あらすじ
第1巻
れんげ寮の101号室に住む女子大学生、野原蓮華は、音を見る事ができる共感覚者であるがゆえに、人とのかかわりを避けて暮らしていた。しかしある日、難波彩子が住む202号室の床が抜け、蓮華の101号室と牧茜の102号室、万城目亜理沙の201号室が、巨大な穴でつながってしまう。しかし高額の修繕費を取られたくない4人は、穴の存在をひた隠しにするのだった。この出来事をきっかけに交友を深めた蓮華ら4人は、ある日、いっしょに北野天満宮の天神市を訪れる。しかし蓮華はここで音に酔い、具合が悪くなってしまう。みんなに迷惑をかけて嫌われたと思い悩む蓮華だったが、茜と彩子、亜理沙の対応は、今まで通り変わらないままだった。これをきっかけに、蓮華は本当の友達ができたと実感するのだった。
そして迎えた夏休み。4人は祇園祭に出掛けたり、茜の実家に泊まりに行ったりしながら、夏休みを共に過ごす。そして9月、寮の予算や学園祭について話し合う寮大会で、蓮華は初めて多くの寮生の前に顔を出した。その後、蓮華はもっといろいろな人とかかわっていこうと思い始めるが、そんな中、お使いで出掛けた天神市で、空想の中の人物だと思っていた人と同じ声を聞く。
第2巻
野原蓮華が聞いた声は、牧茜の母親のものだった。そしてその声をきっかけに、蓮華は昔、茜と友達だったと思い出す。当時、夫と離婚して一人で茜を育てていた茜の母は、遊びに訪れた蓮華の前で、茜を殴りつけた過去があった。蓮華はその記憶を辛いものとし、忘れていたのだった。蓮華が記憶を取り戻して以降、蓮華と茜との関係は不安定なものとなってしまう。しかもその後、茜の母の新たな娘である「リカ」の存在が明らかになると、茜は姿を消してしまう。だが、蓮華は共感覚の力で音を辿って茜を探し出し、茜の母と引き合わせるのだった。
その後も4人は、いろいろなトラブルに見舞われながらも平和に日々を過ごしていく。だがある日、老朽化が進んだれんげ寮に、取り壊しの話が持ち上がる。
登場人物・キャラクター
野原 蓮華 (のはら れんげ)
小倉大学理工学部1回生の女子。れんげ寮の101号室に住んでいる。マッシュルームショートカットの髪型で眼鏡をかけた、ボーイッシュな外見をしている。音を見たり触ったりできる共感覚者のため、賑やかな場所に行くと、音に酔ってしまう。また、ひどい人見知りで、れんげ寮に入寮しているが、普段は部屋に引きこもり気味。出入りも自室の窓から行うなど、徹底してほかの寮生を避けていた。 しかし、本の重みに耐えきれず、難波彩子が住む202号室の床が抜け、蓮華の101号室と牧茜の102号室、万城目亜理沙の201号室の4部屋がつながってしまったあとは、その秘密を共有する者として友好を深める。のちに茜の母と知り合い、かつて茜と友達だった事を思い出し、トラウマとなっていた過去を克服する。 さらに共感覚者である自分自身も、ありのままに受け入れるようになっていく。
牧 茜 (まき あかね)
小倉大学心理学部1回生の女子。れんげ寮の102号室に住んでいる。黒髪のショートボブの髪型をしている。穏やかな性格をしたしっかり者で、つねに他人に気を配る人格者でもある。実は15年前、蓮華と友達だった。当時、「ポニーちゃん」という人形が好きで、いつも人形と同じ格好をしていた。また、蓮華の共感覚についても聞かされていたが、これに関しては噓だと思っていた。 両親の離婚後に母親に引き取られていたが、茜の母に殴られたため父親に引き取られる、以降は蓮華との縁は途切れていた。将来は子供時代の経験を活かして、スクールカウンセラーになりたいと思っている。
難波 彩子 (なんば さいこ)
小倉大学文学部3回生の女子。れんげ寮の202号室に住んでいる。髪型はふわふわのロングヘアにしている。ミステリー小説家を目指して高校時代から投稿を続けており、自室には大量の本が山積みになっている。その重みに耐えきれずに床が抜け、自身の部屋と、野原蓮華や牧茜、万城目亜理沙の部屋が巨大な穴でつながった。 マイペースで大雑把な性格のためミスが多く、面倒見のいい亜理沙に、よく世話を焼かれている。そのため一部の寮生には何かと煙たがれているが、難波彩子本人はまったく気にしていない。一方で観察眼に優れており、人の長所や短所をいち早く見極めてから付き合うなど、冷静な一面も持ち合わせている。また怖い話に興味を持っており、茜の実家に訪れた際は、茜の祖父とオカルト話で大いに盛り上がった。
万城目 亜理沙 (まんじょうめ ありさ)
小倉大学経済学部1回生の女子。れんげ寮の201号室に住んでいる。髪型はふんわりとしたロングヘアにしている。5人の弟がいるので面倒見のいい性格で、つい人の世話を焼いてしまう癖がある。一方で気持ちを内に秘める事が多く、牧茜が自分といっしょにいる時だけ饒舌になると気づいた時には、自分を怖がっているのではないかと悩んでいた。 大家族でプライバシーのない家で育ち、寮生の陰口にも飽き飽きとしていたので、一人暮らしに憧れていた。そのための、引っ越し資金を貯めるべく熱心にアルバイトをしていたが、難波彩子が、自分を褒めているのを聞いて、寮暮らしも悪くない、と思い直すようになった。毎日ストレッチを欠かさないなど、美に対する意識が高く、文化祭ではミスコンで優勝するほどの美貌の持ち主。
茜の祖父 (あかねのそふ)
牧茜の祖父。れんげ寮の近くにある茜の実家で、会計事務所を営んでいる。気さくな優しい性格の持ち主で、孫娘の茜をかわいがっている。夏休みにエアコンの涼を求めて、茜が野原蓮華や難波彩子、万城目亜理沙と共に会計事務所を訪れた際には、彩子とオカルト話で大いに盛り上がった。しかし茜の祖父自身がエアコン嫌いなため、結局最後までエアコンをつけなかった。
茜の母 (あかねのはは)
牧茜の母親。和服店「野菊屋」のオーナーを務めている。近々パリに支店を出すため、現在は忙しく働いている。穏やかで優しい性格だが、15年前に夫と離婚した直後は毎日イライラしており、引き取って育てていた茜に八つ当たりをする事もあった。当時、茜の友人だった野原蓮華の前で、茜を殴りつけてしまい、これが蓮華や茜だけではなく、茜の母自身のトラウマにもなっている。 それ以降は、茜は父親に引き取られたため会うのは禁じられていたが、蓮華の尽力により、話し合いの末に和解する。今は「リカ」という娘を育てている。
床屋さん (とこやさん)
牧茜が通っている床屋を経営している男性。非常に腕がよいため評判がよく、特に小倉大学応援団のメンバーに、パンチパーマを頼まれる事が多い。スキンヘッドで彫りが深い強面なため、初対面の人には怖い人物だと思われる事が多い。実は優しい人柄で、3度の飯より甘いものが好きにもかかわらず、その外見では甘味店に行きづらいので、密かに悩んでいる。
ハナ
れんげ寮の寮母をしている高齢の女性。おっとりした性格で、新寮生には、ここを我が家と思うように、と笑顔で伝えている。老朽化の進んだれんげ寮に取り壊しの話が出た際には、特に意見は言わなかったが、古くなった寮の行き先を誰よりも案じていた。ずっと昔から寮の庭にレンゲの花を植えている。
場所
れんげ寮 (れんげりょう)
京都にある小倉大学に併設している女子寮。現在は全100室中、入居者は40人足らずしかいない。築70年の木造2階建で、広い中庭があり、風呂やトイレ、自炊施設は共同で使用する。家賃は月5000円と非常に安く、格安の食堂もある。門限は23時で、門限を守らない事が続くと退寮処分になってしまう。またれんげ寮内では、上回生は偉いという暗黙の了解がある。