あらすじ
第1巻
朱雀院セイギは3か月前から突如、夜空に現れて世界を侵略し始めたドラゴンヘッドを打ち倒すため、凶悪な魔人「苦悶の像」の封印を解くことを決意する。苦悶の像には、人を生きたまま石像にして苦しめたという逸話があったが、その正体は思いがけず巨大な力を持ち、不本意に罪を犯した青年だった。セイギの覚悟を見届けた青年は、彼女と契約することを決意。彼女から朱雀院エンギと新しい名をもらい、共に戦うことを約束する。サリエル・サンクチュアリからも関係を認められた二人は、ドラゴンヘッドの尖兵であるビーストとの戦いに明け暮れる。しかしその最中、セイギはビーストとなったかつての級友・青龍院ミライの襲撃を受ける。新たな魔人のシラヌイを引き連れたミライはその圧倒的な力で、セイギとエンギに牙をむく。
第2巻
朱雀院セイギは、青龍院ミライが敵になったことにショックを受けたものの、立ち向かうことを決意。セイギは戦いの中で正気と狂気の狭間にゆれるミライを説得し、朱雀院エンギとシラヌイの力を借りることで彼女を正気に戻し、救うことに成功する。戦いと日常の中で絆を深めていくセイギとエンギであったが、そんな二人の前に麒麟院ヒカリと麒麟院ユキハが現れる。エンギと深い因縁を持つユキハを前にエンギは戦意を喪失し、彼女の刃の前に打ち倒されるのだった。エンギの命が失われる絶望的な状況の中、セイギは己の中の正義を叫び、過酷な運命に立ち向かう。
登場人物・キャラクター
朱雀院 エンギ (すざくいん えんぎ)
瘦身の青年で、色黒の肌を持つ。魔人の一柱、No.4「苦悶の像」で、「地」の属性を得意とする。生きとし生ける者すべてを生きたまま石像にする能力を持ち、かつてはその力で大災害を巻き起こした。しかし、大災害を起こしたのは能力が暴走した結果で、朱雀院エンギ自身も多くの人を巻き込んだのは不本意な結果だった。救世主騎士団によって封印されて暴走は終息するが、その際に騎士団に多くの犠牲を出したことを悔やんでおり、封印されたあとは冗談を言って生きたまま石像になった人たちを少しでも退屈から救おうとしていた。髪は白く、歯は鮫のように鋭い凶悪な様相をしているが、これも魔人となった影響で変貌したもので、根は善良で優しい性格をしている。世界を救うという朱雀院セイギの覚悟に心打たれ、彼女を主として契約する。戦闘の際にはセイギから供給された魔力を使って戦う。大地を媒介とした魔術を得意とし、対象を石化するほか、巨大な石のこん棒を作り出して接近戦を行うことができる。日常生活ではセイギの執事として振る舞うために執事姿となり、戦闘の際には着物姿となることが多い。封印された際に右目を負傷しており、現在は隻眼。長年、冗談を言い続けたため、日常的に冗談を言うが、センスがないので周囲からはつまらないと思われている。
朱雀院 セイギ (すざくいん せいぎ)
名家である朱雀院家を継ぐ魔女。黒のロングヘアに赤い瞳を持つ少女で、黒のとんがり帽子をかぶり、黒マントを羽織った出で立ちをしている。正義感の強いまじめな性格で、己の名前にかけて「正義」を貫くことを信念としている。ビーストとの戦いで級友と祖母を失ったためにその思いはさらに強くなり、己のすべてを懸けてビーストを打ち倒すことを誓っている。魔女の心臓(ウィッチズソウル)を使い、魔人である苦悶の像と一心同体の契約を交わす。これによって魔人を使役し、その力を使うことができるようになったが、一心同体であるために彼が死ぬと己も死ぬという契約に縛られている。また苦悶の像とは、契約の際に朱雀院エンギの名を与えている。炎の力をあやつる「火の魔女」だが、シラヌイの浄化の炎とは性質が違い、燃やした物を再構成する死と再生の炎をあやつるとされる。
ミフユ
朱雀院セイギの執事を務める黒髪の青年。白いスーツを身にまとい、片眼鏡を付けている。冷静沈着な性格で、朱雀院エンギの執事としての指導役も務める。
青龍院 ミライ (せいりゅういん みらい)
名家である青龍院家を継ぐ魔女。陽気で人当たりのよい性格をした少女で、朱雀院セイギともなかよしだった。名家の集まりである五行家の中ではムードメーカー的な存在だったが、ドラゴンヘッド出現時の戦いで消息不明となり、再びセイギの前に現れた際にはビーストと化し、かつての快活さが跡形もないほど残虐な性格へと変貌していた。その際にはビースト化を促す種子を左腕に植えつけられたため、左腕だけ歪に巨大になった異形の姿となる。家庭教師だったシラヌイに好意を抱いており、ビースト化しても行動を共にしている。樹属性の魔術をあやつる「命の魔女」で、シラヌイと息の合ったコンビネーションを見せるが、朱雀院エンギの力の前に敗れ去った。その後はセイギと和解して正気を取り戻し、シラヌイとエンギの力でビーストの種子を左腕ごと破壊。シラヌイとエンギが力を合わせて作った、火と土の力を内包した義手を付けることで、ふつうの人間へと戻った。
シラヌイ
青龍院ミライと契約した男性。魔人の一柱、No.9「煉獄の門」で、「火」の属性を得意とする。ふだんは落ち着いた性格で、ミライの家庭教師として理知的に振る舞う。戦闘の際には一転してハイテンションで好戦的な性格へと変貌し、縦横無尽に暴れ回る。圧倒的な火の破壊の力をあやつるが、それ故にバテるのが早いため、短期決戦タイプといわれている。
サリエル・サンクチュアリ
救世主騎士団に予言をもたらす聖女。魔人の一柱、No.10「永劫の囚われ姫」で、「光」の属性を得意とする。小柄な体型の幼い少女で、目元をつねにバイザーで覆い、素顔を隠している。厳かな雰囲気を漂わせているが、箸が転んでもおかしい年頃で、朱雀院エンギのダジャレで笑う数少ない人物。また意外とノリがよく、青龍院ミライといっしょに朱雀院セイギをからかうこともある。未来を予知する能力があり、それを予言としてセイギや救世主騎士団の者たちに伝えている。
ミリアリア・リーシュタット
救世主騎士団の司祭長を務める女性。顔に大きな縫合跡のある美女で、眼鏡を掛けている。倒錯的な性格をしており、かわいい女性とのボディタッチが大好き。また、ちょっとしたきっかけさえあればすぐ興奮するという、かなり変わった嗜好を持つ。
麒麟院 ヒカリ (きりんいん ひかり)
名家である麒麟院家を継ぐ魔女。ストレートロングヘアの少女で、ひょうひょうとした性格をしている。名家の集まりである五行家をまとめるリーダー的な存在だった。光属性の魔法をあやつる「星の魔女」で、同年代の魔女の中でもずば抜けた力を持つ。ドラゴンヘッド出現時、ビーストの群れと戦って朱雀院セイギを助けた。その後、なんらかの目的で暗躍しており、青龍院ミライにビーストの種子を植えつけたり、朱雀院エンギの覚醒を危険視して滅ぼそうとしたりしている。魔人の一柱、麒麟院ユキハと契約している。
麒麟院 ユキハ (きりんいん ゆきは)
和服を身にまとった女性で、黒い髪をポニーテールにしている。魔人の一柱、No.6「斬獲者」で、「風」の属性を得意とする。朱雀院エンギがふつうの人間だった頃の婚約者で、彼と同じくつまらないダジャレを連発する。彼が魔人となって封印された際に、たまたま不在だったために難を逃れたが、以降はそれを悔いて過ごしている。麒麟院の魔女の力で108人の人間を殺して魔人化し、エンギを力の暴走から救うために殺すことを目的として生きてきた。現在は麒麟院ヒカリと契約し、彼女と行動を共にしている。セイギを殺すため、彼の苦手とする単純物理攻撃に特化した能力を持ち、戦闘では体中から日本刀の刃を生やし、それに風の斬撃をまとわせて戦う。
その他キーワード
魔人 (あうたーろう)
強大な力を持つ者たちの総称。人類には到達不可能とされる第四階梯(かいてい)以上の術式をあやつる者たちで、その力はたやすく世界を壊し、人々を翻弄するため「移動式極地災害」「大災害級」「世界を壊す者」とさまざまな呼び名で呼ばれる。現在は10人存在するとされ、それぞれにナンバーと通称が与えられている。
ドラゴンヘッド
突如、空に現れた巨大な惑星。夜のあいだだけ空に現れるが、そこには質量がなく、幻のような存在であるため「存在しない惑星」とも呼ばれている。この星の影響を受けた者はビーストとなるため、無尽蔵に災いを生み出す存在として世界中から恐れられている。その正体はいっさい不明だが、青龍院ミライはドラゴンヘッドを、人間の意識を侵略して己の尖兵へと変える「異界の神」と呼んでいる。
ビースト
「堕落の獣」とも呼ばれる存在。人間がドラゴンヘッドの影響を受け、変貌してしまった存在で、人類に敵対して破壊の限りを尽くしている。ビーストはドラゴンヘッドから力を供給されることで巨大な力を持ち、またビーストに打ち倒された人間も新たなビーストとなるため、その数を加速度的に増やしている。ビーストに変貌した者は負の感情が消失し、善悪の価値観を大きく書き換えられるため、人を襲わずにはいられなくなる。このため、ビーストの中には元の人格をある程度残している者もいるが、その者たちも人を襲い、犠牲者を増やし続けている。現状、ビーストを人間に戻す方法はなく、彼らを殺すしか解放する手段はない。ただし、青龍院ミライのように完全にビースト化する前なら、変貌した部分を完全に破壊するとビースト化から解放することができる。
クレジット
- 原作
-
サイトウ ケンジ
書誌情報
ウィッチオーダー 全2巻 KADOKAWA〈ドラゴンコミックスエイジ〉
第1巻
(2019-03-09発行、 978-4040730936)
第2巻
(2019-11-09発行、 978-4040733852)