あらすじ
第1巻
「美女に絞殺されたい」という病的な一種の自殺願望を持つ東山春人は、臨床心理士の資格取得を途絶し、二鷹高校の教師となる。そして、美しい女生徒の佐々木真帆に絞殺してほしいと妄想を膨らませ、やがてその妄想は徐々に実行計画として具体化していく。しかし真帆自身も、多重人格障害という精神疾患を抱えており、その事を察知している級友の後藤あおいもまた、自身がアスペルガー症候群である事に悩んでいた。春夫が顧問を務める二鷹の遺跡研究クラブは、真帆とあおい、そして中学の頃から真帆に想いを寄せ猛勉強で同じ高校に進学して来た川原雪生の三人が部員として活動していた。ある日、彼らの学校にカウンセラーとして臨床心理士の深川五月が赴任して来る。彼女は春人の元恋人でもあった。そんな中、地震のショックで美帆の別人格であるカオリが現れた事で、五月と雪生は美帆の秘密を知る。五月は、美帆を救うためにあおいと雪生に協力を依頼。しかしその頃、春人は美帆が自分を絞殺する事を具現化しようとしていた。春人は、かねてから入念に練り上げていた異常で狂気的な計画を実行するために、高校に退職届けを提出する。
第2巻
東山春人は、高校を退職したあと自宅の家財道具をすべて処分して自身の痕跡を完全に抹消する。彼は、佐々木真帆が幼い頃に彼女を襲った男を殺害したという過去の事件の詳細を知っていた。そして、彼女の深層心理に眠る狂気の人格に絞め殺される事を妄想し、それを実現させようと企んでいたのだった。一方、密かに春人に想いを寄せていた真帆は、自分の気持を告白しないまま春人と離別した事に心を痛めていた。春人の方は、ホテルに宿泊しながら決行の日の準備を整えていた。そして決行日、春人は二鷹の遺跡研究クラブでやり残していた遺跡の調査を口実に、美帆を呼び出す事に成功し、指定した場所で彼女を待つ。しかしその場所には、美帆の危険を察知した後藤あおいが美帆と二人連れで現れる。春人は逡巡するが、計画の一部を変更しながらも、あくまでも凶行の実行を決断する。春夫は樹々が生い茂る林の奥に二人を誘い、そこで自分の計画を打ち明ける。恐怖で身動きできないかおりの前で、春夫は美帆の意識の底から狂気の分身を出現させるために、美帆の首を締め上げる。その頃、スマホのGPSアプリを頼りに、深川五月と川原雪生が美帆の跡を追って現地に急いでいた。
実写映画
登場人物・キャラクター
東山 春人 (ひがしやま はると)
佐々木真帆たちの通う学校に勤める、独身男性教師。1979年8月8日生まれ。優等生で、周囲からは信頼を得続けている。高校2年の頃から「誰かに殺されたい」という願望が目覚め、抑えられなくなっている。自分が「オートアサシノフィリア(自分が殺されることに性的興奮を覚える性的嗜好)」だと知ってからは、誰にどのように殺されたいのかをシミュレートするようになっていった。 高校教諭になって出会った女子高生・佐々木真帆に、夏に絞殺されることを決意し、実行のための準備をする。大学時代は深川五月と付き合っており、彼が教師を目指したことで別れた。その後学校にスクールカウンセラーとしてやってきた彼女と再会する。
深川 五月 (ふかがわ さつき)
東山春人が大学1年生の夏ごろにテニスサークルで出会い、付き合いはじめた女性。臨床心理士。2人は会うたびにセックスをしており、仲も順調だったが、その後東山が高校教員を目指したことで別れてしまう。数年後、東山が勤める高校にスクールカウンセラーとして就任。佐々木真帆らをはじめ、多くの生徒に慕われている。
佐々木 真帆 (ささき まほ)
髪の長い、たおやかな雰囲気の高校生。周囲から噂される美人。小学4年生のころに転校してきて以来、アスペルガー症候群の後藤あおいに共感し、常に一緒に行動している。後藤とは手を握ることで感情を伝え合っている。遺跡に興味があり、「二鷹の遺跡研究クラブ」に後藤と共に所属。4歳の頃に両親に虐待され続けたことで心を閉ざしてしまい、もう一人の人格「カオリ」が表出した。 緊張時には人格が入れ替わる。二鷹の遺跡研究クラブ顧問の東山春人に淡い思いを寄せていた。東山は、彼女に殺されたいという願望を抱いているが、本人は何も知らない。
後藤 あおい (ごとう あおい)
メガネをかけた、無口で無表情な高校生。佐々木真帆の親友。アスペルガー症候群で、相手の感情を読むことができず、自分の思いを表に出せずにいる。自分を守るために「~ぽよ」という口調でおばかキャラを演じているが、極めて頭がよく、教科書の内容や会話や数字など、すべて覚えることができる。また独創的な絵を描くため、真帆には上手いとほめられているが、幼いころに画家のおじいさんが描いたのではと疑惑をかけられてしまったため、年相応の絵を覚えて真似るようになった。 集団に入るとパニックになるため、保健室通学をしている。耳鳴りで地震を予知できる。
川原 雪生 (かわはら ゆきお)
髪を染めた、軽くてがさつな高校生。スケートボードが好きで、中学時代から熱心に練習していた。佐々木真帆のことが好きで、彼女の通う高校に入学するため必死に勉強し、同じ「二鷹の遺跡研究クラブ」に入る。元々真面目で思いやりのある人物で、真帆とうまく接するためにおちゃらけたキャラを演じていた。真帆が顧問教師の東山春人を好きだと知って慌てて告白するも、玉砕。 しかし後に彼女が二重人格であることを知り、彼女をなんとか助けてあげたいと涙する。
カオリ
佐々木真帆の中に眠っている別の人格。非常に攻撃的で、口調がきつい。真帆の記憶を共有はしているが、真帆はカオリの存在を知らない。真帆が4歳のころ親に虐待されていたとき、逃げたいと感じていた彼女を守るために生まれた。辛いことがおきると入れ替わって表出する。後藤あおいはカオリの存在をよく知っており「口は悪いけど強くて優しい」と評している。
集団・組織
二鷹の遺跡研究クラブ (にたかのいせきけんきゅうくらぶ)
教員である東山春人が設立したクラブ。週に1回集まって二鷹市周辺の遺跡を巡るのが目的の、ゆるいクラブ活動。遺跡に興味がある佐々木真帆と後藤あおいが参加。佐々木に思いを寄せている川原雪生も入部する。
その他キーワード
オートアサシノフィリア
自分が殺されることに性的な興奮を感じる性的嗜好。自殺願望とは違い、他の人の手によって理想的な殺され方をすることを望む。東山春人は、自分がその性癖であることに気づき、女子高生に絞殺されて、腐敗して身元不明の死体になる計画を立てる。殺してくれる対象として、佐々木真帆に目をつけた。