受付の場所を尋ねる。アリシアの様子に思わずアディと顔を見合わせたメアリは、うっかり最短で受付へと向かう道筋を教えてしまう。アリシアは破顔一笑すると、感謝の言葉とともに受付へと走り去っていく。メアリは呆然とその様子を見送りながら、ちゃんと悪役っぽく振る舞えたかと自問自答するが、従者のアディからにべもなく、単に親切な人だったと指摘されるのだった。
第2巻
両親により、幼なじみの貴族令息であるパトリック・ダイスと婚約を結ばされたメアリ・アルバートだったが、アリシアに思いを寄せていたパトリックに、アリシアと共に生きたいと宣言されてしまう。もとより二人が親しくしていることを知っていたメアリは、乙女ゲーム「ドキドキラブ学園~恋する乙女と思い出の王子~」のシナリオどおりに進行していると確信し、悪役令嬢らしく振る舞いながらも、彼女たちが恋人同士になれるように後押しする。その後、婚約解消を父親に申し出たメアリは、案の定といった様子で「彼ならひきとってくれると思ったのに」と返す父親のあんまりな態度に意気消沈してしまう。思いがけずへこんだメアリだったが、自室で膝を抱えていたところ、従者のアディから深夜にもかかわらず人づてに呼び出される。従業員寮にあるアディの部屋を訪れたメアリは、そこでアディに、なぜ悪役をやろうと考えているのかという疑問をぶつけられる。冗談でごまかそうとしたメアリだったが、アディの真剣な瞳に見つめられると観念し、「悪役令嬢なんてもともと興味なかった」とその胸の内を明らかにする。
関連作品
小説
本作『アルバート家の令嬢は没落をご所望です』は、さきの小説『アルバート家の令嬢は没落をご所望です』を原作としている。こちらは、さきが「小説家になろう」に投稿していた同名小説に改訂を加えたもので、2015年3月31日に角川ビーンズ文庫より第1巻が発売された。
メディアミックス
ボイスコミック
コミックス第2巻の発売を記念して、KADOKAWAオフィシャルチャンネルより『【ボイスコミック】『アルバート家の令嬢は没落をご所望です』【コミックス第②巻発売記念】』が、YouTubeで2019年12月12日より公開されている。コミックス本編の内容に声をあてた動画となっており、メアリ・アルバートをファイルーズあい、アディを細谷佳正が演じている。また、本動画にキャラクターコメンタリーを付けた別バージョンの動画『【キャラコメンタリー付き】『アルバート家の令嬢は没落をご所望です』【ボイスコミック】』も同日に公開されており、そちらでは杉田智和が担当する、アディの兄のロベルトによるコメンタリーが収録されている。
登場人物・キャラクター
メアリ・アルバート
カレリア学園高等部に通う3年生の女子で、アルバート公爵家の令嬢。身長は156センチ。あらゆる美容師が直そうとしても直らない、ドリルのような縦ロールのくせ毛をしている。カレリア学園に通っていたある日、この世界が前世にプレイしていた乙女ゲーム「ドキドキラブ学園~恋する乙女と思い出の王子~」の世界であることを思い出し、同時に自分がそのゲーム内で主人公をいじめ、没落する運命にある悪役令嬢のメアリ・アルバートであると気がつく。メアリは、その事実を受け入れるとあろうことか「アルバート家の没落」を目指して活動を始める。そして没落する手段として、「ドキドキラブ学園~恋する乙女と思い出の王子~」のシナリオをなぞろうと考え、カレリア学園に転校してきたゲームの主人公、アリシアをいじめようと画策する。しかし、空回りする性分が災いして逆にアリシアになつかれる結果となってしまう。好物が海鮮丼やコロッケであったり、学園まで時間短縮のために自転車登校していたりと、由緒正しい公爵家の令嬢としては破天荒なところがあるが、幼なじみのパトリック・ダイスや従者のアディにはそんなところも熟知されている。令嬢らしからぬとその素行に眉をひそめる人物がいる一方、アリシアたちのようにその性格を好ましく思う人物も多くいる。将来の夢は没落して北の大地に送られてから、焼き鳥丼屋を開いて一儲けすること。現在欲しいものは従者であるアディの解雇状で、何年にもわたって求め続けている。家族には両親のほか、海外で暮らしている兄がいる。
アディ
メアリ・アルバートの従者を務める青年。メアリと共に生徒としてカレリア学園に通っている。身長は185センチと大柄で、現在も伸びている。その高身長から、メアリの後ろに立つと圧がすごいという理由で、ふだんはメアリのとなりを歩いている。しかし、従者と主人が並び立って歩いているため、周囲からは奇異の目で見られている。ある日突然、主人であるメアリからこの世界は「ドキドキラブ学園~恋する乙女と思い出の王子~」という乙女ゲームの世界だと告げられ、彼女の目指す「アルバート家の没落」という目標の手伝いをさせられることとなる。アディ自身もまた、乙女ゲームの登場人物だが攻略対象ではなく、悪役令嬢であるメアリの従者という役割だった。だが、「ドキドキラブ学園~恋する乙女と思い出の王子~」の続きが描かれたファンディスク「もっと! ドキドキラブ学園」では攻略対象に昇格しており、ゲームの主人公であるアリシアと結ばれるルートが存在している。実家がアルバート家に代々仕える家柄で、昔からメアリに従者として仕えており、メアリの奇行には慣れきっている。そのため気心も知れており、ふだんからお互いに軽口を叩き合えるほどの仲で、身分の違いはあるもののメアリのことを憎からず思っている。同じく、アルバート家に執事として仕えるロベルトという兄がおり、そちらはメアリの兄に従者として仕えている。
アリシア
カレリア学園に転校してきた庶民出身の少女。身長は162センチ。メアリ・アルバートが前世でプレイしていた乙女ゲームにしてこの世界でもある、「ドキドキラブ学園~恋する乙女と思い出の王子~」の主人公。金髪に紫色の瞳の持ち主で、これは王族の証なのだが、不自然なことに周囲にはまったく気づかれていない。例外的に乙女ゲームの知識を持っているメアリは最初からそのことを知っており、この世界について彼女に知らされたアディもまた、アリシアが王族の関係者であると気がついた。「ドキドキラブ学園~恋する乙女と思い出の王子~」の主人公として、設定上は「平凡な少女」ということにされているが、外見はアディが思わず「かわいい」と口にするほどの美少女。素直な優しい性格で、カレリア学園の高貴な文化にとまどいながらも周囲への気遣いを忘れない。乙女ゲームの主人公だった宿命からか、この世界でもパトリック・ダイスをはじめとした攻略対象のキャラクターたちと親交を深めている。反面、メアリに対しては最初の出会いを通して親しみを抱いており、ゲームのシナリオでは険悪な仲だったにもかかわらず、この世界では親友と言って差し支えないほどになついている。
パトリック・ダイス
カレリア学園高等部に通う3年生の男子で、生徒会の会長を務めている。メアリ・アルバートが前世でプレイしていたという乙女ゲームであり、この世界でもある「ドキドキラブ学園~恋する乙女と思い出の王子~」の登場人物。身長は180センチ。黒髪に眉目秀麗な容貌を持つ。ツンドラとも評される冷徹な態度から非常に人気の高いキャラクターだった。メアリの実家であるアルバート家と家格を同じくする名門ダイス家の子息で、メアリの幼なじみ。またメアリに仕えている従者のアディとも昔から面識がある。カレリア学園に転校してきた庶民出身の少女にして、乙女ゲーム「ドキドキラブ学園~恋する乙女と思い出の王子~」の主人公でもあるアリシアと出会い、次第に心惹かれていく。一方、乙女ゲームにおける悪役令嬢のメアリとは素行や性格がまったく異なる現在のメアリに対しては、本来のシナリオとは違い、幼なじみとして好意的に接している。家と両親の思惑からメアリと婚約を結ばされた際にはアリシアへの思いから婚約を破棄するが、アリシアと出会っていなければメアリが最善の結婚相手だったと断言していた。
場所
カレリア学園 (かれりあがくえん)
メアリ・アルバートたちが通う学園。王侯貴族の子女たちが多く通う由緒正しい学園であり、それに準じた格式を持つ。食堂のメニューも高級志向となっており、注文を受けてから料理を提供するシステムになっている。値段も相応に高く、一般庶民がおいそれと手を出せる値段には設定されていない。しかし、入学したばかりの頃のメアリが手を回したことで、メアリの好物である海鮮丼をはじめとした異国の料理が加えられている。
その他キーワード
ドキドキラブ学園~恋する乙女と思い出の王子~ (どきどきらぶがくえんこいするおとめとおもいでのおうじ)
メアリ・アルバートが前世でプレイした大人気乙女ゲーム。略称は「ドラ学」。ゲーム内容は、庶民出身である主人公のアリシアが、王侯貴族の子女たちが通うカレリア学園に通うことになり、そこで出会ったイケメンたちと恋に落ちるというストーリーになっており、身分差をテーマとしている。メアリはある日唐突に、自分の生きる世界が前世にプレイしたこのゲームのものであり、自分がゲームの登場人物であり、主人公のアリシアへ事あるごとに嫌がらせをする悪役令嬢であると思い出した。人気作ということもあって続編やファンディスクが存在している。
もっと! ドキドキラブ学園 (もっと どきどきらぶがくえん)
乙女ゲーム「ドキドキラブ学園~恋する乙女と思い出の王子~」のファンディスク。略称は「もラ学」。前作の続きを描いたストーリーとなっており、王族であると判明したアリシアが前作で誰とも結ばれていなかったら、という「もしも」の世界が描かれる。「ドキドキラブ学園~恋する乙女と思い出の王子~」では攻略対象のキャラクターではなかったアディが攻略キャラとして昇格している一方、彼の雇い主であった悪役令嬢のメアリ・アルバートは没落後に北の大地へ送られたこととなっており、いっさい出番が存在しない。
巨乳学園2淫乱先生と放課後個人授業
アディが所有していた本。昔、アディが主人であるメアリ・アルバートに借りた本を返す際に、誤ってこの本を返した事件があった。タイトルのとおり濡れ場が多数ある内容で、思いがけず中身を見てしまったメアリは4時間半にわたって熟読することとなった。
クレジット
- 原作
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さき
- キャラクター原案
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双葉 はづき
書誌情報
アルバート家の令嬢は没落をご所望です 6巻 KADOKAWA〈B's-LOG COMICS〉
第1巻
(2019-03-01発行、 978-4047355088)
第3巻
(2020-12-01発行、 978-4047363922)
第5巻
(2023-04-01発行、 978-4047374195)
第6巻
(2024-04-01発行、 978-4047378858)