あらすじ
第1巻
異世界を舞台にしたBL小説「高潔の王」に登場する王女のオクタヴィアに転生した田澤麻紀は、兄で第一王子でもあるセリウスがシルという少年を恋人としたため、次期国王の世継ぎを将来的に産まなければならないという問題に直面していた。「高潔の王」においてセリウスとシルの世継ぎ問題の解決を担当するオクタヴィアは、ご都合主義的な王女だった。しかし、前世の記憶を持つ一人の女性としてその立場に甘んずることができずに、煩悶する内にセリウスに諫言(かんげん)してしまった彼女は、セリウスに投げかけられた「愛する者のいないお前にはわかるまい」という言葉に思わず、自分にも愛する者がいると応じてしまう。さらには近いうちに紹介するとまで明言してしまったため、急遽、偽の恋人を探すことになったオクタヴィアは、護衛の騎士であるクリフォード・アルダートンを引き連れて男漁りのために、一路城内の練兵場を目指すのだった。
関連作品
小説
本作『私はご都合主義な解決担当の王女である』は、まめちょろの小説『私はご都合主義な解決担当の王女である』を原作としている。原作小説版は、まめちょろが「小説家になろう」に投稿していた『私はご都合主義解決担当の王女である』に改訂や書き下ろしを加えたもので、2017年10月13日に第1巻がビーズログ文庫から発売された。
登場人物・キャラクター
オクタヴィア
エスフィア国の王家に生まれた王女。兄弟として第一王子にして兄のセリウスと弟のアレクシスがいるが、実子はアレクシスのみで本来は従兄弟の関係にあたる。男性同士で恋人になるのが主流となっているエスフィア国で、兄のセリウスも例に漏れずシルという少年を自らの恋人としていた。そのため、将来的に兄が国王となった際に自分の産んだ子供を養子として差し出す必要があり、世継ぎ問題が自分の双肩へと降りかかっている。別世界において「田澤麻紀」という名で過ごしていた18年間の記憶があり、この世界が当時はまっていた異世界を舞台にするBL小説「高潔の王」の世界であることを知っている。そのため、自分の作中での役回りが、物語の主人公であるシルとセリウスの恋を邪魔する世継ぎ問題を解決するためのご都合主義的な存在であることも理解しており、当事者となってしまった今では悩みの種となっている。自分も恋人が欲しいと、オクタヴィア自身の護衛を務めるイケメンの騎士たちに事あるごとに恋心を寄せていたが、彼らが数か月も持たないうちに新しい恋人を作っては護衛を辞めていくために不毛と気づき、恋人探しをやめている。一方で現在の護衛の騎士であるクリフォード・アルダートンに対しては珍しく長続きしていることもあり、信頼を寄せている。
クリフォード・アルダートン
アルダートン伯爵家に養子として引き取られた青年。数か月前よりオクタヴィアの護衛の騎士として務めている。1年前のサザ神教とエスフィア国とのあいだの戦争に参加していたと噂されており、敵味方を問わずに殺した姿から「地獄(オンガルヌ)の使者」と呼ばれ、恐れられている。しかし、オクタヴィアは数多くある候補者から適当に選出したため、そのことに気がついていない。「従」と呼ばれる少数戦闘民族で、自分のことを重用して信頼を寄せるオクタヴィアのことを、民族のしきたりに則りクリフォード・アルダートン自身の「主」として認め、どんなに離れていようと相手の危機を察知する「徴」を結んでいる。本来であれば生涯に一人しか「主」を持たない民族だが、過去の因縁からオクタヴィアは二人目の「主」となっている。
シル
男爵家出身の男性。エスフィア国第一王子であるセリウスに寵愛される少年で、自他共に認める恋人である。線の細い見た目をした麗しい人物で、前世のオクタヴィアにとっては推しキャラクターだった。セリウスとは相思相愛の仲だが、それが原因で世継ぎ問題が発生しており、このままでは自分の産んだ子供を養子として差し出さなければならなくなるオクタヴィアの心を悩ませている。華奢な見た目に相反して、武術も達者で、シル自身を狙う刺客を簡単に返り討ちにする腕前を持つ。
セリウス
エスフィア国第一王子。オクタヴィアの義理の兄で、本来は従兄弟の間柄にある。エスフィア国の王位継承権第一位だが、男色の流行する例に漏れることなく、セリウス自身もシルという少年を恋人にしている。白昼堂々、城内で愛を語らっていたところに偶然通りかかったオクタヴィアに情事を目撃され、世継ぎ問題について諫言される。その際、シルのことを大事に思うあまり、売り言葉に買い言葉でオクタヴィアに「愛する者のいないお前にはわかるまい」と告げたことで、のちの騒動へと発展していく。幼い頃はオクタヴィアのことを大事に思う少年だったが、現在は当時に関する記憶を失っており、オクタヴィアのことを嫌っている。恋人のシルへと度々差し向けられる刺客が、依頼人の名をオクタヴィアと告げることも相まって、警戒を深めている。
アレクシス
エスフィア国の王子で、オクタヴィアの弟。国王の過ちから生まれた子で、国王であるイーノック・エスフィアの唯一実子にあたる。そのため、オクタヴィアやセリウスとは兄弟だが、本来の血縁関係は従兄弟の間柄である。その出自から王位を継がせられることはないと見なされており、結果としてセリウスとオクタヴィアを巡る王位継承問題の遠因となっている。柔らかな髪に華奢な見た目をしており、城に勤める貴族の男たちから性的な意味で好意を寄せられている。しかし、エスフィア国の貴族にしては珍しく男色の気はなく、逆に男嫌いである。周囲に対しては冷徹な視線と態度で振る舞っているが、思いを寄せている姉のオクタヴィアに対しては年相応にかわいらしい一面を見せる。姉の護衛の騎士としては珍しく長続きしているクリフォード・アルダートンに対して、その氏素性もあわせて警戒心を抱いており、事あるごとに対立している。姉のオクタヴィアからは弟として愛されており、「アレク」という愛称で呼ばれている。
イーノック・エスフィア
エスフィア国の現国王にしてオクタヴィアの父親。ほかにセリウスとアレクシスという息子がいるが、三人の子供のうちで実子なのはアレクシスのみである。エドガーという男性を伴侶として定めているため、王妃を娶っていない。国王であることからエスフィア国の歴史に非常に詳しい。また、王にしか伝わっていない、かつて実在しながらも、エクスフィア国の歴史上に存在しないことになっている女王についても知っている。女王が悲惨な結末を迎えたことを知っているため、そのことを含めてオクタヴィアのことを心配しており、オクタヴィアが公言する恋人の問題について、行動を制限するつもりはないと明言している。また、オクタヴィアの護衛の騎士であるクリフォード・アルダートンとも面識がある。
エドガー
エスフィア国の国王であるイーノック・エスフィアの伴侶の男性。オクタヴィアたち兄妹に取ってもう一人の父親ともいえる存在。一夫一妻を主とするエスフィア国であるため、イーノックにとって唯一の伴侶となっているが、そのことがかつて、イーノックが公爵家の姫君とのあいだに過ちから産ませたアレクシスの立場を難しいものとしている。
エレイル・バーン
城に勤める兵士の青年。バーン子爵家の関係者。練兵場に偽の恋人候補を見繕いに来たオクタヴィアに向かって誤って剣を飛ばしてしまい、一悶着を引き起こした。オクタヴィアの取りなしによって問題にはならなかったが、見返りとして反王家派である兄のルスト・バーンと会わせるようオクタヴィアに頼まれたことから、裏で手引きをしている。
集団・組織
純愛貴族派
エスフィア国の貴族達を二分する派閥の一つ。自らの愛する男性との愛を貫くために、女性との結婚をしない貴族派閥で、世継ぎ問題に関しては親類や姉、妹の子供を養子として引き取り、育てるという立場を取る。
不倫貴族派
エスフィア国の貴族達を二分する派閥の一つ。自らの愛する男性はあくまでも愛人として囲い、表面上は女性と結婚する派閥。一夫多妻の許されていないエスフィア国であるため、不倫と見なされている。
場所
エスフィア国
オクタヴィアたちの暮らす国。父親のイーノック・エスフィアが国王を務めている。伝統的に男色が横行する国柄をしており、貴族の男子の大半が男の恋人を持っている。王宮内に残された伝承や恋物語も男色のものが多いほどで、反して王女の登場する恋物語は極端に少ない。このような国柄であるため貴族家の当主と恋人のあいだには世継ぎが産まれず、結果として当主の姉や妹、親類からの養子を実子として育て後継者とすることが多くなっている。1年前にサザ神教とのあいだに戦争を行った。
その他キーワード
従 (じゅう)
「高潔の王」の世界に存在する少数戦闘民族。身分に関係なく、生涯にわたって仕えるべき「主」を選び、互いの合意のもとに「徴」と呼ばれる特別なつながりを結ぶという仕来りがある。魔法や異能力といった要素のない「高潔の王」の世界にあって唯一ともいえる不思議な力を持つ民族で、「徴」を結んだ「主」がどんなに離れていても危機を察知することができる。その存在は絶滅危惧種並に少なく、オクタヴィアの護衛の騎士であるクリフォード・アルダートンは数少ないその一人である。
高潔の王 (こうけつのおう)
異世界を舞台にした大人気BL小説。オクタヴィアが前世において「田澤麻紀」として生活していた際にはまっていたもので、田澤麻紀が転生した異世界。男爵家に生まれた少年のシルを主人公とした物語で、エスフィア国の第一王子であるセリウスとの運命的な出会いと、それからの恋愛が描かれる。作品が完結する前に田澤麻紀は命を落としてしまったため、作品の結末がどうなるのかを知らないでいる。オクタヴィアは作中に登場するセリウスの妹で、シルとセリウスの恋愛を応援するために自分の子供を養子として差し出すという、世継ぎ問題をご都合主義的に解決するための存在である。
クレジット
- 原作
-
まめちょろ
- キャラクター原案
-
藤 未都也
書誌情報
私はご都合主義な解決担当の王女である 5巻 KADOKAWA〈フロース コミック〉
第1巻
(2020-02-05発行、 978-4040643083)
第2巻
(2020-10-05発行、 978-4040649948)
第3巻
(2021-07-05発行、 978-4046805867)
第4巻
(2022-03-04発行、 978-4046812636)
第5巻
(2022-12-05発行、 978-4046820013)