あらすじ
リリリライト
女子大生の私は、学校で出会った男性に、名前も連絡先も聞かず、突然プロポーズしてしまう。自分でも理由はわからなかったが、何故か「この人を逃してはいけない」という強い確信があった。教室でまどろんだ私は、夢の中で世界中のあちこち、様々な時間で生活していた記憶を幻視する。夢の中で、私は火山の噴火に飲まれて消滅した街の絵描きや、またはイギリスの貴族であったりしたが、そのいずれの場合でも不遇な別れを遂げた知人の姿があった。その知人とは、時には自分の子供や、家に雇い入れたメイドなど、関係は様々だったが、みなどことなく、学校で出会った男性に似ている雰囲気があるのだった。
ピクニックの前
近代アメリカの裕福な家庭に育った少女メアリー・バンクスは、貧富の差に心を痛め、貧しい家に施しをしようとするが、かえってその家の人からは嫌われてしまう。そうして、自分が持っているものはみな親から与えられたもので、他人に与えられるようなものを自分は何も持っていないと考えるようになったメアリーは、成長してイギリスの伯爵家の次男と結婚する。
春のおかし
マルレーンは、雪の残る春先にアイスクリームを作って食べるのが好きな少女。彼女は、貴重な砂糖やクリームを使ったアイスクリームを、近くの山に住む動物にもわけあたえてやるほど心優しかった。そんな話を聞きつけて、巨大な犬のような姿をした生き物がマルレーンの家を訪ねて来る。その生き物は礼儀正しく人の言葉を話し、「病気の息子にアイスクリームを食べさせてやってほしい」とマルレーンに頼むのだった。
春のお酒
山の中で道に迷った青年オーリーは、力尽きて倒れる寸前、近くに咲いていた花からこぼれた水を飲んで元気を取り戻す。その花からこぼれた水は、蜜というよりもお酒のような味がし、さらにその花をよく見ると、花びらには小さな縫い目のようなものがあるのだった。家に帰ったオーリーは病気の父親から、山の中に住む小人の話を聞く。あの花の水が、小人の作ったお酒ではないかと考えたオーリーは、再び山へ向かうのだった。
たのしい天地創造
理系風の二人の学生の会話劇。二人は、開発されたばかりの超小型の人型AIを模型の街の中に住まわせ、小さな地球のようなものを作っていた。それを観察して新しい娯楽や、研究のための実験場にしようとあれこれ議論をする。しかし、そんな中で二人はある可能性に気づいてしまうのだった。
坂の上の窓
外国人を母に持つ少年の金持坂下尋常は、西洋人風の見た目から周囲の子どもたちになじめずにいた。唯一の楽しみは、学校の行き帰りに近所にある洋館の窓から、その家に住む少女を眺めること。彼女に好意を抱くようになっていた尋常は、郵便屋さんに頼み、その家の少女宛に手紙を送る。しばらく経ってその少女、綾小路小夜から返事があり、二人は文通をするようになる。さらに時間が経って、とうとう尋常は小夜から、家に遊びに来るようにと誘われて胸を踊らせた。しかし、小夜にはある秘密があるのだった。
星のまちぶせ
大学を卒業し、働き始めて2年目のOLすみは、仕事に疲れ切っていた。すみは有給を使い、子供の頃に半年だけ暮らしたことがある叔父と叔母の家に旅行するが、同じ職場に戻る気持ちはほとんど残っていなかった。そんな中、すみは幼なじみの千太と再会する。
xページめの本
読書家の青年のモノローグ劇。祖父の書架にある蔵書を全部読み終えてしまったことに気づいた青年は、幼い頃にその祖父から聞いた話を思い出す。祖父の話では、すべての本には人間では数えることができない「xページめ」が存在するという。そして、そのxページめだけを集めた「xページめの本」は、死後にしか読めないという内容だった。