あらすじ
第1巻
プロ野球選手として活躍する茂野吾郎を父親に持った少年、茂野大吾は、父親に憧れて野球を始めた。しかし、彼には野球の才能がまったくなかった。必死の練習で守備こそうまくなったものの、打撃ではヒットすら打てず、さらに野球選手としては致命的なほどに肩が弱かった。周囲の大きすぎる期待に応えられない、というコンプレックスで大吾は野球を止め、大きな挫折感を胸に抱えながら日々を漫然と送っていた。そんな中、大吾は同じ小学校に転校して来た佐藤光と出会う。光は大吾と同じく、偉大なプロ野球選手を父親に持つ少年であった。成り行きから、かつての所属チームであった「三船ドルフィンズ」で光と共に試合へと出た大吾は、そこで光の類稀なる野球センスを目の当たりにする。
第2巻
佐藤光に誘われて再び野球を始めた茂野大吾は、改めて野球チーム「三船ドルフィンズ」の練習に参加する。だがそこで大吾と光は、チームの中心選手にしてバッテリーを組んでいる卜部隼人、鈴木アンディと衝突。隼人達は、大会まで1か月という大事な時期にいきなり入部してきた大吾と光のせいで、チームの和が乱れる事を警戒していたのである。それでも光は投手のポジションを希望し、監督である田代に、大会前に一度投手としての実力をテストしてほしいと申し出る。さらに光は、自分の練習に付き合ってくれた大吾に対し、捕手を目指したらどうかと提案。その個人コーチを光の父親であり、元プロ野球選手の佐藤寿也が引き受ける事になった。寿也の指導を受けながら、大吾は捕手の特訓を開始する。そんな中、突然光は群馬へと引っ越す事が決まり、「三船ドルフィンズ」をやめてしまう。
第3巻
佐藤光が野球チーム「三船ドルフィンズ」をやめる事を知り、茂野大吾は捕手への情熱を失くしてしまう。そんな中、大吾は茂野家を訪れた佐藤寿也から、光に託されたという手紙を受け取る。手紙に書いてあった「いつか必ず二人でバッテリーを組もう」という言葉に、捕手への情熱を取り戻した大吾は、再び寿也との特訓の日々に明け暮れるのだった。
そして迎えた大会当日。特訓の甲斐あって大吾はレギュラーの座を獲得する。しかしそれが実力ではなく、親の威光でレギュラーを獲得したと誤解した卜部隼人は、彼をチームメイトとして認めていなかった。試合でミスをした大吾に対して、隼人は辛辣な言葉を浴びせ、大吾は酷く落ち込むが、チームメンバーである佐倉睦子の励ましで再び気合を取り戻す。そんな中、チームのエラーによって、「三船ドルフィンズ」は1アウト満塁のピンチへと陥ってしまう。
第4巻
1アウト満塁で、犠牲フライに十分な打球が茂野大吾が守る右翼へと上がった。肩が弱い大吾では相手のタッチアップを防げないと、卜部隼人、鈴木アンディは諦めるが、佐藤寿也による特訓を受けた大吾は、肩が弱いながらもうまく返球する技術を磨いており、見事に捕殺を記録する。その後、一進一退の攻防が続く中、大吾のエラーによってチームは同点に追いつかれてしまう。その責任を感じ、自らの打順を迎えたところで大吾は選手交代を申し出るが、監督の田代は「ここで変えれば大吾はまた野球を止めてしまうかも知れない」と考え、大吾をそのまま打席へと送り出す。意気消沈したまま打席に向かう大吾だったが、そこへ応援に駆け付けた光が現れる。彼の激励を受けた大吾は二塁打を放ち、見事勝ち越しに成功する。だがその後「三船ドルフィンズ」は、隼人とアンディが立て続けに崩れてピンチを迎える。ここで田代は、今も選手登録が抹消されていなかった光をマウンドに上げようと決意。そして、光の球を唯一受けられる大吾が、キャッチャーマスクをかぶるのだった。
第5巻
「三船ドルフィンズ」は、茂野大吾と佐藤光のバッテリーの活躍によりどうにか勝利をおさめ、2回戦進出を決めた。一方、肉離れで全治10日間の診断を受けた鈴木アンディは2回戦への出場は困難で、引き続き大吾が捕手として試合に出る事になった。急造捕手である大吾に不安を感じた卜部隼人は、大吾と共に特訓を行う。その途中、隼人は大吾の練習に付き合っていた佐倉睦子の類稀なる野球センスに気づき、監督、田代への直談判のうえで、彼女をチームへと迎えるのだった。2回戦の相手は「虹ヶ丘ビートルズ」。エース、玉城を中心とした守りのチームで、監督、小森による緻密な戦略に「三船ドルフィンズ」は苦戦し、1回で2点を先制されてしまう。
第6巻
「虹ヶ丘ビートルズ」の玉城を打ち崩せないままに試合は進み、「三船ドルフィンズ」は、体力に難のある卜部隼人に疲れが見え始め、ピンチを迎えてしまう。このピンチに監督の田代は、不慣れで捕球捌きが疎かになっていた捕手の茂野大吾を左翼に回し、ケガで万全ではない鈴木アンディを捕手として送り出すのだった。正捕手の巧みなリードに隼人は息を吹き返し、どうにかピンチを防ぎ持ちこたえるのだった。その後、エラーにより失点の原因を作った佐倉睦子の三塁打、大吾の意表を突いたプッシュバントやダブルスチールで攻め立て、「三船ドルフィンズ」は相手の動揺を誘っていく。ピンチを迎えた玉城は、腰のケガの影響で封印していた本気のストレートで臨むが、打席の佐藤光はその球をジャストミートしてスタンドへと運ぶのだった。こうして2回戦に勝利をおさめた「三船ドルフィンズ」は、3回戦も勝ち進み、ついにベスト8に進出する。準々決勝の相手は、強豪「東斗ボーイズ」で、打倒「東斗ボーイズ」を目標としていた隼人にとって念願の相手であった。しかし、隼人は田代から先発投手は光でいくと告げられてしまう。
第7巻
茂野大吾は佐倉睦子と行ったバッティングセンターで、次の対戦チームである「東斗ボーイズ」でバッテリーを組む、眉村道塁と眉村渉に出会う。そこで大吾は道塁の球を打たせてもらうが、30球ほど投げてもらって一度も前に飛ばせなかった。道塁の球を打てないと悟った大吾は、対策としてバントの練習を始める。一方、次の大事な試合で先発として登板できないと分かった卜部隼人は、チームを退団しようと決意していた。そんな中、鈴木アンディの説得を受けた隼人は、大吾のバント練習に付き合い、そこで茂野泉に投球を褒められる。これをきっかけにやる気を取り戻した隼人は、退団を思いとどまる。
そして迎えた「東斗ボーイズ」との試合の日。大吾達の予想に反し、「東斗ボーイズ」は「三船ドルフィンズ」を甘く見たのか、先発投手にエースの道塁ではなく小松を起用する。しかも、試合の最中に「三船ドルフィンズ」の先発投手、佐藤光の眼鏡が壊れてしまい、チームはいきなりピンチを招いてしまう。
第8巻
補欠の永井から眼鏡を借りた佐藤光は、どうにか調子を取り戻したものの、3回の裏、「東斗ボーイズ」の眉村道塁を打席に迎えたところで、ついに光は捉えられてしまう。そこで光は、この日のために練習していたスローボールを次打者の眉村渉に投じるが、光の投げる球は渉はスローボールではなく、少年野球では禁じられている変化球のチェンジアップであると抗議。その抗議が認められ、スローボールを投げられなくなった光は、なすすべなく渉にホームランを打たれてしまう。これにより気持ちが切れてしまった光は、次打者にも打たれ、そのあともミスを連発。5対1と大差を付けられてしまう。ベンチに戻った光は自分のミスを理由に交代を申し出るが、チームメイトの永井はそんな弱気の姿勢に厳しい言葉を浴びせるのだった。これにより再び闘志を取り戻した光は、相手投手、小松の球をスタンド外まで運び、5対3までその差を縮める。そして次の回、「三船ドルフィンズ」は卜部隼人と鈴木アンディのバッテリーを送り出し、勢いそのままに相手を三者凡退に切って取る。
第9巻
チャンスを迎えた「三船ドルフィンズ」は、茂野大吾へと打順が回ってくる。守備でバントシフトを敷かれるが、茂野泉のアドバイスを受けた大吾は、見事にスリーバントを決め切り、1アウト1、3塁へとチャンスを広げる。さらにスクイズと鈴木アンディのタイムリー安打で、「三船ドルフィンズ」は同点に追いつく事に成功。ついに眉村道塁をマウンドへと引きずり出すが、その後は劣勢にまわり、相手に3点の追加点を許してしまう。そして迎えた最終回、「三船ドルフィンズ」は大吾と卜部隼人、アンディが出塁し、1アウト満塁のチャンスを迎え、光に打順が回ってくる。この場面で「東斗ボーイズ」の監督は敬遠のサインを出すが、道塁はエースの意地からこれを拒否。真っ向勝負の末に光に長打を浴び、さらに続く代打、永井は振り逃げで出塁。その後、眉村渉のエラーも重なり、「三船ドルフィンズ」は再び同点に追いつく。
第10巻
鈴木アンディのケガの再発、さらにピッチャー返しを受けて卜部隼人が負傷したので、佐藤光と茂野大吾は再びバッテリーを組む事となった。光は最初にも勝る球威で打者を圧倒するが、2アウト満塁のピンチの中、フライを捕球しようとしたところで大吾と衝突してしまう。これがサヨナラエラーとなり、「三船ドルフィンズ」は敗北。しかも、激突した光は意識不明の重体となり、救急車で運ばれる。光の症状は重く、ぶつけた際に首を痛めたため、首から下を動かせない状態になってしまう。
2か月後、大吾は光のケガを自分の責任として抱え込み、ずっと立ち直れないでいた。そんな中、大吾の父親、茂野吾郎が野球のシーズンを終え、台湾から帰国する。吾郎は大吾のために佐藤寿也と連絡を取り、治療中の光と引き合わせる。2か月間の治療により、光は野球のボールを投げられるまでに快復していた。そんな光と会って元気を取り戻した大吾は、再び野球と向き合おうと決める。
それから2年後、大吾は私立風林学園中等部へと進学して、野球に打ち込んでいた。3年生が去り、新2年生となった大吾の所属する風林中野球部には、仁科明をはじめとした5人の新入生が見学に訪れた。しかし、新入生達は大吾ら先輩を見下し、好き勝手に振舞おうとする。そんな彼らに対し、大吾は5対5の変則試合を申し込む。
第11巻
風林中野球部の、上級生と新入生の対決が始まった。新入生側の投手、仁科明は、初回から自分の自信のあるボールをヒットされ、上級生達の実力を目の当たりにする。結果的に、実力主義を掲げていた新入生達は、上級生に実力の差を見せつけられ、横暴な振舞いを改める。そんな中、風林中野球部の監督となる予定だった人物が直前になって就任を拒否。これにより、明以外の新入生4人は入部を取りやめてしまう。しかし、風林中野球部はその後、かつて強豪チームでプレイしていた経験のある新入生、藤井千里、椛島アニータを迎え入れる事に成功し、どうにかチームの体勢を整える。それからしばらく経ち、2週間後に迫った大会を前に、新入生であるアニータは、どこか頼りないキャプテンの大吾に対して不満を持ち始める。一方で大吾はそんなアニータの態度を容認しつつ、キャプテンとしてチーム作りを進めるのだった。
登場人物・キャラクター
茂野 大吾 (しげの だいご) 主人公
小柄な体格をした少年。偉大なプロ野球選手、茂野吾郎を父親に持つ、吾郎に強い尊敬と憧れを抱いており、小学4年生の時に地元の少年野球チーム「三船ドルフィンズ」に入団。しかし、父親に比べると野球の才能に欠け... 関連ページ:茂野 大吾
佐藤 光 (さとう ひかる)
近眼のため眼鏡をかけている少年。元プロ野球選手である佐藤寿也を父親に持つ。背が高く、女子のあいだで話題になるほど容姿端麗。帰国子女であるため、英会話が得意な一方で、英語が時々混じる独特な日本語を話す。物腰が柔らかく、前向きな性格。どこか言動が自信過剰気味で、茂野大吾からは当初、「激しくうざい」と認識されていた。 また、直接的な物言いをするために、それが失礼な言葉になってしまう事がある。ただし、仲間への思いやりは強い。幼少期をニューヨークで過ごしていたが、両親が離婚し、母親に引き取られている。それ以降、父親の寿也に対して素直になれずにいるが、寿也を偉大な父として非常に尊敬している。ちなみに、母親に引き取られたあとも旧姓である「佐藤」を名乗っているのは、幼少期に「名前だけでも父の印を残しておきたい」と母親に言っていたため。 小学6年生時にアメリカから日本の神奈川県へと引っ越し、野球チーム「三船ドルフィンズ」に入団。当初は野球への興味も薄かったが、大吾やチームメイトに感化されて次第にのめり込んでいく。「三船ドルフィンズ」に入団後間もなく、家庭の事情により母親の実家がある群馬県へと引っ越した。 それにより「三船ドルフィンズ」を退団したが、その後も大会出場メンバーとして登録されたままであったので、試合や練習の時のみ電車で神奈川県へ赴き、チームに合流するという生活を送るようになる。その後、「東斗ボーイズ」の試合で首を損傷するケガを負ってしまい、一時は半身不随となる。 しかし、2か月後には立ち上がってボールを投げられるまでに快復。ケガについて大吾が責任を感じていると知って大吾と再会し、自身も必ず復帰すると誓ったうえで、大吾に対して「野球をやめるな」と励ました。右投げ右打ちで、ポジションは投手と外野手を兼任している。強豪チームの強打者達を三振に打ち取れるほどの威力のある速球を投げる。 しかし制球力には難があり、ピッチャープレートの踏み込み位置を変えてコースを投げ分ける、などのテクニックを駆使している。偉大なプロ野球選手であった寿也の野球センスを受け継いでおり、バットの握り方を教えただけでヒットを打ってみせたり、ボールの握り方を教えただけで制球力が向上するなど、類稀なる才能を次々と発揮する。
佐倉 睦子 (さくら むつこ)
小学校で茂野大吾のクラスメイトだった少女。自身を地味な存在だと認識している。プロ野球選手の息子として人気があり、かつ野球に関してひたむきに努力する大吾に好意を持っていた。しかし、その思いを伝えた際に大吾から捻くれた態度を取られ、一時は「大嫌い」と口にするほど大吾への嫌悪感を示す。ただ、野球を通して前向きになっていく大吾を見て、再び彼に惹かれていく。 小学6年生時に大吾や佐藤光に影響を受け、野球チーム「三船ドルフィンズ」に入団。大会1回戦こそ控えで終わったが、2回戦の「虹ヶ丘ビートルズ」戦からレギュラーに昇格する。しかし、大会直前に入団しておきながら、レギュラーを奪って悪者になりたくないという思いから、当初はレギュラー昇格を嫌がっていた。 それを理由に2回戦では控えめなプレーが目立ったが、「選ばれたからには、全力でプレーする事が控えに回った選手に対する礼儀だ」と隼人に叱責され、それからは積極的な姿勢を見せるようになる。小学校を卒業したあとは私立風林学園中等部へと進学し、野球部に入部。身長が伸び、大吾を超える長身になった。右投げ右打ちで、小学生時のポジションは外野手。 中学では人数が少ない事や大吾の勧めもあって、投手を務めるようになる。幼少の頃から兄とキャッチボールをしていた影響で、野球センスには秀でている。走攻守に優れ、特に打撃においては佐藤寿也の指導を受けていたので、卜部隼人の投げる球を綺麗に打ち返すほどの打撃センスを持つ。また、佐藤光の投げる剛速球を受け止め切るなど、非凡な野球センスを持つ。 投手としては制球力に優れ、スライダーとシンカーを投げ分ける技巧派。しかしストレートは遅く、捕手の椛島アニータからは「この球でなんでピッチャー候補なのか」と辛口の評価を受けた。もともと投手希望ではなかったため、アニータのこの言葉には大いに憤慨していた。
卜部 隼人 (うらべ はやと)
少年野球チーム「三船ドルフィンズ」に在籍している少年。茂野大吾のチームメイト。目つきが鋭く、大吾を「親の七光」呼ばわりするなど、直接的に悪態をつく事が多い。しかし、その一方でレギュラーに選ばれた佐倉睦子が控えめなプレイをした際は、それを正すように促すなど、一定の道理はわきまえている。2回戦の試合を前に相手チームの偵察へと赴いたり、正捕手の鈴木アンディに代わって捕手を務めた大吾の特訓を手伝ったりと、野球に真摯な姿勢で向き合っている。 幼少期は小柄でぜん息持ちだったが、父親の勧めで野球を始めた。甲子園を経験した父親のもとで、低学年からマンツーマン指導を受け、野球の練習に打ち込んできた。次第に身体も大きくなり、ぜん息も完治。 小学4年生になってからは、強豪として知られる少年野球チーム「東斗ボーイズ」に入団する。当初は「東斗ボーイズ」でも活躍を期待されていた投手だったが、同じチームに入ってきたプロ野球選手の息子である眉村渉にポジションを奪われた。その後は渉に勝つ事を目標に掲げ、小学5年生になってから「東斗ボーイズ」をやめて「三船ドルフィンズ」に入団。 しかし、レベルの低い守備やエラーに足を引っ張られ、小学5年生までは1回戦も突破できずに大会を終えた。小学6年生になり、「三船ドルフィンズ」に入団してきた大吾や佐藤光に対しては嫌悪感を露わにしたが、これはかつてと同じように、プロ野球選手の息子にポジションを奪われるのではないかと警戒したためである。 しかし、大吾や光の実力やひたむきな姿勢を見て、徐々に態度を軟化させていく。「東斗ボーイズ」の元チームメイトである渉には、チームから逃げるようにやめたので腰抜けと思われていたが、自身の投球を見せつけて警戒に値する投手であると考えを改めさせた。投手としては制球力に長けているが、体力に難がある。また、精神的に弱い面があり、打ち込まれると一気に崩れてしまう。
鈴木 アンディ (すずき あんでぃ)
少年野球チーム「三船ドルフィンズ」に所属している少年。茂野大吾のチームメイト。三白眼で目つきが悪く、ハーフなので同年代に比べて大柄な体格をしている。友人思いで冷静沈着な性格の持ち主であり、頭が切れる。小学4年生になった際、強豪である「東斗ボーイズ」に入団し、野球を始めた。しかし、小学5年生になった頃、友人であった隼人の「渉に勝つ」という目標を後押しするため、共に「三船ドルフィンズ」へと移籍した。 小学6年生時に入団してきた大吾や佐藤光に対しては、大会直前に入団してきたのでチームに混乱を招くと考え、当初はあまり快く思っていなかった。しかし、彼らの野球に対する姿勢を見て、徐々に評価を改めていく。「三船ドルフィンズ」では捕手を務めており、隼人とはバッテリーを組んでいる。 捕手としての適性が非常に高い選手で、元プロ野球選手である茂野英殻からも、配球の組み立てを褒められるほど。また、長打力を期待できる強打者であり、チームでは4番を務めている。眉村道塁と対戦した際には、彼女が決め球をサイドスローで投げる事までも読み切ってヒットを打つなど、捕手経験を活かした、相手の配球を読む技術にも長ける。
永井 (ながい)
少年野球チーム「三船ドルフィンズ」に所属している少年。茂野大吾のチームメイト。小学6年生の最後の大会で、2回戦の「虹ヶ丘ビートルズ」戦から佐倉睦子にレギュラーの座を奪われた。しかし、準々決勝の「東斗ボーイズ」戦では、眼鏡を壊して調子を落とした佐藤光に自分の眼鏡を貸すなどして、チームに貢献している。 「東斗ボーイズ」戦の最終回には代打として出場し、振り逃げで出塁してチャンスを広げるなど、最後まであきらめない強い精神力を持つ。
田代 (たしろ)
少年野球チーム「三船ドルフィンズ」の監督を務めている男性。普段はサラリーマンとして働いている。監督としてチームが勝つ事を最優先にしており、最後の大会となる小学6年生の永井に代わって、新人の佐倉睦子を起用するなど、野球に対しては一切妥協を許さない。その一方で、茂野大吾がエラーで大量失点した際には、彼の今後の人生を考えて、あえて交代させなかったり、スタメン落ちした永井にも出場のチャンスを作るなど、チームに所属する子供達の事は人一倍考えている人格者。 また、相手の守備の弱点を知りつつ、ここぞという場面が来るまでそこを突かずに温存しておくなど、巧みな采配を見せる知将でもある。実は大吾の父親、茂野吾郎とは、高校生の時にバッテリーを組んだ経験がある。
玉城 (たまき)
少年野球チーム「虹ヶ丘ビートルズ」で投手を務めている少年。小学生としては抜きん出た長身で、顔も老けている。そのため、卜部隼人からは「あれで小学生かよ」とまで酷評されている。本来弱肩である茂野大吾が、練習の成果で身につけた送球を見て「悪くないスローイング」と評するなど、冷静で優れた判断力を持つ。投手としては、スローボール主体のイーファスピッチングと、スナップスローを駆使した速球を投げ分ける投球を得意としている。 まるでキャッチボールをしているかのような投球フォームだが、これは腰椎終板障害を患っており、監督、小森に力をセーブするよう言われているため。腰への影響を無視して本気になれば、115キロメートルもの速球を投げる事ができる。 また、打者としてもチームの4番を務めるなど、打撃センスにも優れている選手。外野フライを打った際に、審判やベンチに聞こえない位置から偽の指示を送って佐倉睦子のエラーを誘うなど、勝つためならば多少汚い手を使う事もいとわない。
小森 (こもり)
少年野球チーム「虹ヶ丘ビートルズ」の監督を務める男性。眼鏡をかけており、データや頭脳を駆使した戦術的な野球を得意とする。弱小チームの「三船ドルフィンズ」のデータすら細かく把握するなど、野球に対する妥協はいっさいない。ただ、勝ちにこだわる一方で選手の身体を一番に考えており、特に腰に持病を持つ玉城に対しては、ケガを悪化させないように、全力でのピッチングを禁止している。 高校時代は三船高校で野球をしており、田代や茂野吾郎の在籍していた名門、聖秀学院高校をあと一歩まで追い詰めた経験がある。
眉村 道塁 (まゆむら みちる)
少年野球チーム「東斗ボーイズ」で投手を務めている少女。同じチームで捕手を務める眉村渉の双子の姉。プロ野球選手だった眉村健の娘で、その才能を受け継ぎ、類稀なる野球センスを持つ。また、野球に取り組む姿勢も人一倍まじめな努力家でもある。普段は冷静な性格ながら、ここ一番という時には負けん気が強くなる熱い心の持ち主。また、チームメイトの小松に、「小松と全国大会に行きたいよ」と可愛く告げて、やる気を出させるなど、勝利のためならば抵抗なく演技もできる腹黒い一面がある。 小学3年生の頃、父親が出ていたワールドシリーズの試合で、茂野吾郎の投球を見て以来、彼の大ファンとなった。投手としては、サイドスローやアンダースロー、オーバースローを投げ分ける非常に器用な選手。 普段は制球力を重視したサイドスローでの投球を中心としているが、そのサイドスローですら「三船ドルフィンズ」の打者から6者連続で三振を奪うほどの球速を誇る。しかし、眉村道塁本人は吾郎と同じ左オーバースローでの豪快なフォームを目指しており、球速を重視する場面ではオーバースローで投げる。ちなみに投手を始めた当初は制球力が定まらないという理由で、オーバースローでの投球を断念していたが、練習を重ねて、オーバースローでもある程度の制球力を身につけた。 これは渉も知らなかった事で、「三船ドルフィンズ」との試合終盤で披露した。打者としても能力が高く、チームではトップバッターを務めている。
眉村 渉 (まゆむら わたる)
少年野球チーム「東斗ボーイズ」で捕手を務めている少年。同じチームで投手を務める眉村道塁の双子の弟。プロ野球選手だった眉村健の息子で、その才能を受け継ぎ、類稀なる野球センスを持つ。判断力や統率力に長け、チームでは司令塔の役割を担っているが、「三船ドルフィンズ」との試合で劣勢に陥ると動揺するなど、精神的にはまだ未熟なところがある。 もともと「東斗ボーイズ」に入団するまで野球は未経験だったが、抜群の運動神経により2、3か月で頭角を現し、小学4年生の秋頃には、投手として同期のエース格になるほどの成長を遂げた。だが、その頃からヒジに違和感を覚え始め、父親に投球禁止を言い渡されて捕手に転向した。小学5年生時にチームメイトであった「三船ドルフィンズ」の卜部隼人と鈴木アンディを、「逃げるように辞めた腰抜け」と認識していたが、試合で彼らの活躍を目の当たりにしてからは、それが誤解であったと、警戒を新たにする柔軟さを持つ。 打撃においてはチーム一の長打力を誇る。
仁科 明 (にしな あきら)
私立風林学園中等部の野球部に入部を志願した少年。茂野大吾の1年下の後輩にあたる。人数不足で弱体化した野球部の補強選手として、スポーツ推薦で私立風林学園中等部へと入学した。教師相手にもため口で話すなど素行の悪さが目立つが、スポーツ推薦であるために教師からはそれらを咎められずにいる。野球部の上級生相手にも同じく不遜な態度で振舞っていたが、上級生との練習試合で負けてからは、若干ながらおとなしくなる。 もともと、強豪チーム「南陽ライオンズ」の監督が、私立風林学園中等部の野球部監督を務める予定だったため入部を希望していたものの、入部直前になって監督が来ないと決定。しかし、野球部に入るという条件でスポーツ推薦入学を果たしていたため、嫌々ながら野球部へと入部する事になった。 小学生時代では投手を務めており、中学でも引き続き投手を希望する。強豪チーム出身でもあり、優れた野球センスを持つが、それはあくまでも小学生レベルの実力だった。中学入学当初は大吾に簡単にヒットを打たれ、同年代の捕手、椛島アニータからは、大したコントロールもないうえに、30球くらい投げたら球速も制球力もガタ落ちと酷評されてしまう。
椛島 アニータ (かばしま あにーた)
私立風林学園中等部の野球部に入部した少女。茂野大吾の1年下の後輩にあたる。関西出身の父親とブラジル人の母親を持つハーフで、金髪で色黒の肌をしている。また、身体は同年代の女子よりも大きい。小学4年生の時にブラジルからやって来た帰国子女で、会話に片言の日本語が混じった特徴的なしゃべり方をする。不遜な性格で、思った事はなんでも口にしてしまう毒舌家。 特に、男子を敵視するような発言が多い。同年代の男子、仁科明の投球を見て、試合で使いものにならない投手と切り捨てたほか、キャプテンの大吾に対しても頼りないと軽視している。しかし大吾に対しては、彼の野球に対する真摯姿勢を見て、徐々に態度を軟化させていく。強豪チーム「横浜リトル」の出身であり、捕手としての実力は高い。
茂野 吾郎 (しげの ごろう)
プロ野球選手として活躍し続ける男性。茂野泉と茂野大吾の父親。高校を出てから単身アメリカへと渡り、左の本格派投手として、20代はメジャーリーグや日本代表でも活躍。その後、ケガにより投手から野手へと転向している。30代は日本のプロ野球で打者として活躍し、40代になってからも台湾で現役を続けている。台湾でのシーズンを終えて帰国した際は、佐藤光のケガによって酷く落ち込んでいる大吾の事情を知り、術後回復していた光と会わせて彼を励ました。 その後は家族への相談なしに中南米のウインターリーグへ参加を決め、単身で海外へと渡る。地域の野球振興にも貢献しており、少年野球チーム「三船ドルフィンズ」には遠征用の専用バスを寄贈している。
茂野 薫 (しげの かおる)
茂野泉と茂野大吾の母親。野球がうまくいかずにやさぐれていた大吾の教育には長く悩んでいたが、大吾が再び野球を始めたので安堵している。自身からは何も口を出さず、「大吾は大吾の野球をやればいい」と見守る事に徹している。野球をがんばっている大吾のために練習に付き合おうとした際、四十肩を発症。それからは暫くのあいだ、医者に野球を止められていた。
茂野 泉 (しげの いずみ)
茂野吾郎と茂野薫の長女。茂野大吾よりも3歳年上の姉。小中高と野球漬けの毎日を送っている。整った容姿の持ち主で、初対面の卜部隼人が見惚れてしまったほどの美形。明るく活発で、気の強い性格をしている。勉強や運動など、多方面で優秀であるがゆえに、今一つ優秀とはいえない大吾の気持ちを理解していない発言が多く、彼が日々を怠惰に過ごしていたあいだは、特に苦々しく思っていた。 しかし、大吾が真剣に野球に取り組み始めると次第に彼を認め、よき理解者となっていく。自宅ではシャツ1枚に下着姿と露出の多い恰好で過ごす事が多く、大吾が中学生になったあともそれを気にしないなど、少々無頓着なところがある。
茂野 英殻 (しげの ひでき)
元プロ野球選手の男性。茂野吾郎の義父。茂野大吾とは直接的には血がつながっていないが、祖父にあたる。白髪で、口ひげを生やしている老人だが、飛んできたファールボールを素手でキャッチしてみせるなど、その身体能力はいまだに高い。大吾が1年で野球をやめてしまったので内心ショックを受けていたが、再び野球を始めたと聞き、少年野球チーム「三船ドルフィンズ」の試合には応援に駆けつけている。
佐藤 寿也 (さとう としや)
元プロ野球選手の男性。佐藤光の父親。外出時はサングラスをかけている事が多い。茂野吾郎の依頼で、茂野大吾の個人コーチを引き受ける。才能を理由に自分を卑下する大吾に対して、才能がすべてではないと指導するなど、彼に大きな影響を与えた。また、大吾の事は「伸び代は大きい」とその才能も認めている。妻とは離婚しており、妻に引き取られた光とは、親子であるにもかかわらず、遠慮がちな関係になっている。
集団・組織
三船ドルフィンズ (みふねどるふぃんず)
茂野大吾や佐藤光が所属している少年野球チーム。田代が監督を務めている。かつては茂野泉も加入していた。強豪として知られた時期もあったが、現在は弱小チームとなっており、近年では大会の1回戦すら突破できずにいた。大吾や光が加入した年の夏の大会ではベスト8まで進んだものの、強豪として知られる「東斗ボーイズ」に惜敗している。
前作
MAJOR (めじゃー)
プロ野球選手の父を持つ主人公本田吾郎がその類まれなる才能といかなる困難にも負けないバイタリティを武器に、並み居る強豪たちと野球で戦っていく半生を描いた長編野球漫画。小学館「週刊少年サンデー」1994年... 関連ページ:MAJOR
書誌情報
MAJOR 2nd 24巻 小学館〈少年サンデーコミックス〉
第1巻
(2015-06-12発行、 978-4091261588)
第2巻
(2015-09-18発行、 978-4091262448)
第3巻
(2015-12-12発行、 978-4091264831)
第4巻
(2016-03-18発行、 978-4091268204)
第5巻
(2016-07-12発行、 978-4091271679)
第6巻
(2016-09-16発行、 978-4091273741)
第7巻
(2016-11-18発行、 978-4091274144)
第8巻
(2017-02-17発行、 978-4091274991)
第9巻
(2017-05-18発行、 978-4091275684)
第10巻
(2017-08-18発行、 978-4091276773)
第11巻
(2017-10-18発行、 978-4091278548)
第12巻
(2018-01-18発行、 978-4091280756)
第13巻
(2018-03-16発行、 978-4091280954)
第14巻
(2018-06-18発行、 978-4091282583)
第15巻
(2018-08-17発行、 978-4091283498)
第16巻
(2018-11-16発行、 978-4091285799)
第17巻
(2019-10-18発行、 978-4091288059)
第18巻
(2020-01-17発行、 978-4091295422)
第19巻
(2020-04-16発行、 978-4098500628)
第20巻
(2020-07-17発行、 978-4098501588)
第21巻
(2020-10-16発行、 978-4098502653)
第22巻
(2021-02-18発行、 978-4098503865)
第23巻
(2021-06-17発行、 978-4098505357)
第24巻
(2021-11-18発行、 978-4098507306)