超人的な技量を備えた変態的ダーツプレイヤーたち
講談組のシノギである賭けダーツのプレイヤーたちは、主人公の烏丸を筆頭に技巧を極めた者ばかりだが、性格に難のある者が多い。たとえば、「自由人(フリーマン)」の異名を持つ空山蒼治は、高額報酬を餌に人を集めて監禁し、その哀れな姿を眺めることで自らが自由であるという実感を得て興奮する変態である。ほかにもさまざまな性格破綻者が、対戦相手として烏丸の前に立ちはだかることになる。
心理戦と頭脳戦の要素が強い変則ダーツバトル
賭けダーツのプレイヤーたちは百発百中の腕前を持つ超人ばかりで、ふつうに競い合っていると勝つことはできない。そこで重要になるのが、相手の心を揺さぶって失敗を誘発するという心理戦で、烏丸と対戦相手が互いの腹を探り合いながらゲームを進めていく様子は独特の緊張感がある。また、試合ごとに趣向を凝らした変則ルールが取り入れられる点も本作の特徴となっている。1000台のダーツマシンで構築された迷路を舞台に、早投げカウントアップなどの大掛かりな変則ルールでの試合が行われ、従来のダーツのルールを知らなくても楽しむことができる。
命を賭けた「金貨」の争奪戦が始まる
烏丸はダーツプレイヤーを養成する「施設」で4年間を過ごし、超人的なダーツの腕前と揺るぎない心の持ち主。この施設は、落第が決まった生徒の食事に毒を盛るなどの非合法な行為を平然と行う場所で、烏丸の数少ない友人である桂木鈴音も同じ施設で育った同期である。施設を卒業して賭けダーツの花形プレイヤーに成長した烏丸は、華原清六というダーツプレイヤーとの試合を制して「金貨」を手に入れた。やがて烏丸は、その金貨が賭けダーツの胴元である講談組すら逆らえない「上」へ至るためのキーアイテムであることを知り、施設の出身者とのダーツを用いたデスゲームに臨むことになる。
登場人物・キャラクター
烏丸 徨 (からすま こう)
ダーツプレイヤーの男性。黒いスーツに深紅のシャツ、白いクラバットというドレッシーな装い。講談組の若頭、絹守一馬が胴元を務める違法な賭けダーツを主戦場としている。試合の待機中も煙草を喫するほどの愛煙家で、飄々(ひょうひょう)とした性格と不屈の精神の持ち主。迷える者を見て楽しむ悪癖があり、決め台詞は「そこが行き止まり(デッドエンド)だ」。試合中に賭けを提案するなどして相手の心を揺さぶる場面も多く、界隈では「迷路の悪魔」の二つ名で恐れられている。悪巧みをする際に目の辺りから「びびびびび」という音を発する。この音は周囲にも聞こえているが、詳細は不明。ダーツの腕前は超人の域に達しており、百発百中の精度はもちろん、3本同時に投げる技術も有している。また、両利きであることも強みになっているが、「ダーツ以外は何もできない」と揶揄(やゆ)されるほど多くの欠点を抱えている。たとえば、極度の方向音痴で、住居に帰り着けず周辺を彷徨(さまよ)っていたことがある。カブトムシの購入資金として1000万円を持ち出すなど金銭感覚も狂っており、電子機器の扱いも苦手。なお、10歳から14歳までの4年間、ダーツプレイヤーを養成する非合法な「施設」で生活していた。のちに同様の施設でダーツの腕を磨いたプレイヤーたちと「金貨」を巡る戦いを繰り広げることになる。同じ施設で育った桂木とは懇意にしているが、彼女の大切なモノを奪ってしまったことに対しては負い目を感じている。
桂木 鈴音 (かつらぎ すずね)
ピアニストの女性。黒髪ロングヘアにしている。喉まで覆い隠したニットの洋服を身につけている。後天的な理由で言葉を発することができず、スケッチブックを用いた筆談で意思表示をする。食欲旺盛で特に甘味が好物。また、可愛いものに目がない。烏丸の数少ない友人の一人で、同じ「施設」で4年間を過ごした仲でもある。施設では烏丸と同じ最上級のAクラスで、現在はダーツプレイヤーではないものの、酩酊(めいてい)してもパーフェクトを達成するなど、その実力は健在。3本のダーツを後ろに投げて卓上のイチゴに命中させる離れ業を披露するシーンもある。施設を出たら歌手になりたいと夢見ていたが、卒業試験で声を失い、ピアニストとして音楽に携わる道を選んだ。桂木自身のコンサートは出資額に見合う利益をもたらすとして、パトロンの老紳士からも高く評価されている。金銭感覚は烏丸と同様に狂っており、カブトムシの値段を500万円程度と見積もっていたほど。烏丸の相棒として賭けダーツに出場することになるが、直前になって手を負傷する恐れのある特別ルールが判明し、烏丸の判断で絹守に相棒の座をゆずった。のちに施設の出身者が「金貨」を奪い合う命懸けの賭けダーツに巻き込まれ、「歌姫(セイレーン)」の二つ名で呼ばれることになる。
書誌情報
エンバンメイズ 6巻 講談社〈アフタヌーンKC〉
第1巻
(2014-11-07発行、 978-4063880090)
第2巻
(2015-03-06発行、 978-4063880397)
第3巻
(2015-10-07発行、 978-4063880977)
第4巻
(2016-03-07発行、 978-4063881295)
第5巻
(2016-08-05発行、 978-4063881660)
第6巻
(2016-12-07発行、 978-4063882230)