あらすじ
第1巻
2016年2月、我門悠太は引きこもりニート生活を満喫すべく、運営しているアフィリエイトブログサイト「超常科学キリキリバサラ」のネタ探しをしていた。運営スタッフである成沢稜歌の薦めで、テレビで絶賛売り出し中の科学者、橋上諫征への突撃取材を試みる事となった我門は、諫征の研究所に訪れたところで、彼の殺害遺体を発見してしまう。諫征の死体を前に我門は混乱するが、そこにゾン子と名乗る謎の存在がスカイセンサーから我門に指示を下す。濡れ衣を着せられたくなかったらという言葉に従って、教授の金歯を抜いて「鍵」を回収した我門は、恐怖に駆られながらそのまま事件現場をあとにする。殺害現場からそのまま逃げ出した我門は罪悪感に苛まれつつ、事件に巨大な陰謀が渦巻いているのではないかと疑心暗鬼になっていた。ブログのネタになるからと出会った占い師の相川実優羽にも疑いの感情を持つなど、出会う人すべてが疑わしく見えていた我門だったが、その態度から実優羽を傷つけた事を反省し、自分で犯人を捕まえる決心を固める。諫征の事件の痕跡から紅ノ亞里亞に疑いを向けるものの、捜査は一向に進まない。そんな中、我門は井の頭公園の池で不可解な事件が起きた事を知る。集団催眠とも集団自殺とも取れる不可解な「ニゴロ事件」に頭を悩ませる我門であったが、そこで我門は諫征の息子である橋上サライと出会う。
第2巻
橋上サライの協力を取りつけた我門悠太は、橋上諫征のダイイングメッセージ「CODE」の謎を調べるべく、諫征の書斎を訪れていた。突然、声を掛けてきたゾン子の助言もあり、我門は諫征が死ぬ前に天井の有孔ボードをパテで埋める事で暗号を残している事に気づく。サライと協力して暗号を考察した結果、二人は諫征が「ニゴロ事件」を予期し、被害者の名前を暗号に残していたという結論に達する。事件の解決の手がかりを見つけた事に奮起し、暗号を解いて被害者の名前を見つけていく我門であったが、その中に自分自身の名前を見つけてしまう。しかし我門は同姓同名の別人だと誤魔化し、その名前を見なかった事にしてしまう。一方、相川実優羽は親友である川畑千津が行方不明になって心配していた。実優羽は我門に相談し、二人で情報を精査する事で、千津が「コトリバコ」の事件に巻き込まれたのを知り、実優羽と我門は吉祥寺の延命寺で、相模の手によって変わり果てた姿になった千津の遺体を見つける。事件のショックから心が折れ、これ以上事件に関わるのを止めようとする我門であったが、そこでサライと澄風桐子によって、自分達は「ニゴロ事件」の被害者で「すでに死んでいる」という、我門自身察しつつも、今まで目を背けていた事実を突きつけられる。
第3巻
自分達がすでに死に、幽霊となっている事実を突きつけられた我門悠太は、自分が何をすべきか見失ってしまう。そんな中、我門は、自分の姿が見える成沢稜歌がまだ生きている事を知り、彼女だけでもにぎやかな日常に帰そうと誓う。我門は「コトリバコ」の事件で落ち込む相川実優羽を励まし、一連の陰謀を解決するため改めて事件に向き合う事を決意。一方、森塚駿は「300人委員会」のエージェントという正体を明かし、独自に調査を開始していた。我門のもとを訪れた森塚は、一連の事件には我門の父親が作ったスピリチュアルセミナー「八福神の会」がかかわっている事を教えられる。そして我門は森塚の紹介によって女子高校生捜査官の鬼崎あすなと出会う。鬼崎は持ち前の能力によって、生きていながら我門を認識できるため、我門は鬼崎に自分達の情報を渡し、事件を捜査する事を提案する。独自に調査を続けていた橋上サライの情報と突如現れた西園梨々花の助言によって、「コトリバコ」の事件を引き起こしていた相模の新たな犯行を阻止した一行は、捕らえた相模の言葉から一連の事件が「幽霊」を作り出す「霊体生成実験」だったと知る。「スカンジウム」と「新・世界システム」、事件にかかわる新たなキーワードを手に入れた一行は、それについて調査を開始する。
第4巻
事件について相談していた一行であったが、その中の何気ない一言から我門悠太は意外な人物が「橋上諫征殺人事件」の犯人である事に気づいてしまう。正体を露にした犯人は我門達に襲い掛かるが、スカイセンサーから聞こえるゾン子の助言と橋上サライの機転によって撃退する事に成功する。そして犯人を捕らえた鬼崎あすなは森塚駿の遺産を見つける事で、遂に事件の真相にたどり着く。事件の裏には「ニコラ・テスラの遺産」を使って永遠の命を手にしようとしている秘密結社「MMG」が存在する事を突き止めた鬼崎は、我門達にそれを打ち明ける。戦うべき敵を見定める一行であったが、そこにゾン子から成沢稜歌が「MMG」に囚われたという知らせが届く。稜歌が「MMG」の行う実験において非常に重要な存在であると知った一行は、稜歌を救い、「MMG」の野望を挫くため、自らの命を賭した決戦の地へと赴く決心をする。
登場人物・キャラクター
我門 悠太 (がもん ゆうた)
成明高校に通う2年生の男子。年齢は17歳。ニートである事を公言しており、学校にも通わず「カフェ☆ブルゥムーン」に入り浸り、広告費目的でアフィリエイトブログ「超常科学キリキリバサラ」の運営に勤しんでいる。成沢稜歌からは「ガモタン」のあだ名で呼ばれている。ブログの取材をきっかけにして「橋上諫征殺人事件」に巻き込まれ、知らずに大きな陰謀の渦中に踏み込んでしまう。 本人の与(あずか)り知らぬ内に、大きな陰謀の中心人物となっていた我門悠太の行動は、敵味方多くの者の注目の的となっている。父親の形見であるスカイセンサーを肌身離さず持っており、「橋上諫征殺人事件」以降、スカイセンサーを通じてゾン子から連絡が入るようになり、度々事件の助言を受け取った。 普段はテンションの高い言動で誤魔化しているが、メンタルは弱く小心者。事件に巻き込まれて以降も、人のいないところでは弱い部分を露にし、重要な事実を手に入れても、自分にとって都合の悪い物は見て見ぬ振りをした。「コトリバコ」の事件と自分もニゴロ事件によって幽霊になっていた事実で一度は心が折れたが、唯一の友人である稜歌だけは生きている事に希望を見出し、彼女を守るため再び事件に立ち向かう決心をした。
成沢 稜歌 (なるさわ りょうか)
成明高校に通う年生の女子。頭のネジが何本が飛んでいると形容されるほどのテンションの高い不思議ちゃんで、服の上からでも分かるほどの巨乳が特徴。「いししゅー」という謎の言葉を口癖のようによく口ずさんでいる。ニートで不登校気味な我門悠太の唯一の友人で、「ウッドベリーズ」のフローズンヨーグルトをおごってもらうのを条件に、「超常科学キリキリバサラ」の運営に協力している。 我門からは「りょーたす」と呼ばれている。主に街中で噂話を拾ってきたり、取材に行くという形で協力しており、我門に橋上諫征の研究所に行くように薦めた。時折、言動ががらりと変わる事があり、「コトリバコ」の事件では、ショックを受けた相川実優羽を率先して介護したり、我門が幽霊であるという事実を知った時は、無表情になって急に走り出したりしていた。 実は「ニゴロ事件」の裏で暗躍する「MMG」の総帥、成沢徳生の孫娘で、非人道的な実験を繰り返す祖父に反旗を翻し、ゾン子と組んで事件を解決に導くべく行動していた。極度の「霊媒体質」であるため、生者にもかかわらず我門ら幽霊と会話を交わす事ができていた。 しかし、祖父からはその特殊体質を「永遠の命」のための材料として欲されていたため、のちに「MMG」によって囚われの身になってしまう。
橋上 サライ (はしがみ さらい)
成明大学に通う男子。橋上諫征の息子で、かつては父親を尊敬していたが、最近はオカルトに傾倒する父親の事を快く思っていなかった。父親への反抗心から極度のオカルト否定派で、「超常科学キリキリバサラ」にも否定派意見を「SARAI」のハンドルネームで何度も投稿していた。父親の死に不信感を抱き、森塚駿の手紙に導かれて我門悠太と接触し、協力して事件の捜査をしていく。 博識で理屈屋な反面、融通が利かない部分が目立つが、我門が諫征の書斎で見つけたCODEを解読したり、最初は怪しんでいた「昏い水の底」の重要性に気づいて独自に調査をしたり、冷静沈着な判断力で捜査を大きく助けた。事件を捜査して行く内に自分が幽霊となり果て、非科学的な状況を目の当たりにしてしまう。 そして如何に自分が狭い価値観に捉われていたのか実感し、父親への反発心も次第に薄れていった。最終的には嫌っていた父親のオカルト研究を利用した幽霊の戦い方を考案し、我門達を危機から救った。
相川 実優羽 (あいかわ みゆう)
成明高校に通う1年生の女子。インターネット配信を利用して人気爆発中の占い師。ネットでは「相川みゅう」の名で通っており、学校でも出待ちがいるほどの人気となっている。カードをめくると、対象の未来の映像を見る能力を持ち、相川実優羽自身は自分の能力を「ビジョン」と呼んでいる。オカルト否定派の橋上サライの電話をきっかけにして自分自身を占った結果、「ガモンユウタといる事で未来が開ける」と出たため、ブログ取材に来た我門悠太と行動を共にするようになった。 我門からは「みゅうポム」のあだ名で呼ばれる。「ニゴロ事件」以降、連絡が取れない親友の川畑千津の事を心配しており、彼女の手がかりを追っている内に、我門といっしょに「コトリバコ」の事件に遭遇してしまう。 変わり果てた親友の姿を見て、一時は塞ぎ込んでしまうが、西園梨々花の挑発によって相模への怒りを再燃させ、繰り返されようとする「コトリバコ」の事件を食い止めるため行動する。結果的に実優羽の行動が相模の新たな犯行の阻止と捕縛につながり、相模の裏に存在する「MMG」の正体を暴く一助となった。 実は実優羽の「ビジョン」の正体は、「MMG」の作った「新・世界システム」の副産物で、西園など似た能力を持つ者が存在していた。
紅ノ 亞里亞 (くれないの ありあ)
黒魔術代行屋「紅ノ館(くれないのやかた)」を営む少女。「悪魔」と呼ばれる存在を使役しており、呪いたい対象の髪の毛を使う事で、対象を苦しめる呪いを掛ける事ができる。橋上諫征の遺髪がポストに投函された事と成沢稜歌が偽の依頼をした事で、一連の事件にかかわっていく。本名は「水無瀬莉愛」と言い、実家はかなりの資産家。 両親は他界しており、最愛の兄の手によって育てられたが、14歳の時に兄とも死別している。だが紅ノ亞里亞はその後、死んだはずの兄と1年間幸せに暮らした記憶があり、周囲に兄のミイラと暮らしていたという、その異常な言動を指摘されるまで、亞里亞は現実をうまく認識できずにいた。兄の死を認識してからは死に場所を探してさまよっていたが、その際に「悪魔」である日下部吉柳と出会い、彼に依存する形で黒魔術代行業を営んでいる。 実は兄の死にはMMGの幽霊実験が深くかかわっており、彼女の中の兄との記憶は兄の幽霊と過ごした記憶だった。真実を知って以降は、日下部と共に前に進む決意を固める。
日下部 吉柳 (くさかべ きりゅう)
紅ノ亞里亞に取り憑いている「悪魔」。姿を現さず、亞里亞に指示をしてその行動をうかがっている。その正体は日下部吉柳という名の青年の幽霊で、「ニゴロ事件」以前に行われた「スカンジウム定着実験」によって生まれた幽霊の実験体の生き残り。関係者からは「ゼロ世代」と呼ばれており、「MMG」は管理できない幽霊である日下部を抹殺すべく動いていた。 生前は妹のために「死神」と呼ばれるほど容赦のない取立て業をして恐れられており、亞里亞の事も妹と重ねて気に掛けている。事件に関わって行く亞里亞を心配していたが、最終的に兄の真実を知りたがっている亞里亞の覚悟を認め、自らの正体と真実を明かした。
澄風 桐子 (すみかぜ とうこ)
オカルト雑誌「ムムー」の女性記者。記者という職業柄幅広い人脈を持ち、生前の橋上諫征や相川実優羽とも独自に交流を持っていた。諫征の息子である橋上サライとも顔見知りで、「ニゴロ事件」以降、日常で感じた違和感をきっかけにサライと協力して幽霊の可能性について調べていた。面倒見のいい性格で、「コトリバコ」の事件で相川が塞ぎ込んだ時は、彼女を助けるため真っ先に駆けつけている。
西園 梨々花 (にしぞの りりか)
同人作家として漫画を描いている女子大学生。未来を夢見るという特殊能力を持つと自称し、夢で見た内容を同人誌に書き起こしている。実際、彼女の描いた同人誌「昏い水の底」には、不自然なほど一連の事件と符合する部分が多く、我門悠太は「預言書」であると評した。似た能力を持つ相川実優羽には、嫉妬とも敵愾心とも取れる感情を持ち、「コトリバコ」の事件で塞ぎ込んだ実優羽の前に現れ、煽るような言葉を投げ掛けた。
森塚 駿 (もりづか しゅん)
武蔵野署に所属する男性刑事。「橋上諫征殺人事件」の捜査を担当したが、事件の陰に隠れて独自に暗躍をする。サブカルチャーに対する造詣が深く、とあるアニメに登場する刑事のキャラクターにあこがれている。その刑事にあやかって、ネットでは「どーも銭型です」と言うハンドルネームを使っている。またソフト帽子にトレンチコートという、アニメの刑事と同じ格好をしているが、小柄なため周囲からは子供がコスプレをしているように思われている。 非凡な洞察力を持ち、「超常科学キリキリバサラ」とそれを運営する我門悠太に事件を解く鍵が集まりつつある、と事件初期に気づいており、「どーも銭型です」のハンドルネームを使って事件の情報を我門にリークしていた。「橋上諫征殺人事件」と平行して「ニゴロ事件」も追っていたが、気づかぬ内に自分自身も事件の被害に遭って幽霊になってしまう。 後任の鬼崎あすなの事を気にかけており、彼女に宛てて密かにメッセージを残していた。実は「300人委員会」のエージェントで、暴走する「MMG」の調査を目的に「橋上諫征殺人事件」を追っていた。
鬼崎 あすな (きさき あすな)
元FBI捜査官の女子高校生。手で触れた物の記憶を読み取る「サイコメトリー」の能力を持つため、子供の頃からFBIなどの捜査に協力していた。FBI時代に研修に来ていた森塚駿に世話になっており、自分の能力を恐れずに向き合ってくれた森塚に特別な感情を抱いている。森塚が死んだ事で、彼の後任という形で「ニゴロ事件」の捜査にかかわっていくが、自分の能力でも読み取れない状況に事件の異常性を認識する。 その後、幽霊となった我門悠太と出会い、彼らと協力して事件に当たる事となった。我門からは「あすにゃー」と呼ばれる。なお、鬼崎あすなは我門の事は見えるが、ほかの幽霊の姿を見る事はできなかった。幽霊達の情報と森塚の遺産によって事件の真相に気づき、幽霊達と共に「MMG」の野望を挫くため行動を開始する。
和泉 公平 (いずみ こうへい)
「カフェ☆ブルゥムーン」のマスター。長身のオカマで、テンションの高いオネェ言葉で入り浸る我門悠太に接する。喫茶店のマスターだが、そのセンスは独特で、我門は和泉が作るドリンクは「激マズ」だと言っている。また同じくテンションの高い成沢稜歌とは気が合うのかよくいっしょになって騒いでいる。
橋上 諫征 (はしがみ いさゆき)
世間のオカルトブームによって知名度が急上昇している男性科学者。心霊現象、超常現象の科学的な解明を促進する組織、SPR(The Society for Psychical Research)のメンバー。「幽霊の存在を認めた科学者」としてテレビや雑誌などのメディアにもてはやされている。我門悠太の通う成明高校のとなりにある成明大学に勤めている。 息子である橋上サライとは、オカルトに関する意識の違いから対立しており、親子仲は悪い。大きな陰謀にかかわっており、何者かによって1週間の拷問の末に殺害されてしまう。しかし自らの死期を悟っていた節があり、ダイイングメッセージに残した「CODE」と、天井に予め暗号にした「ニゴロ事件」の被害者のデータを残していた。 息子に冷たく当たっていたのも、真実を話して事件に巻き込まれないようにしていた橋上諫征なりの親心の表れであったが、その想い空しく、サライは事件に深くかかわってしまう。MMGに対抗するための切り札であるスカイセンサーの鍵を、金歯のインプラントとして隠し持っており、殺されたあと、第一発見者である我門がゾン子の指示に従って回収した。
相模 (さがみ)
「コトリバコ」の事件を引き起こしていたアルビノの少年。「MMG」の事情にも深くかかわっているが、「コトリバコ」の事件は相模の独断による暴走で、未成年である事を盾に残虐な犯行を行っていた。川畑千津殺害後も「実験」と称して新たな犯行を行おうとしていたが、西園梨々花に導かれた相川実優羽に邪魔をされ、鬼崎あすなと警察によって逮捕された。 取調べでも反省の色はまったく見せず、未成年である事を理由に無罪を主張した。
川畑 千津 (かわばた ちづ)
成明高校に通う1年生の女子。相川実優羽の親友で、実優羽がネット配信で占いを始めたのも川畑千津の助言がきっかけだった。実優羽の事は保護者のように心配しており、何かと気にかけていた。「ニゴロ事件」以降、「小鳥ば」というメールを残して失踪してしまう。実は相模によって実優羽と間違えられて拉致されてしまい、彼の「実験」の餌食になっていた。 我門悠太の助けを借りた実優羽が川畑を発見した際には、原形をとどめないレベルで遺体を損壊されて、愛用していた髪留めと共に「コトリバコ」にすし詰めにされていた。
鷹栖 (たかす)
秘密結社「MMG」の構成員。怜悧な雰囲気を持つ中年の男性。総帥である成沢徳生に絶対の忠誠を捧げ、「新・世界システム」による「永遠の命」と「恒久的な世界支配」を目論む。「ニゴロ事件」を引き起こした黒幕で、羽斗山を使った情報操作で事件を闇に葬ろうとしていた。また幽霊の発生にも気づいており、密かに我門悠太を差し向けていたり、紅ノ亞里亞の裏に隠れる日下部吉柳の存在をあぶりだそうとしていた。
羽斗山 (はとやま)
秘密結社「MMG」の構成員。壮年の男性で、「MMG」の情報操作を担当する。警察に「ニゴロ事件」を集団自殺として認めさせたり、メディアに「集団催眠説」を唱えさせたり、各界に強い影響力を持つ。ただ鷹栖の独断専行には頭を痛めており、会議では鷹栖に苦言を呈した。
成沢 徳生 (なるさわ とくお)
「MMG」総帥にして成沢稜歌の祖父。「300人委員会」が作り、放棄した「新・世界システム」の技術を応用して「永遠の命」を手にする事を目論み、鷹須に指示して多くの事件を引き起こした。人を人とも思わぬ傍若無人な性格をしており、孫娘の稜歌も自らの肉体のスペアとしか考えておらず、その結果、稜歌の魂が消滅しても構わないと考えている。 自らの体は寿命によって余命幾ばくもない状態であるため、事件の裏で稜歌の体を乗っ取る準備を進めていた。
ゾン子 (ぞんこ)
スカイセンサーを通じて我門悠太に指示を下す「謎の声」。「橋上諫征殺人事件」で初めて我門に声をかけ、諫征の奥歯に埋め込まれた「鍵」を回収するように伝えた。それ以降、「スカイセンサー」に付けたゾンビの少女のストラップがしゃべっているように見えたため、我門に「ゾン子」と呼ばれるようになり、要所要所で助言によって我門の捜査を手助けした。 一貫して姿を見せず、声だけ現場に届けるが、まるでそこで見ているかのように的確な指示を下す。また事件の裏側について知っている素振りを度々見せる。その正体はニコラ・テスラの隠し子である「アヴェリーヌ・テスラ」の幽霊。子供の時に亡くなったため少女の姿をしている。ニコラ・テスラに自らの遺産の悪用を食い止めるように使命を託されており、「MMG」の野望に気づいて以降は成沢稜歌を協力者として事件を解決に導くため、「スカイセンサー」を使って我門に情報を渡していた。
集団・組織
八福神の会 (はちふくじんのかい)
我門悠太の父親が開いたスピリチュアルセミナー。我門の父親がカリスマセミナーとして末期患者の悩みを聞き、心を癒やす真っ当な組織だったが、いつしか「MMG」に目を付けられ、彼らの隠れ蓑として使われるようになってしまった。表向きは怪しいカルト集団として行動し、裏ではスカンジウムの売買や構成員の増員などを行っていた。 我門の父親は乗っ取られた「八福神の会」を危険視して止めようとしていたが、志半ばで死亡してしまい、組織は完全に乗っ取られてしまう。「橋上諫征殺人事件」や「ニゴロ事件」にも深く関わっており、「MMG」の下部組織として事件後に発生した幽霊の監視をしていた。
MMG (えむえむじー)
「橋上諫征殺人事件」から始まる一連の事件の裏で暗躍する秘密結社。我門悠太の父親が開いた「八福神の会」を乗っ取り、「八福神の会」を使って事件を裏からあやつっていた。目的は「300人委員会」が封印した「新・世界システム」の力で「永遠の命」と「恒久的な世界支配」であり、そのために非人道的な人体実験や情報操作を繰り返し行っていた。 東京都府中市にある「府中米軍基地跡」を本拠地としており、敷地内に存在する2基の大型電波塔、通称「オッドアイ」が「新・世界システム」の要となっている。
300人委員会 (さんびゃくにんいいんかい)
陰謀論に登場する世界を裏からあやつる影の世界政府の最高機関。作中では実在しており、陰謀論の影に隠れる形で世界支配を盤石な物にしようと暗躍していた。「新・世界システム」もその一環で、「ニコラ・テスラ」の遺産を使い、電波で人を意のままに操ろうと研究していたが、のちに破棄されている。しかし「MMG」が無断でその技術を拾い上げ、形にしている事を危険視し、その調査のためエージェントとして森塚駿を差し向けた。 森塚が死んだあとは鬼崎あすなを後任として差し向けたほか、「MMG」と「新・世界システム」にかかわるすべてを闇に葬るべく、密かに行動を開始している。
イベント・出来事
ニゴロ事件 (にごろじけん)
井の頭公園の池で起きた集団自殺事件の通称。夜の1時頃から老人も子供も関係なく、256人の人間が次々と池に入り、そのまま溺死していった不可解な事件。警察は「事件性がない」として捜査本部を設置しなかった。正式に事件化しなかったため、一部の人間のあいだでは256人の被害者にかけて「ニゴロ事件」と呼ばれる。実は事件の裏には「MMG」による「新・世界システム」の実験が深くかかわっており、事件の被害者は事件後も自分が死んだ事に気づかず、幽霊となって日常生活を送っていた。
その他キーワード
昏い水の底 (くらいみずのそこ)
西園梨々花が描いたBL同人誌。一見するとただの耽美的な漫画だが、事件前の冬コミで発売されたにもかかわらず、内容が「橋上教授殺人事件」や「コトリバコ」、「ニゴロ事件」と不自然なほど我門悠太を取り巻く状況に酷似しており、我門は「昏い水の底」が預言書ではないかとにらんでいる。橋上サライも最初はいぶかしげだったが、「昏い水の底」にCODEの暗号を解読するヒントがあったため、最終的には我門の意見に同意した。 その後、サライは独自に同人誌を調べる内に、梨々花が「新作」を描いている事を突き止め、相模の新たな犯行をすんでのところで止める事に成功する。
コトリバコ
20センチメートル四方の寄せ木細工の箱。人を呪い殺す都市伝説がモデルとなっており、女子供を対象に呪い殺して子孫を根絶やしにする事から「子取り箱」の名がついた。作中では相模が独断で幽霊の実験のために作っており、拉致した川畑千津を殺し、その死体を原型が残らないほど解体して、箱に押し込む事で作っていた。
スカイセンサー
我門悠太が肌身離さず持っている1975年製のレトロな高性能ラジオ機。趣味でFMラジオ局を運営していた父親の形見で、我門の父親は、自分が死んだら幽霊DJになってスカイセンサーで我門に話しかけると約束している。「橋上諫征殺人事件」では混乱する我門に、ゾン子がスカイセンサーを通じて声を掛け、以降、度々事件に関する助言をスカイセンサーを使って行っている。 実は生前の我門の父親が「八福神の会」が乗っ取られていく現状に危機感を感じ、スカイセンサーの中に「MMG」に対抗するための鍵が隠されていた。これはのちに我門の手に渡り、「MMG」を倒す決め手となった。
新・世界システム (しんせかいしすてむ)
「ニコラ・テスラ」が提唱した「世界システム」を、人類を支配する事を目的に「300人委員会」が再構築したシステム。人間の魂も電磁気の一種として考え、電波塔の送電とリンクさせる事で、人間の思考を盗聴、監視する事が可能とされた。ただし電波塔と人間の魂をリンクさせるためには、予めスカンジウムを対象に投与し、定着させておかなければならず、コストやリスクを考えて「新・世界システム」は実用化には至らなかった。 しかし、実験の副産物で幽霊が生まれた事で状況は一変し、「MMG」は「永遠の命」を手にするため、「300人委員会」の破棄した研究を拾い上げ、独自に研究を進めていた。「ニゴロ事件」も「新・世界システム」の実験の一環で行われたものに過ぎず、事件の被害者は電波によって思考をあやつられて自殺させられていた。
超常科学キリキリバサラ (ちょうじょうかがくきりきりばさら)
我門悠太が運営しているまとめ系アフィリエイトブログ。名前の由来は、オカルトブームで世にあふれるインチキな超常現象を、科学的な考察で「キリキリバッサリ論破する」であり、「キリバサ」の通称で知られている。サイトの趣旨からオカルト系の話題を主に扱っており、「コトリバコ」や「昏い水の底」など事件に役立つ情報も、我門はサイトから手に入れていた。 我門はニート生活を満喫するべく超常科学キリキリバサラを開いたが、一定数の常連はいるもののアクセス数は伸び悩んでおり、成沢稜歌におごる約束をしている「ウッドベリーズ」のフローズンヨーグルトの代金を捻出するのにも苦労している。
幽霊 (ゆうれい)
「ニゴロ事件」の被害者が成り果てた存在。被害者本人も死んだ際の記憶がないため、自身が死んで幽霊になったのに気づいておらず、違和感を感じつつも日常生活を送っていた。幽霊となった者は生きている者には気づかれず、触れる事もできない。また物に触れる事もできず、我門悠太は車に弾かれたが、体を素通りして行ったのを目にしている。 その正体は人間の魂を電磁気の一種として考え、「新・世界システム」を利用して顕在化した存在。電磁気であるため意図的に消滅させなければ、その環境下では死ぬ事も老いる事もないため、「MMG」はこのシステムを完成させる事で「永遠の命」が得られると考えている。橋上諫征は独自に研究する事で幽霊のメカニズムに気づいたため、「MMG」に口封じのため殺された。 しかし諫征が残した研究は息子の橋上サライに受け継がれており、電磁波である幽霊でも電流に干渉する事ができると気づかせた。
ギガロマニアックス
人間の妄想を重みと実体の伴った存在として現実に転化する原理。現実の物質に触れる事ができない幽霊が物を触っていると感じていたのは、この原理によって自らが生み出した妄想の産物であるとされている。実際に森塚駿は自分の死を認識した事で、自分のスマートフォンが無意識下の妄想の産物だと気づいた瞬間、消えていくのを目撃している。
CODE (こーど)
橋上諫征が殺害された際に、自らの血で残したダイイングメッセージ。我門悠太は事件を解決するための重要な鍵だと思い、調査する内に、諫征が自宅の書斎の天井に隠した暗号を指していたと気づいた。諫征は生前に防音用の有孔ボードをパテで埋め、重要な情報を、「ボー・コード」と呼ばれる特殊な文字コードで点の羅列として暗号化していた。 暗号は諫征の息子である橋上サライによって解読され、サライと我門に「ニゴロ事件」の被害者256人分の名前がリスト化されて記載されている事を教えた。
クレジット
- 原作
-
志倉 千代丸
- キャラクター原案
-
pako
- 構成
-
花林 ソラ