映画制作を夢見る若者たちの挑戦
本作は映画制作をテーマに、監督や俳優、音響、映像、脚本など、映画制作のさまざまな分野で成功を夢見る学生たちの姿を描いている。しかし、その道のりは非常に険しく、大國大学藝術学部の映像指導主任、財前一郎は「日本映画界に夢などない」と断言する。そんな厳しい現実の中で、映画監督を志す大助や大澤門は、次々と立ちはだかる困難に苦闘しながらも、地道な努力を重ね、確かな手応えをつかんでいく。
「からっぽ」と呼ばれた男の成長
幼い頃から映画に親しんで育った大助は、高校2年生の時、仲間と共にスマートフォンで映画を制作し、高校生映画祭で優秀賞を獲得する。この成功をきっかけに、大助は本格的に映画監督を志し、大國大学藝術学部映画学科のAO入試にみごと合格した。しかし、入学からわずか1か月後の大学の講評会で、「自己表現」をテーマにした作品を発表した大助は、講師陣から厳しい評価を受けることになる。さらに、その講評会で唯一高い評価を得た門からは、「からっぽの人間」と痛烈な一言を浴びせられてしまう。大助は、自分の覚悟がいかに甘かったかを痛感するが、同時に門の映画に対する狂気にも似た情熱に強く惹かれ、彼を超えるべきライバルとして強く意識するようになる。
ライバルとの競争を通じた成長
門をライバルと定めた大助は、脚本指導主任の玉川清春に誘われ、大國大学藝術学部の学園祭でそれぞれ監督を務める作品を上映し、集客数を競うことになる。しかし、監督としての門の圧倒的な才能の前に、大助は大敗を喫し、改めて実力の差を痛感する。この挫折をきっかけに、大助は門に勝つことを強く意識し、玉川の助言を受けながら着実に成長していく。2年に進級した大助は、脚本家志望の狭山ソウタと出会い、彼が制作したドキュメンタリー映画に強い衝撃を受ける。それに触発された大助は、門に関するドキュメンタリーを撮るため、1か月間の共同生活を送ることになる。濃密な時間を共に過ごす中で、大助は頑(かたく)なだった門の心を少しずつ解きほぐしていくことに成功する。
登場人物・キャラクター
加賀美 大助 (かがみ だいすけ)
大國大学藝術学部映画学科監督コースに在籍する1年生の男子。高校2年生の時に映画祭で優秀賞を受賞した経験から、自らの才能に絶対の自信を持っている。高校時代の成功体験が影響し、よくも悪くも前向きな性格で、入学直後に映像指導主任の財前から映画業界の厳しい現実を突きつけられても、動じることなく余裕を見せていた。しかし、圧倒的な才能を持つ同級生の門の作品に心を揺さぶられ、さらに門から浴びせられた痛烈な批判によって、その自信は根底から打ち砕かれる。この出来事をきっかけに、門に対してあこがれと嫉妬が入り混じる複雑な感情を抱くようになり、やがて彼を「超えるべき目標」として定める。当初、門から冷たく突き放されても、その情熱は消えることなく、やがて門と肩を並べるほどの才能を開花させる。
大澤 門 (おおさわ かど)
大國大学藝術学部映画学科監督コースに在籍する1年生の男子。人気映画監督の大和澤十条を父に持つが、その自己中心的な性格を強く嫌悪している。映画に対しては狂気じみた情熱と天賦の才を秘めており、その圧倒的な実力で大助や俳優志望の葉山蓮太郎を魅了し、あこがれの存在となっている。しかし、才能とは裏腹に態度は不愛想で刺々(とげとげ)しく、特に大助には「からっぽの人間」と辛辣に言い放つこともある。一方で、根は非常にまじめで、根拠のない中傷は決してしない。撮影中の事故に対しては真摯に謝罪するなど、映画制作にはつねに強い責任感を持って取り組んでいる。
書誌情報
クニゲイ~大國大学藝術学部映画学科~ 4巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2024-10-04発行、978-4088842738)
第2巻
(2025-01-04発行、978-4088843384)
第3巻
(2025-04-04発行、978-4088844237)
第4巻
(2025-07-04発行、978-4088845777)







