概要・あらすじ
国民に死の恐怖感を植え付け、生命の価値の再認識させることで国力を高めるために施行された国家繁栄維持法。小学校入学と同時に、約0.1%の確率で18~24歳の指定時期に死亡するナノカプセルを注入された若者へ、死亡予告証通称逝紙を配る逝紙配達人である藤本賢吾の目線を通して生きることの意味を問う。
登場人物・キャラクター
藤本 賢吾 (ふじもと けんご)
武蔵川区役所戸籍課所属の逝紙配達人。黒髪で仕事中は背広。25歳。鼻の頭をかく癖がある。仕事には誇りと同時に疑問も抱く。退廃思想主義者として国繁警察に連れていかれるのを恐れて普段は自らの仕事への疑問を口に出すことは少ないが、信頼している上司である石井誠一郎やセラピストの久保七湖にはつい愚痴を漏らしている。 対象者や遺族に肩入れしてしまう性質のため、対象者の経歴を読み込むのが好きではない。
石井 誠一郎 (いしい せいいちろう)
主人公である藤本賢吾と同じ武蔵川区役所戸籍課に勤めている藤本の上司で、逝紙の配達を彼に指示する役割を担う。また自身も以前は逝紙配達人を務めていたこともあり、藤本の仕事の愚痴の相手になることも多いが、その都度退廃思想者として誤解されないよう彼に忠告をしている。
久保 七湖 (くぼ ななこ)
『イキガミ』に登場する人物。逝紙によって死亡通告を受けた人たちの心を落ち着ける国繁サービスセンターの女性臨床心理士で、のちに主人公である藤本賢吾の勤める武蔵川区役所内に設置されたカウンセリングルームで勤務することになる。藤本にとっては度々相談に乗ってもらい、自らの仕事を理解してもらえる憧れの存在であったが、時折国繁に反対するような不穏な言動を見せる。 その正体は国繁を打倒し国家の再構築を目時とする新生革命ユニオンの中枢メンバーの一人であった。その後藤本に通報され、思想矯正施設に収監されてしまう。釈放後は区内の花屋で働いている。
鹿賀 咲月 (かが さつき)
久保七湖連行の一件以降、主人公である藤本賢吾が務める武蔵川区役所内に設けられた思想監査室の女性主任。国繁を肯定する態度が見えてこない藤本を特に注視している。藤本に尾行をつけているような節があったが、鹿賀には逝紙配達人だった夫が死亡者遺族の逆恨みで階段から突き落とされ重傷を負ったという過去があり、実際には藤本が同じような被害を受けないように密かに護衛官を配置していたのであった。
集団・組織
厚生保健省 (こうせいほけんしょう)
『イキガミ』に登場する省庁で国繁予防接種に用いる注射器の製造から死亡予定者のデータ管理、予防接種の実施や逝紙の発行まで、国家繁栄維持法関連の業務のほとんどを行っている。
国繁警察 (こくはんけいさつ)
『イキガミ』に登場する組織。国家繁栄維持法を滞りなく施工するために、国繁法に反対する反乱分子を粛清する組織で厚生保健省管轄下の秘密組織。制服を着た職員も存在するが、私服の捜査官が日常社会のあらゆるところで一般の国民に擬態して紛れ込み、常に国民を監視している。摘発された退廃思想者は思想矯正施設に連行され、再教育プログラムによって洗脳される。 場合によっては国繁予防接種に用いられるナノカプセルを注入することもある。
新生革命ユニオン (しんせいかくめいゆにおん)
『イキガミ』に登場する組織。反国繁法主義を掲げる地下組織で主人公藤本賢吾のあこがれの存在であった久保七湖も所属していた。インターネット裏サイトや若者同士のコミュニティを通じで構成員の獲得をしている。
場所
東亜人民連邦 (とうあじんみんれんぽう)
『イキガミ』に登場する国家。主人公藤本賢吾達の暮らす国はかつて東亜人民連邦の九番目の属国であった。藤本達の住む国の領空を度々侵犯したり、領土問題を主張するなど藤本達の国との外交関係は芳しくない。
同盟国 (どうめいこく)
『イキガミ』に登場する国家。かつて主人公藤本賢吾達の暮らす国との戦争で勝利した際に、国家繁栄維持法も盛り込まれた安全負担条約という軍事協定を締結している。軍隊を持たない藤本達の国は膨大な土地と資金を提供する代わりに同盟国に国防のすべてをゆだねている。
その他キーワード
国家繁栄維持法 (こっかはんえいいじほう)
『イキガミ』に登場する法律。1000人に一人の割合で国民を18歳から24歳の間に突然死させることで、平和な社会に生きる国民に死への恐怖感を植えつけると共に、生命の価値を再認識させることを目的としている。生産性の向上や治安に貢献しているといわれているが、国繁法関連に至っては言論の自由や思想・良心の自由が保障されていない為、国繁法の実際の効果は定かではない。 国民を無差別にロシアンルーレットのように死亡させていくので、国民の一部からは反感を持たれているが、それを露わにすれば国繁法に則って国繁警察に連行されてしまう。
国繁予防接種 (こくはんよぼうせっしゅ)
『イキガミ』に登場する主人公藤本賢吾達の国で行われる予防接種。すべての国民に受けることが義務付けられ、小学校入学時に実施される。予防接種に用いられる注射器の中には通常のワクチンの他に、1000本中一本の割合でナノカプセルが含まれており、ナノカプセル入りのワクチンを投与された国民は18歳から24歳までの決められた時間に突然死をしてしまう。
逝紙 (いきがみ)
『イキガミ』に登場する政府発行書類。国繁法に則り死亡する国民に対し、死亡の24時間前に逝紙配達員によって届けられる。戦時中の日本における徴兵召集令状である赤紙がモデルであると思われる。死亡予告証は死亡までの24時間に限り、公共施設や国繁加盟店を無料で利用できるチケットにもなる。また逝紙が届いて死亡した国民は周りから英雄視される。
退廃思想 (たいはいしそう)
『イキガミ』に登場する思想。国家繁栄維持法に反逆した国民やその家族は周囲から退廃思想主義者の烙印を押され、社会的に迫害を受ける。
国繁遺族年金 (こくはんいぞくねんきん)
『イキガミ』に登場する制度。逝紙が届き、死亡してしまった国民の遺族に支給される。しかし国繁死対象者が自暴自棄になって犯罪を犯してしまうと遺族の受給資格は失われ対象者の罰を遺族が代わりに受けることになっている。刑事責任は問われないものの量刑に見合った賠償金を払う必要がある上、社会的に退廃思想主義者の烙印を押され、その地域には住めなくなってしまう。