僕だけがいない街

僕だけがいない街

藤沼悟は28歳の売れない漫画家。彼は時間を巻き戻す「再上映(リバイバル)」という特殊能力を持っていた。これにより、過去に遡って事故や事件の原因を究明し、未然に防ぐことができるのだ。ただし、過去の歴史を変える代償として悟自身が怪我をしたり、忘れ物をして物を無くしたりするリスクを背負う。一度再上映(リバイバル)が発生すると、なるべく関わりたくないと思っていても時間は繰り返し遡る。そのたびに周囲の違和感を探して事件を解決する必要があった。 ある時、悟の母親の藤沼佐知子がやって来た時に再上映が(リバイバル)が起きた。そして周囲で子供の誘拐事件が起きたことを発見した悟。再上映(リバイバル)によって誘拐を未然に防ぐことができた。ところが佐和子が何者かに殺害されてしまう。再上映(リバイバル)を使って佐和子を助けようとする悟。気がつくとそこは1988年。悟が小学生の頃まで時間が巻き戻されていたのだった。 1988年と2006年を何度も行き来して事件の原因を取り除いていくタイムリープミステリー。「このマンガがすごい!2014」オトコ編15位、「マンガ大賞2014」2位を獲得。

正式名称
僕だけがいない街
ふりがな
ぼくだけがいないまち
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
 
推理・ミステリー
レーベル
角川コミックス・エース(KADOKAWA)
巻数
全9巻完結
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あらすじ

第1巻

藤沼悟は河原で手に持った原稿をビリビリと破り捨てた。彼は漫画家として活動している29歳の男性だ。自身が描いた漫画をメジャーな雑誌の編集部へと持ち込んだがダメだった。対応した編集者も嫌味な男で、悟がすでにゲームのコミカライズでデビューしていることを知ると急に「先生」と呼び始め、そつなく描けているが、掲載するレベルに達していないとひと言で断られてしまったのだ。悟は自室に戻り、漫画家として自分はどうしていくべきか、そんなことを悶々と考えていた。

悟は漫画家だけでは生活が出来ないので、ピザ屋で配達のアルバイトをしていた。ピザ屋には同じくアルバイトをしている片桐愛梨と言う名の明朗活発な女の子がいた。愛梨は、配達に向かう悟に途中でピザを食べちゃだめだよ、といつも冗談を言って笑わせた。彼女とは普段、この会話しかしたことがない悟だった。ある時、バイクに乗り配達に向かう途中、悟にとある異変が起こる。同じ場面を何度も繰り返してしまうのだ。それは「再上映(リバイバル)」という状態だった。再上映(リバイバル)が起こると、悟はこれから起こる事件を回避するため、事件の元となる何かを探さなければならない。今回はトラックの暴走事故により小学生の男の子が巻き込まれる事故だ。事故の元凶をなんとか探し出し、一つ一つ原因を取り除いていった。しかし、再上映(リバイバル)に加担した代償として、悟は対向車と衝突事故を起こし大怪我をしてしまうのだった。

悟が事故を起こしたことを知った母親の藤沼佐知子が北海道の実家からやってきた。佐知子はしばらく悟の様子を見ると言って一緒に暮らすことになった。悟は母親と買い物にスーパーへ行った。そこでまた再上映(リバイバル)が発動する。母親に何か違和感が無いかと訊くと、怪しい男の姿を見たと言う。小さな子を連れているが明らかに親子ではないと佐知子は思った。その瞬間、母親の脳裏に過去の事件が蘇る。そして悟に犯人が分かったと言う。悟はその事を知り合いの記者に伝えようと連絡するのだが、その夜、佐知子が何者かに脇腹を刺されて死んでしまう。

 第2巻

自動車と衝突事故を起こし病院に入っていた藤沼悟は無事に退院する。北海道の実家からは母親の藤沼佐知子が見舞いに来ており、しばらくは悟の部屋で暮らしていた。しかし母親は不審者に包丁で刺されて死んでしまう。それを見た悟は再上映(リバイバル)を引き起こし、事件現場に向かう。そこで見た犯人を追いかけるが逃げられ、状況から悟が殺人犯になってしまった。警官に追われる悟にもう一度再上映(リバイバル)が起こる。気がつくと昭和63年2月15日だった。小学生に戻った悟は教室の前で立ち尽くす。わけがわからなくなった悟は学校を早退、実家へと駆け出した。実家には死んだはずの母親が仕事から帰ってきて、悟は安心した。

何故18年前にまで遡って再上映(リバイバル)したのか、その疑問はすぐに分かった。当時発生していた小学生連続誘拐事件。クラスメイトだった雛月加代が誘拐される前の月だったからだ。加代は母親から虐待を受けていた。体中に打撲痕があるが、うまく服で隠されている。悟は再上映(リバイバル)で解決すべき問題点が加代にあると確信した。誘拐を防ごうと加代と仲良くなる作戦を思いつく悟。最初は避けられていた悟だったか、しつこく話しかけることで次第に加代と仲良くなっていった。加代が殴られるのは決まって土曜日。その日に悟は加代と科学センターへ遊びに行こうと誘う。彼女の母親はダメだというが、なんとか説き伏せ、遊びに行けることになった。順調に歴史を変えていく悟だった。そして事件に関わる運命の日を迎えた。 

 第3巻

3月2日の誕生日会では元気な顔で話していた雛月加代だったが、翌週の月曜日になると学校に来なかった。藤沼悟は嫌な予感がしていた。加代は月曜日に遅刻や欠席をすることが多かったが、今回は何かが違った。前日に加代は明日誕生日プレゼントを渡すと笑顔で応えていたからだ。悟は焦っていた。家に帰ると母親の藤沼佐知子と知らない男性が失踪事件について話している。悟はこっそりと家を抜け出して加代の家に向かった。しかし誰もおらず、以前加代が閉じ込められていた倉庫にも姿はない。ただ一つ、大人の長靴の足跡が雪にしっかりと残っていた。そして翌日、担任の八代学先生はクラスの皆に加代は札幌に転校したと告げる。しかし、悟は実はこれは嘘だと八代先生から聞いていた。加代は失踪していたのだ。その後、加代の失踪事件は公開捜査となり、テレビでも放送されることとなる。加代の母親は、娘が失踪したわずか10日後に娘の服や編みかけの手袋をゴミ袋に入れて捨てていた。それを目撃した悟はショックのあまり再上映(リバイバル)してしまう。気がつくと大人になった現代に戻り、母親の佐知子が殺された直後だった。

周囲には警察がいて騒然としている。悟はなんとかバイト先の店長に連絡を取り、店長の家にかくまってもらう事が出来た。ところが、店長は悟を裏切って、こっそり警察を呼んでいた。また逃げ出した悟の前に現れたのは同じバイト先で働く片桐愛梨だった。愛梨は悟が殺人犯だとは信じておらず、愛梨が居候している家に泊めてくれることになった。その事を知った真犯人であろう人物は愛梨の家に火を付けて殺害しようとする。何とか助け出された愛梨は治療のため入院するが、周囲は警察によって厳重に警備されていた。愛梨が悟の共犯者だと疑われていたからだ。

悟は母親が殺害された時に置いてあったメモを発見した。そこに書かれている電話番号に電話をかける。相手は過去に北海道のテレビ局で働いていた澤田だった。今は解決済みの事件を追うルポライターをやっている。澤田の手助けもあり真犯人への手がかりが少し見えてきた悟だった。愛梨からも連絡がありこれからどうしていくかと話しているところに刑事が現れた。愛梨を尾行してきたのだった。そして悟は逮捕された。 

第4巻

警察に逮捕されてしまった藤沼悟の頭の中に、過去の映像が走馬灯のように流れてきた。そこで見たのは鋭い目をした男の顔。はっきりとは見えなかったが恐ろしい犯人の顔だった。すると再上映(リバイバル)が発動した。気がつくとまた1988年に帰ってきていた。雛月加代と科学センターに遊びに来ていた日だ。もちろん悟の母親の藤沼佐知子も自宅にいる。悟は3度目の加代が失踪する事件前日を迎えていた。今度こそ事件を解決すると誓うが、問題が起こった。悟のクラスメイトで一番頭の良い小林賢也(通称ケンヤ)に正体がバレそうになってしまったのだ。悟が悟でないという疑念を抱くケンヤを悟は、これから起こる殺人事件を防ぐ協力者として招き入れることにした。悟はこれから起こる事を知っている。だからこそ回避する事ができる。それでも、何度も再上映(リバイバル)を繰り返しているため過去の歴史が変わってきていた。少しずつ変化する世界は危険で、急激な変化は避けなければならない。3月1日を前回と同じようにこなし、そして翌日を迎える。この日を無事に過ごせば加代は助かるはずだ。悟は加代を助けるために周りが見えていなかった。無謀にも加代の母親を傷つけようとしてしまう悟を止めるケンヤ。ケンヤの協力もあり、加代を助ける方法を思いつく。それは悟が加代を誘拐すること。加代を家に帰さないことで事件を防ごうとしたのだ。なんなく加代の誘拐を完了した悟とケンヤ。このことは二人しか知らない事実だった。そして過去は大きく変化し始めた。

 第5巻

雛月加代の誘拐事件は子どもたちのいたずらということで解決した。本来の歴史を書き換えることで死を回避することが出来たのだ。そして保護された加代は藤沼悟のクラスから別の小学校へと転校していった。無事に事件を防いだ悟は一気に気が抜けて油断している。そのことに気がついた小林賢也。悟が口にした油断という言葉に反応し、まだ事件は続いているのかとケンヤが悟に問いかけた。悟はケンヤを信じて話し始める。ケンヤの父は弁護士をしていて、今、担当している事件は練炭を使った事件だった。その事でなにかに気がついた悟。学校帰りに合流した杉田広美(通称ヒロミ)を加えて三人で、以前加代の誘拐に使用した場所へ向かった。そこにあったはずの練炭や道具が無くなっている。事件の真犯人が持ち去ったという悟の言葉にケンヤは驚いた。こうして次に起こる事件を防ぐために悟、ケンヤ、ヒロミが動き出した。

次は中西彩という女子生徒の失踪事件を防ぐことだった。これにより無実の罪で犯人にされてしまった白鳥潤を守ることができる。どうにかして彩と仲良くなろうと話しかけるものの、話が合わずに困る悟たち。コソコソと探偵ごっこをしているような悟たちを不審に思った友達のカズが後をつけていた。彩は悟たちがアジトと呼んでいる場所があることを知ると、子供っぽいと言い笑う。それに怒ったカズが飛び出し、アジトに来れば男のロマンが分かると言い放った。この事が功を奏して悟たちは彩と仲良くなる。次々と事件を未然に防ぐことに成功している悟だったが、もう一人、ひとりぼっちの女の子がいることに気がついた。そして魔の手はついに悟へと襲いかかってくることになる。  

第6巻

雛月加代中西彩杉田広美(通称ヒロミ)の三人が殺されなかった世界を作り出した藤沼悟。これで全ての事件が解決したかに思えたが、それは別の事件を生む結果となった。同じクラスで一人ぼっちの柳原美里を心配した悟は、美里を尾行した。1人でアイスホッケーの試合を観戦していた美里は誰かに狙われている。席を立った美里が向かった先はトイレだったが一向に帰ってこない。悟が行ってみると、トイレの先には搬入口があり扉が開いていた。その先で弁当配達の車が出発するところだった。なんとか車を運転してくれる人を見つけ、急いで弁当配達の車を追いかける悟。そして気がつくと、悟は真冬の冷たい川に突き落とされてしまっていた。何とか脱出しようと試みるもうまく行かず、悟の意識は次第に遠のいていく。これまでのことが次々と映像として頭の中に流れ込んできた。そのまま悟は意識を失った。

それから長い年月が立った。悟は昏睡状態のまま自宅で眠っていた。悟の母親の藤沼佐知子は東京に移り住み、アルバイトをしながら悟を見守っていた。そして悟は長い眠りからついに目覚めた。全身が思うように動かないが、それでも身体に大きな問題は無いようだ。悟は昔、漫画家になる夢を思い描いてたと思い出し、リハビリを兼ねて絵を描いてみた。再上映(リバイバル)によって戻った世界では、悟は漫画家になる前に事件に巻き込まれ昏睡状態となったのだ。下手くそな絵しか描けないはずだった。

 第7巻

長い昏睡状態から目覚めた藤沼悟。悟は車椅子で動くことが出来るようになっていた。病院内を散歩していると三流ゴシップ雑誌のカメラマンが悟を狙っていた。院内で悟は白血病で骨髄移植をするという北丸久美と仲良くなった。そして彼女の不安な言葉を聞いては励ましてあげた。その様子を、カメラマンは面白おかしく記事にするために撮影している。そこに現れたのは謎の女性。カメラマンの持っているカメラを奪い取り、フィルムを捨てる。そしてカメラマンを殴った。女性は悟がもう一つの歴史で出会った片桐愛梨という人物だった。今の歴史では出会うことがない女性だったため面識は無い。しかし悟の記憶にはしっかりと愛梨のことが刻み込まれていた。愛梨に出会った瞬間、悟の記憶が断片的に甦った。そして再び昏睡状態になった。

二回目の目覚めは一年が経過した後だった。再びリハビリを開始する悟。全ての記憶を取り戻し、やらなければならない事を思い出した。それは悟やクラスメイトを殺すはずだった男を探し出すことだ。この事を小林賢也に伝える。ケンヤは想像力が生み出したものだと言うが違う、リアルな歴史だった。悟が目覚めたことは真犯人にも伝わっていた。これまでの計画で殺すことが唯一出来なかった悟に対して、もう一度殺意が湧いてくる。悟は「さざんかの集い」というイベントに行くことになった。このことを知った真犯人は悟に近づく。そしてイベント当日、悟と真犯人との最後の戦いが始まった。

 第8巻

藤沼悟は、母親の藤沼佐知子と、病院で出会い仲良くなった北丸久美と一緒に「さざんかの集い」というイベントに参加する。バスに乗って向かった会場の山茶花池公園では多くの参加者がイベントを楽しんでいた。一方、真犯人は着々と獲物を狩る準備をしていた。公園の奥にある人気のない建物に向かう真犯人。ガムテープで窓に目張りをし、練炭自殺に見せかけるための道具を並べる。そして悟の母親の佐知子の携帯電話を使って久美を誘い出すことに成功したのだ。

悟は全ての記憶を思い出していた。真犯人の名前も、現在の名前も。その事を小林賢也に伝える。今回のターゲットは久美であることも分かっていた。イベントが企画されたことも、久美が行きたがったことも、タイミングが良すぎた。そこで悟は罠を仕掛けることにした。これで真犯人を追い詰め、決定的な証拠を掴もうと考えたのだ。案の定、真犯人は計画が順調に進んでいると思いこんでいたため驚愕する。うまく誘い出したはずの久美がいなかったからだ。真犯人が仕掛けた罠も全て回収し、何事もなく一日が終わるはずだった。しかし、夜になり集合時間が来てもそこに久美の姿はなかった。真犯人に捕まったのか、事件に巻き込まれたのかもしれない。必死に考える悟だったが、ある一つの行動に気がつく。それは悟が小学生の時に見ていた方法と同じものだった。

 第9巻

雛月加代は中学生になっていた。事件に巻き込まれた藤沼悟が意識不明となり入院してから、加代は毎日、悟の見舞いに行った。学校で起こったことを報告し、他の友人とも一緒に見舞って、病院は賑やかだったが、それでも悟は目を覚まさなかった。加代は見舞いのため中学校では部活もしていなかった。

一方、柳原美里は悟のために募金活動をしようと提案する。小林賢也カズ中西彩が街頭で募金活動を開始。悟のために皆が一生懸命動いてくれていた。その事を気に病んだ悟の母親の藤沼佐知子は、長期療養ができる内地(本州)の病院に行くことを決めた。その事を知らされていなかった加代は悲しんだが、渡された手紙を読んで未来に向かって進むことを決意する。

ケンヤは弁護士の父がいる裕福な家庭の息子だった。そのせいかプライドが高く友達がほとんどいない。それを気に病んだカズがアジトに誘い、そこからケンヤにも友人が増えていった。ケンヤは、悟が加代を気にしているのは恋愛感情ではない何かだと気がついていた。加代を助けようとする悟を見て、自分は気がついていたのに何もしていないと悔やんでもいた。悟が事件に巻き込まれ、今度は自分が事件の真犯人を追おうと決めるのだが父親に諭される。今は準備期間だと必死に勉強するケンヤだった。そして大学に進学してもなお事件を追っていた。その時にフリーランスのルポライターをしている澤田と出会い、事件の核心追及へとケンヤは再び歩み始めた。 

登場人物・キャラクター

藤沼 悟 (ふじぬま さとる)

売れない漫画家。28歳の青年。デビュー作はゲームのコミカライズだった。漫画だけでは生活ができないためピザ屋でアルバイトをしている。過去を変えることができる再上映(リバイバル)と呼ばれる能力を持っている。再上映が発動すると、事件が解決するまで何度でも同じ時間をやり直す。歴史を変えた結果、何らかの代償を支払うことになる。 2006年に悟の母親の藤沼佐知子が殺害された事件によって再上映(リバイバル)が発動し、1988年に戻る事になる。当時起こっていた連続誘拐殺人事件の犯人が、母親を殺害した犯人と関連していると気がつく。誘拐事件を防ぐために友人の小林賢也と共に行動する。 

藤沼 佐知子 (ふじぬま さちこ)

藤沼悟の母親で元テレビ石狩の報道部アナウンサー。ダメなことはダメ、良いことは良いと、分別がはっきりしている。正義感が強く、学生時代には痴漢と下着ドロボーを捕まえたことがある。悟のことは何でもお見通しで、悟は「サトリ」や妖怪だと揶揄することが多い。1988年の連続誘拐殺人事件では、子供達のために、特定のテレビ局を見せないようにするなど独自の報道管制を学校側に提案した。その結果、1回目の歴史で悟は事件のことをあまり覚えていない。悟の看病のため東京に向かった際、誘拐事件を目撃して1988年に起こった事件の犯人が分かった。しかし犯人が誰かを伝える前に殺されてしまう。 

雛月 加代 (ひなづき かよ)

1988年、藤沼悟の小学生時代のクラスメイト。誕生日は悟と同じ3月2日。「バカなの?」が口癖。母子家庭で母親・雛月明美から暴力を振るわれている。毎週土曜日になると虐待を受け、月曜日までに傷を直せと氷水に顔を押し付けられている。 1回目の歴史では、1988年の連続誘拐殺人事件に巻き込まれて3月1日に殺されている。悟が再上映(リバイバル)で過去に戻り死を回避するため奔走した。2回目の歴史では1回目で殺された3月1日を乗り越え生き延びるものの、結果的に彼女は殺されてしまう。 

片桐 愛梨 (かたぎり あいり)

2006年に藤沼悟がアルバイトしているピザ屋で一緒に働いていた女性。実家が田舎のため、千葉の母の兄夫婦の家に居候している。藤沼悟の母親・藤沼佐知子が殺された時、殺人犯の濡れ衣を着せられた悟を信じてくれた数少ない友人。悟をかくまって警察に捕まらないよう協力する。しかし、悟をかくまったのが犯人にばれ、家に放火されてしまう。次第に世間から、「藤沼悟という凶悪犯に迷惑をかけられているかわいそうな子」と勘違いされはじめ、義憤にかられる。

白鳥 潤 (しらとり じゅん)

藤沼悟が小学生の時によく遊んでくれていた青年。悟はユウキさんと呼んでいる。ペーパークラフトが得意で、手作りの飛行機を上手に飛ばすことができる。悟も一緒に飛行機を飛ばして遊んでいた。ひとりぼっちの子を見ると、何とかしてあげたいと思い声をかけている。結果、連続誘拐事件の犯人として逮捕、死刑を求刑されることとなった。雛月加代が悟と仲良くなったことを知ると、大きな声を上げて喜んだ。普段は標準語を喋っているが、興奮すると北海道弁が出る癖がある。 

小林 賢也 (こばやし けんや)

1988年、藤沼悟の小学生時代のクラスメイト。弁護士の父を持つ裕福な家庭で育つ。父親の姿を見てきているせいか、大人っぽい発言や考え方をしている。悟が再上映(リバイバル)で小学生になった際、悟の言動を見て違和感を持つ。悟から雛月加代を助けたいと相談を受け、事件を防ぐために一緒に行動することとなった。悟を良く観察しており、危険な考えを止めてくれる冷静なタイプ。子供っぽいと言われるのが嫌い。父親が担当した事件を見て正義とは何かを考え、自身も弁護士を目指すために勉強している。

ケンヤの父 (けんやのちち)

藤沼悟のクラスメイトであるケンヤの父親で弁護士。少女殺人事件で容疑者になった少女の父親の弁護をして、その無実を信じていたが、彼は有罪となり無期懲役となった。のちにケンヤが、悟が車ごと川に沈められた事件を探っている事を知り、一度はまだ力不足だとやめさせるが、彼が高校生になってから事件の資料の閲覧を許し、事件を追う事を許した。

(おさむ)

1988年、藤沼悟の小学生時代のクラスメイト。悟たちとアジトで遊ぶ仲間。ドラゴンクエストが好きだが、他の仲間が誰もドラゴンクエストをやっていないことに不満を持っている。カズとは特に仲が良い。お調子者で、悟が雛月加代に付き合おうと言ったのかと聞くなど空気が読めない一面がある。悟が科学センターに遊びに行こうと誘った時、行こうと言い出す瞬間にカズに止められた。他の仲間は悟と加代を二人きりにするつもりだったが、修はその空気に気がついていなかった。

カズ

1988年、藤沼悟の小学生時代のクラスメイト。放課後にはアジトへと集まって遊んでいる友人の一人。ヒーローに憧れる子供っぽいところがある。アジトは男のロマンだと男らしい発言をして、知り合いではなかった中西彩と仲良くなった。悟が雛月加代の事を気にしていると、二人を無理やりくっつけようとするお節介な一面もある。悟がみんなで科学センターに行こうと誘った時には、悟と加代をくっつけるためにさりげなく誘いを断る優しさも持つ。

八代 学 (やしろ がく)

1988年、藤沼悟の市立美琴小学校の教員。悟のクラスの担任。観察眼が鋭く、悟が雛月 加代の事を気にしている事に気がつき手助けをしてくれる。悟と協力して雛月加代を助けるために行動する。関係各所へと根回しをしたり、順序立てて仕事をこなしたり、用意周到な準備ができている。加代の母親を児童相談所の職員と引き合わせるための作戦を立てた。タバコをやめてからは甘いものが欠かせない。そのため車には大量の飴が常備されている。落ち着かない時には車のハンドルをトントンと叩く癖がある。 

雛月 明美 (ひなづき あけみ)

雛月加代の母親。暴力ばかり振るう夫と離婚して母子家庭となった。毎週土曜日になると加代の顔を殴り虐待している。顔の傷を治すために氷水に顔を押し込み、それでも治らなかった場合は学校を休ませていた。母子家庭だが彼氏がおり、1回目の再上映(リバイバル)では虐待によって加代を殺している。精神的に不安定で自分の行動を自制できていない。加代を守ろうとする悟に対しても暴力を振るおうとした。児童相談所の職員に対しても協力せず居留守を使うことも多い。 

杉田 広美 (すぎた ひろみ)

1988年、藤沼悟の小学生時代のクラスメイト。女の子のような名前をしているが男子である。見た目も女の子っぽく、最初の歴史では誘拐され殺されている。再上映(リバイバル)によって戻ってきた悟によって事件は起こらず、殺されることはなくなった。将棋が強く、悟や修では全く歯が立たない。アジトで遊んだ際には21連勝の一人勝ちだった。夜8時を過ぎないと両親が帰ってこないらしく、一人で過ごすことも多い。事件を回避するため一人隠れている雛月加代にたくさんの本を貸してあげていた。

中西 彩 (なかにし あや)

藤沼悟の学校の隣にある泉水小学校の生徒。エレクトーン教室が終わって塾が始まるまでの1時間、いつも一人で公園にいた。最初の歴史では誘拐事件に巻き込まれてしまう。習い事や塾のせいで友達と遊べないと悩んでいた。好きな音楽の話になると楽しそうに喋る。公園ではシェイクスピアを読んでいた。親の勧めなので面白さは良く分かっていない。記憶力が良く、悟たちに本の内容を演じて見せていた。アジトを馬鹿にされて飛び出してきたカズの子供っぽさを通り越した男らしさに感化されてアジトに足を運ぶようになった。 

柳原 美里 (やなぎはら みさと)

1988年、藤沼悟の小学生時代のクラスメイト。気が強く、雛月加代をいじめていた。加代の持っていた短い鉛筆をバカにした事がきっかけで、加代に自慢のシャープペンシルを窓から捨てられる。それから加代の事が嫌いになった。給食費を集める日、加代が給食費を盗んだとクラス中に広めようとして失敗。その結果、今度は自分がクラスから浮いた存在となり一人ぼっちになる。ある事件の後、悟を助けるため募金活動を提案するなど優しい一面も見せる。

高橋店長 (たかはしてんちょう)

2006年に藤沼悟がアルバイトをしているピザ屋の店長。悟の仕事ぶりを高く評価していて正社員にならないかと誘っている。おせっかいやきで、詮索をすることが多い。人当たりは良く優しい一面を持っているが、自分の目的のために他人を出し抜くこともある。悟の母親・藤沼佐知子が殺された際、悟を騙して自宅に招き入れ警察へ引き渡そうとした。ピザ屋でアルバイトをしている片桐愛理の事が好きだが、想いを伝えることができない。愛理が悟と仲が良いことを知って、悟に嫉妬する。

澤田 (さわだ)

元・テレビ石狩社会部の記者。2006年に藤沼悟と出会う。小林賢也(通称ケンヤ)と共に北海道連続誘拐殺人事件の犯人を追っている。すでに解決したと思われている事件だったが、未解決だと信じて事件を追っている。後にフリーランスのルポライターとして悟と再会する。藤沼悟の母親の藤沼佐知子とは旧知の仲。悟が小学生の時から事件について調べていた。容疑者として終われ切羽詰まって逃げていた悟に、真犯人を探る手がかりを差し伸べる。犯人を追い詰める際には悟、ケンヤと共に行動した。

集団・組織

市立美琴小学校 (しりつみことしょうがっこう)

『僕だけがいない街』に登場する学校。1988年に主人公の藤沼悟が通っていた。雪も多く冬場は非常に寒い。ストーブは薪と石炭を使う古いものだった。日直が着火剤を用意して火をつける。冬になるとグラウンドにスケートリンクを作り、体育の授業で使用する。生徒は皆スケートを行なっているためかアイスホッケー部が強豪で、全国大会で優勝している。学校の近くには悟たちがアジトと呼ぶ秘密基地がある。

イベント・出来事

北海道小学生連続誘拐殺人事件 (ほっかいどうしょうがくせいれんぞくゆうかいさつじんじけん)

『僕だけがいない街』に登場する事件。1988年に起こった連続誘拐殺人事件で、藤沼悟のクラスメイトである雛月加代、杉田広美、別の小学校に通っている中西彩の3人が殺害された。この事件に巻き込まれた3人を助けるために悟は奮闘する。当時の小学生にトラウマにならないよう報道は控えられ、視聴するテレビ局も指定するなどの対策が行われた。犯人として逮捕された白鳥潤は死刑判決を受けた。しかし、真犯人がいると信じる悟によって歴史が変えられることになる。

その他キーワード

再上映 (りばいばる)

再上映(リバイバル)は『僕だけがいない街』に登場する言葉。主人公の藤沼悟が持っているタイムリープ能力。事件や事故が起こると発動し、その原因となるものが取り除かれるまで何度でも同じ時間を繰り返してしまう現象のこと。数分前に戻ることもあれば、10年以上前に戻ることもある。悟の母親の藤沼佐知子が殺されて発動した際には18年前に戻ってしまった。その事件や事故の原因となるものによって、巻き戻る時間が大きく異なっている。発動は自分では操作できず、いつ起こるか、どうやって起こるかは不明である。

書誌情報

僕だけがいない街 全9巻 KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉

第1巻

(2013-01-25発行、 978-4041205570)

第2巻

(2013-05-31発行、 978-4041207017)

第3巻

(2013-12-04発行、 978-4041209110)

第4巻

(2014-06-04発行、 978-4041017425)

第5巻

(2014-12-29発行、 978-4041017432)

第6巻

(2015-07-04発行、 978-4041031346)

第7巻

(2015-12-26発行、 978-4041036754)

第8巻

(2016-05-02発行、 978-4041039151)

第9巻

(2017-02-04発行、 978-4041048795)

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