概要・あらすじ
空山舜・34歳は平凡なサラリーマン。ある日、彼のもとに25年前の自分からの手紙が届く。そこには、「大好きなスーパーカー『ランボルギーニ・カウンタックLP400』を買って“夢”をかなえていると思います」と書かれていた。それを見た舜は一念発起、夢のLP400を買うことを決意する。ところが、希少なLP400はなかなか市場には現れない。
それでもめげずにLP400の情報を探し回っていた舜は、あるページを発見する。そこには条件付きで、「ワンオーナーのLP400を譲りたい」と書かれていた。その条件とは「なぜLP400が欲しいのか」その理由を送ること。舜は自分の熱い想いを込めてメールを送信。すると、すぐに返信が来て、LP400は舜に譲られることに。
半信半疑のまま待ち合わせ場所に向かうと、そこに現れたのはLP400のオーナーの秘書と名乗る美女・早乙女若菜。彼女に連れられ、山奥の豪邸を訪れた舜は、そこで大富豪の老人・浦島龍童と念願のLP400に対面。しかし、浦島が提示したのは手持ちの舜の全財産をはるかに上回る金額だった。
舜は一瞬怯むも、金はなんとか工面してLP400を買うと宣言。その本気の決意を買われ、舜は破格の金額で夢のスーパーカーLP400を手に入れたのだった。その日から舜の生活は一変、愛車となったLP400を通じて、さまざまな出会いやトラブルと遭遇していくのであった。
登場人物・キャラクター
空山 舜 (そらやま しゅん)
34歳独身。現状に不満を抱きつつもサラリーマンとして過ごしていた。ある日、小学生のころの自分が書いた手紙を読み「ランボルギーニ・カウンタックLP400」を手に入れるという夢を思い出し、LP400を手に入れることを決意する。その熱い思いが浦島龍童の琴線に触れ、250万円という破格の値段でLP400を譲り受けることとなる。 LP400を手に入れてからは人生が一変、さまざまなスーパーカーとレース勝負を行い、不可能とされているLP400で時速300kmを超えることに挑戦していく。フリーター時代は走り屋だったが、28歳のときに父親が倒れたことで就職し、引退した。走り屋時代の愛車はトヨタMR2(AW11)。 初めて乗ったLP400でドリフトを決めるなど、卓越した運転技術の持ち主。また、普段は誠実な人柄だが、ハンドルを握ると強気な性格に変貌し、大胆な運転を見せている。
早乙女 若菜 (さおとめ わかな)
浦島龍童の秘書。清楚な美女。愛車はポルシェ928。空山舜にランボルギーニ・カウンタックLP400の運転の手ほどきを行い、その後もメンテナンスのアドバイスなどさまざまな面で舜をサポートしている。舜と行動を共にするうちに、仕事上での付き合いを超えて親密になっていく。 浦島と出会うまでは車に興味がなかったが、ポルシェ928に一目ぼれし一変、豊富な知識と高い運転技術を持つようになった。
浦島 龍童 (うらしま りゅうどう)
大富豪の老人。空山舜のランボルギーニ・カウンタックLP400の元のオーナー。コンコルドをはじめ、貴重な乗り物をコレクションしている道楽者。自分を一番驚かせた車、クンタッシ(カウンタックの本国での発音。驚きや感動をあらわす感嘆詞)を、自分を一番驚かせた理由で欲しがる人物に譲ろうと考えインターネットで応募を募った。 それを見た舜のLP400への夢を語ったメールに感動し、彼に破格の金額でLP400を譲った。
牛若 寅男 (うしわか とらお)
修理工場「寅さんのガレージ」の代表。サルバドール・ダリのような尖がった口ひげと、ぎょろりとした目つきが特徴の男性。通称は寅さん。かつてはパリで成功を収めた彫刻家だったが、趣味の車いじりを追求していくうちに車に魅せられ、帰国後第二の人生としてガレージを営むことを選んだ。金銭よりも自分の趣味を重要視しており、無料で修理を行うことがある反面、愛情のないオーナーの依頼は断ることも。 メルセデス・ベンツAMG・E320T-3.6、ランボルギーニ・ミウラS、1967年式コルベット・スティング・レイ(C2)を所有している。早乙女若菜の紹介で、空山舜のランボルギーニ・カウンタックLP400の修理を行うようになる。 LP400で時速300kmを超えるという舜の夢に応じ、採算度外視で彼のLP400を改造した。
矢沢 滉一 (やざわ こういち)
空山舜の走り屋時代の友人。舜とは同い年。24歳のとき、アルバイト中だった舜に声をかけ、走り屋の道へと誘った。現在は一児の父で、妻との結婚を機に走り屋を引退している。走り屋時代の愛車はR32 GT-R。地元の日出山峠で立花樹利に敗北し事故を起こしたところ、通りかかった舜と再会。 再び樹利に挑もうとするも、舜に諌められ考え直し、GT-Rの鍵を舜に託した。元暴走族で、舜も知らなかったが「魔愚堕羅」というチームの六代目総長。いまだに影響力は強く、後輩たちからも伝説的存在として恐れられている。
沢田 玲 (さわだ れい)
空山舜の旧友。舜とは同い年。職業はジャズピアニスト。キャッチコピーは「Jazzピアニスト界の貴公子」。28歳のとき、行きつけのジャズバーで舜と出会い、お互いに車好きということもあって友人となった。そのころ父親の会社が倒産し、借金のカタに愛車のランチア・ストラトスを持って行かれた。 ちょうどそのとき、舜も父親が倒れたことで走り屋の引退を考えており、大人になる前の最後の一勝負を二人で行った。その後、ピアニストとして成功、ランチア・ストラトスを自分の手で買い戻すことを目標としている。
小野寺 ナオミ (おのでら なおみ)
沢田玲が所属する音楽事務所の社長。娘の涼を女手ひとつで育てているシングルマザー。車好きで、愛車はオープンカー仕様のランボルギーニ・ディアブロ VTロードスター。寅さんの顧客ということもあり、空山舜と交友を持つようになる。
大家さん (おおやさん)
空山舜が住むアパートの大家。自宅のガレージを舜に貸している。20年前、スーパーカー好きだった息子を亡くしており、弔いに彼が一番好きだったフェラーリ・ディーノ246GTを購入した。しかし、ディーノを運転すると息子の思い出が蘇り、ある日事故を起こしてしまう。以来10年間、ディーノには乗れずにいた。 ディーノを手放そうと考え、最後に走らせることを舜に依頼、助手席に乗ってディーノの走りを感じるうちにトラウマを振り切り、運転できるようになった。
シン
空山舜の彼女を奪った男。複数の女性と交際しているプレイボーイ。カーマニアでもあり、愛車はフェラーリ。初めてランボルギーニ・カウンタックLP400に乗った舜にフェラーリ・360モデナで勝負を仕掛けたが、オービスの盾にされた。その後も、フェラーリ・365GT4BB、フェラーリ・F40と車を乗り換え、何度も舜に挑む。 高級車を次々と乗り換えているが、実はフリーターで、宝くじやギャンブルで大金を得ていた。その生活を「F王子のスーパーカーライフ」というタイトルのブログに綴っている。
九藤 竜一 (くどう りゅういち)
ポルシェ911マニアの男。ポルシェ911・993カレラと993ターボを所有している。ポルシェ911を信奉し、それ以外のポルシェを認めないという狂信的な思考を持つ。早乙女若菜のポルシェ928に勝負を仕掛けたが、コーナーで自爆。そのことを逆恨みし、若菜のポルシェを傷つけたうえに彼女の愛猫を奪い、勝負を強要してきた。 実は常習の窃盗犯で、ポルシェ911を買うために犯行を繰り返していた。
立花 樹利 (たちばな じゅり)
20歳。クラブでポールダンサーとして働いている。愛車はファイヤーパターンの入ったコルベットで、自身の下腹部にもファイヤーパターンのタトゥーを入れている。かつては手の付けられない不良で、見かねた親にアメリカ留学させられたという過去を持つ。だが、アメリカで覚えたのはポールダンス、ドラッグレース、コルベットの三つだけと本人は語っている。 英語は堪能で、米軍基地で働く軍人たちとも交流を持つ。C5コルベットZ06に乗って舜の地元である日出山峠を荒らしていた際は、矢沢滉一の代わりに勝負を挑んだ舜と対決した。その後、代車の1967年式C2コルベット スティング・レイに乗っていた舜と再会。 怪我をした自分の代わりに霧山悟と勝負することになった舜の姿を見て、彼に思いを寄せるようになる。
霧山 悟 (きりやま さとる)
チンピラじみた風体の男。愛車はダッヂ・バイパー SRT-10。立花樹利に言い寄っており、彼女を挑発し「レースで勝ったら樹利の身体を自由にする」という条件の勝負に乗せた。しかし、樹利が左足に怪我を負っていたためレースは中断となり、代わりに空山舜が勝負することとなった。暴走族「魔愚堕羅」の元総長で、矢沢滉一の後輩。
神谷 聖 (かみや さとし)
空山舜がランボルギーニ・カウンタックLP400を保管しているガレージの隣に住む男性。舜とは同い年。10年以上一歩も外に出ず引きこもり、株取引で生活している。資産は10億円を超えているものの、夢も目標も見出せず、むなしさを抱えたまま日々を過ごしていた。ある日、舜のLP400を見かけ、子供のころ夢中になったスーパーカーのことを思い出し、世界に4台しかないと言われるウルフカウンタック(カウンタックLP500S)を購入した。 しかし、車は未登録のうえに運転免許を持っていなかったため、走らせることを望みつつも諦めていた。その願いを叶えるため、舜と早乙女若菜がサーキットで走らせることを提案、富士スピードウェイを丸一日貸しきり、存分にウルフを走らせた。
九石 丈司 (くいし じょうじ)
大阪に住むの借金取りの男。アフロヘアが特徴。愛車はフォードGT。寅さんのかつての弟子で、亡くなった水島和之の借金を精算するため、彼の遺品であるデ・トマソ・パンテーラのパーツを引き取りに寅さんのもとを訪れた。寅さんはパーツを1500万円で買い取ることを提案したが、拒否。 組み上げたパンテーラと自分が勝負し、「寅さんが勝てば1500万円でパンテーラを譲り、負ければパンテーラを引き渡したうえで1500万円支払う」という要求を突きつけた。寅さんはこれを飲み、空山舜とともに大阪の環状線で対決することとなる。
未来 真弓 (みき まゆみ)
空山舜がトヨタMR2(AW11)を購入した中古車販売店「フューチャーモータース」社長の一人娘。2年前に父を亡くし、現在は自身が社長となっているが、オーナーに倍額の借地料を要求され、廃業を考えていた。そのころ、偶然にも15年前に盗まれた父の愛車・デロリアンDMC-12が発見される。 当初は処分を考えていたが、舜とともに無傷のデロリアンを見たことで父の姿を思い出し、引き取ることに。その後、以前の借地料のままで貸すとオーナーから連絡を受け、店を続ける決意をした。ちなみに、「フューチャーモータース」の名前の由来は、真弓の父が映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に感銘を受けたことから。
その他キーワード
ランボルギーニ・カウンタックLP400 (らんぼるぎーにかうんたっくえるぴーよんひゃく)
『カウンタック』に登場する車。本作のタイトルにもなっている、空山舜の愛車。1974年から1978年までの間にわずか150台しか生産されなかった希少なモデル。ボディーカラーは黒。不可能とされているLP400で時速300km以上を出すことを実現するため、一時的に寅さんの手で「LP400 エアロスペシャル」へ改造されたことがある。 その際、寅さんがスペックをチェックしたところ、ボディサイズとホイールベースはメーカー公称値で、最高出力と最大トルク、前後重量バランスは公称値を上回るという、非常に精度の高い「奇跡の一台」であることが判明した。