あらすじ
第1巻
21歳の和菓子職人の花岡七桜には、15年前に母親の大倉百合子が殺人罪で逮捕され、真相不明のまま裁判中に亡くなった過去があった。当時百合子は和菓子店「光月庵(こうげつあん)」で住み込みで働いており、同居していた七桜は「光月庵」の息子の高月椿も交えて幸せに暮らしていた。しかしある日、「光月庵」の旦那である高月樹が何者かによって殺害され、椿の証言により、七桜の母親が逮捕されたのである。その後、七桜は児童養護施設に預けられ、石川県の和菓子店「一幸堂」で和菓子職人として働いていた。しかし、事件によって受けた心の傷により、今でも赤い色を見ると血を連想し、体調を崩してしまうのだった。そんなある日、七桜は何者かによる嫌がらせによって「一幸堂」を辞めざるを得なくなる。そこに謎の男性が現れ、百合子が生前書いた手紙を渡して去っていく。そこには、百合子は犯人ではないという旨が書かれていた。その直後、一人になっても和菓子を作り続ける決意をした七桜は、懇意にしている梅田流家元の娘、真由との仕事で「光月庵」の人間に出会う。その男性は成長した椿だった。動揺する七桜だったが、椿は七桜の事を忘れているようで、しかも突然自分と結婚しないかと言い出す。
第2巻
高月椿が花岡七桜と結婚しようと言い出したのは、業績の思わしくない「光月庵」を変えるため、予定していた長谷屋栞との結婚を破談にするためだった。これを知った大旦那の高月宗寿郎はひとまず協力を約束するも、三か月で結果を出せなければ、二人を追い出すと宣言する。こうして再び「光月庵」で暮らす事になった七桜は、15年前の事件の真相を探るため、昔から「光月庵」と縁の深い呉服屋「白藤屋」へお菓子を持ってあいさつに行く。しかしこのお菓子は、何者かによって赤く汚されていた。その場は椿が代わりのお菓子を用意した事でおさまるが、これは女将の高月今日子の仕業だった。二度と「白藤屋」の敷居は跨げないと落胆する七桜だったが、その直後、なぜかもう一度「白藤屋」から注文が入る。そこで七桜は、今日子の息がかかった職人、富岡の妨害に遭いつつも、名誉挽回のための最中を制作する。その直後、七桜と椿は宗寿郎に、夫婦なのに二人が別々の部屋で暮らしているのは、政略結婚だからではないかと疑われる。そこで二人はこれを機に部屋を同じにして結ばれるが、その直後、椿は衝撃の事実を口にする。
第3巻
花岡七桜は高月椿に、自分がかつて椿と親しくしていた「大倉七桜」である事を打ち明けようとした。しかし、大倉百合子に父親を殺されたと思い込んでいる椿は、その娘である大倉七桜に会ってしまったら、怒りに任せて殺してしまいかねないと言い出す。これにショックを受けた七桜は、百合子と椿、どちらがウソをついているのかわからず混乱するが、ひとまず椿に正体を知られないよう、一層気をつけなくてはと気を引き締める。しかしその直後、七桜は高月今日子に正体を悟られ、危機に陥る。だがそこへ現れたのは、七桜の母親を名乗る女性だった。「花岡夕子」と名乗る彼女は、すらすらとウソをついて今日子を出し抜き、七桜は彼女が以前自分に手紙を渡した、謎の男性の差し金によるものに違いないと考える。そこで七桜は、夕子の店でなら謎の男性と会えるかもしれないと考えてさっそく向かおうとするが、突如椿によって蔵に閉じ込められる。これは錯乱している今日子から七桜を守るための措置だったが、椿の意図がわからない七桜は無理やり脱出してしまう。その結果、椿は今日子の攻撃にさらされた七桜を守って手にケガを負い、責任を感じた七桜は椿と共に今度行われる「草薫(くんそう)会」の茶会に参加し、高月宗寿郎が満足する和菓子を作る決意をする。
第4巻
花岡七桜は高月椿から、七桜こそが「大倉七桜」ではないのかと尋ねられるが、違うとウソをつく。椿はこれを信じ、七桜は罪悪感を感じつつも、「草薫会」の茶会に向けて和菓子「落とし文」の制作に励む。一方その頃、高月今日子は夕子の正体に気づき、彼女の店「呑処 ゆうこ」に訪れ、夕子を脅していた。これでは割に合わないと感じた夕子は、この件から降りる事を決める。そして茶会当日となり、七桜と椿は会場へ和菓子を持っていく。しかし七桜は先日椿から聞いた、椿と高月宗寿郎の複雑な関係に心を痛めていた。そこで七桜は茶会に遅刻した宗寿郎を迎えに行き、宗寿郎は椿に関心がないかもしれないが、自分は椿を愛しているという気持ちを伝える。しかし宗寿郎は七桜と椿の邪魔をするため、客に小豆アレルギーを持つ人がいる事を伝えずにいた。そこで二人は急きょ落雁を作る事にし、七桜は型を取りに一度「光月庵」に戻る。その途中で七桜は以前母親の手紙を渡してくれた謎の男性に再会し、彼がこの周辺一帯の大地主の多喜川である事を知るのだった。その後無事に茶会は成功し、10年間一度も椿の作った和菓子を食べなかった宗寿郎も、ついに「落とし文」を口にする。これに感激した椿は七桜のおかげであると喜ぶが、幸せな二人の背後では、今日子と城島裕介による新たな企みが行われていた。
第5巻
花岡七桜は、見習いの城島裕介から自室に遊びに来ないかと誘われる。裕介の実家は和菓子屋「しまや」で、ちょうどお菓子を贈ってくれたところだという。七桜は喜んでその誘いに乗るが、二人で部屋で話していると、裕介は幸せになりたいのであれば高月椿より自分と交際すべきだと語り、七桜にキスをしようとする。その場は椿がやって来た事で事なきを得るが、七桜は椿に、裕介はとても自分の事が好きそうには見えなかったので、何か意図がありそうだと伝える。その直後七桜は、裕介が今月いっぱいで「光月庵」を辞めさせられる事を知る。これは椿の意向によるものだと悟った七桜は裕介の解雇を止めようとするが、そんな中で裕介と柄の悪い男性が話しているところを目撃する。さらに男性は、裕介と「しまや」には多額の借金があるという。これを知った七桜は、裕介のために「しまや」の看板商品である、わらび餅の味の再現に挑む。一方その頃椿は、多喜川経由で「しまや」はすでに倒産している事、裕介の母親の城島昭子が入院している事を知り、昭子に会いに行っていた。そして高月家が昭子の入院費と「しまや」の借金を肩代わりする代わりに「しまや」のわらび餅を「光月庵」の商品として「音羽百貨店」の催事に出す事となる。
第6巻
花岡七桜は、「音羽百貨店」の催事に向けて「しまや」のわらび餅制作に励んでいた。これを知った高月今日子は、これまでのように城島裕介を使って邪魔しようとするが、裕介はこれを拒否。催事当日、今日子は自らの手でわらび餅をめちゃくちゃにするが、これは偽物だった。七桜は今日子の妨害に遭う事を予想しており、失敗作を本物のように見せかけて置いていたのである。こうして本物のわらび餅は守られ、催事は無事に成功。翌日から七桜は、7月23日に行われる自分と高月椿の結婚式の準備で忙しくなる。そこで椿は、七桜を伴って夕子にあいさつに行く。以前今日子に脅された夕子は母親の振りをやめようとしていたため、式への参加を拒もうとするが、最終的には参加を決意。椿が先に帰り、七桜と二人きりになった際、ウソをさらに重ねる事になってもいいのかと確認する。これによって、七桜は椿の子供を妊娠している事を夕子に打ち明け、さらに椿にもすべてを話そうと決めるのだった。しかしその直後、椿は急な出張が入り、時間が取れなくなってしまう。その夜に七桜は裕介の計らいで、昔大倉百合子と住んでいた部屋に入れてもらうが、そこで百合子が遺した荷物を発見する。それにより自分が、百合子と高月樹の娘である事、椿が今日子と今日子の不倫相手の息子である事を知る。
第7巻
「光月庵」の正統な後継者は、高月椿ではなく花岡七桜だった。血縁にこだわる高月宗寿郎は、亡くなった「光月庵」の元旦那である高月樹の実子を後継者にしたいと願っており、椿に冷たく当たっていたのは、椿が樹の息子ではないと知っていたからだったのである。これを知った七桜は、もはや「光月庵」にはいられないと判断。椿との結婚を取りやめて、多喜川に頼る決意をする。一方の宗寿郎は、自分が亡くなった際は遺産を椿にゆずるが、もし樹の実子が現れた場合は、椿よりもその子を優先するという遺言状を作成していた。これを知った高月今日子は怒り狂い、数日後「光月庵」が茶会でにぎわっているスキをついて遺言状を破ろうとする。しかし宗寿郎に見つかり、二人はもみ合いになる。そして宗寿郎は今日子によって頭にケガを負わされて倒れ、さらに部屋に火を放たれるのだった。その頃七桜は、なかなか宗寿郎が戻って来ない事を不審に思い、一人で探していた。そこで今日子と遭遇した七桜は、様子のおかしい今日子を見て、今こそ15年前の事を尋ねるチャンスだと判断し、自分こそが大倉百合子の娘であると告白する。しかしこれは椿に聞かれてしまい、ずっと七桜にウソをつかれていた事に椿は深く傷つく。しかし話をする間もなく、今日子が放った炎は家中に広がっていた。
第8巻
「光月庵」で起きた火災により母屋は全焼したが、幸い死者は出なかった。しかし花岡七桜は、そのまま「光月庵」を離れ、姿を消してしまう。それから十か月が経過した頃、高月椿は失意に暮れながらも、和菓子教室を開くという新しい試みを始めていた。ここには椿の元婚約者の長谷屋栞も参加しており、二人は今は友人として仲を深めていたのだった。しかし栞は、本心では今も椿の事を忘れられず、新しい縁談にも気が進まずにいた。そこで栞は父親に本心を伝え、長谷屋家を去る事を決意。これを案じた椿は、栞を「光月庵」で雇う事にするのだった。それから時は経ち、栞はすっかり「光月庵」になじみ、なぜか高月今日子さえ、栞には親切だった。そんなある日、椿は週刊誌の記者に声を掛けられる。彼は3年前の火災について調べるうち、18年前にも「光月庵」では事件があった事を知り、調査していたのである。一方その頃、栞は街で偶然七桜を発見し、声を掛ける。そこで栞は、現在七桜が金沢市内の和菓子屋で働いている事を知る。その場は楽しく話しただけで終わる二人だったが、その直後栞は、最近「花がすみ」という和菓子屋が力をつけており、今度五月雨亭で行われる新春園遊会でも「光月庵」のライバルになる事を知らされる。
第9巻
「光月庵」の新たなライバル店「花がすみ」とは、花岡七桜の新しい店だった。火災のあと、七桜は一度東京都の店で修業をし、その後石川県金沢市に戻って、多喜川の支援のもと「花がすみ」を開いたのである。高月椿と長谷屋栞はこれを知らないまま、五月雨亭の新春園遊会で使う和菓子の選定会に出る。だが当日「花がすみ」の関係者と会う事はなく、選定会は「光月庵」の勝利に終わるのだった。一方の七桜は、椿を目撃していたが、すぐ近くにいたにもかかわらず、椿が自分に気づかなかったのを不審に思っていた。七桜は知らなかったが、椿は3年前の火災によって網膜が傷ついており、失明の恐れがあるほど視力が落ちていたのである。椿はできるだけ早い手術を勧められていたが、新春園遊会の和菓子を自分が作るしかなく、火災以来廃人同様となってしまった高月宗寿郎のためにも結果を出そうとしていた。そんなある日「花がすみ」に興味を持った椿は来店し、そこでついに七桜と再会する。しかし七桜は椿に冷たい言葉を浴びせ、椿は自分たちが敵同士である事を悟るのだった。さらにその直後、「光月庵」は和倉温泉の和菓子フェアで、今度は「花がすみ」といっしょにお菓子を出す事になる。
テレビドラマ
登場人物・キャラクター
花岡 七桜 (はなおか なお)
和菓子店「光月庵」で働く和菓子職人の女性。年齢は21歳。のちに24歳で自分の店「花がすみ」を開く。前髪を目の上で切り、肩より少し上の高さまで伸ばした黒のボブヘアにしている。母親の大倉百合子が亡くなるまでは「大倉」姓を名乗っており、名前に「桜」の文字が入っている事から、高月椿には「さくら」と呼ばれていた。そのため、当時の知り合いは七桜の本名を「さくら」だとカンちがいしている。まじめな性格で、和菓子への情熱は誰よりも強く、和菓子職人の仕事を深く愛している。16年前、和菓子職人である百合子が「光月庵」で住み込みで働く事になり、いっしょに引っ越す。そして椿と親しくなるが、15年前のある日、椿の父親の高月樹が何者かに殺害され、疑われた百合子が逮捕されたうえに、真相が明かされないまま裁判中に亡くなった。以来、赤い色を見ると血を連想して怖くなり、今でも自分の作るお菓子には赤い色を使わない。その後は児童養護施設「たいようの家」に預けられ、現在は石川県小松市にある和菓子屋「一幸堂」で働いていた。しかし、謎の人物から度々送られてくる嫌がらせの手紙に店が耐えかね、解雇されてしまう。そんなある日、懇意にしている真由との仕事がきっかけで椿と再会し「光月庵」を再建したい椿と結婚する事になる。そして再び「光月庵」で暮らすようになり、職人として働きながら、15年前の事件の真相にせまっていく。誕生日は1996年4月3日で、血液型はA型。
高月 椿 (たかつき つばき)
石川県にある創業400年の老舗和菓子店「光月庵」の若旦那を務める男性。年齢は21歳。前髪を目が隠れそうなほど伸ばして左寄りの位置で分けた、茶色の短髪。まじめでクールな性格で、感情をあまり表に出さない。しかし本心では人として認められ、愛される事を強く望んでいる。子供の頃は明るく人懐っこい性格で、16年前「光月庵」の住み込み従業員としてやって来た大倉百合子と、その娘の大倉七桜(のちの花岡七桜)ともすぐに親しくなる。しかし15年前のある日、樹と百合子が密会している場面に遭遇し、裏切られた気分になる。結果、百合子だけでなく七桜の事も、強く憎むようになってしまう。その直後に樹が殺害され、百合子が犯人であると証言するが、その際二人が不倫関係にあると思われた事は伝えられずにいた。後日これを宗寿郎にあらためて伝えたものの、すぐに証言しなかったという理由で、宗寿郎からはウソつき呼ばわりされるようになってしまう。以後、宗寿郎には自分が作ったお菓子を食べてもらう事も叶わず、それでも宗寿郎に認めてもらう事を強く願っていた。そんなある日、長谷屋栞との結婚が決まるが、このまま長谷屋家に支援してもらう「光月庵」には、未来はないと考えていた。そこで偶然出会った七桜を、かつて親しくしていた大倉七桜だとは知らぬまま、やがて強く惹かれていく。誕生日は1996年5月2日。
高月 宗寿郎 (たかつき そうじゅろう)
石川県にある創業400年の老舗和菓子店「光月庵」の大旦那を務める老齢の男性。前髪を上げて額を全開にし、髪の毛を肩の高さまで伸ばしたセミロングヘアにしている。人前では非常に穏やかに振る舞っているが、実際は非常に厳しく、自分の認めた人間以外には冷たい。さらに高月家の血を何よりも大切に思っており、義理の娘である高月今日子が不倫して産んだ、高月家と血のつながりがない高月椿に対しては、辛く当たっている。さらに15年前樹が殺された件で、椿が自分の目撃した事をすぐに正しく伝えなかった事に強い怒りを感じており、ウソつき呼ばわりし、以来椿の作ったお菓子をいっさい食べなくなってしまう。一方で、当時「大倉」姓だった七桜が作ったお菓子は非常に気に入っており、高く評価していた。しかし当時七桜は「さくら」と呼ばれていたため、花岡七桜として再会したあとも、二人が同一人物である事には気づいておらず、高月樹と大倉百合子の娘である七桜こそが「光月庵」の正統な後継者である事も知らない。お菓子の中では、落雁が一番好き。しかし、椿は落雁は売れ行きが悪いので店頭には出さないと言った事から、意見が対立している。
高月 樹 (たかつき いつき)
石川県にある創業400年の老舗和菓子店「光月庵」の元旦那で故人。前髪を目の上で切って真ん中で分けた短髪にしている。穏やかで心優しい性格だが、高月家の人間と「光月庵」の従業員が必要以上に親しくするのはよくないと考え、15年前も花岡七桜と遊ぼうとする高月椿を叱っていた。しかし、実は大倉百合子と不倫関係にあり、花岡七桜の実の父親でもある。15年前、自宅で何者かに刺されて死亡する。そして、その場にいた百合子が椿の証言によって逮捕されるものの、百合子は裁判で真相が明かされる前に死亡したため、犯人は現在でも不明なままとなっている。誕生日は1972年12月7日。
高月 今日子 (たかつき きょうこ)
石川県にある創業400年の老舗和菓子店「光月庵」の女将を務める中年の女性。高月宗寿郎の義理の娘。前髪を長く伸ばし、ロングヘアを頭の後ろで一つにまとめている。右目尻にほくろが一つある。旧姓は「鳳」。狡猾で、目的のためには手段を選ばない残忍な性格。加賀御三家である鳳家の娘として生まれ、25年前、高月樹と幸せになる夢を抱いて「光月庵」に嫁いだ。しかしなぜか樹が自分に指一本触れない事から、やがて絶望し、別の男性と関係を持って高月椿を出産した。また、店に職人として雇われたはずの大倉百合子が、実は樹の昔からの知り合いで、二人が不倫関係にある事に気づいてしまう。これによって樹と百合子を激しく憎むようになり、15年前、樹が何者かに刺されて倒れていた際、樹が百合子といっしょにいるのを見たという椿に、その時二人は揉めていたのだろうと誘導。実際の二人がキスをしていたという事実とは違う証言をさせた。その後は椿を「光月庵」の当主にする事に心血を注いでおり、この障害になるものを排除しようとしている。しかし椿が百合子の娘である花岡七桜と結婚すると言い出したため、どんな手段を使ってでも二人の仲を引き裂こうとする。
大倉 百合子 (おおくら ゆりこ)
和菓子職人の女性で、故人。花岡七桜の母親であり、高月樹の不倫相手でもある。前髪を目の上で切って左寄りの位置で分け、胸の高さまで伸ばしたロングウェーブヘアにしている。明るく穏やかな性格で、多忙ながら七桜との時間を作って、いっしょに過ごしていた。しかし、あんこを作っている時だけは別で、その時間はいっさい七桜にかまわないほど、真剣に作業していた。そのため、七桜はそんな百合子の姿にあこがれ、自分も和菓子職人になりたいと思うようになった。16年前「光月庵」の住み込み従業員として働き始めるが、樹とはこの頃にはすでに不倫関係にあり、二人の娘である七桜を連れて、高月今日子の前で平然と働いていた。15年前のある日、高月家の屋敷で樹と密会していたところを高月椿に目撃される。この直後に樹が何者かに刺されて亡くなった事から、真っ先に容疑者となり、逮捕された。しかし真相が裁判で明らかになる前に倒れ、亡くなってしまう。多喜川の父親とは親しく、亡くなる前に自分が犯人ではないという旨を書いた手紙を渡し、七桜が20歳を超えたら渡してほしいと頼んでいた。
富岡 (とみおか)
石川県にある創業400年の老舗和菓子店「光月庵」で和菓子職人を務める中年の男性。「光月庵」ではすでに10年働いており、現在勤めている職人の中では、最も古株である。前髪を額が見えるほど短く切った角刈りで、三白眼。高月今日子と肉体関係を持っており、今日子の意志にはなんでも従う。厨房では高月椿を超える権限を持ち、好き勝手に振る舞っている。そのため「光月庵」にやって来た花岡七桜にも冷たく当たり、厨房を使わせないなどの妨害をする。将来は今日子の支援のもとで自分の店を構えたいと願っており、今日子に取り入っているのも、この事が大きい。しかしある日、女装して今日子の振りをした椿に騙され、関係を暴かれる。さらに、妨害をものともせずに七桜がお菓子を作ってしまったため、今日子に見放され、捨てられた。
山口 (やまぐち)
石川県にある創業400年の老舗和菓子店「光月庵」で和菓子職人を務める中年の男性。前髪を額が見えるほど短く切った短髪で、眼鏡をかけている。穏やかで落ち着いた性格の持ち主。花岡七桜と高月椿が結婚を決め、七桜が「光月庵」で暮らすようになってから、椿の雰囲気が柔らかくなった事を喜んでいる。
城島 裕介 (じょうしま ゆうすけ)
石川県にある創業400年の老舗和菓子店「光月庵」に修業に来ている、和菓子職人の若い男性。能登にある和菓子屋「しまや」の息子でもあるが、すでに倒産している事は周囲に伝えていない。前髪を目が隠れそうなほど伸ばしている。明るい性格で、親しみやすく人懐っこい。そのため「光月庵」に新しくやって来た花岡七桜とも、小豆の話題がきっかけですぐに親しくなった。しかし、富岡同様に高月今日子の息がかかった存在であり、金銭を受け取って今日子の命令に従っている。そこである日、七桜にアプローチして高月椿との関係を壊す作戦に出る。しかし、これがきっかけで椿に解雇させかけられたうえ、すでに「しまや」はない事、母親の城島昭子は入院している事、実家には多額の借金がある事を知られてしまう。しかし「しまや」の看板商品であるわらび餅のレシピを、借金と昭子の入院費を肩代わりする代わりに、「光月庵」で使ってもいいという条件で合意し、引き続き「光月庵」で働ける事になった。また、これ以来今日子に従うのをやめ、七桜たちに協力的になった。住み込みであるため、高月家の敷地内にある離れに住んでおり、15年前まで七桜と大倉百合子が使っていた部屋で暮らしている。そのため「しまや」の問題が解決したあとは、お礼として七桜が自室を見て回れるように取り計らった。
城島 昭子 (じょうしま あきこ)
かつて能登にあった和菓子屋「しまや」の元店主の妻であった中年の女性。城島裕介の母親。前髪を目が隠れそうなほど伸ばして左寄りの位置で分け、顎の高さまで伸ばした外はねボブヘアにしている。夫と裕介といっしょに「しまや」で働いていたが、ある日参加した和菓子展で何者かに妨害され、看板商品のわらび餅をめちゃくちゃにされてしまう。これによって借金を返す当てがなくなり、夫が心身共に疲れ果てて亡くなる。その後、「しまや」は倒産した。倒産は仕方のない事と思いつつも、裕介が和菓子展での出来事は「光月庵」の仕業であると考えている事を案じていた。その後、裕介が家を離れて「光月庵」で働くようになり、城島昭子は体調を崩して中央病院に入院する事になる。そんなある日、高月椿が突如自分のもとを訪れたため、もしかすると裕介が「光月庵」に迷惑をかけるような事をしたのではないかと驚く。何も起きていない事を安堵しつつ、今後裕介が何をするかわからないので、少しでも早く解雇してほしいと椿に頼む。
長谷屋 栞 (はせや しおり)
日本屈指の旅館「長谷屋」の三女の女性。高月椿の元婚約者。前髪を目が隠れそうなほど伸ばして左寄りの位置で斜めに分け、顎の高さまで伸ばした内巻きボブヘアにしている。明るくおっとりとした性格で、やや内気なところがある。二人の姉に比べ、自分はさえない存在であるととらえており、父親にもなんのとりえもないと言われ続けていた。そんなある日、趣味の絵付けの展示会で椿と出会い、自分の作品を気に入ってくれた事で椿に関心を寄せるようになる。その後、高月家との結婚の話が舞い込み、父親が反対する中で結婚を決意する。そのまま結婚式当日を迎えるが、そこに花岡七桜が乱入した結果、式は中断。椿が長谷屋栞ではなく、七桜と結婚すると言い出した事に驚く。さらに高月宗寿郎が長谷屋家の人たちに土下座して頼み込んだために破談になり、椿の事を一度はあきらめる。その後は椿と友人として付き合っていく決意をし、角倉との縁談が決まり、話を進めていた。そんな中で「光月庵」の火災事件が起き、偶然その場に居合わせた事から、ケガをしそうになった椿をかばい、左の頬に大きな傷を負った。これによって椿を忘れられていない事を自覚し、角倉との結婚を断って勘当される。そして、これを案じた椿によって「光月庵」で働くようになった。赤い色を身につけると、いつもより気分も上がると考えている。料理が得意。
多喜川 (たきがわ)
石川県の大地主の男性で、年齢は30代。前髪を目の上で切って真ん中で分け、焦げ茶色の癖のあるボブヘアにしている。口ひげを生やし、いつも和装を身につけている。穏やかな性格ながら、何を考えているのかわからないミステリアスな一面がある。季節の行事を大切にする家で育ち、そのたびに「光月庵」のお菓子を食べていた。そのため、当時の職人である大倉百合子のファンで、一方的に百合子の事を知っていた。しかし百合子は亡くなり、その後自分の父親も亡くなった。父親が亡くなる際、生前百合子から受け取った手紙を百合子の娘に渡したのち、彼女の力になってほしいと頼まれる。そこで、二人の関係についてはよく知らないまま、すでに21歳になっていた花岡七桜を探し当て、手紙を渡した。その後は七桜と接触せずにいたが、「光月庵」に戻った七桜が正体を隠したがっている事を察し、夕子を派遣するなど隠れてサポートしていた。そして「草薫会」の茶会でついに七桜と再会し、七桜が和菓子を作り続ける限り見守ると伝えた。その後、「光月庵」の火災事件を機に「光月庵」を離れた七桜を、金銭的にも精神的にもサポートするようになる。
夕子 (ゆうこ)
石川県金沢市長町にある「呑処 ゆうこ」の店主を務める中年の女性。多喜川の知人でもある。前髪を額が見えるほど短く切ったベリーショートヘアにしている。明るい性格で世話好き。ある日、常連客の多喜川の頼みで、母親をすでに亡くしている花岡七桜の振りをしてほしいと頼まれる。そこで、自分は輪島で店をやっているが、七桜とは折り合いが悪く、18歳の時に家を出て音信不通になってしまったが、高月椿との結婚を親戚づてに聞いたので、会いに来たとウソをついて高月今日子と椿を騙した。これに七桜が乗った事で親子の振りをする事になるが、後日今日子が七桜の持ち物を勝手に確認した事で正体がばれ、「呑処 ゆうこ」へ来店されてしまう。そこで、店を潰すと間接的に脅され、一度は母親の振りは割に合わないと手を引こうとする。しかし、七桜と椿が結婚式に参加してほしいと頼みに来た際は渋々承諾し、さらに七桜が椿の子供を妊娠している事を知る。そこで放っておけず、正体を椿に打ち明けた方がいいと七桜にアドバイスを送った。
真由 (まゆ)
石川県金沢市にある、茶道佐山流家元の娘。前髪を長く伸ばして右寄りの位置で斜めに分けて髪飾りで留め、顎の高さまで伸ばしてカールさせた内巻きボブヘアにしている。明るくおっとりとした性格で、「一幸堂」のお菓子のファン。特に花岡七桜とは親しく、自分の結婚式の引き出物には、ぜひ「一幸堂」のお菓子を使いたいと考えていた。そこで引き出物を決める際に、七桜を呼び寄せて「光月庵」のお菓子と対決させる。その結果、真由としては「一幸堂」の七桜が作ったお菓子を採用したかったのだが、茶道の家元である以上、老舗の「光月庵」との関係は良好に保たなくてはならないという理由で断念した。しかし、この件を非常に申し訳なく思っており、七桜から「光月庵」のお菓子を一度食べてみたいと頼まれた際にはあらためて贈った。
書誌情報
私たちはどうかしている 16巻 講談社〈BE LOVE KC〉
第1巻
(2017-04-13発行、 978-4063945386)
第2巻
(2017-06-13発行、 978-4063945485)
第3巻
(2017-09-13発行、 978-4063945553)
第4巻
(2017-12-13発行、 978-4065106228)
第5巻
(2018-03-13発行、 978-4065110850)
第6巻
(2018-06-13発行、 978-4065117200)
第7巻
(2018-09-13発行、 978-4065128923)
第8巻
(2018-12-13発行、 978-4065140420)
第9巻
(2019-04-12発行、 978-4065150931)
第10巻
(2019-08-09発行、 978-4065167021)
第11巻
(2019-12-13発行、 978-4065179369)
第12巻
(2020-04-13発行、 978-4065190616)
第13巻
(2020-08-12発行、 978-4065202388)
第14巻
(2020-12-11発行、 978-4065217351)
第15巻
(2021-05-13発行、 978-4065232439)
第16巻
(2021-09-13発行、 978-4065247723)
私たちはどうかしている ミニカラー画集付き特装版 16巻 講談社〈プレミアムKC〉
第16巻
(2021-09-13発行、 978-4065257692)
私たちはどうかしている 桜色の連歌 17巻 講談社〈BE LOVE KC〉
第17巻
(2022-05-13発行、 978-4065277027)
私たちはどうかしている 蝶の棲家 18巻 講談社〈BE LOVE KC〉
第18巻
(2023-01-13発行、 978-4065303641)
私たちはどうかしている 千代の春 19巻 講談社〈BE LOVE KC〉
第19巻
(2023-02-13発行、 978-4065305904)