オムライス

オムライス

今井光と今井みどりという、それぞれに事情を抱えた同姓の2人の共同生活から始まるラブストーリー。捨てて逃げたはずの故郷と再び向き合う光と、彼を支えるみどりの献身が描かれる。「ビッグコミックスペリオール」1997年23月号から1999年21号にかけて連載された作品。

正式名称
オムライス
ふりがな
おむらいす
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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概要・あらすじ

今井光は失業中で、収入がゼロなうえに家賃も滞納しており、世の中に絶望していた。そんなある日、光は歯医者の待合室で倒れてしまった今井みどりを家まで送り届けたことから、彼女の姉たちと知り合う。今井家の四姉妹は、偶然苗字が同じだった光に、自分たちの家で一緒に暮らしてほしいと懇願する。実は四姉妹が住んでいる大きな家は彼女たちのものではなく、家主の今井隆三が放蕩をして帰って来ないため、四姉妹が乗っ取ったのではないかと、近所で悪い評判が立っているのだった。

そのため、光に隆三の親戚という触れ込みで、この家に入って欲しいと申し出る。見知らぬ女性たちと共同生活をすることに光はためらうものの、生活に困っていたこともあり、その申し出をありがたく受け入れる。

かくして、同じ「今井」姓を名乗りながらも実は赤の他人同士という、おかしな共同生活が始まるのだった。

登場人物・キャラクター

今井 光 (いまい ひかる)

仕事がなく、現在求職中の23歳の男性。4年前に稲森はるなと付き合っていたが、実ははるなは年齢を詐称しており、実際は15歳だったため青少年保護条例違反で訴えられた。その後、責任を取って彼女と入籍したものの、半年後に離婚。はるなの父親に恩義を感じている上原から、はるなの人生を台無しにした張本人と恨まれ、どこに行っても付け狙われては嫌がらせをされている。 そのため再就職もうまくいかず、アパートの家賃も払えずに、どん底の生活をしていた。ある日、近所の悪い噂に辟易していた四姉妹から、今井隆三の親戚という嘘をついて今井家に住んで欲しいと求められ、それを受け入れる。真面目で人が良く、礼儀正しいタイプで、周囲から信頼されている。

今井 みどり (いまい みどり)

今井光が歯医者で出会った19歳の女性。今井家の四姉妹の末っ子なのだが、実は今井みどりだけ血の繋がりがない。失うことを恐れるあまり、最初から幸せを手にしたくないと考え、姉たちとの生活を捨てて一人暮らししたいと切望している。人を見る目に長けており、直観で嘘をついている人を見抜くことができる。料理がとても上手で、今井家の食事はいつもみどりが作っている。 また、ごみの分別が好きで、四姉妹の中ではみどり1人だけ朝が早い。

今井 珠子 (いまい たまこ)

今井家の四姉妹の長女。歯科医師として、今井歯科医院を切り盛りしている。眼鏡をかけており、外すと何も見えないほどの近眼。家族を大切に思っており、姉妹がともに住むことをなによりも重要視しているため、今井みどりが一人暮らしすることに最も強く反対している。涙もろく、情に厚い性格。

今井 羽子 (いまい はねこ)

今井家の四姉妹の次女。劇団「カルデラ座」で演出・脚本を担当している。ファッションとして頭にサングラスをかけ、有名アニメキャラであるカエルがプリントされたTシャツを着ている。いつもひょうひょうとしている自由人。小説も書いており、のちにそれが出版社の目にとまり、文壇デビューすることとなる。ペンネームは「桜一花」。

今井 葉子 (いまい ようこ)

今井家の四姉妹の三女で、大学3年生。時々、受付をして今井歯科医院を手伝っている。男好きのするタイプの美人で、今井葉子自身も男性に対して惚れっぽいところがある。今井光に対しても、強く意識し過ぎるあまり、当初は態度が硬くなっていた。田村アツシと付き合っている。

今井 隆三 (いまい りゅうぞう)

今井歯科医院の院長かつ家主の男性。釣りが趣味で、しょっちゅう釣り旅行に出かけており家にはめったに帰って来ない。ちなみに今井四姉妹と名字が同じなのは偶然。穏やかな人物だが、人を見る目は確かで、物事の本質を見抜く力を持つ。過去、今井珠子に二度プロポーズして断られた経験がある。実は別にアパートを借りており、釣りに行くふりをしてそこで小説家として執筆活動をしている。 ペンネームは「花窪憂鬱」。

上原 (うえはら)

はるなの父の会社に勤めている男性。稲森はるなを大切に思うあまり、彼女の人生を台無しにした今井光を許せずにいる。そのため仕事を放り出してまで、光に対して嫌がらせを繰り返している。光の会社の周囲で光が起こした罪について書かれたビラを撒くなどして、光を退職にまで追い込む。

稲森 はるな (いなもり はるな)

今井光と出会った時は15歳であったにも関わらず、19歳と嘘をついて彼と恋人同士になった。ホテルから出て来たところを警察に職務質問され、それが高校にばれて退学になる。現在は大検に通って、今井葉子と同じ大学に通っている。演劇に憧れており、今井羽子に頼み込んでオーディションを受け、劇団「カルデラ座」の一員になる。 光と再会した際には復縁を迫るが、拒絶されてしまう。

田村 アツシ (たむら あつし)

今井葉子と付き合っている男性で、葉子と同じ大学に通う大学生。大学の構内でいつもギターを片手に自作の歌を歌っており、ファンクラブまで存在する。歌で認められたいと言いながらも、外の世界で勝負するだけの勇気を持たず、葉子と喧嘩して別れ話に発展してしまう。

はるなの父 (はるなのちち)

稲森はるなの父親で、たくさんの会社を経営する敏腕社長。上原をはるなの目付け役にして、はるなを自分の思い通りに育てようとしている。ワンマンで、他人の意見に耳を貸さないところがある。元娘婿である今井光のことを嫌っており、光とはるなが接触することは許さない。

石田 直幸 (いしだ なおゆき)

今井みどりの幼なじみの男性。ワイン作りの修業をするためフランスに行っていたが、5年ぶりに日本に帰国した。職業柄、浅黒く日焼けしている。5年前に父親の会社が倒産し、実家も借金のかたに人手に渡った際、もう二度と会わないと約束し、みどりと離れ離れになった。本当はみどりと結婚して、フランスに連れていきたいと願っている。

光の父 (ひかるのちち)

今井光の父親で、旅館「松風荘」の社長を務めている。古くからの伝統ある「松風荘」のクオリティを守ろうとするあまり、経営難を招いている。光が稲森はるなに対する青少年保護条例違反で捕まり、責任を取って結婚したにもかかわらず、光のことを勘当している。融通が利かないタイプだが、お客様第一主義であり、サービス精神が旺盛すぎて、儲けを考えないところがある。

光の姉 (ひかるのあね)

今井光の姉。既婚者で、夫である光の義兄とともに旅館「松風荘」で働いている。「松風荘」の経営を傾けてしまった父親に代わって主導権を握ったが、その後の施策が単純に旅館内のサービスを下げたり、リストラして人件費を節約したりするというものだったため、客足が遠のくこととなった。しっかり者で、言いたいことはズバズバと口にする。

光の義兄 (ひかるのぎけい)

光の姉の夫で、光の父にとっては義理の息子。今井光と光の父親との間を取り持とうと心を砕き、奔走する。妻の実家である今井家の家業の旅館「松風荘」を手伝っているが、経営難に陥っていることに心を痛めている。少々気弱なところがある。

マスター

洋食屋「箱田亭」のマスターをしている中年の男性で、慎一の父親。料理の腕はイマイチで、味もダメなら見た目も悪い。ただし人柄はとても良く、放蕩息子に手をこまねいているが、本心では息子を心配しており、親バカなところがある。今井みどりが店を手伝い、繁盛したことを喜んでいたが、慎一が店を手伝うことを希望したため、頭を下げてみどりをクビにする。

慎一 (しんいち)

箱田亭のマスターの息子で、ふらふらしている男性。母親がぎっくり腰で入院し、店が困っていることを知りながら、親から金をせびって遊んでいる。親に甘えていたが、アルバイトに来た今井みどりの料理がうまいと評判になったことで危機感を感じ、彼女を追い出して自分が店を手伝う決意をする。

南原 (なんばら)

今井みどりらが住む今井家の、向かいの家で暮らしている中年の女性。野次馬根性が旺盛で、今井家の四姉妹が今井隆三を追い出したのではないかと疑い、探りを入れてくる。今井光の正体についても疑っており、本当に光が隆三の親戚なのかを確かめたいと思っている。

集団・組織

カルデラ座 (かるでらざ)

今井羽子が演出・脚本を務める劇団。普段は今井家の地下室で活動しているため、公演の稽古が始まると、大勢が今井家に出入りするようになる。大道具・小道具や舞台装置など、大きな荷物も今井家の地下室で保管している。のちに演劇に憧れる稲森はるながオーディションを受け、劇団員の1人となる。

場所

今井歯科医院 (いまいしかいいん)

今井隆三の経営する歯科医院なのだが、本人は釣り旅行に行ったきりほとんど戻らないので、実際には今井珠子が切り盛りしている。大学生である今井葉子が受付を手伝うこともある。家屋の方には今井家の四姉妹が住んでおり、今井光もそこに居候することになる。

箱田亭 (はこだてい)

今井歯科医院から徒歩圏内にある近所の洋食屋。不味いという評判で、あまり客は入っていない。マスターの妻がぎっくり腰で入院してしまい、息子の慎一は金をせびって遊んでいるだけで店を手伝うつもりもなく、ひどい状態にある。一時期、今井みどりが住み込みで働いていた。

松風荘 (まつかぜそう)

今井光の実家である、古い伝統を受け継ぐ由緒正しい旅館。光の父が経営をしていたが、客に喜んでもらおうという気持ちが強すぎて、採算が合わずに経営難になってしまう。代わりに光の姉が経営を任されるが、今度は人員削減やコストダウンばかりに気を取られて本質を忘れ、さらなる経営状態の悪化を招く。

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