概要・あらすじ
還暦を越えたベテランの自動車整備士・里見夢次郎は凄腕の職人。彼のもとには、さまざまな理由で、車のレストア依頼がもちこまれる。夢次郎は、ただ車を直すのではなく、持ち込んだ人たちと車に残された持ち主の思いを汲み取り、レストアを通じて生者の心を癒していく。その姿勢は、孫の一ノ瀬哲也にも受け継がれていくのだった。
登場人物・キャラクター
里見 夢次郎 (さとみ ゆめじろう)
有限会社レストアガレージ251の代表取締役。車屋稼業50年のベテランで凄腕の職人。65歳。女好きで美人からの依頼には滅法弱い。35年前に死別した妻の節子の事を今でも忘れられずにいる。情に厚く、依頼人の事情を聞いて、採算度外視で仕事を引き受けることが多い。そのため、会社はいつ潰れてもおかしくないくらいの経営状態となっている。 医者殺しと呼ばれるほどの健康体で、65歳で検査を受けた際も、悪いところが1つも見つからなかった。
一ノ瀬 哲也 (いちのせ てつや)
里見夢次郎の孫。素直で明るい性格だったため、小さい頃から町内で可愛がられており、町内の老人達からは孫のように愛されている。容姿は、どことなく祖母の里見節子に似ている。
吉野 梢 (よしの こずえ)
小料理屋「梢」のおかみ。28歳。里見夢次郎にトヨタ2000GT MF12L型のレストアを依頼した。深大寺将士の隠し子。10年前、父の葬儀に訪れた際、正妻から冷たくあしらわれたため、悲しさのあまり父との想い出の車である、トヨタ2000GTを盗んだ。母も3年前に亡くなっている。 2000GTをレストアしてもらった後、深大寺の正妻に車を返しに行き、正妻と和解。深大寺コレクションに加えられた2000GTの手入れを任された。その後、夢次郎は小料理屋「梢」の常連になる。
里見 節子 (さとみ せつこ)
里見夢次郎の妻。持病が原因で35年前に亡くなっている。夢次郎がレストアを始めたきっかけを作った人物。辛いことがあっても、笑顔でいたら最後は福の神がやってくるという考えの持ち主であり、陰から夢次郎を支えた。
綾小路 秀麻呂 (あやのこうじ ひでまろ)
クラッシックカーマニアで、気に入った車に出会うと没入し、写真を撮り、周囲の人間を障害物のように扱う問題児。キモタクと呼ばれている。全国のクラッシックカーイベントに必ず出没すると言われている。車に関する知識は膨大なものがあり、的確なコメントでアドバイスできる。里見夢次郎のレストア技術に惚れ込み、彼のもとに転がり込んだ。 車を通して多くの知人がおり、レストアガレージ251の営業のような役回りを務める。滋賀県出身で、滋賀を中心に全国350店舗の規模を誇るレストランチェーン店の一人息子。
深大寺 将士 (じんだいじ まさし)
元レーサー兼自動車評論家。故人。深大寺将士の所蔵していた国内外の名車は、深大寺コレクションとして保管・展示されている。吉野梢の実父であり、隠し子騒動で騒がれた後も、時折、トヨタ2000GTで梢のもとを訪れ、彼女をこの車に乗せてドライブをしていた。
結城 (ゆうき)
結城遥の父。ケンメリGT-R(KPGC110型)の開発スタッフ。ワークスドライバーとしてレースデビューする予定だったが、日産の国内レース活動中止にともない、デビューは叶わなかった。その後、妻の妊娠を機にタクシー運転手へと転職。ブルーバード510を駆って、家族を支えた。 その後、妻が死に、男手ひとつで娘を育てたが、愛情は深いものの、デリカシーに欠ける行動が多く、コミュニケーションも下手であったため、娘の遥から嫌われている。誠実な人柄であるため、タクシー運転手としての評判は上々で、同僚からも信頼を受けている。妻の妙子が産気づいた際、自分の車で妻を病院に送る途中、車中で娘が産まれている。 このため、娘が産まれた車・ブルーバード510を28年にわたって使い続けていた。癌の手術を受けるため、入院期間中、車を里見夢次郎に預かってもらう。術後、容態が急変し、危篤状態に陥る。
結城 遥 (ゆうき はるか)
富士沢総合病院に勤める看護師。父子家庭だったが、デリカシーが足りず、コミュニケーションが下手な父を嫌い、中学校卒業と同時に家を出て、全寮制の看護学校に入った。国産の車を嫌い、海外の高級車に憧れる気持ちがあるが、これは子供の頃、父の車・ブルーバード510に関して恥ずかしい思いをしたためと思われる。 本人は知らなかったが、母が産気づいた際、父が運転して妻を運んでいたところ、車(ブルーバード510)の中で産まれたという過去がある。
土井垣 勝 (どいがき まさる)
自憲党の衆議院議員で次期総裁候補。家族との想い出の車、スバル360をレストアガレージ251の前で見かけ、これを売って欲しいと頼むが、里見夢次郎に断られる。10年前、大臣になった際、財政再建論を掲げ、金の出し渋りをしたため、後援会長を務めていた佐竹浩の工場が倒産。 そのため、佐竹と友人であった夢次郎は、土井垣を眼の仇にしていた。35年前、都議選に出馬する際、資金を作るために家とスバル360を手放している。その際の抱負は、誰もが車に乗れる豊かな社会を作り、多くの家族が楽しい想い出をたくさん作れるようにするというものだった。若い頃に結婚しており、憲弘と美幸という2人の子供がいたが、都議になった後に離婚。 現在は独身となっている。
佐竹 浩 (さたけ ひろし)
スバル360のピストンリングを作っていた町工場の社長。10年前に工場が潰れ、失踪。現在はホームレスをしている。里見夢次郎とは古くからの付き合いで、土井垣がスバル360を買い直すなら、夢次郎を頼れと夢次郎の名刺を渡していた。幼い頃に父を戦争で亡くし、母も中学の頃に他界。 人に預けられて育ち、独身であったため、家族団らんを知らずに生きてきており、土井垣が抱いていた「日本中の家庭が車をもって家族旅行に行けるような、大衆が喜ぶ社会を作りたい」という夢に共感し、政治家になる前から応援、後援会長を務めた。世間では、出世した土井垣に捨てられたと噂されたが、真実は立派な政治家になった土井垣に自分は不要になったと身を引いた形であった。
土井垣 明子 (どいがき あきこ)
土井垣勝の妻。30年前、息子の憲弘が軽度の小児麻痺にかかり、闘病が長期にわたることになった際、政治家を辞めて息子に付き添おうとする勝を見て、「あなたが夢をあきめる理由になりたくない」と手紙と離婚届を残して、勝のもとを去った。勝が首相になった後、里見夢次郎たちの計らいで、約束の場所、東京タワーで勝と再会し、再度プロポーズされる。 だが、彼はまだ夢の途中であるため、立派に首相を務め上げ、普通のおじいちゃんになったらプロポーズを受けると約束した。
花村 鞠絵 (はなむら まりえ)
洋服のブランド「ENERNITY」の社長兼トップデザイナー。尊敬と恋心を抱いていたカメラマンの明信を事故で亡くし、以降、仕事一筋に頑張ってきた。明信の語った「永遠」という言葉が、彼女のブランド名の由来となっている。里見夢次郎に、明信のフェアレディ240ZGのレストアを依頼し、このレストア作業の過程で、明信が自分を想っていてくれたことを知り、長年抱えていた心のつかえが洗い流された。
明信 (あきのぶ)
姓は不明。花村鞠絵に恋心を抱いていた車専門のカメラマン。最高に輝ける一瞬を「永遠」に残したいという気持ちから、車を理解するために、徹底的に乗り込んで、徹底的に磨き上げ、その後にシャッターを切るというスタイルをとっていた。そのため、数がこなせず、あまり売れていなかった。 鞠絵から尊敬と恋心を抱かれており、彼女の仕事のスタイルには、明信のポリシーが受け継がれた。フェアレディ240ZGのオーナーであり、この車に惚れ込んでいた。20歳近く年下の鞠絵にプロポーズするため、仕事を頑張りすぎ、居眠り運転をして事故死する。
橋爪 周平 (はしづめ しゅうへい)
洋服のブランド「ENERNITY」の副社長。ENERNITYに入る前は、ファッション雑誌の編集主任を務めており、この雑誌で花村鞠絵の服を採り上げたことがきっかけで縁ができ、ENERNITYに勤めるようになった。鞠絵に密かに想いを抱いており、彼女を20年支え続けてきたが、鞠絵が明信の愛を確信してつき物が落ちたこと、会社の人員が育ったことから、辞表を提出。 実家の熊本へ戻り、居酒屋を始めようとする。
杏奈 (あんな)
高円寺のスナック、ミルクに勤めるホステス。本名は吉村京子。33歳だが、25歳と偽って、一ノ瀬哲也と付き合う。シングルマザーであり、健太と早紀という二児の母。哲也を騙していることに良心の呵責を感じていた。息子の健太が初代シルビア(CSP311)が大好きであったため、杏奈も初代シルビアが好きであり、これが哲也に伝わって、哲也は杏奈にシルビアをプレゼントしようとレストアを行う。
平井 賢三 (ひらい けんぞう)
武蔵野南署に勤める刑事課の敏腕刑事。巡査長。通称「マムシの平さん」。定年退職を間近に控え、ベレットGT TypeRのレストアを里見夢次郎に依頼した。このベレットGTは、賢三が唯一、犯人を検挙できなかった極楽興業強盗事件の証拠物件であり、捜査に行き詰まるとこの車の前に立ち、自分を戒めたという思い出深い車であった。
宮城 玲治 (みやぎ れいじ)
極楽興業強盗事件の犯人。若い頃、里見夢次郎の弟分のような立場だった。父の振り出した手形が極楽興行の手に渡り、不当な取立てを受けたため、畳職人の父は無理をして過労死。店は極楽興業の手に渡った。これを恨んで極楽興業に強盗に入り、5000万円の現金と帳簿類を盗んで逃亡。その際、ベレットGTを駆って、現金を撒きながら走った。 その後、罪を悔やんで増水した多摩川に身を投げたが、一命を取りとめた。その後、鳥井郁哉と名前を変え、まじめに働き、立身出世し、鳥井商会の会長となる。時効が成立していたが、癌で余命3ヶ月の身となり、死後、清廉に生きた父親に認めてもらうため、自首をしようとする。
山村田 辰五郎 (やまむらた たつごろう)
愛車のホンダS800を子分の政に勝手に乗り回され、擦られることに。これを政が、板金業を営んでいた里見夢次郎に、こっそりと修理に出していた。夢次郎は、この車で妻を誕生日のドライブに誘い、壊してしまう。このS800を必死に直したのが、夢次郎が本格的にレストアを始めるきっかけとなった。 夢次郎の妻、節子とは釣堀で出会っており、そこで彼女に惚れ込んだ。節子のために夢次郎に対して寛大なところを見せ、歪に修理されたS800に対しても咎め立てなかった。
綾小路秀麻呂の母 (あやのこうじひでまろのはは)
綾小路秀麻呂の母。滋賀県を中心に全国350店舗を誇るレストランチェーン店の社長。小さな食堂を営んでいた頃、常連客の車の排気音を頼りに、誰が来るかを推測し、いち早く調理に取り掛かるという事をしていたため、車に詳しくなった。車の知識と耳の良さは、息子の秀麻呂以上。
有栖川 龍太郎 (ありすがわ りゅうたろう)
ヒストリックカー協会の会長。アリスドラッグの創業社長。綾小路秀麻呂の友人であり、北大路虎彦とは幼馴染のケンカ相手。虎彦とは、車のことで、しょっちゅう張り合っている。婿養子であり、妻には頭が上がらない。旧姓は田中。この旧姓を使い「田中龍太郎」として、虎彦が開催したジャパン・ミッレ・ミリアに参加した。 エントリーした際の車は、プリンス・スカイラインGT-B。
北大路 虎彦 (きたおおじ とらひこ)
ジャパン・オーソリティカークラブの会長。有栖川龍太郎とは幼馴染のケンカ相手。龍太郎とは車のことで、しょっちゅう張り合っている。龍太郎が、探していた日野コンテッサ1300クーペマークⅡを手に入れたため、腹いせも兼ねて、ジャパン・ミッレ・ミリア(1600kmを2日半で走る公道レース。 元となったレースは、イタリアで行われている)を開催した。エントリーした際の車は、ポルシェ904GT-S。
一ノ瀬 文恵 (いちのせ ふみえ)
里見夢次郎の娘。夫の一ノ瀬忠彦の海外赴任につきあっており、現在は海外に在住。
その他キーワード
トヨタ2000GT MF12L型 (とよたにせんじーてぃえむえふじゅうにえるがた)
『レストアガレージ251車屋夢次郎』に登場する車。トヨタが誇るスポーツカー。MF12L型は、その中でも北米をターゲットに低価格化を図ったプロトタイプカーである。2300ccのエンジンを積んでいたため、2300GTという通称で呼ばれた。試作型を9台ほど作った時点で計画が消滅している。里見夢次郎のところに、吉野梢から持ち込まれたのは、唯一、DOHC2000ccのエンジンを積んだ車であった。 正式な持ち主は、吉野梢の実父、深大寺将士(故人)であり、梢にとって父との想い出の車であった。