概要・あらすじ
雨の降りしきる夜、ひき逃げ事故に遭ったアカネは、救急車で実日会病院へと搬送され、緊急手術を受けることになった。手術は外科医の多岐川政彦の執刀のもとで行われ、無事に成功。しかし、意識を取り戻したアカネは、事故の後遺症で自分の名前以外の記憶を失っていた。怪我が完治するまで病院に入院することになったアカネは、多岐川をはじめとする優しい病院のスタッフや、相部屋になった少年・拓人らとコミュニケーションを交わしつつ、徐々に元気を取り戻していく。
順調に見えたそんな入院生活の中、ある日看護師の桐島いつきが、遺書を遺して飛び降り自殺をしてしまう。桐島の自殺には何か裏があるのではないかと疑念を抱いたアカネは、独自に事件の真相を解明するために調査を始める。
登場人物・キャラクター
アカネ
推定20歳前後の記憶喪失の女性。茶髪の長い髪を左右に分けてポニーテールにしており、フリルや刺繡がいたるところに施されたロリータファッションに身を包む。ひき逃げ事故に遭い、実日会病院で緊急手術を受けて、なんとか一命を取り留めた。しかし、事故の後遺症で自分の名前以外の記憶を失っている。またこの時、長い髪は手術のため短く切られてしまった。 怪我の影響で未だ1人で立ち歩くことができず、車椅子に乗っている。頭脳明晰で、話を聞いただけで、まるでその場に居合わせたかのように状況を把握をすることができる。疑問に思ったことは、はっきりと答えが出ないと気がすまない性格。看護師の桐島いつきの自殺に納得がいかず、独自に事件を調べ始める。
宮本 伸一 (みやもと しんいち)
実日会病院の研修医。黒髪を短くしている26歳の青年。ひき逃げ事故に遭ったアカネの緊急手術を執刀した多岐川政彦のオペに、助手として参加した。多岐川のオペの手腕を尊敬し、本人には言ってはいないが、個人的に「神の手」と呼んでいる。まだオペの経験が浅いので、緊張することも少なくない。勉強熱心で真面目な性格をしており、多岐川を慕って日々医者になるための研修を行っている。 その結果、多岐川から医者としての将来を期待されるに至っている。
多岐川 政彦 (たきがわ まさひこ)
実日会病院の外科医。背の高い39歳の男性。髪をオールバックにして整髪料で整えており、黒いフレームのサングラスをかけ、鼻の下と顎に無精ひげを生やしている。ひき逃げ事故に遭ったアカネの緊急手術を執刀した。院内では優秀な外科医として有名で、オペの手際、判断力、すべてにおいて優れた能力を持ち、研修医の宮本伸一に尊敬されている。 医者という仕事は人の命を扱うため、患者のために心血を注ぐのは当たり前だという考え方の持ち主。患者を労わり、誰に対しても分け隔てなく接する、その優しい人柄から、院内のスタッフ、患者問わず評判が高い。最近大変なオペが続いていることで、宮本から体調を心配されている。
米山 志保子 (よねやま しほこ)
実日会病院の看護師長を務める49歳の女性。黒髪をボブヘアの髪型にしている。ひき逃げ事故に遭ったアカネの緊急手術を執刀した多岐川政彦のオペに、助手として参加した。長年の経験から、オペの助手としても優れた能力を持ち、命に関わるような大きなオペでも速やかかつ冷静に対処する。そのため、多岐川からの信頼も厚い。 遺書を遺して自殺をした桐島いつきの上司にあたる。
桐島 いつき (きりしま いつき)
実日会病院の看護師を務める25歳の女性。茶髪の長い髪を後頭部でハート型の髪留めで1つに束ねている。米山志保子の部下で、まだまだ看護師としての経験は浅いが、真面目で明るく、その人柄から患者からの評判が良い。しかし、深夜の当直当番になった際に、当日に居合わせた医者とナースステーションでふしだらな行為をしているところを、入院患者のアカネに目撃されてしまう。 その翌日、遺書を遺して院内から飛び降り自殺をして命を落とす。
拓人 (たくと)
実日会病院に入院している少年。黒髪の短髪で、前髪を眉毛の上で切りそろえている。外科病棟に腕の骨折で入院しており、アカネと相部屋になって知り合い、仲良くなる。怪談話が好きで、実日会病院が陰で「幽霊病院」と噂されているという情報をアカネに教える。
川越 修 (かわごえ おさむ)
実日会病院の院長を務める65歳の男性医師。がっしりした体格で、白い短髪に眼鏡をかけ、鼻の下にひげを生やしている。院内では、定期的に自らが各病棟の患者への回診を行うなど、患者を労わり、大切にしている。そのため、患者やスタッフ問わず多くの人々から慕われている。しかし、院内から飛び降り自殺をした桐島いつきと、深夜のナースステーションでふしだらな行為をしていたのではないかと疑惑をかけられている。 院内では心臓外科医を専門にしている。
川越 学 (かわごえ まなぶ)
実日会病院に勤める外科医の男性。がっしりした体格で、黒いの短髪の前髪を中分けにしている。院長の川越修の息子で、修と同じ心臓外科医の道に進んだものの、まだ執刀経験が浅く、ミスが多い。また、重要な場面で冷静な判断ができず、慌てふためいてしまうことや、患者に手術内容等を説明する際に、しどろもどろになってしまうことも少なくない。 そのため、院内のスタッフからは、院長の後継者としての頼りなさに不安を抱かれてしまっている。
場所
実日会病院 (じっぴかいびょういん)
アカネが交通事故に遭い、救急車で緊急搬送された病院。大きな総合病院で、救急車の受け入れも行っている。院長は川越修が務め、外科に名医の多岐川政彦がいる。しかし、患者の間では、白い服を着た、手術に失敗して亡くなった女性の霊が夜中に病院内を徘徊しているという噂があり、陰で「幽霊病院」とも呼ばれている。
クレジット
- 原作
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我孫子 武丸
前作
監禁探偵 (かんきんたんてい)
下着を盗もうと忍び込んだ部屋で死体を発見してしまった山根亮太は、警察から殺人事件の容疑者として追い詰められていく。そんななか、亮太の自宅に監禁されていた少女アカネが彼の無実の罪を晴らすために立ち上がり... 関連ページ:監禁探偵